研究者の紹介

中国経済レポート

現代財政制度・税制の確立

新領域研究センター 田中 修

2021年4月23日


はじめに

4月7日、財政部は第14次5カ年計画期間における現代財政制度・税制の確立について、記者会見を行った。本稿では、その概要を紹介する。

1.基本的考え方
(1)収入方面

重点は、収入政策の役割を有効に発揮し、現代税制を一層整備することである。

①総体としてのマクロの税負担安定を維持しなければならない。

第14次5カ年計画機関、重大戦略・重点任務の実現を保障するため、マクロの税負担の総体としての安定を維持し、財政収入の調達、分配構造の調節、構造最適化の促進、産業のグレードアップ推進における税制の役割を更に好く発揮させる必要がある。

この基礎の上に、財政の受容能力、企業の困難緩和支援政策実施の必要性を総合的に考慮し、減税・費用引下げを精確に実施し、市場主体の活力を奮い立たせる。

②税制構造を引き続き最適化しなければならない。

現段階の税制の基本的安定を維持する基礎の上に、質の高い発展・社会の公平・市場の統一に資する健全な税制体系を一層確立する。健全な地方税・直接税体系を整備し、直接税のウエイトを適切に高める。

消費税の徴収を取引段階にシフトする改革を積極的に推進し、綜合と分類を結合した個人所得税制度等を一層整備する。税制の立法任務を全面的に完成し、法律形式により税制改革の成果を強固にする。

(2)支出方面

重点は、合理的な支出強度を維持すると同時に、維持するものと圧縮するものを区別し、重点を際立たせることである。

①支出構造の最適化に力を入れる。

政府の倹約を引き続き堅持し、一般性支出を厳しく抑制する。

未発達地域・困窮地域に対する保障を強化し、移転支出を一層中西部地域と困窮地域に傾斜させる。

末端への保障を強化し、最大限度財政力を下方に移転し、県レベルの基本財政力の保障メカニズムを整備し、末端の「基本民生・給与・運営」の最低ラインをしっかり保障する。

②新たな発展の枠組の構築に的を絞り、引き続き力を発揮する。

科学技術の自立自強を支援し、科学技術への財政投入を増やし、製造業企業のR&D費用の割増控除の割合を高め、企業がR&D投入を増やすよう誘導する。

産業構造の最適化・グレードアップを推進し、内需体系を育成・完成し、経済循環の円滑化を促進する。産業のボトルネックのブレークスルーを支援し、産業の基礎再建プロジェクトの実施を推進し、「専門性があり、精緻で、特色ある、新しい」企業を育成する。

脱貧困堅塁攻略と農村振興の有効なリンクを推進し、農業サプライサイド構造改革の深化を支援する。民生の保障・改善、雇用優先支援政策の強化、質の高い教育体系の建設支援により力を入れ、全国民をカバーする社会保障システムを整備し、公共衛生への投入を強化し、社会保障的性格をもつ賃貸住宅の供給を有効に増やす。

(3)管理方面

重点は、予算管理制度改革を引き続き深化させ、財政資源の配分効率と使用効率を高めることである。

①予算管理を強化する。

財政資源を統一し、全範囲の予算管理を強化し、健全な財政支出基準体系を整備する。予算制約を強化し、予算執行管理を強化し、予算調整行為を規範化し、予算公開を強化する。業績効果管理改革を深化させ、予算と業績効果管理の一体化を推進し、業績効果の結果応用を強化する。

②直接交付メカニズムを整備する。

財政資金の直接交付メカニズムを常態化させて実施し、範囲を拡大し、メカニズムを整備し、監督管理を厳格し、サポートを強化し、企業に恩恵を与え国民を利するために更に適時有力な財政力支援を提供する。

③財政・会計監督を強化する。

財政・会計の健全な監督体系を整備し、会計・会計検査・監督管理を強化し、会計原則の質の高い実施を推進し、財政部の各地方監督管理局の役割を有効に発揮させ、政策実施のフォローアップ・効果確認を強化する。

