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研究者のご紹介

田中 修

中国経済レポート

新型肺炎とマクロ政策(66)

 

新領域研究センター 田中 修

2021年5月21日


はじめに

本稿では、5月6日・12・19日の国務院常務会議の概要を紹介する。

5月6日 国務院常務会議

(食糧生産の安定・発展を一層促進し、食糧安全保障能力を確実に高める)

食糧の安全保障は、国家の安全・発展の大局に関わり、農業・農村現代化の最重要任務である。

党中央・国務院の手配に基づき、近年各地方・関係部門は全力で農業生産にしっかり取り組み、食糧は連年豊作で、重要農産品の供給は充足し、穀物の基本自給・主食の絶対安全が実現しており、経済社会の安定・発展を促進し、新型コロナの衝撃に有効に対応するために、堅実なサポートを提供している。

2021年の食糧豊作の基礎はかなり好く、冬小麦の作付面積はこの4年で初めて増加を実現し、昨年や平年より作柄が好く、夏の食糧収穫は再び豊作が見込まれる。春の耕作・種まきは順調に進展し、早稲の作付面積は安定を維持している。年間の食糧作付意向面積は一層拡大し、うちトウモロコシの面積は前年に比べ増えている。

(1)いささかも緩めることなく、食糧の生産安定・豊作にしっかり取り組まなければならない

コメ・小麦の最低買付価格、トウモロコシ・大豆生産者への補助等の政策を安定・整備し、三大食糧作物の完全原価保険・所得保険のテスト範囲を拡大し、農民が食糧生産で儲かるようにする。

中央予算内投資、省レベルの土地譲渡収益の統一使用等を食糧生産大県に傾斜させる。

地方の食糧安全の主体責任制を厳格に実施し、農地の管理と夏の収穫・種まきを強化するよう督促し、技術サービスを強化し、農業資材の供給を保障し、農業の重大病虫害防除対策に際立ててしっかり取り組む。洪水防止・干ばつ対策を統一的にしっかり実施する。

(2)食糧買付・備蓄と市場調節をしっかり行い、供給と価格の安定を保障しなければならない

食糧倉庫・物流施設を改善し、食糧備蓄の規模・構造を最適化する。

市場メカニズムの役割を発揮させ、供給ルートを豊富にし、供給の充足・品種の多様化に取り組み、食糧市場の平穏な運営を維持する。

(3)耕地保護と品質建設を強化しなければならない

新たなハイレベルの農地・水田建設計画を実施し、2021年は、干ばつ・洪水でも収穫を保ち、生産が高く安定しているハイレベルの農地・水田を、1億ムー(約670万ha)建設する。

耕地の用途規制を強化し、耕地の「非農地化」に断固歯止めをかけ、「食糧以外の生産」を厳格に管理・コントロールし、18億ムー(約1.2億ha)の耕地レッドラインを厳守する。

農業生産への科学技術のサポートを強化し、国情に立脚し、人民大衆の需要を軸に、科学的に実務に取り組む精神で難関攻略・不足補充に力を入れなければならない。

コメ・小麦の品質と大豆の油脂含有量を高め、質の優れた野菜の品種を育て、重要農産品の単一面積当たり収穫量の市場への適応度を高め、牛乳の生産量と肉牛の品質を高める。

メカニズムを整備し、市場のパワーを十分動員し、科学研究機関・大学と企業・農家との協同イノベーションを推進する。

商業化した健全な育種システムを確立し、種苗企業を壮大に育成し、実用的で効率の高い農機・装置の開発・普及を支援する。

科学技術イノベーションで、農業の質・効率向上を推進する。

5月12日 国務院常務会議
(1)雇用の安定・拡大

2020年は、党中央・国務院の手配に基づき、一連の非伝統的・段階的な負担軽減、雇用の安定・拡大措置を打ち出し、雇用保障で顕著な成果を収めた。

2021年の雇用圧力は依然かなり大きく、引き続き雇用優先を堅持し、市場主体とりわけ中小・零細企業の雇用安定、重点層の雇用への政策支援を維持しなければならない。

①失業保険料の雇用安定還付政策を引き続き実施する。

2020年度の失業保険基金剰余金の支払準備充当期間が1年以上の省統一運用地域は、21年は条件の合致した大型企業には20年に納付した失業保険料の30%を超えない範囲で還付し、中小・零細企業には60%を超えない範囲で還付することを認める。

