経済諸会議の動向(4)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2021年1月29日


はじめに

2020年12月28~29日、中央農村工作会議が開催され、「農村振興の全面推進と農村現代化加速に関する国務院意見」が討議された。李克強総理が会議を主催し、党政治局常務委員全員が出席し、習近平総書記が重要講話を行った。本稿では、習近平総書記の重要講話等の概要を紹介する1

1.習近平総書記の重要講話

第2の百年奮闘目標に邁進する歴史の通過点にあって、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大し、農村振興を全面推進し、農業・農村の現代化を加速することは、全党が高度に重視する必要のある大局に関わる重大問題である。

全党は、新発展段階において「三農」政策をしっかり行うことの重要性・緊迫性を十分認識し、「三農」問題をしっかり解決することを、全党活動の重点中の重点とすることを堅持し、全党・全社会の力を挙げて農村振興を推進し、農業の質・効率を高め、農村を暮らしやすく働きやすくし、農民を十分に豊かにすることを促進しなければならない。

わが党は成立以後、中国革命の基本問題は農民問題であることを十分認識し、広範な農民のために幸福を謀ることを重要使命としてきた。改革開放以降、わが党は農民が率先して改革の大幕を開けるよう指導し、農村社会の生産力を不断に解放・発展させ、農村の全面進歩を推進した。

18回党大会以降、党中央は「三農」問題をしっかり解決することを、全党活動の重点中の重点とすることを堅持し、脱貧困堅塁攻略を小康社会全面建設のシンボル的なプロジェクトとし、人類歴史上規模が空前、程度が最大、恩恵が及ぶ人口が最多の脱貧困堅塁攻略戦を組織的に推進し、農村振興戦略の実施を始動し、農業・農村が歴史的成績を得て、歴史的変革が発生することを推進した。

農業の総合生産能力は大きな段階に上り、農民所得は2010年の2倍に増え、農村の民生は顕著に改善され、農村の容貌は一新された。貧困地域では驚天動地の変化が発生し、中華民族を数千年苦しめた絶対貧困問題の解決は歴史的成果を得て、小康社会の全面建設のために重大な貢献を行い、社会主義現代化国家を全面建設する新たな征途を開くために、堅実な基礎を打ち固めた。

中華民族の偉大な復興戦略の全局から見れば、民族が復興するには農村を振興しなければならない。世界の百年未曾有の大変局から見れば、農業の基盤をしっかり安定させ、「三農」の基礎をしっかり守ることは、変局に対応し、新たな局面を開くバラストである。新たな発展の枠組を構築し、戦略的基点を内需拡大に置く上で、農村は巨大な空間があり、大いになすべき事がある。

農は国の根本であり、根本が堅固であれば国は安泰であることを、歴史と現実は我々に物語っている。我々は、大きな歴史観を用いて農業・農村・農民問題に対応し、「三農」問題を深刻に理解しさえすれば、わが党・わが国・わが民族を更に好く理解できる。

社会主義現代化国家を全面建設し、中華民族の偉大な復興を実現するために、最も困難で最も繁雑で荷が重い任務は、依然として農村にあり、最も広範で最も深く厚みのある基礎は、依然として農村にあることを見て取らねばならない。

脱貧困堅塁攻略の勝利の後は、農村振興を全面的に推進しなければならない。これは、「三農」政策の重心の歴史的な移動である。脱貧困堅塁攻略の成果を断固しっかり守り、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大することを農村振興と有効にリンクさせ、政策に隙間・空白があってはならない。

貧困への逆戻りを防止する健全な動態のモニタリング・支援メカニズムを整備し、貧困に戻りやすく、貧困に陥りやすい人口について、常態化したモニタリングを実施し、所得水準の変化と「衣食に憂いがなく、義務教育・基本医療・住宅の安全が保障される」ことの確かさの状況を重点的にモニタリングし、引き続き精確な施策を実施する。

脱貧困地域への産業支援を継続し、技術・施設・販売等の不足を補い、産業のグレードアップを促進しなければならない。脱貧困のための居住地移転の後続支援を強化し、多くのルートで雇用を促進し、付帯インフラと公共サービスを強化し、社会管理をしっかり行い、移転者の安住・雇用・段階的な富裕化を確保しなければならない。

党中央は、脱貧困堅塁攻略の目標・任務の達成後、脱貧困県について、脱貧困の日から5年の過渡期を設けることを決定した。過渡期内は、主要な支援政策の総体としての安定を維持しなければならない。現行の支援政策は項目ごとに分類して最適に調整し、調整のテンポ・程度・時限を合理的に把握し、資源を集中した脱貧困堅塁攻略支援から、農振振興の全面推進への平穏な移行を段階的に実現する。

食糧安全の主動権をしっかり把握し、食糧生産に毎年しっかり取り組まなければならない。18億ムー(12億ha)の耕地レッドラインを厳しく死守し、「長い歯」の強硬な措置を採用し、最も厳格な耕地保護制度を実施しなければならない。ハイレベルの農地・水田を建設し、旱魃・冠水期の収穫維持、高いレベルで安定した生産を真に実現しなければならない。黒土の保護を大事として取り組み、黒土をうまく用い養わなければならない。

農業の科学技術の自立・自強を堅持し、農業のカギ・コアとなる技術の難関攻略を早急に推進しなければならない。農民の穀物作付への積極性を動員し、穀物を作付けする農民への補助を安定させ強化し、収穫・備蓄のコントロール能力を高め、最低購入価格政策を堅持・整備して、コスト・収入を完全に保証する範囲を拡大しなければならない。

