新型肺炎とマクロ政策(62)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2021年2月25日


はじめに

本稿では、1月中旬から春節直後までの国務院常務会議のうち、疫病防御・マクロ政策に関わる決定内容の概要を紹介する。

1月15日
(1)元旦・春節期間における疫病・災害の影響を受けた困窮大衆・最低生活保障対象者の生活保障強化

党中央・国務院の手配に基づき、各地方・関係部門は、疫病防御と民生の最低ライン保障措置を真剣に実施し、被災者の生活救済をしっかり行い、最低生活保障対象者のために生活・物価補助給付を増やし、困窮大衆の基本生活保障にとって重要な役割を発揮した。

春節が近づき、救済保障が必要な困窮大衆への支援を一層精確にしっかり行う。

①市場需給の充足と価格の安定を維持する。

社会救済と保障基準を物価上昇とリンクさせる連動メカニズムをしっかり始動し、適時最低生活保障対象者に関連補助を支給し、基本生活をしっかり保障する。

②既に貧困から脱した人口と僻地人口のモニタリング・洗い出しを強化し、社会救済保障すべき者に漏れがないことを確保する。

③各地方・関係部門が、現地に残る農民労働者、学校に残る学生等の生活について、関連手配をしっかり行い、農村留守児童・老人に配慮したサービスを強化するよう督促する。

④徹底的に洗い出す。

孤児、障害者、精神病患者等特殊困窮層の生活困難解決を支援し、一時的な生活困窮大衆に的確な支援を与える。

⑤洪水・冠水災害の被災者とりわけ大衆の基本生活安定をしっかり保障しなければならない。

⑥民生支援・民生保障を軸に、中央財政が前倒しで交付した1000億元の救済補助金をうまく用いて、監督管理を強化し、流用を防止する。

地方政府の責任を徹底し、基本民生保障資金を十分交付し、資金を直接到達させるという要求に基づき、適時十分な額を、支援・救済が必要な大衆の手中に届けなければならない。

現在、一部地域で局部的に集中した疫病により管理・コントロールが強化されていることに対して、疫病防御と大衆の基本生活保障を同歩調で推進し、コメ・麺・食用油、肉・卵・牛乳等の生活物資の市場供給保障をしっかり行い、大衆が安心して年越しをするようにしなければならない。

(2)薬品の集中調達

健康は、人民大衆の切実な大事である。医療費が高い問題を段階的に解決するため、近年国家は薬品集中大量調達・使用重大改革を推進しており、20年末すでに3回集中調達を展開し、カバーされた薬品は平均54%価格が値下がりした。

毎年費用節約は530憶元余りであり、恩恵は億万の患者に及んでいる。最近、さらに第4回集中調達を展開し、かつ高額医療用消耗品の集中調達範囲を拡大した。今後薬品集中調達の常態化・制度化を推進する。

1月20日

企業に係るみだりな費用徴収の断固禁止

広範な市場主体は、社会主義市場経済のパワーの源泉であり、直接億万の大衆の利益に関わるものである。市場主体とりわけ中小・零細企業への支援・サービスを軸に、彼らの難題解決を助ける多くの施策を打ち出し、不合理な負担を軽減し、市場主体の活力を更に大きく奮い立たせなければならない。

近年、各地方・関係部門は、党中央・国務院の手配を実施し、企業に係る費用徴収の整理に力を入れ、中央が設けた行政事業性費用徴収は70%以上、政府基金は30%以上減少し、各地方も多くの費用徴収項目を取り消した。とりわけ、20年に打ち出した減税・費用引下げ、段階的社会保険料減免等の政策は、市場主体をしっかり保障し、経済基盤をしっかり安定させることにとって、カギとなる役割を発揮した。

現在、疫病と経済情勢は複雑であり、市場主体はなお少なからぬ困難に直面しており、表象と根本問題を解決し、引き続きみだりな費用徴収を取り締まり、企業の負担を軽減し、経済の安定・回復の基礎を強固にしなければならない。

①全国で、企業に係る規定に違反した費用徴収への特別検査を展開する

ほしいままに費用徴収項目を設け、徴収基準を引き上げ、徴収範囲を拡大し、むやみに割り当てる等の問題を厳格に取り締まり、企業の不満が強烈で、社会への影響が劣悪な、みだりに費用を徴収する行為を厳格に調査・処分して、白日のもとに曝す。

業種協会・組合の集金について、自主サンプル点検を全面展開する。

②交通・税務・応急等の分野の法執行を規範化する

裁量基準を科学的に制定し、軽微な交通違反・一般交通違反の初犯・偶発犯等に対して、更に多くの警告方式を採用し、罰金は慎重に用いるか不適用とし、税務法執行分野で「初めての違反は罰せず」のリスト制度を検討し普及する。

罰金・没収の管理制度を整備・実施し、罰金・没収収入全部を国庫に上納し、「収入・支出の2本立て」管理を実行する。

③重点分野の費用徴収を引き続き整理・規範化する

新たに企業から費用を徴収する政府基金を設ける場合は、法定手続を厳格に遵守し、期限が到来した基金で取消ができるものはすべて取り消し、すぐに取消が難しいものも徴収基準を引き下げなければならない。

行政事業性費用徴収項目の管理を強化し、費用徴収基準が明らかに高めのものについては、基準引下げ措置を採用し、一般的な管理機能を体現する費用徴収項目を取り消さなければならない。