(4)調節方面

重点は、財政コントロールと所得分配の機能を十分発揮し、経済社会の健全な発展を推進することである。

①財政コントロールの強化に力を入れ、カウンターシクリカル・周期を跨ぐ調節と予想の管理の統一を実現する。

財政の総量コントロールの役割を引き続き発揮させ、カウンターシクリカルな調節を強化し、経済成長を安定させる。中期財政計画による管理を強化し、年度を跨ぐ予算の均衡メカニズムを整備し、周期を跨ぐ調節を実現する。財政政策の予想に対する誘導作用を発揮する。

②体制メカニズムの整備に力を入れ、各方面の関係を調整する。

安定した各レベル政府の行政権限・支出責任と財政力が適応した制度の形成を推進する。有効な市場と効果的な政府の更に好い結合を推進し、国有資本・国有企業改革を着実に推進し、小型・零細企業と個人工商事業者の発展を促進する政策体系を整備する。

③所得分配の調節に力を入れ、共同富裕を推進する。

第一次分配における労働報酬のウエイトの引上げを推進し、再分配の効率を高め、税制・移転支出等の調整の程度・精確性を強化し、第三次分配の役割発揮を支援し、低所得層の所得向上・中等所得層の拡大に力を入れる。

(5)リスク防止方面

重点は、発展と安全を統一し、財政の持続可能性を増強することである。

年度の財政赤字規模と予算支出を科学的に計上し、政府債務の規模を合理的に確定し、地方政府債務の限度額の確定・債務償還能力の評価等のメカニズムを整備する。民生政策の財政受容能力評価を強化し、民生分野の過度な約束・過度な保障等のリスクを防止する。

2.減税・費用引下げ
(1)第13次5カ年計画期間

近年、わが国は大規模な減税・費用引下げを継続実施し、制度的手配・段階的政策と臨時的措置を結びつけ、各方面を統一的に併せ考慮して、系統的に推進してきた。

①増値税改革・個人所得税改革等の制度的減税措置を実施した。

現代税制の確立を推進すると同時に、大規模な減税のボーナス効果も発揮した。

②段階的・的確な減税措置を通じて、小型・零細企業、製造業、科学技術イノベーション等の重点分野への支援を強化した。

③2020年、突如やって来た疫病に直面し、財政収支が比較的困難な情況下、臨時・緊急的な減税・費用引下げ政策を打ち出し、疫病の影響を有効にヘッジし、企業の困難緩和・発展に助力した。

総じて見ると、ここ数年の減税・費用引下げの程度は大きく、効果は良好であった。第13次5カ年計画期間、累計で減税・費用引下げは7.6兆元を超え、うち減税は4.7兆元、費用引下げは2.9兆元であり、減税・費用引下げは企業の負担を有効に軽減し、広範な市場主体に実際の政策ボーナス効果を享受させ、イノベーションの活力の盛上げ、経済構造の最適化、個人消費促進と雇用拡大にとって、重要な役割を発揮した。

(2)第14次5カ年計画期間

現在、わが国経済は成長の安定・回復の態勢を示しているが、多くの不確定要因に直面してもいる。積極的財政政策の質・効率を高め、更に持続可能にするという要求に基づき、今後、財政の持続可能性と企業の困難緩和支援政策実施の必要性を総合的に考慮し、「当面と長期」、「必要性と可能性」の関係をうまくバランスさせ、減税・費用引下げの政策整備に力を入れ、実施メカニズムを最適化し、政策実施効果を高め、企業に更に多くの獲得感を与える。これには、以下の5方面の措置が含まれる。

①制度的減税政策を引き続き執行する。

たとえば、増値税の税率引下げ、増値税の税額控除留保分の還付、個人所得税の特別付加控除等の以前打ち出した制度的減税・費用引下げ政策を引き続き実施し、政策の相乗効果を引き続き発揮させる。

