新型肺炎とマクロ政策(37)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年7月14日


はじめに

本稿では、7月8日の国務院常務会議、「民営企業の交通インフラ建設の発展への参加支援に関する意見」、9日の全国対外貿易安定・外資安定工作テレビ電話会議、10日の財政・税務部門座談会、農業・農村有効投資拡大テレビ電話会議、13日の経済情勢専門家・企業家座談会の概要を紹介する。

7月8日 国務院常務会議

「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)政策の要求に基づき、現在に立脚し、億を上回る市場主体をめぐり、既に手配した財政・社会保障・金融等の規模が大きい困難緩和政策をしっかり実施するだけでなく、長期に着眼し、改革の方法を用いて市場化・法治化・国際化したビジネス環境を作り上げ、市場主体の活力をより大きく奮い立たせなければならない。

①市場主体へのサービスを強化しなければならない

プロジェクト建設の全プロセスについてオンラインによる審査・認可を早急に推進する。許可証を必要とする業種に対する許可証の一本化・地域を跨った一般許可の実行を積極的に模索する。年内に工業製品生産許可証の管理権限を省レベルに降ろし、商標登録の平均審査期間を4カ月以内に圧縮する。

②就業・起業のために便宜を提供しなければならない

新業態に対する包摂的で慎重・周到な監督管理を整備し、プラットホーム企業のコミッション・バーコード決済手数料引下げを誘導し、柔軟な就業を促進する。教育・医療・スポーツ等の分野の不合理な参入条件を整理する。2021年6月末前に、職称情報のオンライン照合を実現する。

③外資・対外貿易環境を最適化しなければならない

全国地区級以上の都市に外資企業の登記権限を授権する。輸出入段階の監督管理証明書類は、原則として「1つの窓口で一括受理」とする。

7月8日 国家発展改革委員会等12部門が「民営企業の交通インフラ建設の発展への参加支援に関する意見」を発出

「意見」は、次のことを明確にしている。

新しいタイプの商業モデルを作り上げ、民営企業が重大鉄道プロジェクト建設及び鉄道旅客・貨物の駅と場(ヤード)の経営・開発、モバイルインターネットサービス、宅配・物流などの業務経営に参加することを支援・奨励する。

民営企業が貨物輸送機能を中心にした空港、汎用(ジェネラル・アビエーション)空港、ヘリポート建設プロジェクトに参加し、航空貨物輸送の国内・国際航空権を取得し、国際物流サプライチェーン体系建設を加速することを支援する。民営企業が空港サービス付帯施設の建設・運営に参加することを支援する。

航空貨物輸送に従事する民営企業が、貨物輸送機の導入規模を拡大することへの支援を検討する。

専門経験をもつ民営企業が、高速道路サービスエリアの経営活動に参加することを奨励する。

社会(民間)資本の都市駐車施設建設・運営への参加ルートを広げ、民営企業が5G、モノのインターネット、インターネットなどのスマート技術と、駐車施設の建設・管理・運営との深度ある融合を支援・奨励する。

7月9日 全国対外貿易安定・外資安定工作テレビ電話会議

胡春華副総理が次のような講話を行った。

「習近平総書記の重要指示精神を断固貫徹し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、疫病防御の常態化の前提の下、あらゆる手を尽くして対外貿易・外資の基盤をしっかり安定させ、経済社会の発展の大局のために、更に積極的な貢献を行わなければならない。

対外貿易・外資は、わが国の経済発展において重要な地位にあり、対外貿易・外資をしっかり安定させることは、『6つの安定』政策をしっかり実施し、『6つの保障』任務を実施する重要な内容である。

国際環境とグローバルな疫病情勢が峻厳・複雑な情況下、対外貿易・外資の市場主体を全力でしっかり保障し、各支援政策の実施にしっかり取り組み、企業へのサービスを全面的に強化し、企業が苦境の中で生存を求め、ビジネスチャンスを探すことを支援しなければならない。

