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2020年中央経済工作会議のポイント

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年12月24日


はじめに

2020年12月16~18日、21年の経済政策の基本方針を決める中国経済工作会議が、党中央・国務院共催で開催された。習近平総書記が重要講話を行い、2020年の経済政策を総括し、当面の経済情勢を分析し、21年の経済政策を手配した。李克強総理が講話において、21年の経済政策について具体的手配を行い、総括講話を行った。

本稿では、会議の概要と留意点を解説する。なお、注目すべき部分は下線で示している。

1.2020年・第13次5カ年計画の総括
(1)2020年の総括

2020年は、中国の歴史上極めて平凡ならざる1年であった。

峻厳・複雑な国際情勢、非常に困難・繁雑で荷が重い国内の改革・発展・安定の任務とりわけ新型コロナ肺炎疫病の深刻な衝撃に対して、我々は戦略的に一定の力を維持し、正確に情勢を判断し、果断に行動を採用し、非常に困難な努力を払って、人民が満足し世界が注目し、歴史に残る答案を提出した。

わが国は世界で唯一経済のプラス成長を実現した経済体であり、3大堅塁攻略戦で決定的成果を得て、科学技術・イノベーションは重大な進展を得て、改革開放は重要なブレークスルーを実現し、民生は有力な保障を得た。この成績は容易なものではなく、艱難険阻を経たものであり、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の結果であり、全党・全軍・全国各民族・人民が団結・奮戦した結果である。

(留意点)

2020年の成長率は、2010年のGDP倍増を達成するだけの高さには達しないと見込まれるため、世界で唯一プラス成長を実現したことが強調されている。

(2)第13次5カ年計画の総括

2020年は第13次5カ年計画の手仕舞いの年である。

5年の継続奮闘を経て、わが国経済社会の発展は新たな歴史的成果を得て、第13次5カ年計画の主要目標・任務は達成された。わが国経済の実力、科学技術の実力、総合国力と人民の生活水準は新たに大きな段階に飛躍し、小康社会の全面建設は勝利の見込みであり、中華民族の偉大な復興は新たに前へ大きな一歩を踏み出した。

(留意点)

小康社会の全面実現という第1の百年目標については、党19期5中全会の習近平総書記の党中央建議「説明」で、「2021年上半期、党中央は小康社会の全面実現について、系統的な評価・総括を進め、その後、わが国が小康社会を全面実現したと正式に宣言する」としているため、ここでは「勝利の見込み」と述べるにとどまっている。

(3)5つの「根本」

国内・国際の2つの大局を統一し、疫病防御と経済社会発展を統一して実践する中で、我々は峻厳な試練の下で経済政策をしっかり行うことへの法則的認識を深化させた。

党中央の権威は、危難の際に全党・全国各民族・人民が困難に立ち向かう根本的な拠り所であり、重大な歴史の関頭・重大な試練の前にあって、党中央の判断力・政策決定力・行動力は決定的役割を果たした。

人民至上は、正確な選択を行う根本前提であり、常に人民を念頭に置き、常に人民の利益を最高と位置づけさえすれば、必ず正確な政策決定を行い、最も優れたルートを確定し、かつ人民に依拠して一切の艱難険阻に戦勝することができる。

制度の優位性は、困難な時局を共に克服する力強いパワーを形成する根本保障であり、「四つの自信」1を確固とし、「パワーを集中して大事に取り組む」という制度の優位性を堅持しさえすれば、必ず全党・全国各民族・人民を緊密に団結させて、堅塁を攻略し困難を克服し、事業の発展を推進する強大なエネルギーを発揮させることができる。

科学的政策決定と創造的な対応は、危機をチャンスに変える根本方法であり、正確に変化を認識し、科学的に変化に対応し、主動的に変化を求めさえすれば、必ず大きなリスクを迎撃する中で大きなチャンスを生み出すことができる。

科学技術の自立・自強は、発展の大局を促進する根本的支えであり、科学的精神を堅持し、科学的法則を把握し、自主的なイノベーションを大いに推進しさえすれば、必ず国家の発展を、より安全で、より依拠できる基礎の上に確立することができる。

(留意点)

