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研究者のご紹介

田中 修

中国経済レポート

常態化した財政資金直接交付メカニズム

 

新領域研究センター 田中 修

2021年6月3日


はじめに

2020年にコロナ対策で臨時に創設された財政資金直接交付メカニズムは、21年に正式に制度化された。このため財政部は5月21日に、制度説明の記者会見を開催した。本稿では、その概要を紹介する。

1.概要

4月21日、国務院常務会議は、常態化した財政資金直接交付メカニズムの建設情況を聴取・審議し、常態化した直接交付メカニズムをしっかり実施することにつき、特別手配を進めた。

(1)2020年の総括

2020年、財政資金直接交付メカニズムを確立したのは、党中央・国務院が行った重大政策決定手配であり、疫病の影響に有効に対応し、地方が「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策をしっかり行い、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)任務を実施することへの支援にとって、重要な意義を備えている。

中央指導者は、これについて高度に重視し、会議を何度も開催して検討・手配し、推進を指導し、直接交付メカニズムの実施に確実にしっかり取り組むよう要求し、財政政策の効能を高めた。

党中央・国務院の堅固な指導の下、財政部は直接交付メカニズムをしっかり実施することを積極的財政政策実施のための重要な掴みどころとし、関係部門と入念・組織的に実施し、政策メカニズムを整備し、フォロー・効果確認を強化し、積極的に宣伝・説明し、全力で関係施策にしっかり取り組んだ。

審計署は直接交付メカニズムの特別会計検査を組織的に展開し、データ分析と現場での会計検査等の方式を採用し、問題を発見しだい地方に是正を督促した。

地方各レベル党委員会・政府も高度に重視し、現地の実際に立脚して組織的実施にしっかり取り組み、直接交付メカニズム実施の効果が現れるために有力な保障を提供した。

各地方・各部門の共同努力の下、2020年の直接交付は着実に秩序立って、平穏・高い効率で、成果が顕著であり、マクロ・コントロールとミクロの実施の有効な結合を促進し、積極的財政政策の質・効率の向上を促進して、疫病防御・企業の困難緩和・基本民生の保障を展開するために、重要なサポートを提供した。

同時に、プロセスの再構築、時間の圧縮、効率の高い管理・コントロールを通じて、直接交付メカニズムは「速く、正確で、厳格」という予期目標を実現した。

①資金の下達が速かった

直接交付メカニズムは資金の分配・使用・管理のチェーンを円滑にし、中間段階での滞留時間を圧縮し、関連政策を早急に実施して効果を上げることを有力に保障した。

2020年は、20日前後の時間を用いて9割以上の直接交付資金を完全に下達し、効率が顕著に向上した。

②資金の投下先が正確であった

届出・審査・認可の段階を通じて、受益対象の実名台帳を確立し、資金供給と需要を有効にマッチさせ、「バラマキ」から「点滴灌漑」に変換した。

2020年は、直接交付資金が形成した実際の支出のうち、市・県末端のウエイトは96%を超えた。企業の困難緩和の支援に用いた支出は8379億元で、恩恵は各種市場主体95万社(件)に及んだ。

③資金の監督管理が厳格であった

直接交付資金の監視・コントロールシステムを専門に構築し、直接交付資金について全プロセスを貫く監視・コントロールを実行し、多部門協同連携の監督制度を確立し、資金の行き先・用途にしっかり目を配り、資金の規範的・安全で効率の高い使用を確保した。

(2)常態化した財政資金直接交付メカニズムの確立

2020年10月の国務院常務会議の要求に基づき、2020年の直接公費を真剣に総括した基礎の上に、財政部は関係部門と常態化した財政資金直接交付メカニズムを検討・確立し、「中央が資金を切り分け、省レベルが細分化し、届出・同意により、迅速に直接交付する」プロセスを基本的に変えないことを維持し、現行の財政体制、資金管理権限、保障主体責任を基本的に安定させる前提の下、直接交付の範囲、分配方法、実施メカニズム、資金の監督管理等の方面で適切な調整を進め、資金の分配構造の改革・最適化を通じて、直接交付資金が企業に恩恵を及ぼし民を利する作用を一層発揮させることとした。

総じてみれば、主として3点の特徴がある1

①資金の規模がかなり大幅に増加し、20年の1.7兆元から2.8兆元と、1.1兆元増えた。

②末端の「基本民生・給与・運営の保障」と企業に恩恵を及ぼし民を利することに焦点を絞り、直接交付の範囲は既に中央財政民生補助金を基本的にカバーし、かつ末端の財政力を保障する2項目の一般性移転支出と一部の企業のへの補助金を含める。