市場の保障を対外貿易安定の緊迫した任務とし、受注の確保を市場保障の主要な掴みどころとし、方法を考えて企業の市場におけるシェア安定を助け、企業が国内・国際の2つの市場を貫通・統一することを支援し、対外貿易の新業態・新モデルの急速な発展を支援しなければならない。

産業チェーン・サプライチェーンの安定・完全性の維持に力を入れ、グローバル産業チェーンの再建に主動的に参加し、外資企業の産業チェーンにおける役割を十分発揮させなければならない。

対外貿易・外資の発展をハイレベルな開放の重要な支えとし、より有効な開放方式を積極的に模索し、ハイレベルな開放に適応したビジネス環境を作り上げなければならない。

各地方・各部門は協同・協調して、対外貿易・外資の発展を支援する合成力を形成し、政策のレベルごとの伝達を確保し、有効に実施しなければならない」。

7月10日 財政・税務部門座談会

韓正副総理が開催し、次のように述べた。

「今年に入り、財政・税務部門は、積極的財政政策を更に積極的にし、成果を得るという要求を真剣に貫徹実施し、各方面の政策は顕著に成果を得ている。

今後、大局観念を一層強化し、協同・協調を強化し、政策の合成力を形成し、政策効果を大きくして、経済の平穏な運営と社会の大局の安定のために有力な支えを提供しなければならない。

情勢をはっきり認識し、(最悪の事態を想定して)最低ラインをしっかり守るという考え方を牢固に樹立しなければならない。

自信・決意を確固とし、自身の事柄にしっかり取り組み、自らを強化する中で主動性を勝ち取り、経済の基盤をしっかり安定させなければならない。

減税・費用引下げ政策をきめ細かく実施し、減らすべきものは完全に減らし、下げるべきものは完全に引き下げ、資金が直接市・県・末端に達し、直接企業・人民に恩恵を及ぼすようしっかり取り組み、末端の『基本民生・給与・運営』の最低ラインを確実に保障しなければならない。

結果を導きとすることを堅持し、末端政府・市場主体・人民大衆が実感することにより、政策の実施効果を推し量らなければならない。

地方債資金をうまく管理・使用し、関連制度を堅持・整備し、地方政府の債務の隠れた弊害要因を適切に秩序立てて解消しなければならない。

3大堅塁攻略戦の戦いを支援し、脱貧困堅塁攻略の目標・任務の達成を確保し、地域発展の重大戦略実施を支援し、地域発展において直面する新たな問題を的確に解決しなければならない。

科学技術分野への投入を増やし、科学技術体制改革を支援し、科学ルールに従って基礎研究を強化し、カギ・コアとなる技術に焦点を絞って科学技術の難関を攻略しなければならない。

財政支出を厳格に引き締めてしっかり管理し、フォローアップ・監督を強化し、財政資金の使用効率を高めなければならない」。

7月10日 農業・農村有効投資拡大テレビ電話会議

胡春華副総理の講話の概要は、以下のとおりである。

「習近平総書記の重要指示精神を真剣に貫徹実施し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、農業・農村の建設投資を強化し、農業の基礎を更にしっかり打ち立て、『三農』の脆弱部分を更にしっかり補強し、農村の全面振興のために堅実な支えを提供しなければならない。

農業・農村における有効な投資の拡大は、農業・農村の現代化水準を高めるための切迫した要求であり、重点分野を軸に引き続き投資を増やし、投資の下振れ傾向の反転に努力しなければならない。

現代農業施設の建設を加速し、ハイレベルの農地・水田建設を強化し、家畜・家禽飼育施設の水準を高め、農業の全プロセスの全面機械化を推進し、現代農業流通・加工インフラの建設を加速しなければならない。

農村インフラ建設を加速し、道路・電力・通信等村の基本ハードウエアを強固にし、トイレ・汚水処理・燃料等の生活施設と公衆トイレ・公共交通ターミナル・活動場所等の公共施設の建設を推進しなければならない。