中央経済工作会議では、1年間の経験・教訓が語られることがある。19年会議では、「重要な認識」として、①マクロ政策のカウンターシクリカルな調節、②システム論、③改革、④リスク意識が語られたが、今回はこの「5つの根本」がそれに当たる。しかし、19年の内容が実務的であったのに対し、今回は5つのうち2つが「党中央の権威」と「制度の優位性」であり、現体制の維持そのものが強調されている。「人民至上」はその次である。

(4)リスク・試練

成績を肯定すると同時に、疫病の変化と外部環境には多くの不確定性が存在し、わが国経済の回復の基礎はなお堅固ではないことを、はっきり見て取らなければならない。

2021年の世界経済情勢は依然として複雑・峻厳であり、回復は不安定・アンバランスで、疫病の衝撃がもたらした各種の派生リスクは軽視できない。

憂患意識を強め、必勝の信念を確固として、経済の持続的回復と質の高い発展を推進しなければならない。自身の事柄にしっかり取り組み、(最悪事態を想定して)最低ラインを守る考え方を堅持し、リスクの予見・事前判断能力を高め、各種リスク・試練を厳密に防止しなければならない。多国間主義の旗印を引き続き高く掲げ、グローバルガバナンスの改革・整備に積極的に参加し、人類運命共同体の構築を推進しなければならない。

(留意点)

19年会議は、経済の下振れ圧力と世界経済の成長鈍化が語られていたが、新型コロナの影響で表現は一段と厳しくなった。

2.2021年の政策の基本方針

2021年は、わが国現代化建設プロセスにおいて特殊な重要性をもつ一年である。

21年の経済政策をしっかり行うには、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、19回党大会・19期2中全会・3中全会・4中全会精神・5中全会精神を全面貫徹し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持しなければならない。新たな発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築しなければならない。質の高い発展をテーマとし、サプライサイド構造改革を主線とし、改革・イノベーションを根本動力とし、人民の日増しに増大する素晴らしい生活への需要を満足させることを根本目的としなければならない。システムの概念を堅持し、疫病防御と経済社会発展の成果を強固にして拡大し、発展と安全を更に好く統一し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策を着実にしっかり行い、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)任務を全面実施しなければならない。マクロ政策を科学的・精確に実施し、経済運営を合理的区間に維持するよう努力し、内需拡大戦略を堅持し、科学技術戦略によるサポートを強化し、ハイレベルの対外開放を拡大し、第14次5カ年計画の良好なスタートを確保し、卓越した成績をもって建党100周年を慶祝しなければならない。

(留意点)

「新たな発展の枠組の構築」「システムの概念」「発展と安全の統一」等、党19期5中全会「第14次5カ年計画・2035年長期目標」党中央建議(以下「建議」)の内容が大幅に盛り込まれた。

経済運営を合理的区間に維持するよう「努力」するとしていることからすると、直ちに潜在成長率を回復することは難しいと見ているのであろう。

3.2021年のマクロ政策

2021年のマクロ政策は、連続性・安定性・持続可能性を維持しなければならない。

積極的財政政策と穏健な金融政策を引き続き実施し、経済回復に必要な支援の程度を維持し、政策のオペレーションを更に精確・有効にして、急に方向転換せず、政策のタイミング・程度・効果をしっかり把握しなければならない。

貴重な最適のタイミングをうまく用いて、精力を集中して改革・イノベーションを推進し、質の高い発展をもって第14次5カ年計画の良好なスタートを切らなければならない。

(留意点)

マクロ政策の「連続性・安定性」に加え「持続可能性」が入っており、「急に方向転換はしない」としつつも、財政の持続可能性やマクロレバレッジ率にも注意を払う、両構えの姿勢がみられる。財政部・人民銀行の主張と、国家発展・改革委員会等成長重視派の主張を折衷したということであろう。

(1)財政政策

積極的財政政策は質・効率を高め、更に持続可能にし、適度な支出の強度を維持し、国家重大戦略任務への財政力保障を増強し、科学技術イノベーションの促進、経済構造調整の加速、所得分配の調節で主動的に成果を出し、地方政府の隠れ債務リスクの解消にしっかり取り組み、党・政府機関は倹約を堅持しなければならない。

(留意点)

