中央党校における習近平総書記重要講話

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2021年2月5日


はじめに

習近平総書記は、1月11日、中央党校の「省レベル主要指導幹部党19期5中全会精貫徹専門課題検討班」開業式において、重要講話を行った。開業式には政治局常務委員、王岐山国家副主席、党中央政治局委員、国務委員、全人代常務副委員長、最高人民法院院長、最高人民検察院検察長、全国政協党員副主席、中央軍事委員、民主党派中央責任者、全国工商聯責任者等が出席し、李克強総理が挨拶を行うなど、物々しいものであり、この重要講話を全幹部に徹底させる狙いがあったものと思われる。本稿では、重要講話の概要を紹介する。

新たな発展段階に入り、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築することは、わが国経済社会発展の理論的ロジック・歴史的ロジック・現実的ロジックにより決定したものである。新たな発展段階に入ったことは、わが国発展の歴史的方向性を明確にし、新発展理念を貫徹することは、わが国現代化建設の指導原則を明確にし、新たな発展の枠組を構築することは、わが国経済現代化の路線選択を明確にした。

党19期5中全会精神を深く学習し、断固貫徹し、新たな発展段階を正確に把握し、新発展理念を深く貫徹し、新たな発展の枠組を早急に構築し、第14次5カ年計画期間の質の高い発展を推進して、社会主義現代化国家の全面建設の好いスタート・好い歩み出しを確保しなければならない。

党・人民の事業の歴史的方向性・発展段階を正確に認識することは、わが党が現段階の中心任務を明確にし、路線・方針・政策を制定する根本的拠り所であり、わが党が革命・建設・改革を指導し不断に勝利を得てきた重要な経験でもある。

党19期5中全会は、小康社会の全面実現、第一の百年奮闘目標実現後、我々は勢いに乗じて社会主義現代化国家を全面建設する新たな征途を開き、第二の百年奮闘目標に向けて進軍しなければならないと提起した。これは、わが国が1つの新たな発展段階に入ったことを示している。

このような戦略判断を行うには、深刻な拠り所がある。新たな発展段階は、社会主義初級段階における1つの段階であると同時に、その中で数十年の累積を経て、新たな起点に立ったという1つの段階でもある。新たな発展段階は、わが党が人民を率いて立ち上がり、豊かになってから、強くなるに至る歴史的飛躍の新たな段階である。

新中国成立以来、とりわけ改革開放40年余りの弛まぬ奮闘を経て、我々は既に新たな征途を開き、新たにより高い目標を実現するための豊かな物質的基礎がある。新中国が成立してまもなく、わが党は社会主義現代化国家建設の目標を提起しており、将来30年は、我々がこの歴史的に壮大な願望を完成させる新たな発展段階である。

新たな発展段階は、わが国社会主義発展プロセスにおける1つの重要な段階である。

社会主義初級段階は、「1つの静態、一旦成ったら変わらず、停滞して前に進まない」段階ではなく、「自然発生的、受動的、多大な気力を費やすことなく自然に越えることができる」段階でもなく、1つの「動態的、積極的に成果を出し、常に勢い盛んな生気・活力に満ち溢れた」プロセスであり、1つの「段階的に前進し、不断に発展・進歩し、質的・飛躍的・量的な累積と発展・変化に日増しに接近する」プロセスである。

社会主義現代化国家の全面建設、社会主義現代化の基本的実現は、社会主義初級段階のわが国の発展ための要求であるだけでなく、わが国の社会主義が初級段階から更に高い段階に邁進するための要求でもある。

現在、世界は百年未曾有の大変局を経ているが、時勢は我々の側にある。これが我々の一定の力と気概の源であり、我々の決意と自身の源でもある。

同時に、現在及び今後一時期、わが国の発展は依然として重要な戦略的チャンスの時期にあるが、チャンスと試練はいずれも新たに発展・変化し、チャンスと試練の大きさは未曾有のもので、総体としてはチャンスが試練よりも大きいことをはっきり見て取らねばならない。

全党は、引き続き謙虚・謹慎の構えで刻苦奮闘し、すべての動員できる積極要因を動員し、すべての団結可能なパワーを団結させ、全力で自身の事柄にしっかり取り組み、我々の既定目標を根気よく実現しなければならない。

わが党が人民を指導し治国執政を行う際に、重要な一方面は、どのような発展を実現し、発展という重大問題をどのように実現するかを、しっかり回答しなければならないということである。

理念は行動の先導であり、一定の発展の実践は、一定の発展理念によりリードされる。発展理念が正しいかどうかが、根本的に発展の成果ないし成否を決定づける。18回党大会以降、わが党は経済情勢について科学的判断を進め、経済社会発展について多くの重大理論・理念を提起し、発展理念・考え方について適時調整を行ってきた。

そのうち、新発展理念は最重要であり、最も主要なものであり、わが国の経済発展を誘導し歴史的成果を得させ、歴史的変革を発生させた。新発展理念は、系統的な理論体系であり、発展の目的・動力・方式・道筋等に関する一連の理論・実践問題に回答し、わが党の発展に関する政治立場・価値方向1・発展モデル・発展の道等の重大政治問題を説明した。

