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研究者のご紹介

新時代の社会主義市場経済体制(2)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年9月9日


4.更に完備された(生産)要素の市場による配分体制メカニズムを構築し、全社会の創造力と市場の活力を一層奮い立たせる

(生産)要素の市場による配分改革を重点とし、統一的に開放され、競争が秩序立った市場システムの建設を加速し、要素市場の制度建設を推進し、「要素価格の市場による決定、流動が自主的で秩序立ち、配分の効率が高く公平」を実現する。

(1)統一・開放された健全な要素市場を確立する

都市・農村を統一した建設用地市場の建設を加速し、「同権利は同価格、移転が円滑、収益を共有」する農村集団経営性建設用地の市場参入制度を確立する。農村宅地の所有権・資格権・使用権の三権分離を模索し、農村宅地の改革テストを深化させる。

戸籍制度改革を深化させ、超大都市を除く都市の戸籍登録規制を開放・緩和1し、メガロポリス(都市群)内の戸籍の自由移転・居住証の相互認証制度を模索する。

公共資源について、都市行政の等級に応じた配分から、実際のサービス管理人口規模に応じた配分への転換を推進する。

「規範化され、透明で、開放された、活力のある、強靭性をもった」資本市場の確立を加速し、資本市場の基礎制度の建設を強化し、情報公開を核心とした株式発行・登録管理制度の改革を推進し、強制的な市場からの退場と自主的な市場からの退場制度を整備し、上場会社の質を高め、投資家保護を強化する。社債の発行・登録管理制の実行を模索する。

「実体経済の構造と資金調達需要に適応し、多層レベルの、カバー範囲が広い、差別化された」銀行システムを構築する。

データ要素市場の育成・発展を加速し、データ資源のリスト管理メカニズムを確立し、データの権利所属の画定、開放・シェア、取引・流通等の基準・措置を整備し、社会のデータ資源の価値を発揮させる。デジタル政府の建設を推進し、データの秩序立ったシェアを強化し、法に基づいて個人情報を保護する2

(2)要素価格の市場化改革を推進する

主として市場により価格が決定される健全なメカニズムを整備し、価格形成に対する政府の不当な関与を最大限度減らす。

土地建設用地の価格形成メカニズムと遊休土地の利活用政策を整備し、都市の低効率利用地の再開発を推進し、国土空間計画に合致する前提の下、土地の複合開発利用・用途の合理的転換を推進する。

金利の市場化改革を深化させ、基準金利と市場化された金利の健全な体系を整備3し、国債イールドカーブの金利決定基準としての役割を更に好く発揮させ、金融機関が自主的に金利を決定する能力を高める。

人民元レートの市場化された形成メカニズムを整備し、双方向への変動の弾力性を増強する4

全国技術取引プラットホームの建設を加速し、科学技術の成果・特許等の資産評価サービスを積極的に発展させ、技術要素の秩序立った流動と価格の合理的な形成を促進する。

(3)要素の市場による配分方式を刷新する5

土地収用の範囲を縮小し、公共利益用地の範囲を厳格に画定し、土地収用目録と公共利益用地の認定メカニズムを確立する6

国有企業・公益事業体の改革、制度改革を推進し、土地・資産を処分し、遊休割当地の利活用を促進する。

工業用地について多様な主体・多様な方式による健全な土地供給制度を整備し、国土空間計画に合致する前提の下、混合産業用地の供給増加を模索する。

労働力・人材の社会的流動を促進し、企業・公益事業体の人材流動メカニズムを整備し、人材が所有制を跨いで流動するルートを円滑にする。

グローバル人材流動の新たなチャンスをしっかり掴み、更に開放的な国際人材交流協力メカニズムを構築する。

(4)商品・サービス市場の質・効率向上を推進する

商品市場のイノベーション・発展を推進し、市場の運営と監督管理のルールを整備し、重要産品の情報化された遡及追跡システムの建設を全面的に推進し、偽物・粗悪な商品を取り締まる長期有効なメカニズムを確立する7

