新型肺炎とマクロ政策(41)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年7月30日


はじめに

本稿では、7月22日の国務院常務会議、23日の国務院第3回廉潔政治工作会議、24日の不動産工作座談会、28日報道の胡春華副総理の北京市雇用対策視察の概要を紹介する。

7月22日 国務院常務会議
(1)新しいタイプの都市化建設

人を核心として新しいタイプの都市化を推進することは、党中央・国務院の政策決定・手配であり、内需の最大の潜在力が所在し、「新しいタイプのインフラ、新しいタイプの都市化、重大プロジェクト」建設の重要な内容であり、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)をしっかり実施し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)を実施して、経済の基盤をしっかり安定させることにとって、重要な意義を有する。

「政府活動報告」が提起した重点に基づき、都市の脆弱分野の建設を強化し、農民が都市に入って就業し家を構えることをめぐり、県都の公共施設とサービス水準を高めなければならない。

①防疫・冠水防御・防災・減災の中で暴露された問題について、公共衛生体系と関連施設の建設の強化に力を入れ、重大疫病に対する都市の予防・対応能力を高めなければならない。

都市の河道・堤防・ダム・排水管網等の洪水防御・冠水排出施設を科学的に計画・改造・整備し、台風・地震・火災等の各種災害防御能力の建設を強化する。

②大衆の生活の品質需要を満足させることに着眼し、老朽化した住宅団地の改造を加速し、環境保護施設、コミュニティの公共サービス、スマート化改造、公共駐車場等の脆弱部分の建設を増やし、都市の発展の質を高めなければならない。

③大量の農民が県都で居住・発展する需要に対して、県都をキャリヤーとした都市化建設を増やし、県都の交通、ゴミ・汚水処理等の公共施設を整備し、都市に入った農民のハードな需要に適応した住宅を建設し、県都の受容能力を高めなければならない。

④多元化した投入を誘導・促進して、新しいタイプの都市化建設を支援しなければならない。

公益的プロジェクトの財政資金の保障メカニズムを整備し、地方政府特別債資金を一定の収益があり、確かに建設が必要な公共施設プロジェクトに傾斜させる。財政資金の呼び水効果を発揮させ、公共事業プロジェクトの合理的なリターンのメカニズムを確立し、社会(民間)資本を吸収・投入し、開発・政策性金融機関と商業金融機関が中長期貸出支援を増やすよう積極的に誘導する。各地方は、プロジェクトの備蓄と開発を強化し、都市発展の歴史的な遺留課題を段階的に解決しなければならない。実際から乖離した「イメージ作りのプロジェクト」の実施を断固防止する。

(2)柔軟な就業

今年の雇用情勢は峻厳であり、柔軟な就業は規模が大きく、空間が大きく、雇用安定の重要なルートである。地方とりわけ市と区・県政府の責任を徹底させ、「行政の簡素化・権限の委譲、管理と開放の結合、サービスの最適化」改革の深化を通じて、柔軟な就業に対する不合理な規制を廃止し、労働者の合理的で秩序立った経営を誘導する。

①個人経営を奨励する。

既に打ち出した各困難緩和政策をしっかり実施する。大学卒業生、出稼ぎ農民、一時帰休・失業者等の重点層が個人経営に従事する場合には、規定に基づき起業補助金・債務保証付貸出・税制優遇等の支援を与える。

②全日制以外の就業を支援する。

就業困難者、大学離籍から2年末の段階で未就職の大学卒業生が全日制以外の仕事に従事する場合には、規定に基づき社会保険料補助金を支給する。

③Eコマース、MaaS(モビリティー交通サービス)、オンライン教育・訓練、オンライン医療等の新たな就業形態について、包摂的で慎重・周到な監督管理を実行し、インターネットプラットホームが更に多くの雇用・仕事を創造するよう奨励する。

④就職公共サービスを強化する。

企業の柔軟な雇用の需要に適応し、アルバイト市場を発展させる。柔軟な就業者の給与・職業安全等の権益を擁護し、労働者の賃金未払いを厳禁する。プラットホーム就業の労働保障政策を検討し制定する。

⑤社会が必要とする新職業を動態的に公表し、的確な訓練を展開し、大衆の柔軟な就業能力を増強する。

7月23日 国務院第3回廉潔政治工作会議

中国政府網2020年7月24日が伝えた、李克強総理の経済関連の発言は、以下のとおりである。

(1)減税・費用引下げ

減税・費用引下げは、地方財政収支のバランス圧力を増大したが、財政力が再び逼迫しても、市場主体のパイに手を着け、規定に反して費用を徴収しようと考えてはならない。行きすぎた税の取り立てや、ほしいままに社会保険料のベース下限を引き上げる等の行為に対しては、厳格に調査処分しなければならない。

わが国は、億を上回る市場主体があるが、これは雇用安定・民生保障の基礎である。市場主体の困難緩和・発展のために、我々は減税・費用引下げの包括的な政策を打ち出し、年間に企業のために新たな負担減は2.5兆元を超えると予想される。各レベル政府は、減らすべき税は断固完全に減らし、引き下げるべきものは断固完全に引き下げなければならない。困難な企業の社会保険料納付緩和のように、申請してはじめて享受できる政策については、手続を簡便化し、便宜を提供して、公開透明に処理しなければならず、チャンスを狙ってレントを設定し、レントシーキングを行うことを決して許さない。