2020年5月の「政府活動報告」では「更に積極的に成果を出さなければならない」とされていたが、19年会議の「質・効率の向上」に回帰している。さらに、財政の「持続可能性」が重視され、支出の強度も「適度」とされている。2020年の財政赤字の対GDP比は、19年の2.8%から3.6%に一気に高まったが、これを更に高めることに財政部が強く抵抗しているのであろう。財政赤字を20年と同額に据え置き、結果として対GDP比率を若干引き下げることも考えられる。

また、地方政府の隠れ債務リスクの解消が明記されており、実際の地方政府債務が公表の数字より大きいことが示唆されている。

さらに、所得分配の調節が明記されていることは興味深い。「建議」では、「共同富裕」を着実に推進するとしており、その第一歩が2021年から始まるということであろう。

(2)金融政策

穏健な金融政策は柔軟・精確、合理的・適度にし、マネーサプライと社会資金調達規模の伸びを名目成長率と基本的に釣り合わせ、マクロレバレッジ率の基本的安定を維持し、経済回復とリスク防止の関係をしっかり処理し、多くのルートで銀行の資本金を補充し、債券市場の法制を整備し、科学技術イノベーション、小型・零細企業、グリーン発展への金融支援を増やし、金利・為替レートの市場化改革を深化させ、人民元レートの合理的均衡水準における基本的安定を維持しなければならない。

(留意点)

2020年5月の「政府活動報告」では、「更に柔軟・適度にしなければならない」とされていたが、19年会議のトーンに戻り、さらに「精確・合理的」が加わった。金融支援の対象として、これまでの小型・零細企業に加え、科学技術イノベーションとグリーン発展が加わった。ここに貸出資金を重点廃部運することが「精確」の意味であろう。また、「政府活動報告」では、「M2と社会資金調達規模の伸びが、顕著に昨年より高くなるよう誘導する」としていたが、こちらも19年会議のトーンに戻っている。M2と社会資金調達規模の伸びを名目成長率に合わせ、流動性の合理的な充足を図ることが「合理的」の意味であろう。

さらに、マクロレバレッジ率の基本的安定、経済回復とリスク防止の関係にも言及しており、人民銀行がリスクを増大させるおそれがある一段の金融緩和に抵抗していることがうかがえる。

4.新たな発展の枠組の構築

新たな発展の枠組の構築は、2020年に新たな一歩をしっかり踏み出し、新たな様相を見せなければならない。

国内大循環を主体とし、国内・国際2つの循環が相互に促進する新たな発展の枠組の構築を加速し、サプライサイド構造改革という主線をしっかり把握し、需要サイドの管理を重視し、塞がったポイントを打開し、不足部分を補充し、生産・分配・流通・消費の各段階を貫通させ、需要が供給を牽引し、供給が需要を創造するハイレベルの動態的バランスを形成し、国民経済システムの機能全体を高めなければならない。

改革開放の深化を更に重視し、発展の内生的動力を増強して、いくらかのキーポイントで力を発揮し、成果を示して、全局に効果を発揮させなければならない。

5.2021年の重点任務

2021年は、以下の重点任務にしっかり取り組まなければならない。

(1)国家戦略科学技術パワーを強化する

国家の重大科学技術イノベーションの組織者としての役割を十分発揮させ、戦略的な需要の誘導を堅持し、科学技術イノベーションの方向・重点を確定し、国家の発展・安全を制約する重大難題の解決に力を入れなければならない。

新たなタイプの挙国体制の優位性を発揮させ、重要な研究院・研究所・大学の国家隊としての役割を発揮させ、科学研究パワーの配分の最適化と資源のシェアを推進しなければならない。「基礎研究十年行動方案」を早急に制定・実施し、いくらかの基礎学科研究センターを重点的に配置し、条件の整った地方が国際・地域科学技術イノベーションセンターを建設することを支援しなければならない。

科学技術イノベーションにおける企業の主体としての役割を発揮させ、リード役の企業がイノベーション連合体を組織することを支援し、中小企業のイノベーション活動を牽引しなければならない。国際科学技術交流・協力を強化しなければならない。

国内人材育成を加速し、更に多くの優秀な青年が頭角を現すようにしなければならない。インセンティブメカニズムと科学技術評価メカニズムを整備し、難関攻略任務に「進んで手を挙げて挑む」等のメカニズムをしっかり実施しなければならない。科学技術倫理を規範化し、良好な学風・作風を樹立し、科学研究者の一意専心・着実な進取の精神を誘導しなければならない。