優位性を相互補完し、協力・協調した現代サービス市場システムを構築する。

流通体制改革を深化させ、全チェーンの基準体系の建設を強化し、「インターネット+流通」を発展させ、全社会の物流コストを引き下げる。

消費者の権益保護を強化し、集団訴訟制度の確立を模索する。

5.政府の管理・サービス方式を刷新し、マクロ経済ガバナンス体制を整備する

政府の「経済の調節、市場の監督管理、社会の管理、公共サービス、生態環境保護」等の機能を整備し、マクロ・コントロールを刷新・整備し、マクロ経済ガバナンス能力を一層高める。

(1)有効・協調的なマクロ・コントロールの新メカニズムを構築する

質の高い発展の要求に適応し、新発展理念を体現したマクロ・コントロール目標体系、政策体系、政策決定・協調体系、監督管理・考課評価体系、保障体系を早急に確立する。

国家発展計画を戦略的方向とし、財政政策・金融政策・雇用優先政策を主要な手段とし、投資・消費・産業・地域等の政策が協同して力を発揮する、健全なマクロ・コントロールの制度体系を整備し、マクロ・コントロールの展望性・的確性・協同性を増強する。

国家重大発展戦略と中長期経済社会発展計画制度を整備する。

マクロ政策のカウンターシクリカルな調節の程度を科学的・穏健に把握し、経済構造の最適化・グレードアップに対する財政政策の支援作用を更に好く発揮させ8金融政策とマクロプルーデンス政策の2つの支柱による健全なコントロールの枠組みを整備する。雇用優先政策を実施し、民生政策の最低ラインを保障する機能を発揮させる9

消費を促進する体制メカニズムを整備し、経済発展に対する消費の基礎的役割を増強する。投融資体制改革を深化させ、供給構造の最適化に対する投資のカギとなる役割を発揮10させる。

国家経済安全保障制度の建設を強化し、国家食糧安全と戦略資源・エネルギー備蓄システムを構築する。経済ガバナンスの基礎データベースを最適化する。経済のモニタリング・予測・事前警告能力を強化し、ビッグデータ・AI等の新技術を十分利用し、重大リスクの識別と事前警告メカニズムを確立し、社会の予想の管理を強化する。

(2)現代財政制度・税制を早急に確立する

政府間の事務権限・財政権限の区分を最適化し、「権限と責任が明確で、財政力が協調し、地域のバランスがとれた」中央と地方の財政関係を確立し、各レベル政府の事務権限・支出責任・財政力が適応する安定した制度を形成する11

中央は、「知的財産権の保護、年金保険、地域を跨った生態環境保護」等の方面の事務権限を適切に強化し、中央と地方の共同事務権限を減らし、規範化する12

「基準が科学的で、規範化され透明で、制約が有力な」予算制度を整備し、予算の業績効果管理を全面的に実施し、財政資金の使用効率を高める。

法に基づき、「管理が規範化され、責任が明確で、公開・透明、リスクをコントロール可能な」政府の借入・資金調達メカニズムを構築し、監督管理・問責を強化する。

地方融資プラットホーム会社を整理・規範化し、政府の資金調達機能を分離する。

税制改革を深化させ、直接税制度を整備し、そのウエイトを徐々に高める13。一部品目の消費税課税段階を後ろに移すことを検討する。総合と分類が結合した個人所得税制度を確立・整備する。不動産税の立法を穏当に推進する14。健全な地方税体系を整備し、地方税制度を調整・整備し、地方税の税源を壮大に育成し、地方税の管理権を着実に拡大する15

(3)金融政策・マクロプルーデンス政策と金融監督管理の協調を強化する

現代中央銀行制度を建設し、中央銀行の金融政策の健全な政策決定メカニズムを整備し、ベースマネーを放出するメカニズムを整備し、金融政策の「数量型コントロールを主とするものから、価格(金利)型コントロールを主とするものへの転換」を推進16する。

