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研究者のご紹介

国有企業改革の現状

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年10月22日


はじめに

党19期5中全会を目前に控え、国有資産監督管理委員会は10月12日、国有企業の改革・発展の情況について、記者会見を行った。本稿では、その概要を紹介する。

1.概説

国有企業改革の重要分野・カギとなる部分で、一連の重大進展を得て、一連の重要成果を得た。

(1)いくらかの改革の成果は、歴史的ブレークスルーを実現した

国有企業への党の指導を全面強化し、初めて中央企業について機能による画定・分類を実現し、中央企業の会社制制度改革を全面的に完成し、混合所有制企業の数と質は大いに高まった。

(2)いくらかの改革措置は、重大な進展を得た

資本管理を主とする国有資産監督管理体制は徐々に整備され、国有資本の配置・構造は不断に最適化され、市場化された経営メカニズムへの転換が加速し、国有資本投資・運営会社は新たな道を踏み出し、「ゾンビ企業の処理、企業の困難への対策」は実質的進展をみて、再編・整理合理化と構造調整は、カギとなる進展をみた。

(3)いくらかの改革の重点・難点は、既に解決された

企業からの社会機能の分離と、歴史的遺留問題の解決は、重大なブレークスルーを実現し、董事会(取締役会)の職権、経営陣構成員の任期制と契約による管理、プロフェッショナルな経営者制度等は、コピー・普及可能な経験を形成した。

これらの改革の成果は、企業の発展の質・効率向上を有力に推進した。2017-19年、全国国有資本系統監督管理企業で、世界500強に入っているものは、67社から80社に増え、営業総収入は17.3%増、利潤総額は20.6%増、営業収入利潤率は0.5ポイント高まって5.9に達し、累計で10.9兆元の税・費用を上納した。

うち、中央企業の営業総収入は17.3%増、利潤総額は29.1%増、営業収入利潤率は0.7ポイント高まって6.1%に達し、有効な特許数は約77万件となり、国有資本収益2372億元・財政特別利潤3000億元を上納し、経済社会の発展のために積極的に貢献した。

同時に、国有企業の改革・発展は、「いささかも動揺することなく、公有制経済を強固にし発展させ、いささかも動揺することなく、非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導する」ことを常に堅持し、市場化の原則と互恵ウインウインの誘導方向により、川上・川下への支援・誘導の役割を発揮し、中央企業と地方各種所有制企業の協力等の措置を深化させ、民営企業・中小企業との全方位的協力を主動的に強化し、産業チェーン・サプライチェーンの安定において「国家隊」の役割を発揮した。

今後我々は、引き続き習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、国内大循環を主体とし、国内・国際2つの循環が相互促進する新たな発展の枠組みを構築することをしっかり軸として、国有企業改革3年行動に実施に力を入れ、グローバルな競争力をもつ世界一流の企業の育成を加速し、国有企業の改革・発展を推進して新たな段階に上り、国有経済の競争力・イノベーション力・コントロール力・影響力・リスク抵抗能力を不断に増強するために、新たなより大きい貢献を行う。

2.国有企業改革三年行動の8方面の重点任務

①中国の特色ある現代企業制度を整備しなければならない。

科学的・有効なコーポレートガバナンスメカニズムを形成する。

②国有資本の配置の最適化と構造調整を推進する。

主たる責任・本業に焦点を絞り、実体経済を発展させ、質の高い発展を推進し、国有資本の配置の効率を高める。

③混合所有制改革を積極かつ穏当に推進する。

各種所有制企業の長所をとり短所を補い、共同発展する。

④国有企業の活力を奮い立たせなければならない。

市場化された健全な経営メカニズムを整備し、プラスのインセンティブを強化し、これにより効率も高める。

⑤資本管理を主とする国有資産監督管理体制を形成する。

監督管理の理念・監督管理の重点・監督管理の方式・監督管理の方向性等の多くの方面から転換の実現に力を入れ、国有資本監督管理の系統性・的確性・有効性を一層高める。

⑥国有企業の市場競争への公平な参加を推進する。

国有企業の市場主体としての地位を強化し、公開・公平・公正な市場環境を作り上げる。

⑦一連の国有企業改革特別キャンペーン実施を推進する。

⑧国有企業への党の指導・党の建設を強化する。

党の建設と企業の生産経営を深く融合させる。

3.混合所有制改革の進展状況
(1)混合所有制改革の分野・範囲を不断に開拓した

我々は、十分競争的な業種・分野の企業の混合所有制改革を積極的に推進し、電力・電信・軍需工業・民間航空等の重要な分野の混合所有制改革も秩序立てて模索した。

2013年以降、中央企業が推進した混合所有制改革項目は、4000項目に達し、導入した各種社会(民間)資本は1.5兆元を超え、混合所有制改革を行った企業数は、既に中央企業法人単位の70%以上となっている。上場会社は既に混合所有制改革の主要なキャリヤーとなっており、上場会社の総資産は中央企業全体の68%を占め、利潤は86%を占めている。