(留意点)

科学技術イノベーションにおいて、国家は組織者の役割を果たし、あくまでも主体は企業であるとしている。19年会議では技術イノベーションにおける国有企業の役割が強調されていたが、今回はリード役の大企業のみならず、中小企業の役割も言及されている。

また、基礎研究を重視する姿勢を示している。

(2)産業チェーン・サプライチェーンを自主的にコントロール可能にする能力を増強する

産業チェーン・サプライチェーンの安定は、新たな発展の枠組を構築するための基礎である。

短所を補い、長所を鍛え上げることを統一的に推進し、産業チェーンの脆弱部分に対し、カギ・コアとなる技術の難関攻略プロジェクトをしっかり実施し、いくらかのボトルネックの問題をできるだけ速やかに解決し、産業の優位性のある分野で精緻に耕作し、更に多く独自の技能・真似のできない技術を作り出さなければならない。

産業基盤再構築プロジェクトをしっかり実施し、基礎的な部品・基礎的な技術・カギとなる基礎材料等の基礎を打ち固めなければならない。トップダウン設計、応用牽引、完成品リードを強化し、共通技術の供給を強化し、品質向上行動を深く実施する。

(留意点)

新型コロナで、産業チェーン・サプライチェーンが寸断され、また米中経済摩擦も激化しているため、産業チェーンの脆弱部分の補強が重視されている。

(3)内需拡大という戦略的基点を堅持する

強大な国内市場の形成は、新たな発展の枠組構築の重要な支えであり、消費・貯蓄・投資等の合理的な誘導の方面で、有効な制度手配を進めなければならない。

(留意点)

「建議」で、「国内大循環を主体とし、国内・国際2つの循環が相互促進する新たな発展の枠組を構築する」とされたため、内需拡大・強大な国内市場の形成が重要課題となっている。世界経済の回復が不安定・不確定であり、米国が国際大循環からの中国経済の切り離しを図っている以上、中国としても内需拡大を重視せざるを得ないのである。

①消費

消費拡大の最も根本は雇用の促進であり、社会保障を整備し、所得分配構造を最適化し、中等所得層を拡大し、共同富裕を着実に推進しなければならない。消費拡大を人民生活の質の改善と結びつけなければならない。

消費・購入を制限するいくらかの行政的規定を秩序立てて廃止し、県・郷の消費潜在力を十分発掘しなければならない。職業技術の教育体系を整備し、更に十分で更に質の高い雇用を実現しなければならない。公共消費を合理的に増やし、教育・医療・老人ケア・幼児保育等公共サービスの支出効率を高めなければならない。

(留意点)

雇用の促進が消費拡大のカギであるとしている。また、所得分配構造の最適化・中等所得層の拡大が、消費拡大の文脈で語られている。個人所得とりわけ都市部の個人所得の伸びの鈍化が消費の回復を遅らせているとの認識があるのだろう。

②投資

投資の伸びの持続力を増強し、カギとなる役割を引き続き発揮させなければならない。

外部波及効果が強く、社会効率の高い分野における中央予算内投資の誘導・テコの役割を発揮させなければならない。全社会の投資活力を奮い立たせなければならない。

デジタル経済を大いに発展させ、新しいタイプのインフラへの投資を強化しなければならない。製造業の設備更新と技術改造投資を拡大しなければならない。都市再開発行動を実施し、都市の老朽化した住宅団地の改造を推進し、現代物流システムを建設しなければならない。計画の統一とマクロ指導を強化し、産業配置をしっかり統一し、新興産業の重複建設を回避しなければならない。

(留意点)

消費の回復が弱いため、投資の伸びの維持に頼らざるを得ないが、外部波及効果と社会効率が重視されており、新興産業の重複建設回避にわざわざ言及するなど、やみくもな投資拡大を警戒している。新5カ年計画の初年度には、とかく乱投資が起こりがちだからであろう。また、デジタル経済・新しいタイプのインフラを重視しており、今後5G、AI、モノのインターネット、工業インターネット(産業用モノのインターネット)、データセンター等への投資が強化されることになろう。