地方の各レベル党委員会と政府は、食糧安全の政治責任を担い、党・政府の問責を実行し、主食供給確保に省長は責任を負わなければならず、書記も責任を負わなければならない。農業サプライサイド構造改革を深く推進し、優れた品種の栽培・品質の向上・ブランドの創造・標準化生産を推進しなければならない。引き続き豚の生産回復にしっかり取り組み、産業の安定・発展を促進しなければならない。企業の海外進出を支援しなければならない。飲食の浪費を断固手を緩めずにやめさせなければならない。

農村振興を全面実施する深さ・広さ・難しさは、いずれも脱貧困堅塁攻略以上であり、トップダウン設計を強化し、更に有力な措置・更に強大なパワーの凝集により推進しなければならない。

①農村産業の発展を加速しなければならない

産業の発展ルールに順応し、現地の特色・資源に立脚し、農村産業の壮大な発展を推進し、産業立地を最適化し、利益の連結メカニズムを整備し、農民に更に多くの産業の付加価値・収益をシェアさせなければならない。

②社会主義精神文明建設を強化しなければならない

農村の思想道徳建設を強化し、社会主義核心価値観を発揚・実践し、科学知識を普及させ、農村の古い風俗習慣を改め、文明的な農村の気風、良好な家庭の気風、純朴な村民の気風の形成を推進しなければならない。

③農村の生態文明建設を強化しなければならない

戦略的な一定の力を維持し、農業の面源汚染対策を地道に推進し、土壌汚染・地下水の過剰な汲み上げ・水土流失等の対策・修復を強化しなければならない。

④農村改革を深化させなければならない

農村の重点分野・カギとなる部分の改革を早急に推進し、農村の資源要素の活力を奮い立たせ、農業への支援・保護制度を整備し、末端と大衆の創造を尊重し、改革が不断に新たなブレークスルーを得るよう推進しなければならない。

⑤農村建設行動を実施しなければならない

公共インフラ建設の重点を農村に置き、都市・農村基本公共サービスの均等化推進で引き続き力を発揮し、包摂的・底固め的・基礎的民生建設の強化を重視しなければならない。

農村の居住環境の対策・向上行動を引き続き推進し、トイレ改造と汚水・ゴミ処理に重点的にしっかり取り組まなければならない。

村落の配置・分類を合理的に確定し、伝統的な村落の特色・風貌の保護を重視し、分類した指導を強化しなければならない。

⑥都市・農村の融合発展の実効が現れるよう推進しなければならない

都市・農村の融合発展の健全な体制メカニズムを整備し、農業からの移転人口の市民化を促進しなければならない。

県域を都市・農村融合発展の重要な切り込み口とし、県レベルに更に多くの資源の整合的な使用の自主権を賦与し、県域の総合サービス能力を強化しなければならない。

⑦農村ガバナンスを強化・改善しなければならない

組織が指導する農村ガバナンスシステムの構築を加速し、平安な農村建設を深く推進し、農村ガバナンス方式を刷新し、農村への上手なガバナンス水準を高めなければならない。

「三農」政策に対する党の全面指導を強化しなければならない。各レベル党委員会は政治責任を担い、農業・農村の優先発展の方針を実施し、農村振興を更に強力に推進しなければならない。

県党委員会書記は、主要な精力を「三農」政策に放ち、農村振興の一線総指揮をしっかり担当しなければならない。郷鎮の指導グループ、村の2つの委員会(党委員会・村民自治委員会)の構成員、とりわけ村の党支部書記は、優秀な者を選び、強力な者を配さなければならない。末端への取組み・基礎の強化・基本固めという政策方向を際立たせ、各種資源の末端への下降を推進し、末端の事業・創業のために更に好い条件を創造しなければならない。

政治的に筋金入り、技能が筋金入り、作風が筋金入りの農村振興幹部陣を作り上げ、優秀な幹部を選抜して農村振興の一線ポストに派遣し、農村振興を幹部育成・鍛錬の広大な舞台としなければならない。各種人材を吸収して農村振興で功業を立てさせ、広範な農民大衆の積極性・主動性・創造性を奮い立たせなければならない。

2.李克強総理の講話

習近平総書記の重要講話は、18回党大会以降、わが国の農業・農村発展が得た歴史的成果、発生した歴史的変革を全面的に総括し、社会主義現代化国家の全面建設の全局から出発し、農村振興の全面推進、農業・農村の現代化加速の重大意義・指導思想・総体要求を深刻に説明し、新発展段階において「三農」政策をしっかり行うための一連の重大理論・実践問題に科学的に回答したものである。

これは、一層の思想統一・パワーの凝集、新時代の「三農」政策をしっかり行うことにとって、十分重要な指導的意義がある。真剣に学習・理解し、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、政策の実際と結びつけて、農業・農村の優先発展を軸に、農村振興を全面推進し、農業・農村の現代化を加速し、2021年及び第14次5カ年計画期間の「三農」政策をしっかり行い、党中央の政策決定・手配をしっかり貫徹実施しなければならない。

3.胡春華副総理の講話

習近平総書記の重要講話は、新発展段階の「三農」政策をしっかり行うための行動綱領・根本的な拠り所である。習近平総書記の重要講話精神を深く学習して貫徹実施し、農村振興の全面推進の計画にしっかり取り組み、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大することを、農村振興としっかりと有効にリンクさせ、食糧と重要農業副産品の生産・供給にしっかり取り組み、農村産業の発展を加速し、現代農業の発展の基礎・支えを打ち固め、作付け業の立て直しに断固しっかり取り組み、農村建設行動を全面始動し、県域内の都市・農村の融合発展を推進し、農村ガバナンスを強化・改善し、組織的指導を強化し、第14次5カ年計画の良好なスタートの実現を確保しなければならない。

  1. 2019年は胡春華副総理が講話を行ったが、今回は習近平総書記の重要講話という従来の形に戻った。