新型肺炎とマクロ政策(36)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年7月9日


はじめに

本稿では、7月5日の胡春華副総理重慶市雇用対策視察、7日の企業安定・雇用保障への金融支援工作座談会の概要を紹介する。

7月5日 胡春華副総理、重慶市の雇用対策を視察

次のように述べた。

「疫病の衝撃等の影響を受け、今年のわが国の雇用情勢は十分峻厳であり、(最悪の事態を想定し)最低ラインを保障する考え方を強化し、あらゆる手を尽くして雇用を安定・拡大し、雇用と社会の大局の安定を確保しなければならない。

都市の困窮大衆の雇用支援に更に力を入れ、自ら仕事を見つける・自主的に起業することを奨励し、多くのルートで柔軟な雇用を支援し、企業が困窮者を採用することへの政策支援を増やし、失業者の基本生活を確実に保障しなければならない。

就職市場の需給のリンクを強化し、各レベル・各種人材資源サービス機関の役割を十分発揮させ、多くの形式でオンライン・オフラインの募集活動を展開し、仕事を末端とコミュニティに届け、政策の享受・失業登録・職業紹介等の就職サービスを簡便・迅速にしなければならない。

職業技能の向上キャンペーンを着実に推進し、技工学校の募集規模を拡大し、出稼ぎ農民・貧困労働力等に対し特別訓練を展開し、仕事を与えて職業訓練に代える等、訓練方式を刷新し、雇用安定と技能向上のウインウインを実現しなければならない」。

7月7日 企業安定・雇用保障への金融支援工作座談会

人民銀行と銀行保険監督管理委員会が共催した。

金融系統組織は、企業を安定させて雇用を保障する活動の重要性・緊迫性を十分認識し、政治的立ち位置を確実に高め、責任感を強化し、各金融支援政策を断固しっかり実施し、企業安定・雇用保障への金融支援を増やし、企業の生産回復と経済社会の安定・発展のためにパワーを貢献しなければならない。

新型肺炎の疫病が発生して以来、党中央・国務院の堅固な指導の下、金融安定発展委員会の直接指導の下、金融系統組織は疫病の衝撃への対応を一等大事とし、多くの政策措置を積極的に採用し、マネー・貸出支援の総量を増やし、金融監督管理政策を整備し、貸出金利の低下を誘導し、貸出先の構造を最適化し、疫病防御と経済社会の発展のために有力な支援を提供した。

1-5月、人民元の各貸出は10.3兆元増え、前年同期より2.3兆元増えた。5月、小型・零細企業向け貸出の平均金利は、昨年末より42ベーシスポイント低下し、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス残高は前年同期比25.4%増となり、各貸出の伸びより12.2ポイント高かった。

各金融機関は、企業安定・雇用保障への支援を、当面及び今後一時期の活動の重点中の重点としなければならない。

貸出のテンポをしっかり把握し、市場主体の実際の需要との一致を維持し、貸出資金の実体経済への平穏な投下を確保しなければならない。

小型・零細企業へのサービス能力向上に力を入れ、金利決定権限の内部移転・支店の総合業績効果審査の際のウエイト付け等のインセンティブメカニズムを整備し、フィンテックの運用を強化し、リスク評価能力を高めなければならない。

職責を尽くせば免責とする要求を実施し、末端支店と業務従事者が真に進んで貸し、貸すことを望み、貸すことができ、貸そうとするようにしなければならない。

支援すべきものと抑制すべきものを分け、差別化した貸出政策を実施し、製造業・戦略的新興産業等を重点的に支援し、製造業向け中長期貸出のウエイトを高めなければならない。

中小・零細企業への貸出の元本償還・利払い猶予の政策をしっかり実施し、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスについては、猶予すべきものはすべて猶予しなければならない。小型・零細企業向け無担保貸出を強化し、第一の償還財源の審査を重視し、無担保貸出の商品体系を豊富にし、無担保貸出の効率を高めなければならない。

各金融機関は、政治的高みから金融と経済の共生・共栄関係を認識し、企業安定・雇用保障活動を確実にしっかり実施しなければならない。

サービスの質・効率を高め、合理的に利益を移譲し、手数料徴収を減らし、実体経済に直接達する政策手段の実施が実効を上げることを確保しなければならない。

インターネット・ビッグデータ等の技術を積極的に運用し、サービス方式を刷新し、「新しいタイプのインフラ・新しいタイプの都市化・重大プロジェクト」とりわけ製造業、国際産業チェーン企業、及び科学技術・グリーン・高齢者ケア・家事サービス等の民生サービス業への金融支援を増やさなければならない。

安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、安定成長の基礎の上にリスクを防ぐことを重視し、リスクの最低ラインをしっかり守らなければならない。

組織的指導を強化し、作風を転換し、明確なスケジュール表・路線図を制定し、施策への責任を徹底させ、活動任務を達成しなければならない。