②段階的な減税・費用引下げ政策を秩序立てて退出させる。

20年に打ち出した疫病に対する段階的な減税・費用引下げ政策を分類して調整し、秩序立てて退出させる。小規模納税者への増値税減税等の政策の執行期限を適切に延長し、経済回復に必要な支援の程度を維持する。疫病防御に係る供給保障等の一時的・緊急的な政策については、期限到来後執行を停止する。

③小型・零細企業への税制優遇を際立てて強化しなければならない。

小型・零細企業向けの包摂的な減税・費用引下げ政策をしっかり実施すると同時に、小型・零細企業と個人工商事業者への税の減免を一層強化し、小規模納税者への増値税の課税最低限を月売上額10万元から15万元に引き上げ、小型・零細企業と個人工商事業者の課税所得が100万元に満たない部分について、現行の優遇政策の基礎の上に、さらに所得税を半減する。

④製造業と科学技術イノベーションへの支援を強化する。

企業のR&D費用の75%割増控除政策を引き続き執行し、製造業企業の割増控除の割合を100%にまで高め、企業がR&D投入を増やすよう奨励し、先進製造業企業の増値税税額控除留保分を月ごとに全額還付する。

⑤費用徴収基金を引き続き整理する。

港湾整備費を廃止し、民間航空発展基金の航空会社からの空港使用料徴収基準を引き下げ、各種の規定に反した企業に係る費用徴収の整理を強化し、税外収入の不合理な伸びを厳しく抑制し、減税・費用引下げ政策のボーナス効果弱化を防止する。

3.税制改革
(1)第13次5カ年計画期間

健全な地方税・直接税の体系を整備することが、わが国の現代税制整備の重要内容である。第13次5カ年計画期間、我々は、営業税の増値税への転換テストを含め一連の重大税制改革を進め、引き続き増値税改革を深化させ、総合と分類を結合した個人所得税制改革を実施し、消費税の徴収範囲、税率と段階を調整・最適化し、資源税の従価計算改革を全面推進し、水資源税テストを展開した。

同時に、租税法定原則を実施し、税制の立法を早急に推進し、8本の税法が全人代常務委員会の審議で承認され、我々の租税法定の歩みは加速された。

税制改革の深化を通じて、税制構造は一層最適化され、直接税のウエイトは2011年の28.4%から2020年の34.9%へと徐々に高まり、税制の国民所得分配調節作用とビルトイン・スタビライザー作用が徐々に増強された。

(2)第14次5カ年計画期間

第14次5カ年計画要綱の要求に基づき、我々は現代税制を一層整備し、健全な地方税・直接税体系を整備し、税制構造を最適化し、質の高い発展、社会の公平、市場の統一に資する健全な税制体系を確立する。

①健全な地方税体系を整備し、地方の税源を育成する。

地方税制を整備し、地方の課税権限を合理的に配分し、税・費用の関係を調整し、中央・地方の収入区分改革方案に基づき、消費税の徴収を取引段階にシフトさせ、地方税に転換し、消費税の立法と結びつけ統一的に改革を検討・推進する。

中央が立法と課税権を統一する前提の下、立法による授権を通じて、省レベルの税収管理権限を適切に拡大する。税外収入の改革を統一的に推進する。

②健全な直接税体系を整備し、直接税のウエイトを徐々に高める。

所得税と資産税を主体とした健全な直接税体系を整備し、その税収に占めるウエイトを徐々に高め、財政収入の調達・所得分配の調節・マクロ経済の安定における直接税の作用を有効に発揮し、社会ガバナンスの基礎を打ち固める。総合と分類を結合した個人所得税制を一層整備する。不動産税の立法・改革を積極かつ穏当に推進する。

4.財政資源の統一
(1)第13次5カ年計画期間

財政資源の統一強化は、財政資源の配分を最適化し、財政資金の使用効率を高める重要措置である。近年、財政部は不断に改革を深化させ、メカニズムを刷新し、多くの措置を併せ打ち出し、財政資源の統一使用を推進している。