農村公共サービスの改善を加速し、県都の総合サービス能力を強化し、郷鎮を農民サービスの地域センターとし、村のサービス能力建設を強化し、県・農村が一体化し、機能が相互補完的にリンクした公共サービス体系を形成しなければならない。

農業・農村における有効な投資の拡大は、1つの系統的なプロジェクトであり、各地方・関係部門は統一的な協調を強化し、責任の実施を強化しなければならない。

プロジェクトの計画・設計をしっかり行い、土地の事情に応じて組織的に実施し、社会(民間)資本と農民の建設参加の積極性を十分動員しなければならない」。

7月13日 経済情勢専門家・企業家座談会

李克強総理が主催した。李克強総理の発言概要は、以下のとおりである。

「今年の疫病の衝撃と世界経済の衰退は、わが国経済に未曾有の影響をもたらしている。習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、全国上下が共同で努力し、疫病を有効に抑制し、時機を失することなく業務・生産再開を推進して、最近経済は伸びが回復する勢いが現れ、徐々に安定を回復する態勢が現れ、中国経済の強大な強靭性と巨大な挽回の余地を示しており、発展への自信を確固としなければならない。

しかし、国際環境の不確定性はなお増加しており、情勢は依然として峻厳で、国内経済が直面する困難・試練とりわけ雇用圧力はなお十分際立っており、引き続き激戦への準備をしっかり行わなければならない。

習近平『新時代の中国の特色ある社会主義』思想を導きとし、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、疫病の常態化した防御をしっかり行い、『6つの安定』『6つの保障』をしっかり軸として、企業の困難緩和を助け、市場の活力を奮い立たせる規模の大きい政策を全面実施し、更に強力に改革開放を推進し、経済の基盤をしっかり安定させ、基本民生をしっかり保障し、リスクを有効に防止して、年間の経済社会発展の目標・任務の達成に努力しなければならない。

マクロ政策実施の一定期間における有効性を増強し、雇用・民生・市場主体の保障に力を入れなければならない。

積極的財政政策・穏健な金融政策・雇用優先政策を堅持し、かつ全面実施して、企業に対して更に大規模な減税・費用引下げ・利益移譲を行う。

今年は、改革を通じて、新たに増やした財政資金を末端に直接交付するメカニズムを確立した。できるだけ速やかに効果が現れ、企業・人民に恩恵をもたらすことを確保しなければならない。

流動性の合理的充足を維持し、企業とりわけ中小・零細企業の資金調達難・資金調達コスト高の問題の緩和を一層推進し、現代の技術・手段を運用してインクルーシブファイナンスを発展させ、貸出量を有効に増やすのみならず、綜合的な資金調達コストを引き下げる。

多くの措置を併せ打ち出して、大学卒業生・帰郷した出稼ぎ農民等の重点層の就業を援助し、労働集約型企業に対し差別化した税・費用、金融支援政策を実施し、より多くの雇用吸収を奨励する。

改革開放を動力とすることを堅持し、市場主体の活力を十分奮い立たせ、発展の強靭性を増強しなければならない。

『行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化』改革を一層深化させ、ビジネス環境を最適化し、資源配分における市場の決定的な役割を更に大きく発揮させ、政府の役割を更に好く発揮させる。

起業・イノベーションの生態環境を整備し、人材を誘導・集約し、工業インターネット(産業用モノのインターネット)を大いに発展させ、大中小企業の調和のとれた発展により、更に多くの新業態・新モデルを生み出し、更に大きい開放条件の下で、国際競争・協力の新たな優位性を育成する。

改革の方法を用いて消費の潜在力を更に大きく発揮させ、オンライン・オフラインの融合を通じて農産品の販売と輸出商品の国内販売等の新たな空間を開拓し、品質の優れた消費財の供給を豊富にし、消費のグレードアップを誘導する。

政府投資の役割を発揮させ、社会(民間)のパワー投入を牽引し、『新しいタイプのインフラ、新しいタイプの都市、重大プロジェクト』等のプロジェクト建設を推進して、有効な投資によって関連産業の発展と雇用の増加を牽引する」。