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研究者のご紹介

田中 修

中国経済レポート

「習近平経済思想」のバージョンアップ(1)

 

新領域研究センター 田中 修

2021年6月4日


はじめに

習近平総書記は、1月11日、中央党校の「省部レベル主要指導幹部党19期5中全会精貫徹専門課題検討班」開業式において、重要講話を行った。開業式には政治局常務委員、王岐山国家副主席、党中央政治局委員、国務委員、全人代常務副委員長、最高人民法院院長、最高人民検察院検察長、全国政協党員副主席、中央軍事委員、民主党派中央責任者、全国工商聯責任者等が出席し、李克強総理が挨拶を行うなど、物々しいものであり、この重要講話を全幹部に徹底させる狙いがあったものと思われる。

この重要講話「新たな発展段階を把握し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築する」の全文が『求是』5月1日号に公表された。本稿では、この概要を紹介する。なお、重要な部分は、太字で示した。

党19期5中全会閉幕以降、各地方・各部門は党中央の要求に基づき、全会精神の学習・理解、宣伝・説明、貫徹・実施において、大量の活動を行い、積極的な成果を収めた。

党中央が今回の専門課題検討班を挙行した目的は、深く検討し、体験を交流し、正確に把握することにより、新たな発展段階を正確に把握し、新発展理念を深く貫徹し、新たな発展の枠組を早急に構築して、第14次5カ年計画期間に質の高い発展を推進し、社会主義現代化国家全面建設の良好なスタート・歩み出しを確保することである。

全会精神を学習貫徹することに関し、私は党19期5中全会、中央政治局常務委員会会議、中央政治局会議、中央経済工作会議、中央農村工作会議等の場で述べてきた。今日、私は再度重点的に4つの問題を述べる。

第1の問題 新たな発展段階を正確に把握する

党と人民の事業が所在する歴史的方位と発展段階を正確に認識することは、わが党の段階的中心任務を明確にし、路線・方針・政策を制定する根本的依拠となり、わが党が革命・建設・改革で不断に勝利を得た重要な経験を理解することにもなる。

新民主主義革命の時期、わが党は艱難辛苦の模索を経て、中国革命は新民主主義という歴史段階を経なければならないと、徐々に認識するに至り、この基礎の上に中国革命の任務と戦略・方策を提起し、人民を導いて中国革命の勝利を収めた。

新中国成立の初め、わが党は、新民主主義社会から社会主義社会に進むには過渡的段階を経る必要があると深刻に認識するに至り、これにより過渡期における党の総路線を形成し、社会主義革命の任務を勝利のうちに完成し、社会主義建設の段階に進んだ。

改革開放以後、わが党は、世界社会主義とりわけわが国社会主義建設のプラスマイナス両方面の経験を深刻に総括し、わが国が現在かつ長期に社会主義初級段階にあるという重大判断を行い、これに基づき党の基本路線を提起し、改革開放と社会主義現代化建設の斬新な局面を開いた。

18回党大会以降、わが党は、これまで人民が長期に奮闘してきた基礎の上に、「五位一体1 の総体手配を統一的に推進し、「四つの全面」2 の戦略手配を協調推進して、党・国家事業を推進し歴史的成果を収め、歴史的変革を発生させ、中国の特色ある社会主義を推進して新時代に入った。

党19期5中全会が、小康社会が全面実現し、第一の百年奮闘目標が実現したことを提起して後、我々は勢いに乗じて上昇し、社会主義現代化国家全面建設の新たな征途を開き、第二の百年奮闘目標に向けて進軍しなければならない。これは、わが国が新たな発展段階に入ったことを示している。

理論に依拠して言えば、マルクス主義は遠大な理想と現実的な目標を結びつけ、歴史の必然性と発展段階を統一した理論であり、人類社会は必然的に共産主義に向かうと確信するが、この崇高な目標を実現するには必然的に若干の歴史段階を経ることになる。