①政府予算の統一を強化する。

例えば、支出内容が近い資金を一本化した予算管理に組み入れることを推進し、2015年以降、次々に19の政府基金を一般公共予算に組み入れた。また、中央国有資本経営予算を一般公共予算に組み入れる割合を逐年引き上げ、2016年の約19%から2020年の約35%にまで高めた。

このほか、重点支出を財政収支の伸び率あるいはGDPとリンクさせる事項を整理・規範化し、必要に応じ財政支出を統一的に計上した。

②遊休資金の活性化を強化した。

予算計上を遊休資金とリンクさせるメカニズムを確立し、前年度末の遊休資金の規模が比較的大きい地方・部門に対して、次年度予算を適切に圧縮した。余剰・繰越資金の管理を規範化し、余剰資金と連続2年年度末に使用を終えていない繰越資金を一律回収して統一使用した。政府基金予算の繰越資金の規模が当該基金の当年度収入の30%を超えている部分について、予算安定調節基金に充当し統一的に使用した。

③年度を越えて予算をバランスさせるメカニズムを確立した。

主として収入超過分の使用の規範化を通じて、予算安定調節基金を確立し、財政資源の年度を跨ぐ統一を強化した。一般公共予算の収入超過分は全部予算安定調節基金あるいは赤字削減に用いた。同時に、一般公共予算支出の剰余金は全部予算安定調節基金の補充に用いた。予算安定調節基金の使用規模を合理的に確定し、年度予算のバランスと重点支出の需要を保障した。

④中期財政計画による管理を実行した。

「中期財政計画による管理の実行に関する国務院意見」の要求に基づき、3年ローリングの財政計画を検討・編成し、将来3年間の財政収支情勢の予測・分析を強化し、重大改革・重大政策・重大プロジェクトを統一的に手配した。

(2)第14次5カ年計画期間

我々は、第14次5カ年計画要綱の要求に基づき、主として6方面から着手し、財政資源の統一を引き続き推進する。

①財政収入の統一を強化する。

行政権力と国有資源(資産)に依拠して獲得した各収入と特許経営権の競売収入等を規定に基づき全面的に予算管理に組み入れる。

②財政支出の統一を強化する。

ゼロベースの予算管理理念を積極的に運用し、枠組の固定化を打破し、財政支出構造を統一・最適化する。

③4本の予算(一般公共予算、政府基金予算、国有資本経営予算、社会保険基金予算)の統一を強化する。

収支一体管理の実行を推進する。

④遊休資金の統一を強化する。

繰越・余剰資金を全面的にうまく活用する。

⑤国有資産の統一を強化する。

新たに増えた資産予算と既存資産をリンクさせる健全なメカニズムを確立する。同時に、国有資産の分類管理を強化する。

⑥財政情報の統一を強化する。

情報システムを通じて、財政収支への全方位の動態的監督管理を強化する。

5.財政資金直接交付メカニズム

財政資金直接交付メカニズムは、党中央・国務院の行った重大政策決定・手配であり、疫病の影響に有効に対応する重要措置であり、積極的財政政策のイノベーション・ライトスポットである。2020年の情況を見ると、直接交付メカニズムは、末端が「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策をしっかり実施し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)任務を実施することに有益であり、予算管理を改善し、財政資金の効率を高め、財政マクロ・コントロールの効果を増強することに資するものであった。

2020年はうまく実施し、効果があったため、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、21年は範囲の拡大・メカニズムの整備・管理の強化を含む、常態化した直接交付メカニズムを実行し、地方が企業に恩恵を与え国民を利する政策を実施するために、更に好い財政力保障を提供する。具体的には、以下の方面である。

(1)資金の範囲を拡大する

21年は、直接交付管理を実行する資金を2.8兆元に増やす(前年度比1.1兆元増)。具体的には、次のものが含まれる。

①末端の財政力保障に直接用いる一般移転支出

たとえば、県レベル基本財政力保障メカニズム奨励補助金等の関連資金を素早く末端に直接交付し、資金の留保・流用を防止し、末端の基本民生・給与・運営を保障するために、財源を提供する。