現代金融監督管理システムを確立し、マクロプルーデンス管理を全面的に強化し、綜合監督管理を強化し、機能の監督管理と行為の監督管理を際立たせ、交差的金融商品の監督管理規則を制定する。

脆弱部分の金融監督管理の建設を強化し、監督管理の空白を解消17、システミック金融リスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。法に基づき、中央と地方の金融監督管理の権限・責任の分業を画定し、地方政府の管轄地の金融監督管理の職責とリスク処理責任を強化する。

金融消費者を保護する健全な基本制度を確立する。人民元の資本項目の兌換化を順序立てて実現し、人民元の国際化を着実に推進する。

(4)科学技術イノベーションの制度と組織体系を全面的に整備する

国家イノベーション体系の建設を強化し、新たな国家中長期科学技術発展計画を編成し、国家の戦略的科学技術力を強化し、社会主義市場経済の条件下で、カギとなるコア技術の難関を攻略する新しいタイプの挙国体制を構築し、国家の科学研究資源を一層重点分野・重点プロジェクト・重点単位に集中させる。

基礎研究・オリジナルなイノベーションを奨励・支援する健全な体制メカニズムを整備し、重要分野において国家重大科学技術インフラを適度に前倒しで配置・建設し、重大科学技術インフラの建設・運営への多元的な投入メカニズムを検討し、民営企業がカギとなる領域・コア技術のイノベーション難関攻略に参加することを支援18する。

重大公共事件に対応する健全な科学研究の蓄積と支援システムを確立する。中央財政による科学技術計画形成メカニズムと組織的実施メカニズムを改革・整備し、企業が科学研究任務を引き受けることをより多く支援し、企業が研究開発投入を増やすことを奨励し、科学技術イノベーションの業績効果を高める。

企業を主体とし、市場を導きとし、産・学・研究機関が深く融合した技術イノベーション体系を確立し、大中小企業と各種主体が助け合うイノベーションを支援し、科学技術成果の実用化メカニズムを刷新・促進し、技術成果の実用化・公開・取引と監督管理システムを整備し、科学技術成果の実用化・産業化を推進する。

科学技術人材の発見・育成・インセンティブメカニズムを整備し、科学研究ルールに合致した健全な科学技術管理体制と政策体系を整備し、科学技術評価システムを改善し、試みとして、職務による科学技術成果の所有権あるいは長期使用権を科学研究者に賦与する。

(5)産業政策・地域政策の体系を整備する

産業政策の包摂性・機能性への転換を推進し、技術革新と構造のグレードアップへの支援を強化し、産業政策と競争政策の協同を強化する。先進製造業の発展を推進し、実体経済を振興する健全な体制メカニズムを整備する。市場化・法治化した過剰生産能力解消の長期有効なメカニズムを確立し、市場化した合併・再編、転換・グレードアップを促進することに資する健全な体制と政策を整備する。

地域が協調発展する新たなメカニズムを構築し、北京・天津・河北の協同発展、長江経済ベルトの発展、長江デルタ地域の一体化発展、広東・香港・マカオ大ベイエリア建設、黄河流域の生態保護と質の高い発展等の、国家重大地域戦略の実施を推進するメカニズムを整備し、「主体的機能が明白で、優位性を相互補完し、質の高い発展」の地域経済の配置を形成する。都市と農村が融合発展する健全な体制メカニズムを整備する。

(6)一流のビジネス環境の建設により政府サービスの持続的な最適化を牽引する

「行政の簡素化・権限の委譲、管理と開放の結合、サービスの最適化」改革を深く推進し、行政審査・許認可制度の改革を深化させ、行政許可事項を一層簡素化し、企業経営に係る事項の「営業許可証と関連許認可証明書の分離」改革を実行し、「営業許可証の取得後は、他の許認可を簡略化」を大いに推進する。