わが党は、マルクス主義の基本原理を運用し、中国の実際問題を解決する中で、社会主義は1つの長期的歴史プロセスであるのみならず、異なる歴史段階を画定区分する必要があると徐々に認識するに至った。

1959年末から60年初に、毛沢東同志はソ連の『政治経済学教科書』を読んだとき、「社会主義という段階は、2つの段階に分けることが可能であり、第1の段階は未発達の社会主義で、第2の段階は比較的発達した社会主義である。後の段階は前の段階に比べ、更に長い時間を要する」と提起した。

1987年、鄧小平同志は、「社会主義は元々共産主義の初級段階であり、しかもわが中国は社会主義初級段階、即ち未発達の段階にある。すべてはこの実際から出発し、この実際に基づいて計画を制定しなければならない」と述べた。

今日、我々は新たな発展段階、即ち社会主義初級段階の中の1段階にあり、同時にその中で数十年の累積を経て、新たな起点上の1つの段階に立っている。

歴史に依拠して見ると、新たな発展段階は、わが党が人民を率いて「立ち上がり、豊かになる」から「強くなる」に至る歴史的に飛躍した新たな段階を迎えることになる。

わが党は創立後、人民を団結させリードして28年の血みどろの奮戦・頑強な奮闘を経て、中華人民共和国を創立し、新民主主義から社会主義革命に至る歴史的飛躍を実現した。

新中国成立後、わが党は人民を団結させリードして社会主義改造を完成し、社会主義基本制度を確立し、社会主義経済文化建設を大規模に展開し、中国人民は立ち上がったのみならず、しっかり安定して立ち、社会主義革命から社会主義建設に至る歴史的飛躍を実現した。

歴史的な新時期に入り、わが党は人民を率いて改革開放という新しい偉大な革命を進め、広範な人民大衆の積極性・主動性・創造性を極大に奮い立たせ、中国の特色ある社会主義の道を開くことに成功し、中国を大きく踏み出させて時代に追いつかせ、社会主義現代化プロセスにおける新たな歴史的飛躍を実現し、中華民族の偉大な復興という光明ある前途を迎えた。

今日、我々はこれまで発展した基礎の上に、続けて社会主義現代化国家全面建設という新たな歴史を描いている。

実際に依拠して言えば、我々は新たな征途を開き、新しく更に高い目標を実現するための豊富な物質的基礎を既に有している。

新中国成立以降とりわけ改革開放40年余りの弛まぬ奮闘を経て、第13次5カ年計画の手仕舞いの時に至り、わが国経済実力・科学技術実力・総合国力と人民の生活水準は、新しい大きな段階に飛躍し、世界第二位の大経済体・最大の工業国・最大の貨物貿易国・最大の外貨準備国となり、GDPは100兆元を超え、1人当たりGDPは1万ドルを超え、都市化率は60%を超え、中等所得層は4億人を超えている。とりわけ小康社会の全面建設で偉大な歴史的成果を収め、中華民族数千年の絶対貧困問題の解決で歴史的成果を収めた。

これは、わが国の社会主義現代化建設のプロセスにおいて一里塚の意義を有し、わが国が新たな発展段階に入り、第二の百年奮闘目標に向けて進軍するために、堅実な基礎を打ち固めた。

新中国成立まもなく、わが党は社会主義現代化国家建設の目標を提起し、13の5カ年計画を経て、我々は既にこの目標の実現のために堅実な基礎を打ち固め、将来30年は、我々はこの歴史的に偉大な志を達成する新たな発展段階である。

我々は、既に将来発展の路線図・スケジュール表を明確にした。これは即ち、2035年までに3つの5カ年計画期間を用いて、社会主義現代化を基本的に実現する。その後、さらに3つの5カ年計画期間を用いて、今世紀中葉に、わが国を富強・民主・文明的で調和のとれた美しい社会主義現代化強国に築き上げる。