②一部の共同財政権限移転支出

教育・雇用・社会保障・衛生健康等の分野のような、基本民生保障資金も直接交付の範囲に組み入れ、各民生政策の精確な完全実施を確保する。

③条件の備わった特別移転支出

インクルーシブファイナンス発展特別資金等のような、企業に恩恵を与え国民を利する資金を精確に受益対象に用いる。

(2)直接交付管理メカニズムを整備する

一方で、直接交付資金の範囲拡大・効率向上の必要に基づき、部を跨った政策メカニズムの対象部門数を適切に拡充し、中央部門の業務指導・監督の職責を強化する。

他方で、資金分配・使用中の地方の主体責任を徹底し、資金が末端・単位まで届くことを確保する。

(3)直接交付資金管理を強化する

①地方がプロジェクトの備蓄を強化し、プロジェクトの成熟度・執行可能性を高めるよう督促し、資金あるいはプロジェクトの頻繁な調整を回避する。

②効率優先の原則に基づき、支出の進度・評価方法を科学的に確定し、執行の進度を加速すると同時に、資金の使用効率向上に努力する。

③直接交付資金モニタリングシステムを整備し、直接交付資金について全プロセス・全チェーン・全方位のモニタリングを進める。

④会計検査等の部門と協同・協調し、力を合わせて直接交付資金の監督管理をしっかり実施し、直接交付資金の安全・規範的で効率の高い使用を確保する。

6.地方政府の債務
(1)地方政府の債務リスク

2020年末、地方政府債務残高は25.66兆元であり、全人代が批准した限度額28.81兆元内にあり、これに予算管理に組み入れた中央政府債務残高20.89兆元を加えると、全国政府債務残高の対GDP比は45.8%であり、国際的なコンセンサスの60%警戒ラインより低く、リスクは総体としてコントロール可能である。

今後、我々は「表口をしっかり開け、裏口を厳しく塞ぐ」という考え方に基づき、地方政府債務リスクの解消にしっかり取り組む。

一方で、法定債務管理を引き続き整備し、成長の安定とリスクの防止の必要性を併せ考慮し、新たに増やす債券の分配メカニズムを整備し、ハイリスク地域で新たに増やす債券の規模を厳しく抑制し、リスクの累積継続を回避する。「プロジェクトの進行を資金がフォローする」という原則を引き続き堅持し、債券の資金放置を回避し、使用の業績効果を高める。

他方で、潜在債務リスクを常に防止・解消する。隠れ債務の増大に断固歯止めをかけ、各種の隠れ債務を新たに増やす行為について、発見するごとに調査・処分し、問責する。既存の隠れ債務を適切に解消し、常態化したモニタリング・調査・監査のメカニズムを整備し、各種の潜在債務リスクを早期に発見し、早期に処理し、システミックリスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。

(2)地方債改革

政府債務管理制度は現代財政制度・税制の重要な内容である。第14次5カ年計画期間、我々は政府債務管理制度を一層健全化して、政府の債務資金調達の積極的役割を有効に発揮させるだけでなく、リスクを断固防止・解消し、財政の持続可能性を増強しなければならない。

①政府債務管理体制メカニズムを整備する。

財政政策によるカウンターシクリカルな調節と財政の持続可能性の必要性に基づき、政府債務の規模を合理的に確定する。

法に基づき「管理が規範的、責任が明確、オープン・透明、リスクがコントロール可能な」地方政府の起債による資金調達メカニズムを構築する。

地方政府の債務リスクの評価指標体系を整備し、リスク評価・事前警告・結果の応用を強化する。

②地方政府の債務リスクを防止・解消する。

常態化したモニタリングメカニズムを整備し、新たな隠れ債務を通じた新プロジェクト立上げ、大風呂敷を決して許さない。予算制約をハードにし、企業債務形式による隠れ債務の増加を厳禁する。金融機関は慎重・周到なルールに則った経営を行わなければならず、地方政府向けの規定に違反した融資提供を厳禁する。