企業の困難緩和を援助し、金融による支援と銀行が利益を移譲することも完全実施しなければならない。新たに増やした貸出資金は、困難な企業とりわけ中小・零細企業と個人工商事業者を重点支援し、金融系統組織は、企業に1.5兆元の利潤を移譲するという約束を履行しなければならない。これと同時に、一部の自然独占業種は料金徴収を減らし、価格を引き下げ、企業の生産経営コストの引下げを幇助しなければならない。業種協会・商会、仲介サービス機関等の手数料徴収を一層規範化し、企業からみだりに費用を取り立てる行為を断固整理し、政府機関・国有企業が民営企業・中小企業への未払い金を、期限を切って清算することについて、政府部門は、これを率先しなければならない。

(2)特殊移転支出

今年増加する財政赤字、発行する疫病対策特別国債は2兆元の資金を集めるが、これは特殊な時期の特殊な措置であり、主として雇用・民生・市場主体の保障に用いる。各地方と関連部門は、特殊移転支出メカニズムを厳格に執行し、新たに増やした財政資金を末端まで行き渡らせ、迅速に実施し実効を上げなければならない。これは、1つの改革であり、利益構造に対して重大な調整を進めるのみならず、資金流出を防ぎ、腐敗リスクを減らすこともできる。

①精確な直接交付を確保しなければならない。

省レベル政府は、資金のパイプ役をしっかり果たし、中央が下達した資金をすぐに市・県の末端に交付し、放置してはならない。方法を考えて、末端の収支赤字の補填を援助しなければならない。

②有効な使用を確保しなければならない。

市・県は、実名台帳を確立し、厳格に要求に基づき直接交付された資金をうまく用い、真に援助が必要な困難な企業と困窮大衆の身にまで達することを確保し、決して独占・流用を許さない。

③監督を厳格に強化しなければならない。

財政部門は、すべてをカバーし、すべてのチェーンがつながった監督・コントロール系統を確立し、各レベル国庫はドット対ドットで直接資金を交付し、会計検査部門は特別会計検査を展開しなければならず、虚偽報告・横領、留保・流用等の法・規則に違反した行為に対しては、発見しだい一気に調査・処分しなければならない。

7月24日 不動産工作座談会

韓正副総理が主催した。会議には、北京・上海・広州・深圳・南京・杭州・瀋陽・寧波などの10都市の政府責任者が出席した。このような会議が急遽開催されたということは、包括的マクロ政策の発動により、沈静化しつつあった不動産市場に再び異変が現れたということであろう。

韓正服装地の発言の概要は以下のとおりである。

「不動産の長期有効なメカニズムは実施して以降、顕著な成果を得ており、十分肯定に値する。全局から出発することを堅持し、一層認識を高め、思想を統一し、『住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない』という位置づけをしっかり堅持し、不動産を短期的な経済刺激の手段としないことを堅持し、地価・住宅価格・予想の安定を堅持しなければならない。都市の事情に応じた施策を実施し、一都市一政策とし、各地方の実際から出発して、差別化したコントロール措置を採用し、適時科学的・精確にコントロールし、不動産市場の平穏で健全な発展を確保しなければならない。

①問題志向を堅持し、現在不動産市場で出現している新たな情況・新たな問題を高度に重視し、常に不動産コントロールの手綱を引き締め、長期に有効なメカニズムを断固しっかり実施・推進しなければならない。

②市政府の主体的責任制を全面的に実施し、問題を発見したら即座に反応して処置し、的確な政策措置を適時採用しなければならない。

③不動産金融のプルーデンス管理制度をしっかり実施し、ストックをしっかり安定させ、フローを厳しく抑制し、資金が規定に反して不動産市場に流入することを防止しなければならない。

④市場のモニタリングを強化して、市場の異動に対して遅滞なく提示・指導・事前警告を行い、市場の情勢を精確に分析しなければならない。

⑤住宅用地の市場モニタリング指標体系を早急に確立し、各地の土地の備蓄と既に譲渡された土地の建設の進展情況を定期的に公開し、社会の監督を受けさせなければならない。

⑥財政・租税政策の役割を発揮させ、住宅需要を有効に調節しなければならない。

⑦不動産市場の乱れた現象を引き続き整頓し、法律・法規に違反した行為を、法に基づき有効に調査処分しなければならない。

⑧住宅保障政策をしっかり実施し、土地の事情に応じて都市の老朽化した住宅団地の改造を推進し、都市新市民と若者の住宅問題の解決に力を入れなければならない。

7月28日 中国政府網記事 胡春華副総理が北京の雇用対策を視察

胡春華副総理は最近、インターネットプラットホーム企業を訪れ、募集サービスビッグデータプラットホーム、オンライン募集生放送等の情況を実地考察し、一部の人材資源サービス機関、インターネットプラットホーム企業と座談し、次のように指示した。

「柔軟な就業は、雇用安定・民生保障にとって、意義は重大である。現在の峻厳な雇用情勢に対して、柔軟な就業を雇用安定の重要な掴みどころとし、一層政策支援を強化し、更に多くの雇用・仕事を創造し、労働者とりわけ農村貧困人口と都市低所得層が多様なルートで柔軟に就業することを促進しなければならない。

各種の人材資源サービス機関、インターネットプラットホーム企業の役割を十分発揮させ、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、AI等の情報技術手段をうまく運用して、就業サービスを改善し、需給の有効なリンクを促進し、雇用の安定を確実に促進し、雇用の構造的矛盾を緩和しなければならない。

柔軟な就業の不断の拡大傾向に適応し、関連労働・社会保障政策を検討・制定し、地方・起業が大胆に模索することを奨励し、柔軟な就業のために良好な発展環境を作り上げなければならない」。