(2)経営メカニズムの転換を確実に推進した

混合所有制により改革を促進し、中国の特色ある現代企業の形成、労働人事分配制度改革、中長期インセンティブメカニズムの形成の推進等の方面において、混合所有制企業は重要な進展があり、海康威視・万華化学・中国巨石等の模範的意義のある混合所有制改革企業が湧き出てきている。

(3)国有資本の影響力・牽引力が不断に高まっている

中央企業の所有者権益のうち、社会(民間)資本導入により形成された少数株主権益のウエイトは、2012年末の27%近くから現在は38%に高まり、比較的顕著な進展をみているといえる。2020年1-8月、投資、合併再編、増資等の方式を通じて、1700億元を超える社会(民間)資本を導入し、前年同期比28%増となった。

同時に、中央企業は産業チェーン・サプライチェーンの協力を通じて、広大な民営企業・中小企業と協調発展し、6000社を超える非公有制企業に投資を行い、投資総額は4000億元を超え、優れた精鋭である「隠れチャンピオン」・各分野のリーダー企業を形成した。

(4)今後の進め方

当然、混合所有制改革は、国有企業改革の重要な構成部分であるが、すべてではない。いっぺんにすべて混合所有制改革を行ってはならず、企業の実際・政策の成熟度に応じて、1企業1施策で推進する。

今後、我々は国有企業改革三年行動と結びつけ、党の指導を根本原則とし、国有資産の流失回避を政策の最低ラインとし、活力を奮い立たせ、効率を高めることを具体的方途とし、「独資にすべきものは独資にし、国有株支配にすべきものは国有株支配とし、民間資本を参加させるべきものは民間資本を参加させる」という要求に基づいて、混合所有制改革を積極かつ穏当に推進する。具体的には、以下の方面を考慮する。

①レベルを分け、分類して改革を推進する。

我々の混合所有制改革は、国有資本投資会社・運営会社が出資する企業と商業類子会社により多く的を絞らなければならない。

②株主構造を合理的に設計・最適化する。

我々は、国有株支配の上場会社が、株式占有率5%ないし5%以上の戦略的投資家を引き入れ、積極的株主としてガバナンスに参加させ、さらには非上場会社について、相応の株式占有率ないしそれ以上で参加させることを奨励する。

③経営メカニズムを深く転換する。

我々は、国有企業グループが相対的に株支配する混合所有制企業が、より市場化・差別化した管理・コントロールを実施することを支援・奨励し、混合所有制改革を行った企業が労働人事分配メカニズム方面において率先してブレークスルーを行い、活力に富む市場化された経営メカニズムを真に形成することを希望する。

④我々は、混合所有制改革を掴みどころとして、産業チェーン・サプライチェーンにおいて、民営企業・中小企業と不断に協力を深化させ、相互融合・共同発展の局面を形成しなければならない。

⑤常に党の指導・党の建設を堅持しなければならない。

混合所有制改革をどこで進めても、党の建設がカバーしていなければならない。

4.国有資本の配置の最適化・構造調整

今後我々は、国家戦略に奉仕することを軸に、第14次5カ年計画と結びつけて、国有資本の配置の最適化・構造調整を一層推進する。

(1)国有企業の主たる責任・本業を軸に実体経済を大いに発展させ、国有資本で前進するものと退出するものとを区別する

我々には、1つの明確な目標がある。すなわち、国有資本を国家の安全・国民経済の命脈に関わる重要業種・分野に集中させ、国家の民生・緊急能力の建設・公益性に関わる業種・分野に集中させ、戦略的新興産業に集中させる。

前進が必要な分野については、我々は強く優れ精緻なものとすることを明確な目標とし、M&Aと専業化のための整理合理化を進めることを支援し、リーダーとしての役割を十分発揮させ、相応な資源を配分し、彼らの効率を高め、彼らの総合競争力を高める。

退出方面では、競争力のない本業以外の業務と不良資産を断固退出させる。

(2)産業構造調整を促進し、産業チェーン・サプライチェーンの安定性・競争力を高める

主として、産業チェーン・サプライチェーンのカギとなる部分とミドル・ハイエンド分野において、国有企業の配置を進める。  

同時に、我々は実体経済への新たな金融サービスのメカニズムを構築し、産業チェーン・サプライチェーンの全分野において、新しく有効な金融運営モデルを模索し、産業・金融結合の効果を高めなければならない。

(3)国家重大地域発展戦略を結びつけ、地域の協調発展を推進する

北京・天津・河北協調発展、広東・香港・マカオ大ベイエリア発展、長江デルタ一体化発展等の重大国家戦略を軸に、中央企業と地方国有企業が中央・地方協力の良好なメカニズムを確立することを推進し、各地方の比較優位性と資源の賦存状態を十分うまく運用して、地域発展を更に高い水準へと邁進させる。