地方融資プラットホーム会社を整理・規範化し、その政府資金調達機能を分離する。

市場化・法治化された健全なデフォルト処理メカニズムを整備し、政府の借入の終身問責メカニズムと遡及調査メカニズムを厳格に実施する。

③政府債券の発行管理メカニズムを整備する。

地方債の品目構造と期限構造を最適化する。政府債務の健全な情報公開メカニズムを整備し、市場化・法治化された資金調達の自律的な制約メカニズムの形成を促進する。

7.末端の「基本民生・給与・運営」保障

基本民生・給与・運営の保障問題について、我々は財政力保障・メカニズムの整備、督促・指導の3方面から総合的に措置を採用し、地方の基本民生・給与・運営の最低ライン保障を支援する。

(1)末端の基本民生・給与・運営保障に対する財政力保障を強化する

2020年度は、赤字増加・中央レベル支出の圧縮等の措置の採用を通じて、地方への移転支出を強化し、かつ特殊移転支出を特に設けて、地方財政資金として使用する留保割合を段階的に高め、地方財政の疫病の影響への対応を支援し、減収・支出増と基本民生・給与・運営の不足分を補填した。

21年度は、新たな財政力を増やすことに実際限界がある情況下、中央レベルは引き続き倹約を牽引し、自身の支出の圧縮・支出構造の調整・資金の捻出に力を入れることを通じて、地方財政の保障を増強し、中央の地方への移転支出は特殊移転支出を除いて7.8%増やす。うち、均衡性移転支出、県レベル財政力保障メカニズム奨励補助金、旧革命根拠地・民族地域・辺境地域移転支出の伸びを、いずれも10%以上とする。

(2)体制メカニズムを整備し、地方の基本民生・給与・運営保障能力を増強する

既に述べた地方への移転支出強化と同時に、資金分配を整備し、省レベルの財政力下方移転を誘導する。各地方が省以下の財政制度を整備し、県レベルの基本民生・給与・運営保障への投入を強化し、省内の縦横への財政力分配の枠組を最適化するよう督促する。

財政資金直接交付メカニズムの確立を推進し、新たに増えた財政資金を直接市・県の末端に交付し、直接企業に恩恵を与え、国民を利することを確保する。同時に、地方が健全な事前査定、実施中のモニタリング、事後の処置のメカニズムを確立し、基本民生・給与・運営保障の予算管理を強化し、ハイリスクの県・区に重点的に関心を払い、問題を発見しだい解決するよう指導する。

(3)基本民生・給与・運営保障への督促・指導を引き続き強化する

地方の基本民生・給与・運営保障の主体責任を徹底し、基本民生・給与・運営保障支出を財政支出の中で優先順位とすることを堅持し、予算計上と国庫金支払等の方面で基本民生・給与・運営保障支出を優先的に保障し、基本民生・給与・運営保障の洗い出しと監督管理・モニタリング全面的に展開する。

地方各レベル財政も措置を採用し、収入増加・支出節約を大いに推進し、一般性支出を圧縮し、疫病がかなり重く財政が困難な市・県への移転支出と資金調整を強化し、財政力を集中して疫病防御と基本民生・給与・運営保障等の重点支出を優先的に保障する。

今後、我々は地方財政の運営のモニタリングを一層強化し、地方の基本民生・給与・運営保障支出予算の計上・執行に重点的に関心を払い、直接交付資金の使用、債券の元本償還・利払、国庫管理等の方面で、制度建設を不断に強化し、政策評価・予算査定・考課評価等の措置を整備し、地方が各レベルで責任をしっかり履行するよう督促し、資金保障を直ちに全額実施し、運営のモニタリング・データ分析を強化し、リスクを有効に防止して、基本民生・給与・運営の最低ラインをしっかり保障する。

