新5カ年計画党中央建議の誕生プロセス

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年11月18日


はじめに

新華社北京電2020年11月4日は、「第14次5カ年計画と2035年長期目標制定に関する党中央建議」誕生記を公表した。また、習近平総書記の「党中央建議に関する説明」の中にも、起草プロセスへの言及がある。本稿では、これらを手掛かりに、党中央建議の誕生プロセスを時系列的に整理してみたい。

2020年3月 党中央政治局常務委員会、中央政治局会議は、前後して会議を開催し、党19期5中全会で第14次5カ年計画建議問題を重点的に検討することを決定し、かつ文件起草グループの設立を決定した。

起草グループは、習近平総書記を組長とし、李克強・王滬寧・韓正同志を副組長とし、関係部門と地方責任者の同志が参加し、中央政治局常務委員会の指導の下、文件起草活動を進めた。

3月30日 党中央は「党19期5中全会が第14次5カ年計画建議を検討するため意見を徴求することに関する通知」を発出し、内外の一定範囲に意見を徴求した。

4月13日 武漢の「封鎖解除」から1週間も経っていないとき、習近平総書記は中南海懐仁堂で、文件起草グループの第1回全体会議を開催し、文件起草活動について指導を進めた。

この会議において、習近平総書記は、「第14次5カ年計画期間は、わが国が小康社会を全面実現して後、勢いに乗じて第2の百年奮闘目標実現に奮闘する最初の5年であり、得難いチャンスをしっかり掴み、各種試練を耐え抜き、発展の新たな空間を開拓するカギとなる時期である」と、鮮明に指摘した。

また「現在、我々が直面する歴史的課題は、即ちトップダウン設計と科学的な計画を強化し、19回党大会が行った戦略的手配を引き続き貫徹実施し、全党全国を指導して将来5年の経済社会発展活動をしっかり行う」とし、この講話において、習近平総書記は一気に38の重点検討課題を提起した。

4月15日から、文件起草グループは、全身全霊文件起草活動を開始した。

6月17日 文件起草グループ第2回全体会議

ここでは、全体の構成を2010年建議のように個別章立てにするか、2015年建議のようにいくつかの大きなグループにまとめるかが議論された。最終的に、習近平総書記は、多数のメンバーが賛成する個別章立てで、まず案を策定することを容認した。ただし、グループ分けの長所も参考とするようにと述べた。

習近平総書記は、自ら文件起草グループの小グループ分けと任務の分業を手配し、今後の起草活動について、7方面の要求を行った。

①時代背景を深刻に把握する。

②鮮明な方向性の手引きを堅持する。

③わが国自身の事柄にしっかり取り組むことを際立たせる。

④改革開放を堅持する。

⑤システムの概念を際立たせる。

⑥科学技術イノベーションを際立たせる。

⑦経済社会の現代化と国家ガバナンスの現代化を同歩調で推進する。

7月~9月 習近平総書記は、自ら7回の特定テーマ座談会を開催

①企業家座談会、②長江デルタ一体化発展座談会、③経済社会分野専門家座談会、④科学者座談会、⑤末端代表座談会、⑥教育・衛生・スポーツ専門家代表座談会、⑦党外人士座談会

座談会には、企業家、党外人士、経済社会分野専門家、科学者、教育・文化・衛生・スポーツ分野の専門家、地方の党・政府指導者、末端代表が出席した。

8月10日 第14次5カ年計画建議稿を全国各地方・各部門・各単位の党委員会・党グループに向けて意見徴求。これには党内一部の老同志が含まれ、また各民主党派中央、全国工商聯責任者、無党派人士代表の意見も聴取した。

108の単位、10通の党外人士の書面材料を受け取り、修正意見は計2181件であった。中央の指導職務を引退した老同志からは58件の意見を受け取った。

これをもとに、起草グループは、追加・修正・簡素化を計366カ所行い、各方面の意見・建議の546件をカバーした。意見の採用率は21.88%に達した。

習近平総書記の説明によれば、多くの優れた意見・建議は、主として、以下の方面であった。

①経験を十分総括した。

党を全面的に厳しく統治、農業の発展、文化建設、国家安全等の方面の内容を補充した。

②情勢・環境の分析を深化させた。

改革任務が依然非常に困難であること、自身の事柄へのしっかりとした取組み、(最悪の事態を想定して)最低ラインを守る考え方の樹立等の方面の内容を補充した。

③指導思想・原則を豊富にした。

人民中心の強化、対外開放の拡大、全面的な法に基づく治国、発展と安全の統一等の方面の内容を補充した。

④第14次5カ年計画発展目標と2035年長期目標を整備した。

発展格差の縮小、共同富裕の促進等の方面の内容を補充した。

⑤イノベーション駆動による発展を推進する重大措置を強化した。

国家イノベーションシステムの整備、国家戦略・科学技術パワーの強化、健全なインセンティブメカニズムの整備・刷新と科学技術体制の改革等の方面に関する内容を充実した。

⑥国民経済における実体経済の重要な地位を更に際立たせた。

現代化した経済システムの建設加速、新たな発展の枠組の構築加速等の方面の内容を充実した。

⑦社会主義基本経済制度を更に好く堅持・整備した。

各種所有制経済の共同発展促進、重要な財政・税制・金融制度の整備等の方面の内容を充実した。

⑧新しいタイプの都市化戦略を整備した。

都市計画建設管理等の方面の内容を充実した。

⑨人の全面発展と社会の全面進歩の促進を更に重視した。

質の高い教育体系の建設、健全な社会保障システムの整備、「健康中国」建設の全面推進等の方面の内容を強化した。

⑩国家安全の擁護を更に際立たせて位置づけ、国家安全のための障壁を堅固に築き上げた。

国家経済安全保障、社会の安定・安全の擁護等の方面の内容を充実した。

8月16日 人民日報、新華社、中央ラジオ・テレビ総台に所属する官のネット、ニュースアプリ及び学習プラットホーム「学習強国」にそれぞれ第14次5カ年計画建言専門欄を開設。101.8万件の建議を受け取った。

習近平総書記は、前後3回党中央政治局常務委員会会議を開催し、2回中央政治局会議を開催して、草稿を審議した。

10月26日午前 党19期5中全会に出席した各同志の面前で、文件が明らかにされた。習近平総書記は、中央政治局を代表して活動報告を行い、かつ建議討論稿を全会に説明した。

26日午後、中央委員、候補中央委員、中央紀律検査委員会常務委員会委員、関係方面の責任者、19回党大会代表のうち一部の末端同志、専門学者が、10の小グループに分かれ、討論を行った。

会議に出席した198名の中央委員中189人が発言し、166名の候補中央委員は全員発言し、153名の列席者は151名が発言し、少なからぬ者が何回も意見・建議を発表した。

2日半の討論を経て、修正意見は290件余り提起された。文件起草グループは、これらの意見をもとに、建議稿を31カ所修正した。

28日夜、習近平総書記は、党中央政治局常務委員会会議を開催し、建議修正稿を審議した。

29日午前、建議修正稿は再度全会の討論にかけられた。

29日午後、全会は正式のこの建議を承認した。

習近平総書記は、5中全会第2回全体会議において、「全会が承認した建議は、社会主義現代化国家の全面建設の新たな征途を開き、第2の百年奮闘目標への進軍のための綱領的文件であり、今後5年ないし更に長期のわが国経済社会発展の行動指南である」と強調・指摘した。

11月3日 新華社が建議全文を公表した。