プロジェクト建設項目の審査・認可制度の改革を全面的に展開する。投資の審査・認可制度の改革を深化させ、投資プロジェクトの建設報告手続を簡素化・整理合理化し、投資プロジェクト承諾制の改革を推進し、全国投資プロジェクトをオンライン審査・認可・監督管理プラットホームに委託して、建設中・事後監督管理を強化する。

行政管理・サービス方式を刷新し、「インターネット+政務サービス」を深く展開し、全国一体化した政府サービスプラットホームの建設を早急に推進する。インターネット・ビッグデータ・AI等の技術手段を健全に運用して行政管理を進める制度ルールを確立19する。

「ビジネス環境最適化条例」を実施し、ビジネス環境の評価システムを整備し、全国範囲でビジネス環境評価を適時展開し、市場化・法治化・国際化されたビジネス環境を早急に作り上げる。

(7)質の高い発展の要求に適応する社会信用体系と新しいタイプの監督管理メカニズムを構築する

信義誠実建設の長期有効なメカニズムを整備し、信用情報の共有を推進し、政府部門の信用情報を市場主体に秩序立てて開放するメカニズムを確立する。全社会をカバーする健全な信用情報収集システムを整備し、グローバルな発言権を有する信用情報収集機関と信用格付け機関を育成する。「信用情報取引+」プロジェクトを実施する。

信用を失墜した主体の信用修復メカニズムを整備する。政務の信義誠実のモニタリング・ガバナンスシステムを確立し、政府が信用失墜した場合の健全な責任追及制度を確立する。

市場の監督管理、品質の監督管理、安全の監督管理を厳格にし、違法への懲戒を強化する。市場の監督管理の改革・イノベーションを強化し、「検査官と検査対象を無作為に抽出し、検査過程・処理結果を随時公開する」監督管理を基本手段とし、重点的な監督管理により補充し、信用監督管理を基礎とする新たな健全な監督管理メカニズムを整備する。食品安全・薬品安全・ワクチンの安全を重点20とし、権威が統一された健全な全プロセス食品・薬品安全監督管理システムを整備する。インターネット市場の規制体系を整備し、インターネット市場の健全な発展を促進する。新業態の包摂的で慎重・周到・健全な監督管理制度を整備する。


*以降、新時代の社会主義市場経済体制(3)に続く。

  1. 2020年は1億人の都市常住出稼ぎ農民とその家族に都市戸籍を与える最終年度である。
  2. 最近のデジタル化に対応した、新しい内容である。
  3. 既存の貸出基準金利を貸出プライムレートに切り換えていく改革が引き続き推進されることになる。
  4. これは、米国に配慮した記述でもある。
  5. これは、3月20日付の他の改革文件で、詳細な記述がある。
  6. これは、地方政府が農民から農地を強制収用して、商業・住宅用地の用途転換し、ディベロッパーに高値で転売して収入を得る「土地財政」を防止する意味があろう。
  7. これは、欧米・日本に配慮した記述でもある。
  8. 財政政策の役割を、経済成長の安定ではなく、経済構造の調整・改革支援だとしていることに注意が必要である。
  9. 雇用保障が民生政策の最低ライン保障となることを明確にしている。
  10. 経済成長への消費の役割、供給構造の最適化への投資の役割と、両者の役割をはっきり分担している。もはや、投資は経済成長の主たる担い手ではないのである。
  11. このため、2020年度予算では、中央から末端地方政府に直接財政資金が移転する特殊移転支出制度が創設された。
  12. 中央と地方の事務権限を切り離していく方向が明確にされている。
  13. 現在、増値税の段階的税率引下げが進められている。
  14. 不動産税の立法化が未だ難航していることが分かる。
  15. 地方税を単独財源として、大幅に充実させる方向が明確にされている。
  16. 金利による金融政策への方向転換が明記された。
  17. しばしば、各金融監督機関の監督の隙間で、様々なリスク金融商品が作られていた。
  18. イノベーションに対する民営企業の役割が明記された。
  19. 最新技術により行政管理を高度化する方向が明記されている。
  20. 新型コロナの流行により、新たにワクチンの安全が追加された。