全党は、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹しなければならない。

(1)根本宗旨から新発展理念を把握する

人民は、わが党の執政の最も厚みのある基礎・最大の気概である。人民のために幸福を謀り、民族のために復興を謀ることは、わが党が現代化建設を指導する出発点・帰着点であり、新発展理念の「根」「魂」である。人民を中心とする発展思想を堅持し、「発展は人民のために、発展は人民に依拠し、発展の成果は人民が共に享受する」を堅持してこそ、正確な発展観・現代化観をもつことができる。

共同富裕の実現は、経済問題のみならず、党の執政の基礎に関わる重大政治問題である。必要性と可能性を統一して考慮し、経済社会発展のルールに基づいて秩序立てて漸進し、地域格差、都市・農村格差、所得格差等の問題を自覚的・主動的に解決し、人民大衆の獲得感・幸福感・安全観を不断に増強しなければならない。

(2)問題志向から新発展理念を把握する

わが国の発展は、既に新たな歴史の起点の上に立っており、新たな発展段階の新要求に基づき、問題志向を堅持し、新発展理念を更に精確に貫徹しなければならない。措置は更に精確・実務的で、発展がアンバランス・不十分という問題を確実にしっかり解決し、質の高い発展を真に実現しなければならない。

(3)憂患意識から新発展理念を把握する

わが国社会の主要矛盾の変化と国際パワーバランスの深刻な調整に伴い、憂患意識を増強し、(最悪事態を想定して)最低ラインを守る思考を堅持し、更に複雑・困難な局面への対応を随時準備しなければならない。

政治の安全・人民の安全・国家の利益至上を有機的に統一することを堅持し、大胆に闘争するだけでなく、上手に闘争し、自己を全面的に強化しなければならない。

国内大循環を主体とし、国内・国際2つの循環が相互促進する新たな発展の枠組を早急に構築することは、第14次5カ年計画「建議」が提起した、わが国の発展の全局に関わる重大戦略任務であり、全局の高みから正確に把握し、積極的に推進する必要がある。

自身に立脚し、国内大循環を円滑にしてこそ、国際的な風雲・変幻に左右されず、常に活気に満ち溢れて生存・発展することができる。各種の予見できる・予見し難い狂風・暴雨、逆巻く大波の中で、我々の生存力・競争力・発展力・持続力を増強しなければならない。

新たな発展の枠組を構築するカギは、経済循環が円滑なことにある。サプライサイド構造改革の深化という主線を堅持し、「過剰生産能力削減・過剰在庫削減・脱レバレッジ・コスト引下げ・脆弱部分の補強」の重要任務を引き続き達成し、産業構造を全面的に最適化・グレードアップし、イノベーション能力・競争力・総合実力を高め、供給システムの強靭性を高め、更に効率の高く、更に質の高い投入産出関係を形成し、経済のハイレベルでの動態バランスを実現しなければならない。

新たな発展の枠組を構築する最も本質的特徴は、ハイレベルの自立・自強を実現することであり、自主イノベーションを更に強調し、科学技術イノベーションについての手配を全面強化し、優位性のある資源を集合し、イノベーションの難関攻略を「公募により名乗りを挙げた実力のある市場主体・研究機関・大学にやらせる」体制メカニズムを有力に秩序立てて推進し、イノベーションチェーン・産業チェーンのリンクを強化しなければならない。

内需の喚起・拡大に有効な制度を確立し、内需の潜在力を発揮させ、完全な内需体系を早急に育成し、需要サイドの管理を強化し、個人消費を拡大し、消費のレベルを高めて、超大規模な国内市場の建設を持続可能な歴史プロセスにしなければならない。

新たな発展の枠組を構築し、ハイレベルの対外開放を実行するには、強大な国内経済循環システムと堅固な基盤を備えなければならない。国際協力・競争にわが国が参加する新たな優位性を築き上げ、国際循環により国内大循環の効率・水準を高めることを重視し、わが国の生産要素の質・配分水準を改善し、わが国の産業の転換・グレードアップを推進しなければならない。

社会主義現代化建設に対する党の全面指導を強化しなければならない。

党19期5中全会精神の貫徹実施を、党19期4中全会精神の貫徹実施と緊密に結びつけ、国家ガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化を不断に推進し、社会主義現代化建設に対する党の指導推進を、職能配分上、更に科学的・合理的にし、体制メカニズム上、更に完備され完全なものとし、運営管理上、更に効率の高いものにしなければならない。

党19期5中全会で承認された第14次5カ年計画「建議」について、各レベル指導幹部とりわけ高級幹部は原本をしっかり学習し、逐条・逐段落的に理解し、全体を把握した前提の下、重点・革新ポイントを際立てて理解し、理論を実際と連係させる優良な学風を発揚し、現在に立脚し、長期に着眼して、政策の積極性・主動性・創造性を増強しなければならない。

各レベル指導幹部とりわけ高級幹部は、中華民族の偉大な復興戦略の全局と世界の百年未曾有の大変局に立脚し、心中で「国の大事」を思い、政治判断力・政治理解力・政治執行力を不断に高め、「新たな発展段階を把握し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築する」政治能力・戦略的眼光・専門水準を不断に高め、大胆に責任を担い、善く結果を出し、党中央の政策決定・手配をしっかり貫徹実施しなければならない。

  1. value orientation、善悪判断の原則(中国通信)。