農村の脱貧困

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年12月10日


はじめに

習近平総書記は12月3日、党中央政治局常務委員会を開催し、脱貧困堅塁攻略の総括評価を聴取し、重要講話を行った。本稿では、習近平総書記の重要講話の概要と、これに関連して行われた財政部の記者会見の概要を紹介する。

1.党中央政治局常務委員会における習近平総書記の重要講話(12月3日)

18回党大会以降、党中央は全党全国各民族・人民を団結させ、これをリードし、脱貧困堅塁攻略を国家ガバナンスにおいて際立てて位置づけ、党の指導とわが国の社会主義制度の政治優位性を十分発揮して、多くのオリジナル・独特な重大措置を採用し、人類史上規模が最大で、程度が最強な脱貧困堅塁攻略戦を組織的に実施した。

8年の持続的奮闘を経て、わが国は期限通り新時代の脱貧困堅塁攻略の目標・任務を達成し、現行基準下での農村貧困人口を全部貧困から脱却させ、貧困県を全部解消し、絶対貧困と地域的な全体貧困を解消し、1億近い貧困人口の脱貧困を実現し、全世界を括目させる重大な勝利を得た。

脱貧困堅塁攻略の重大勝利は、第1の百年奮闘目標実現のために堅実な基礎を打ち立て、人民大衆の獲得感・幸福感・安全感を極大に強め、貧困地域の容貌を徹底的に変え、生産生活条件を改善し、大衆の生活の質を高め、「衣食に憂いなく、義務教育・基本医療・住宅の安全が保障されていること」を全面的に実現した。

脱貧困堅塁攻略の実践において、党中央は「人民至上、人間本位」を堅持し、貧困大衆と全国各民族・人民が一致して小康社会へ踏み出し、一致して好い暮らしを送ることを、脱貧困堅攻略の出発点・到着点とした。

各レベル党委員会・政府及び社会は協同して力を発揮し、力を合わせて堅塁を攻略し、東部と西部が事あるごとに助け合い、協同して堅塁を攻略し、広範な党員・幹部は苦労を味わい、苦労に耐え、犠牲を恐れず、共産党員が使命を担い犠牲を払うことを十分顕彰した。

現在、わが国の発展がアンバランス・不十分であるという問題が依然際立っており、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にし、拡大する任務は、依然非常に困難である。19期5中全会精神を深く貫徹実施し、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にし、拡大しなければならない。

支援政策の総体としての安定を維持し、「免除されない四つの事項」(責任・政策・支援・モニタリング)の要求を厳格に実施し、現行の支援政策・資金支援・支援の程度の総体としての安定を維持しなければならない。

貧困への逆戻りを防止するための健全なモニタリング・支援のメカニズムを整備し、引き続き脱貧困県・脱貧困村・脱貧困人口に対してモニタリングを展開し、所得の変化と「衣食に憂いなく、義務教育・基本医療・住宅の安全が保障されていること」の定着情況を引き続きフォローし、定期的に調査し、貧困問題を発見するたびに支援して動態的に解消しなければならない。

貧困支援産業を引き続き壮大に発展させ、引き続き脱貧困地域の産業発展・インフラ建設を強化し、販売ルートを拡大し、流通方式を刷新して、販売を安定させ促進しなければならない。

脱貧困人口の雇用安定をしっかり行い、脱貧困人口への職業技能訓練を強化し、東部・西部の労務協力を強化し、東部・中部の労働集約型産業が西部地域に移転することを奨励・支援しなければならない。

貧困救済のための居住地移転の後続支援を強化し、集中移転先の公共サービス・関連インフラを整備し、土地の事情に応じて施策を講じ、移転先で産業を発展させ、移住者が「暮らしが落ち着き、雇用があり、徐々に豊かになれる」ことを確保しなければならない。

資金・資産項目の管理を強化し、健全な資産管理制度を確立し、効果を持続的に発揮させなければならない。

住民の生活最低ラインを保障し、公益ポストを規範的に管理し、社会保障システムに依拠して、労働力が弱い・半人前等の家庭の近場・地元での就労を促進して雇用を解決し、これらの人々の基本生活を保障しなければならない。

2.財政部記者会見(12月2日)

財政部は、脱貧困堅塁攻略戦に打ち勝つことを最大の政治責任・最大の民生プロジェクトとして、脱貧困堅塁攻略戦に打ち勝つことを全力で支援してきた。それは主として、以下の4方面に体現されている。

(1)投入を持続的に強化した

「大がかりな貧困支援」の枠組を作るという要求に基づき、脱貧困堅塁攻略を財政支出の優先保障に位置づけ、投入の程度を脱貧困堅塁攻略の任務に適応させ、政府投入の主体的・主導的役割を十分発揮させた。