(4)改革開放を全面推進する

新たな発展の枠組を構築するには、ハイレベルの社会主義市場経済体制を構築し、ハイレベルの対外開放を実行し、改革と開放を相互に促進しなければならない。マクロ経済ガバナンスを整備し、国際マクロ政策協調を強化しなければならない。

国有企業改革3年行動」を深く実施し、民営経済の発展環境を最適化し、健全な現代企業制度を整備し、コーポレートガバナンスを整備し、各種市場主体の活力を奮い立たせなければならない。

市場の参入を緩和し、公平な競争を促進し、知的財産権を保護し、統一した大市場を建設し、市場化・法治化・国際化したビジネス環境を作り上げなければならない。健全な金融機関ガバナンスを整備し、資本市場の健全な発展を促進し、上場会社の質を高め、各種の債務逃れ・踏み倒し行為を取り締まらなければならない。第3の支柱の年金保険を規範的に発展させなければならない。

全面的で進歩したCPTPPへの参加を積極的に考慮しなければならない。国内監督管理の能力・水準向上に力を入れ、安全審査メカニズムを整備し、国際一般ルールの運用で国家安全を擁護することを重視しなければならない。

(留意点)

2020年は債券のデフォルトが相次いでいる。21年になると、新型コロナ対策で元本償還・利払猶予となっていた貸出の償還期限が訪れるため、貸倒れのリスクが高めることになり、悪質な債務逃れ・踏み倒し行為を取り締まることが必要となる。

また、CPTPPへの参加を積極的に考慮するとしており、米国の復帰への動きとともに、加盟国の反応が注目される。

国家安全の擁護について、「中国の特色あるルール」ではなく、国際一般ルールに従う旨を明らかにしていることは注目される。

(5)種子・耕地問題をしっかり解決する

食糧安全を保障するカギは、食糧は土地に依拠し、技術に依拠する戦略を実施することにある。

種子遺伝資源の保護・利用を強化し、種子バンクの建設を強化しなければならない。科学を尊重し、監督管理を厳格化し、バイオ育種の産業化応用を秩序立てて推進しなければならない。種子資源のボトルネックの技術の難関攻略を展開し、志を抱いて種子業の復活戦を戦わなければならない。

18億ムー(1.2億ha)の耕地レッドラインをしっかり守り、耕地の「非農業化」に断固歯止めをかけ、「非食糧化」を防止し、耕地の占用・補充のバランスを規範化しなければならない。国家食糧安全産業ベルトを建設し、ハイレベルの農地・水田建設を強化し、農地・水田の水利建設を強化し、「国家黒土保護プロジェクト」を実施しなければならない。食糧と重要農業副産品の供給保障能力を高めなければならない。農業面源汚染対策を強化しなければならない。

(留意点)

突然、種子の問題がクローズアップされた点につき、新華社2020年12月19日は、中国の種子業市場は1000億元近い規模で、世界第2位であるとする。

そして「イネと小麦の種子の供給源は完全自給自足を達成し、競争力がある。トウモロコシと大豆の種子は基本的自給を実現したが、育種および栽培などの要因の影響で、単位面積当たり収量が世界の先進レベルに比べまだ差がある。少数の生鮮野菜品種はいまだに市場の多様化したニーズを満たすことができておらず、特に一部ハウス栽培に適した野菜や加工専用の野菜品種は依然輸入が必要だ」と指摘し、「種子は農業の『ICチップ』であり、わが国の種子業の自主革新レベルは先進国とまだ差があり、遠くにコア技術の革新が不足し、育種のコア技術イノベーションが待たれる」としている。

このため、食の安全保障のためには、種子供給源の安全保障と、1.2億haの耕地最低ラインを固く守ることを、国の安全保障戦略レベルに引き上げて注視しなければならないとしている。

(6)反独占と資本の無秩序な拡張防止を強化する

反独占・反不当競争は社会主義市場経済体制を整備し、質の高い発展を推進する内在的要求である。

国家は、プラットフォーム企業のイノベーション・発展、国際競争力増強を支援し、公有制経済と非公有制経済の共同発展を支援すると同時に、法に基づき規範的に発展させ、健全なデジタル・ルールを整備しなければならない。