現在、世界は百年未曾有の大変局を経ている。

最近一時期以降、世界の最も主要な特徴は、「乱」の一字であり、この傾向は持続すると見られる。

今回の新型コロナ感染症の世界的大流行に対応し、各国の指導力と制度の優越性はどうであったか、優劣を判断すれば、時勢はわが方にある。これは、我々の不動心・気概の源であり、我々の決意・自信の源でもある。

同時に、我々は、現在及び今後一時期、わが国の発展は依然として重要な戦略的チャンスの時期にあるが、チャンスと試練にはいずれも新たな発展・変化があり、チャンスと試練の大きさは未曾有であり、総体としてチャンスが試練より大きいことをはっきり見て取らなければならない。

古人3 は、「容易な事に注意して対応することにより難事を避け、些細な遺漏を真剣に塞ぐことにより大禍を避ける」と言った。

全党は謙虚・謹慎、刻苦奮闘を継続し、全ての団結可能なパワーを団結させ、全力で自身の事柄にしっかり取り組み、粘り強く進めて我々の既定目標を実現しなければならない。

我々の任務は、社会主義現代化国家の全面建設であり、当然わが国が建設する現代化国家は中国の特色を備え、中国の実際に合致しなければならない。私は党19期5中全会において5点を特別強調した。即ち、わが国の現代化は、①人口規模が巨大な現代化である、②人民全体が共同富裕となる現代化であり、③物質文明と精神文明が協調した現代化である、④人と自然の調和がとれ共生した現代化である、⑤平和発展の道を歩む現代化である。

これは、わが国の現代化建設が堅持しなければならない方向であり、わが国の発展の方針・政策、戦略・戦術、政策・措置、施策・手配の中で体現し、全党・全国各民族・人民が共同推進してこのために努力しなければならない。

新たな発展段階は、わが国社会主義発展プロセスの中の1つの重要な段階である。

1992年、鄧小平同志は、「我々が社会主義を行ってからもう数十年になるが、まだ初級段階にある。社会主義制度を強固にして発展させるには、なお長い歴史的段階が必要であり、我々の数代の人・十数代の人々が必要であり、甚だしきは数十代の人々が弛まぬ努力・奮闘を堅持しても、決して高をくくり油断してはならない」と述べた。

私の体験では、鄧小平同志がこの年にこの話をしたのは、主として政治面から述べたのであり、強調したのは、当時わが国の経済の基礎が脆弱な条件の下、長時間刻苦奮闘を要してはじめて現代化が実現できるということであり、同時に強調したのは、現代化を実現しても、わが国の社会主義制度を世々代々堅持するには、長期にわたり社会主義制度を強固にして発展させるという問題をしっかり解決せねばならず、一度苦労すれば後は末永く楽ができるというものではないということである。

毛沢東同志は、「一切の事物には『辺』がある。事物の発展は、一段階、一段階と、不断に進むものであり、各一段階も『辺』である。『辺』を認めなければ、質の変化あるいは一部の質の変化を否認することになる」と述べた。

社会主義初級段階は「1つの静態で、いったん成ったら変わらず、停滞し前進しない」段階ではなく、「自然発生的、受動的で、多大な気力を費やさなくても自然に乗り越えられる」段階でもなく、「動態的で、積極的に成果を出し、常に勢い盛んな生気・活力に満ち溢れた」プロセスであり、「段階的に進み、不断に発展・進歩し、質的・飛躍的・量的な累積と発展・変化に日増しに接近する」プロセスである。

社会主義現代化国家の全面建設・社会主義現代化の基本的実現は、社会主義初級段階のわが国発展のための要求であるのみならず、わが国の社会主義が初級段階から更に高い段階に邁進するための要求でもある。

  1. 経済建設、政治建設、文化建設、社会建設、生態文明建設を一体的に進める。
  2. 小康社会の全面的に実現、改革の全面深化、法に基づく国家統治の全面推進、全面的な厳しい党内統治。
  3. 韓非子。原文は「慎易以避難、敬細以遠大」。