③素早く行動し、素早く効果を上げ、20年10月から、常態化した直接交付メカニズムの検討・確立に着手し、あらかじめ資金分配等をしっかり準備し、直接交付資金の下達進度と使用効果を一層高めた。

各地方は、真剣にプロジェクトをしっかり準備し、細分化方案を早急に制定し、監視・コントロールメカニズムをグレードアップ・改造し、直接交付メカニズムが実効を上げることを保障した。

関係中央部門は積極的に支援・協力し、資金分配方案を速やかに制定し、地方への政策指導と資金の監督管理を強化し、資金の投下先が精確・有効となることを確保した。

人民銀行は、各レベルの国庫を組織化し、支払い指令に基づき、速やかに資金の交付を処理した。

審計署は、会計検査・監督管理を一層強化し、問題の速やかな完全是正を確保した。

現在の情況からみると、2021年の常態化した直接交付メカニズムの執行情況は良好であり、重点支出は有効に保障され、地方経済社会の持続的で健全な発展を有力に促進した。

今後、財政部は、審計署などの関係部門と、党中央・国務院の政策決定・手配を断固貫徹実施し、国務院常務会議精神に基づき、引き続き常態化した直接交付メカニズムの実施にしっかり取り組み、直接交付資金の使用監督管理を強化し、積極的財政政策の役割を更に好く発揮させ、経済社会発展の大局を更に好くサポートする。

2.1-4月の実施情況
(1)資金の下達情況

全体として90%を超える直接交付資金が末端・使用単位に下達された。下達情況は、いくつかのレベルに分かれる。

2.8兆元のうち、中央財政は既に2兆5790億元を下達し、下達割合は92.1%である。省レベル財政は既に2兆3620億元を分配・下達し、これは中央財政が下達した91.6%に達する。そのうち、関係規定に基づき、省レベルで8690億元を使用し、市・県に1兆4930億元下達した。市・県財政は既に1兆4280億元を資金使用単位に分配し、これは省レベルが下達した95.6%に達する。

(2)実際の支出情況

総体としていえば、実際の支出情況は4月末までに、各地方は1兆710億元を支出し、支出進度は41.5%に達した。地方一般公共予算支出の進度より10.3ポイント高い。これは、直接公費資金の保障すべき重点が完全に保障されていることを示している。

省レベル支出は約3829億元で、35.7%を占め、市・県末端の支出は約6882億元で、64.3%を占める。

支出構造では、

①庶民の雇用保障支援

雇用補助、インクルーシブファイナンスによる起業支援等が110億元であり、雇用優先政策の実施を支援し、雇用の総体情勢を安定させた。

②民生保障支援

高齢者介護、義務教育、基本医療、基本住宅等の基本民生方面の支出は7400億元を超え、総支出の7割近くを占め、基本民生保障の役割を有効に発揮した。

③市場主体保障支援

企業に恩恵を及ぼし民を利する関連支出は1500億元を超え、各種市場主体28万社(件)に恩恵を及ぼし、市場主体の活力を奮い立たせ、企業発展の持続力を増強した。

④末端運営保障支援

県レベル基本財政力保障メカニズム奨励補助金支出は1800億元を超え、末端の給与・運営保障等の重点支出の需要を確実に保障し、末端の「基本民生・給与・運営保障」の最低ラインを確保した。

⑤重点分野プロジェクト建設支援

各地方が直接交付資金を用いて計上した1億元以上のプロジェクトは2400を超え、総規模は1.1兆元を超え、農地・水田水利建設、交通インフラ等の重大プロジェクトを秩序立てて展開し、投資の補足部分の補填を有効に促進し、経済安定・回復の基礎を打ち固めた。

3.問題点

審計署によれば、会計検査の結果、一部の地方で次の問題点が見つかった。

①資金の分配が、十分科学的・精確でない。

②資金を既に完工した、あるいは年内に着工できないプロジェクトに振り向け、実物の成果量を生み出していない。

③資金の下達・支払いが遅い。

④ルールに違反して資金を予算単位の既存の資金勘定、財政専門勘定に入れ、あるいは猛スピードでプロジェクト単位に資金を支払っている。

⑤ルールに違反して疫病対策特別国債資金を未払いの清算、企業誘致あるいは疫病と無関係な支出に充てている。

⑥少量の資金が虚偽報告で横領・留保・流用され、あるいはルールに違反して支出されている。

  1. このほか会見では、20年との違いについて、①今回は追加資金ではなく既存の資金を用い、27項目の移転支出に及んでいる、②20年は、省レベル政府は資金をバトンタッチするのみであったが、21年は確実に省レベル政府が留保使用しなければならないものは一部の留保使用を認め、できるだけ多くを末端に傾斜することにした、③省レベルでの細分化の時間を20年の1週間から21年は30日前後に延長した、などとしている。