(4)新たな動力エネルギーの育成を強化し、質の高い発展の新たな枠組を構築する

我々は、中央企業が、5G・工業インターネット(産業用モノのインターネット)・AI・データセンター等のような新しいタイプのインフラ建設に更に多く投資するよう指導・推進し、新世代情報技術と産業の深い融合を促進し、中央企業と地方国有企業のデジタル化・インテリジェント化転換を促進し、一連の方式を運用してグローバルな競争力を備えた世界一流の企業を育成する。

5.国内大循環を主体とし、国内・国際2つの循環が相互促進する新たな発展の枠組を早急に形成する際の、中央企業の位置づけ

中央企業は、国民経済における骨幹企業として、リード・牽引の役割を更に好く発揮しなければならない。我々は、第14次5カ年計画編成においても、この問題を研究している。

第14次5カ年計画期間においては、新たな発展段階において、国有企業とりわけ中央企業をリードし、引き続き国民経済と社会の発展のために基礎的な支えのパワーとなり、業種の質の高い発展をリードする要・コアのパワーとなり、産業チェーン・サプライチェーンの安定を擁護する重要な保障のパワーとなるよう力を入れ、国内大循環を主体とし、国内・国際2つの循環が相互促進する新たな発展の枠組の形成において、更に大きな役割を発揮させなければならない。重点は、以下の方面である。

(1)重要業種・カギとなる分野において、保障の役割を発揮させなければならない

国家安全と産業の基礎を擁護するうえで、国有資本の支えとしての能力強化に力を入れ、国防軍需工業、エネルギー・資源、食糧、戦略的ネットワークインフラ等の分野での保障水準を高め、国民経済と社会発展の基盤を打ち固め、国家の戦略・安全と人民の幸福・安寧を擁護しなければならない。

(2)産業チェーン・サプライチェーンの最適化・安定において、骨幹的役割を発揮させなければならない

産業チェーンの脆弱部分・欠落部分の補完に力を入れ、完全な国内生産・供給システムを構築し、カギとなる(生産)要素の供給能力、重点・難点をブレークスルーする能力、緊急物資の保障能力を増強し、産業チェーンの完全性をしっかり強固にしなければならない。

「工業基盤強化プロジェクト」に実施に力を入れ、カギ・基礎となる材料、コア・基礎となる部品、先進的・基礎的な技術、産業技術の基礎と基礎装置への投入を増やし、国有骨幹企業を核心とし、その他所有制企業を上流・下流として共同発展する産業生態システムと世界レベルの産業集積群の構築に力を入れ、産業の発展の全体水準向上をリード・牽引し、戦略的・全局的の完全な産業チェーンを作り上げなければならない。

(3)科学技術イノベーションにおいて、リーダー的役割を発揮させなければならない

新しいタイプの挙国体制における重要な役割を発揮させ、国有企業ができるだけ速やかにカギ・コアとなる技術を難関克服し、国家の戦略的科学技術パワーとハイレベルの研究開発のプラットホームの建設を加速し、自主的なイノベーション能力向上に力を入れ、イノベーション型のリーダー企業と精緻・特別・新しいものに転じた「隠れチャンピオン」企業を作り上げる。

(4)引き続きハイレベルの対外開放において、主力軍の役割を発揮させなければならない

「一帯一路」の質の高い発展を積極的に推進し、重大インフラ建設を骨格とし、産業パークをプラットホームとし、重点を絞って深掘りし、国内発展と「一帯一路」建設の相互の支えを強化しなければならない。経済のグローバル化の大ロジック・大趨勢と新たな変化・新たな試練に適応し、グローバルなパートナシップを発展させ、「安全・コントロール可能で、多元的・多様で、質が優れ効率が高く、自主的に開放した」資源調節ネットワークを構築しなければならない。企業の市場主体としての優位性を発揮させ、多国間の協力メカニズムを積極的に唱導・推進し、開放により主動的に発展の主動性と国際競争の主動性を勝ち取り、開放型世界経済の建設者・貢献者とならなければならない。

6.国有企業の上場

国有企業の上場強化は、資本の投入・資本の運営を強化し、企業の発展の質を高め、起業のイノベーション能力を高めることに、非常に重要な役割がある。

資本市場において、国有企業は重要な構成部分であり、現在把握しているデータでは、各レベルの国有株支配企業の上場会社は1000社を超え、A株市場の26%前後を占め、市場総額の約32%を占めている。

国有企業改革三年行動において、我々は国有企業の上場推進を通じて、混合所有制改革を含む各種改革を進めることを明確に提起した。これを強化しなければならない。

資産の証券化率については具体的指標を提起していないが、この方向性に疑いはない。我々は各種所有制の不断の協力の中で株式改革を進め、多方面のイノベーションを進め、企業の上場を推進する。

上場会社は、混合所有制改革の主要なキャリヤーであり、企業の内部ガバナンスを推進する重要なルートでもある。3年の改革を通じて、混合所有制の重要な特徴を代表する国有絶対株支配、総体株支配、あるいは国有資本参加の上場会社がますます増えるものと信じている。