②2020年に実施した職業訓練・技能向上・大学卒業生実習補助と失業補助金・臨時生活補助の支給、大学卒業生の末端での就業支援等政策を、21年末まで継続する。

企業が重点層の雇用を吸収した場合には、規定に基づき税の減免・社会保険料補助等を与える。

③市場による雇用を促進し、「起業・イノベーション」への政策支援を増やし、起業の債務保証と利息補助の実施を推進し、大学卒業生の自強・自立、就業・起業を促進する。

柔軟な就労は大衆の就業・所得増加の重要なルートであり、現在全国で柔軟な就労者は2億人に達する。柔軟な就労を一層支援する措置を次のように確定する。

①柔軟な就労者が都市・農村住民基本年金保険に加入するための底固め措置を検討・精緻する。

柔軟な就労者が就労地で社会保険に加入することへの戸籍規制の緩和を推進する。

②プラットフォームにおける柔軟な就労者の職業傷害保障テストを展開し、プラットフォーム企業の責任を合理的に画定し、雇用先の企業が商業保険を購入し、保険会社が利潤を移譲し、政府が支援を増やすメカニズムを模索する。

③上位法に合致しない、あるいは不合理な手数料・罰金徴収規定の整理・廃止に早急に取り組み、柔軟な就労のために良好な環境を創造する。

(2)疫病の持続的影響を受けている業種・企業への金融支援増大

①民間航空企業と金融機関が緊急貸出政策をうまく十分用いるよう誘導する・ 文化・観光企業及びオフラインの小売・旅館・交通輸送等その他疫病の影響がかなり大きい業種に方向を定めた金融サービスを強化する。

製造業のグレードアップ・発展への融資支援を引き続きしっかり行う。

②小型・零細企業への金融サービスを一層強化する。

個人工商事業者向け貸出の評価システムを試験的に確立し、融資の円滑さを高める。

3000億元を下回らない小型・零細企業特別金融債の発行を支援する。

銀行業の小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの伸び・件数の2つの増加を確保し、5大国有大型商業銀行の小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの30%以上増加を確保する。

③金融機関が市場主体をめぐり地域金融支援を的確にしっかり行うよう誘導し、関係する地方のビジネス環境と金融生態の改善を促進する。

金融リスクを有効に防止・解消する

内外情勢と市場の変化をフォロー・分析し、市場調節をしっかり行い、大口取引商品価格の速すぎる上昇とそれがもたらす影響に対応しなければならない。金融政策とその他政策の組合せを強化し、経済の平穏な運営を維持する。

5月19日 国務院常務会議

(大口取引商品の供給保障・価格安定)

今年に入り、主として国際波及等の多重の要因の影響を受けて、一部の大口取引商品価格が継続して上昇しており、一部の品目の価格は連続して高値を更新している。

大口取引商品価格の上昇がもたらす不利な影響を高度に重視し、党中央・国務院の手配を貫徹し、精確なコントロールの要求に基づき、市場の変化に対応して、重点総合施策を際立たせ、大口取引商品の供給を保障し、その価格の不合理な上昇に歯止めをかけ、消費者物価への波及防止に努力しなければならない。

(1)多くの措置を併せ打ち出し、需給双方向の調節を強化しなければならない。

一部鉄鋼製品の輸出関税引上げを実施し、銑鉄・屑鉄についてゼロの輸入暫定税率を実行し、一部鉄鋼製品の輸出税還付等の政策を廃止し、国内市場の供給増加を促進する。 構造調整に力を入れ、エネルギー多消費プロジェクトを抑制する。

わが国の石炭資源が豊富である優位性を発揮し、重点石炭企業が安全確保の前提の下、生産・供給を増やすよう督促し、風力発電・太陽光発電・水力発電・原子力発電等の出力を増加させ、夏のピークのエネルギー保障をしっかり行う。

対外開放を堅持・拡大し、大口取引商品の輸出入と備蓄の調節を強化し、通関の円滑化を推進し、内外の2つ市場・2種類の資源を更にうまく利用し、供給保障・価格安定能力を増強する。

(2)市場の監督管理を強化しなければならない

業種協会の役割を発揮させ、業種の自律性を強化する。

先物・現物市場を連動させた監督管理を強化し、的確な措置を適時採用して、異常な取引と悪意の投機行為を洗い出す。

独占の協議・実施、虚偽情報の流布、価格の吊り上げとりわけ買占め・売惜しみ等の行為を、法に基づき厳格に調査・処分し、かつオープンにして日の下に晒す。

(3)金融政策の安定性と人民元レートの合理的水準での基本的安定を維持し、市場の予想を合理的に誘導しなければならない

市場主体とりわけ小型・零細企業、個人工商事業者のコスト上昇等の生産経営の困難への対応を支援する。

小型・零細企業、個人工商事業者への税の減免、先進製造業企業に対し、増値税の税額留保増加分を月ごとに全額還付する政策をしっかり実施し、税・費用優遇政策を享受するための処理手続を簡素化する。

直接到達する金融政策手段をしっかり実施し、再貸出・再割引によるインクルーシブファイナンス支援を強化し、小型・零細企業の債務保証料引下げへの報奨・補助等の政策をしっかり実施し、銀行が無担保貸出を拡大するよう誘導する。