8.共同富裕の推進

党19期5中全会は、2035年までに人民全体の共同富裕が更に顕著な実質的進展を得ることを提起し、第14次5カ年計画要綱も共同富裕が堅実な歩みを踏み出すことを提起している。

財政部は党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹実施し、目標志向・問題志向・結果志向を堅持し、財政機能の役割を十分発揮し、更に積極的に成果を上げて、共同富裕を着実に推進する。第14次5カ年計画期間は、重点的に以下の3方面で力を発揮する。

(1)質の高い発展を大いに支援し、経済のパイを大きくする

財政資源の配分、財政政策の実施、財政制度の改革により、質の高い発展をサポートし、新たな発展の枠組の構築の中で考慮・計画する。

①内需拡大戦略の実施を支援する

財政・租税政策による支援・誘導を強化し、中央のインフラ投資・地方債資金をうまく用いて、投資構造を最適化し、農業・農村、生態環境保護、物資備蓄、防災・減災、民生保障等の分野の不足補充に重点的に用いる。 低所得層の所得向上・中等所得層の拡大に力を入れ、農村流通の不足を補充し、個人消費の拡大を促進する。

②農村振興の全面推進を支援する

農村振興を財政支援する政策体系・体制メカニズムの構築・整備に力を入れ、工業・農業が互いに助け合い、都市・農村が相互補完し、協調発展・共同繁栄する、新しいタイプの工業・農業と都市・農村関係の形成を推進し、農業・農村の現代化を加速する。

③地域の協調発展戦略を実施し、移転支出制度を整備する

未発達地域への財政支援を増やし、基本公共サービスの均等化を段階的に実現し、発達地域と未発達地域、東部・中部・西部・東北地域の共同発展を更に好く促進する。

④イノベーション駆動による発展戦略を支援する

科学技術の自立自強の加速を大いに支援し、科学技術への投入構造・支援方向を一層最適化し、国家イノベーション体系の整備を推進し、発展の新たな優位性を全面的に築き上げる。

(2)所得分配政策を改革・整備し、経済のパイをうまく分ける

①市場を基礎とした第一次分配制度の整備を推進し、機会の均等を促進する。

雇用優先政策の強化と質の高い教育体系の建設を支援し、各種生産要素が分配に参加する健全なメカニズムの整備を推進し、第一次分配における労働報酬のウエイトを高め、資本市場を通じて発展の成果をシェアするルートを豊富にする。

②政府の再分配調節機能をしっかり履行し、所得分配格差を縮小し、税制・社会保障・移転支出等による調整の程度を強め、精確性を高める。

税制構造を最適化し、直接税のウエイトを適切に高め、都市・農村、地域、異なる集団の間の分配関係を合理的に調節する。

多層レベルの健全な社会保障システムを整備し、安定した公共衛生事業投入メカニズムを確立し、社会のセーフティーネットを綿密に編み上げる。

③慈善等第三次分配の役割を発揮することを支援する

高齢者介護、孤児救済、病人救助、障害者支援、貧困支援、困窮者救済、戦没者・傷痍軍人・軍人の家族の優遇等の方面における慈善組織の役割を好く発揮させ、所得と富の分配の枠組を改善する。

(3)所得分配秩序を一層規範化し、公正・合理的な所得分配の枠組形成を推進する

所得分配を規範化し、秩序立てることは、共同富裕の本質的要求である。 財政は、健全な国有資本収益のシェアメカニズムの整備を支援し、国有資本収益を公共財政に上納する制度を整備する。

個人の所得・資産情報システムを確立・整備し、健全で現代的な支払・所得モニタリングシステムの整備を支援し、法に基づき合法所得の保護を推進し、高すぎる所得を合理的に調節し、違法所得を取り締まり、独占・不当競争行為による所得獲得に歯止めをかけ、所得分配秩序の規範化のために公平・オープン・公正で良好な社会環境を作り上げる。