プラットフォーム企業の独占認定、データの収集・使用・管理、消費者の権益保護等の法律・規範を整備しなければならない。規制を強化し、監督管理能力を高め、独占・不当競争行為に断固反対しなければならない。金融イノベーションは、プルーデンス監督管理の前提の下で進めなければならない。

(留意点)

「反独占と資本の無秩序な拡張防止」が盛り込まれた背景として、新華社2020年12月18日によれば、識者の見解を紹介している。

中国貿易促進会研究院 趙萍副院長:「党中央が全面的に法に基づき治国する理念を深く推進するに伴い、法律活動も必然的にインターネットの分野に延伸することになり、インターネットが法の外の地となることは絶対にあり得ない。この2年、わが国は不断にインターネット空間の法に基づくガバナンスを推進しており、2019年の『電子商務法』の正式実施により、電子商取引分野の法律の空白を埋め、電子商取引の発展を法に拠るものとした。20年11月には『ライブコマース情報内容・サービス管理規定』を公開して意見を徴求し、12月7日には党中央が『法治社会建設実施要綱(2020-2025年)』を発している。これらの政策・法規の制定・実施は、いずれもわが国の現在のインターネット環境が不断に整備されてきていることを表明している。将来、インターネットも更に整備された枠組の下に入り、公正さを守ることとイノベーションを併せ考慮することになる。インターネット分野は、もはや市場参入の段階でなくなり、生活の各方面に浸透するに伴い、相対的成熟段階に入った。関連産業の規模は巨大で、巨大企業が多く、多国籍企業が多いため、反独占がようやく議題に上ったのである」。

中泰証券 李迅雷チーフエコノミスト:「インターネット・ビッグデータ等の分野で新たな独占が形成されている。この独占が庶民・中小企業の利益を損なっているかどうかは、政策レベルの面で考量しなければならない。一部のインターネットプラットホームのように、資本の力を借りて分野をますます広げ、新たな『大き過ぎてつぶせない』会社を形成しており、資本の無秩序な拡張はリスクをもたらす可能性がある」。

反独占法の改正の動きもあり、今後の動向に注意を要しよう。

(7)大都市住宅の際立った問題をしっかり解決する

住宅問題は、民生福祉に関係する。

「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、土地の事情に応じて施策を講じ、多くの措置を併せ打ち出し、不動産市場の平穏で健全な発展を促進しなければならない。

社会保障的性格をもつ賃貸住宅の建設を高度に重視し、長期賃貸住宅政策の整備を加速し、公共サービスの享受において、徐々に賃貸住宅に同等の権利を持たせ、長期賃貸住宅市場を規範的に発展させなければならない。

土地供給は、賃貸住宅の建設に傾斜させ、賃貸住宅用地計画を単独で策定し、集団建設用地と企業・事業単位が所有する遊休地を利用して、賃貸住宅を建設することを模索し、国有・民営企業は機能・役割を発揮しなければならない。

低家賃住宅の税・費用負担を引き下げ、賃貸市場の秩序を整頓し、市場行為を規範化し、家賃水準に対して合理的なコントロールを進めなければならない。

(留意点)

賃貸住宅、とりわけ社会保障的性格をもつ長期賃貸住宅を重視している。住宅価格の高騰に伴い、家賃も上昇しており、庶民の不満を鎮めるには、公的な長期賃貸住宅の供給が必要となっているのであろう。

(8)炭素のピーク到達、カーボンニュートラル(炭素中立)政策をしっかり行う

わが国のCO2排出を、2030年前にピークに到達させ、2060年前にカーボンニュートラルを実現するようできる限り努力する。

2030年前に炭素排出量をピークに到達させる行動方案を早急に制定し、条件の整った地方が率先してピークに到達させることを支援しなければならない。産業構造・エネルギー構造の調整・最適化を加速し、石炭消費のできるだけ早いピーク到達を推進し、新エネルギーを大いに発展させ、全国でエネルギー使用権・炭素排出権の取引市場の建設を加速し、エネルギー消費の強度・総量の2つのコントロール制度を整備する。

引き続き汚染対策堅塁攻略戦をしっかり戦い、汚染物質排出削減・炭素排出引下げの協同効果を実現しなければならない。大規模な国土緑化行動を展開し、生態システムの炭素貯留能力を高めなければならない。

(留意点)