①特別貧困支援資金の計上方面

2016~2020年、連続5年毎年中央財政特別貧困支援資金を200億元増やし、2020年には1461億元に達し、精確な貧困支援の主たる資金ルートの役割を発揮した。今年はさらに臨時に、総合的財政力補助資金300億元を計上し、指名督戦地域の脱貧困堅塁攻略の不足部分・脆弱項目の補強を支援した。

②事業による貧困支援方面

農業・水利・生態・交通・教育等の事業に移転支出を分配する際は、貧困地域・貧困人口に傾斜させ、貧困地域の際立った問題の解決を推進した。

③資金ルートの拡大方面

都市・農村建設用地の増減と節約・余剰指標をリンクさせて、省を跨ぐ調整政策を通じて、1896億元の資金を集め、全部脱貧困堅塁攻略と農村振興の支援に用いた。

④社会(民間)による支援方面

貸出利息補助・リスク補償を通じて、6000億元余りの貧困支援マイクロファイナンスを金融機関が行うよう誘導した。同時に、多くの税・費用優遇政策を打ち出し、脱貧困堅塁攻略の合成力を凝集した。

(2)投入の精確性が顕著に高まった

中央が確定した脱貧困堅塁攻略の目標・基準を堅く守り、精確な貧困支援の要求を実施し、脱貧困堅塁攻略の焦点を拡散させず、的の中心がぶれぬことを確保した。

一方では、「衣食に憂いなく、義務教育・基本医療・住宅の安全が保障されていること」の際立った問題の解決を重点的に支援した。

①義務教育の中途退学を抑制し、就学を保障することを支援し、貧困家庭の中途退学した学生を「学校に戻すべき者は、すべて戻す」ことを基本的に実現した。

②健康面での貧困支援の投入を増やし、貧困人口の保険加入を支援し、医療費清算の待遇を引き上げ、医療保障の底固めを実現した。

③重点対象への傾斜支援を増やし、危険家屋の改造補助基準を引き上げた。

④貧困地域の農村飲料水プロジェクトの維持・補修を支援し、2019年以降計39.6億元を計上し、約10万カ所のプロジェクトの維持・補修を完成した。

他方では、重点地域への支援を増やした。2018~2020年に、「三区三州」等の貧困が深刻な地域への支援資金を2800億元余り増やし、最後の貧困の堡塁を攻略するために有力な支えを提供した。

(3)政策体系を不断に整備した

目標志向・問題志向を堅持し、政策の供給を最適化し、政策措置を刷新し、財政支援政策の的確性・実効性を不断に高めた。

①貧困県の農業関連資金の整理合理化テストを深く推進し、権限委譲改革を通じて、貧困県に農業関連資金の統一・整理合理化の自主権を賦与し、ストックを活用し、フローをうまく用いることを支援し、不足部分・脆弱項目に焦点を絞って精確に力を発揮した。

②資産収益による貧困支援モデルを模索・展開し、貧困地域が優位性のある産業に立脚してプロジェクトをうまく選ぶことを支援し、リスク防止を強化し、貧困家庭の利益を優先的に保障して、貧困層が更に多く産業の発展のボーナスをシェアするよう支援した。

③政府調達政策を運用して消費により貧困を支援し、貧困地域の農業副産品のEコマースプラットホームを立ち上げ、調達予算の一定割合をあらかじめ留保して、832の貧困県の農産品の調達に用い、生産・販売の精確なリンクを促進した。

(4)資金の安全性が一層強化された

貧困支援資金の監督管理強化を脱貧困堅塁攻略の全プロセスに貫徹し、財政支援資金の管理制度を不断に整備した。

貧困支援資金プロジェクトの全プロセスで業績効果管理を実施し、貧困支援資金プロジェクトの公開・公示を推進し、貧困支援資金の動態的な監督・コントロールメカニズムの確立を模索し、日常の監督管理にしっかり、きめ細かく取り組み、問題を発見しだい整理・改革を督促した。

各方面の共同努力の下、貧困支援資金の監督管理は顕著な成果を得て、貧困支援資金の安全性は着実に高まっている。

このほか、最近財政部は、民生・農業優遇に関する政策の供給・投入保障を確実に強化し、大量の補助金をワンカード方式を通じて大衆の手中に交付し、民生方面の保障・改善において重要な役割を発揮した。

2019年、財政部、農業農村部、民生部等7部委は、全国範囲で特別対策を展開した。最近、7部委は、さらに「民生・農業優遇財政補助金のワンカード管理を一層強化するための指導意見」を打ち出し、民生・農業優遇政策の有効な実施・実現を推進し、脱貧困堅塁攻略の成果を更に好く強固にしている。

今後、財政部は引き続き貧困支援政策に関する習近平総書記の重要論述精神を深く学習貫徹し、力を緩めず、怠りなく、堅塁攻略戦の最期の勝利奪取を全力で支援する。

同時に、脱貧困の成果を強固にし、拡大することと、農村振興との有効なリンクを積極的に支援し、脱貧困地域と全国農村の共同発展を実現し、億万の農民層が共同して更に素晴らしい生活を送れるようにする。