④海運・通関港の費用徴収の監督管理を強化する

通関・物流・保管・荷役等の段階で、強制的なサービス手数料徴収と非正規料金明示等の規程違反行為を、法に基づき調査・処分する。

⑤価格違法行為の行政処罰等の方面の法規を早急に改正する

不合理な行政処罰事項を適時改正あるいは廃止し、制度から企業に係るみだりな費用徴収を防止する。

税費用を法定し正常に徴収することをしっかり実施し、歴史的な費用未徴収を独自に集中徴収してはならず、社会保険料の徴収職責の移管によって、企業とりわけ中小・零細企業の保険料徴収負担を増やしてはならない。

2021年、すべての省は社会保険料の現行徴収方式の不変を維持しなければならない。「行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化」改革を深化させ、社会保険料徴収業務の手続を最適化し、「非接触式」サービスの範囲を拡大し、7月末までに企業の社会保険料徴収の基本オンライン処理を実現し、年末までに個人社会保険料徴収の基本スマホ処理を実現する。

措置を刷新し、高齢者・重度障碍者等の特殊層の保険料徴収を円滑・スピーディにする。社会保険料徴収情況のモニタリング・分析を強化し、問題を発見しだい処理する。監督検査を強化し、規定に違反した行為について規定・紀律に基づき厳格に問責する。

2月3日

中小・零細企業の退出関連政策の整備

企業の優勝劣敗は市場経済の正常な現象である。

破産すべき企業とりわけ中小・零細企業の退出関連政策の整備を加速し、退出難の問題を解決することは、(生産)要素配分とビジネス環境を最適化するための重要措置である。

①中小・零細企業の簡易な登録抹消制度を整備しなければならない

中小・零細企業の開業を便利にすると同時に、退出もスピーディにし、市場主体の構造の改善を促進し、市場主体の活躍度を高めなければならない。

②企業の破産・退出状態の公示制度を確立しなければならない

企業の破産・退出関連情報を開示・照会可能な企業信用情報に組み入れ、信用メカニズムを整備し、公平な競争を促進しなければならない。

③破産手続を法に基づき規範的に推進しなければならない

管理人制度を整備し、管理人の法に基づく職責履行を強化し、債権者委員会・債券所有者会議等の協調・協議の役割を発揮させ、法に基づき従業員・債権者・投資家等の権益を保護し、企業の破産あるいは退出における悪意の債務逃れ・踏み倒し行為を法に基づき取り締まらなければならない。

2月18日

2020年全人代・全国政協建議・提案の処理情況

(1)2020年の処理情況

国務院各部門は、疫病の影響等多重の困難を克服し、処理メカニズムを刷新・整備して、全人代代表の建議約8108件(建議・提案総数の86.3%)、全国政協委員の提案4115件(同84.9%)の処理を共に牽引した。

建議・提案の処理を通じて、各部門は共に代表・委員の意見・建議約3700件を採用し、関連政策措置約1500項目を打ち出した。

(2)2021年の対応

2021年の全人代・全国政協(全国両会)はまもなくであり、党19期5中全会精神と中央経済工作会議の手配の貫徹を軸に、代表・委員の意見・建議の聴取、建議・提案の処理を政府活動の重要内容とし、政府の政策決定・政策措置の実施の中に融け込ませ、社会主義現代化国家全面建設の良好なスタート・好い歩み出しを確保しなければならない。

①全国両会期間の意見・建議聴取関連活動を真にしっかり行う

各部門責任者は参加・列席・傍聴の際、代表・委員の意見・建議を真剣に聴取しなければならない。各部門は、インターネット・ホットライン・オンラインビデオ等の多様な方式を積極的に拡大し、代表・委員の障碍のない交流を展開しなければならない。

②党中央・国務院の政策決定・手配の貫徹を軸に、建議・提案の処理を各業務・活動と緊密に結びつける

代表・委員の意見・建議について真剣に検討し、あるものは政府活動報告と第14次5カ年計画要綱改正の中に吸収し、あるものは今後の関連活動と政策備蓄の中で充実させ、代表・委員の確かな知見を吸収して、政府活動の実際の施策・ハードな施策に転化しなければならない。

③建議・提案の処理の質を一層高める

重点活動の検討、特別課題調査研究の展開の際には、関連代表・委員の参加を主動的に要請し、処理と結びつけて重点・難点問題の解決を推進する。

代表性が強く、注目度が高い建議・提案については、パワーを集中して検討・処理し、重点をブレークスルーしなければならない。

建議・提案のうち、しばしば提案されながら解決が難しい際立った問題については、特別活動方案を制定し、集中的に堅塁を攻略しなければならない。

処理の難度が大きく、地方に係る建議・提案については、部門と代表・委員、地方の連携メカニズムを確立し、共同で処理を推進しなければならない。

④責任を徹底させ、台帳処理を確立し、時限を明確にし、適時処理を終える

処理プロセスにおいて、主動的に代表・委員に活動の進展を紹介し、適時回答の内容をフィードバック・説明しなければならない。

⑤国務院弁公庁は、処理の統一協調と監督指導を強化しなければならない

各部門は、実行して有効だった経験・方法を真剣に総括し、処理の制度化・規範化を推進しなければならない。

建議・提案処理に関連した情報公開を一層しっかり実施し、代表・委員と社会の監督を受けさせる。