習近平国家主席は、2020年12月12日の世界気候サミットにおいて、「今年9月、私は中国が国家としての自主的貢献度を高め、より強力な政策と措置を取り、2030年までにCO2の排出量をピークにもっていくことを目指し、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指して努力すると宣言した。ここで私は、さらに2030年までに中国はGDPに対するCO2排出量を2005年に比べ65%以上減らし、非化石エネルギーの一次エネルギー消費に占める割合を25%前後にまでもっていき、森林蓄積量を2005年より60億立法メートル増やし、風力発電、太陽光発電の設備容量を12億キロワット以上にすることを宣言する」と述べており、21年はさっそくこの達成に向けた対策が発動されることになる。

6.総括2

数世代の人びとの一貫した継続奮闘を経て、わが国は小康社会を全面的に実現した。これは、新たな生活・新たな奮闘の起点であり、引き続き刻苦奮闘しなければならない。

脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大し、大規模な貧困逆戻り現象の発生を防止しなければならない。農村振興としっかり有効にリンクさせ、支援政策による総体としての安定を維持し、分類して調整・最適化し、政策の十分な過渡期を留保しなければならない。

①経済運営を合理的区間に維持するよう促進し、「6つの安定」「6つの保障」政策を引き続きしっかり行い、マクロ・コントロールのテンポ・程度を合理的に把握し、マクロ政策を精確・有効に実施しなければならない。

②市場主体の活力を引き続き奮い立たせ、減税・費用引下げ政策を整備し、インクルーシブファイナンスサービスを強化し、改革・イノベーションを更に力強く推進し、市場主体とりわけ中小・零細企業と個人工商事業者の活力を増強しなければならない。

③イノベーションに依拠して実体経済の発展水準を高め、製造業の質の高い発展を促進しなければならない。

④国内市場の潜在力を十分発掘し、民生改善を志向して消費と有効な投資を拡大し、社会(民間)資本参加を支援するメカニズム・政策を整備し、民生インフラの不足部分の補充を更に重視し、新しいタイプの都市化と地域の協調発展を推進しなければならない。

⑤農村振興を全面的に推進し、農業生産にしっかり取り組み、農村改革・農村建設を推進しなければならない。

⑥重点分野・カギとなる部分の改革を深化させ、「行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化」改革を推進し、ビジネス環境を不断に最適化しなければならない。

⑦汚染対策を強化し、生態環境の質を不断に改善しなければならない。

⑧基本民生保障政策をしっかり行い、重点層の多くのルートでの就労を促進し、人民の生活を引き続き改善しなければならない。

新発展段階に適応し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築するには、党の全面指導を強化し、政治的な視点を用いて経済社会問題を観察・分析することに長じ、実務にしっかり励んで党中央の政策決定・手配を経済政策の各方面に貫徹しなければならない。

督励検査、督励指導等の活動を規範的に進め、実効を追求しなければならない。各レベル指導幹部は専門能力を高め、新たな発展の枠組構築を指導するエキスパートとなるよう努力しなければならない。補習・充電の緊迫感を強め、自覚的に時代の潮流に追いつかなければならない。

発展と安全の2つの大事にしっかり取り組み、各種経済社会のリスクを有効に防止・解消し、安全生産と防災・減災活動を高度に重視し、重大・特大事故の発生を断固防止しなければならない。引き続き社会ガバナンスを深化させ、各種違法犯罪活動を厳しく取り締まらなければならない。

疫病防御はいささかも手を緩めず「外では疫病輸入を防止し、内では疫病再流行を防止する」政策にしっかり取り組み、厳しく防ぎ死守し、大規模な疫病の輸入・再流行が出現しないことを確保しなければならない。元旦・春節の市場供給をしっかり手配し、基本民生を確保し、困窮層の最低ライン保障政策をしっかり行わなければならない。

全党同志は、習近平同志を核心とする党中央の周囲に緊密に団結し、心を一つに協力し、開拓・進取の精神で、卓越した成績をもって建党100周年を迎え、社会主義現代化国家の全面建設、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現のために、たゆまず奮闘しなければならない。

  1. 中国の特色ある社会主義の道・理論・制度・文化への自信。
  2. この部分は、李克強総理の総括講話の概要と思われ、「政府活動報告」の柱になると考えられる。