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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(35)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年7月7日


はじめに

本稿では、7月1日の国務院常務会議と、同日の人民銀行の再貸出・再割引金利引下げの概要を紹介する。

7月1日 国務院常務会議
(1)中小・零細企業への金融サービス増強

「6つの安定」「6つの保障」政策をしっかり実施し、とりわけ中小・零細企業、民営企業の生存・発展を保障するには、金融支援を増やし、中小銀行の不可欠な役割を発揮させなければならない。

今年、新たに増やす地方政府特別債の限度額のうち一定程度を、地方政府が法規により転換債購入等の方式を通じて、中小銀行の資本金を合理的に補充する新たなルートを模索することを認める。

①持続可能で市場化された経営能力を備えた中小銀行が資本金を補充することを優先的に支援し、その中小・零細企業へのサービス能力、雇用保障の支援能力を増強する。

②資本金補充を支援することで、改革を促し、メカニズムを転換し、中小銀行のガバナンスを整備し、健全な内部コントロールのメカニズムを整備することを、資本金補助支援の重要条件とする。

③地方政府の管轄地の責任、銀行・株主の主体責任、金融管理部門の監督管理責任を徹底させ、全面的な資産検査・リスクの洗い出し、法規による厳格な問責の前提の下、1行1施策で資本金補充を適切に推進する。

地方も、その他資源の潜在力を十分発掘して、支援を与えなければならない。

④監督管理の強化と全プロセスの会計検査・監督を強化する。

特別債による資本金の合理的補充について、市場化された、期限が来ればすぐに退出するメカニズムを確立し、厳しくモラルハザードを防ぐ。

(2)「中小企業代金支払保障条例」

当面、経済の基盤をしっかり安定させるには、中小企業の難関克服の援助に力を入れなければならない。

中小企業の代金支払を保障する法規を打ち出し、その合法権益を擁護することは焦眉の急である。「中小企業代金支払保障条例」草案を決定し、行政機関・公益事業体と大型企業が中小企業と契約を締結し、資金を保障し、支払う方式等について規定を設け、支払期限を規範化し、検査・検収の要求を明確にし、「責任者の変更、検収待ち、決算・会計検査」等を理由に支払を遅延・拒絶してはならないことを規定した。さらに、支払情報公開制度を確立し、行政機関・公益事業体・大型企業が規定の期間内に期限を徒過し未払いとなっている中小企業への代金の契約数量・金額等の情報を社会に公開ないし公示することを要求し、違約・未払いに対する苦情処理、信用失墜への懲戒、処分・責任追及等の規定を設けた。

各レベル行政機関・公益事業体は、法規の実施・支払保障の手本となり、国有企業・大型プラットホーム企業も法規の規定を厳格に執行しなければならない。中小企業代金未払いの典型事案例について公開・暴露しなければならず、国務院弁公庁及び関係部門は、監査を強化し、法規の完全執行を確保しなければならない。

(3)国家ハイテク産業開発区

国家ハイテク産業開発区は、質の高い発展の重要なキャリアーであり、より強く改革開放をリードする模範として重要な作用を備えており、「大衆による起業・万人によるイノベーション」と大学卒業生の就職促進に資するものでもある。

①国家ハイテク産業開発区において、自由貿易試験区・国家自主イノベーション模範区等の関連改革テスト・政策をコピーして普及させ、イノベーション政策の先行テストを強化しなければならない。

海外人材の長期マルチビザ・居留許可証などの規定を緩和する。

②国家ハイテク産業開発区の開放を強化し、国外のパークとの多様な形式の協力展開を奨励し、国際産業チェーン・サプライチェーンに更に好く融け込ませなければならない。

③商業銀行が、国家ハイテク産業開発区において科学技術専門支店を設けることを奨励し、知的財産権担保融資の展開を支援し、条件に合致した国家ハイテク産業開発区の建設主体の上場による資金調達を支援しなければならない。

7月1日 人民銀行が再貸出・再割引金利を0.25ポイント引下げ

中国証券報2020年7月3日は、概略次のように解説している。

中央銀行は7月1日、再貸出・再割引金利を0.25ポイント引き下げ、銀行の負債コストと実体経済の資金調達コストを一層引き下げた。

業界関係者は、「下半期、コストの引下げはなお経済・金融政策の重点の1つであり、預金コストの硬直性により、今年以降銀行全体の負債サイドの総合コストは小幅に低下したのみで、負債コストを引き下げるには、預金準備率引下げ・利下げ・高コストの負債の封じ込め等の併せ技で、総合的な力を発揮しなければならない」とする。

金融系統機関が実体経済に利益を移譲する目標を確定したことに伴い、銀行業の合理的な利潤の伸びを保証するため、負債サイドのコストを引き下げることが重点中の重点となっている。

最近、構造的に預金規模が減少し、収益率がある程度低下している。商業銀行の各期間の預金金利はいずれも低下し、うち3年物・5年物等の中長期預金金利の低下幅は相対的にかなり大きい。5月の前月比低下幅はいずれも5ベーシスポイントを超えている。

4大銀行は最近、自主的に3年物・5年物の大口預金の発行金利を引き下げた。

興業研究アナリストの郭益忻は、「今年に入り、銀行総資産の伸びは急速に速まっているが、これは信用拡大政策下の必然的反応である。資産収益は急速に低下しているが、預金コストはなお顕著な硬直性があり、資産負債両サイドからみると、金利差の1-3月期の急速な収縮をもたらしている」

「コスト引下げには併せ技に頼る必要があり、高コスト負債を押し下げることはその1つで、預金基準金利の引下げ、流動性リスク監督管理指標の適度な調整等を含む、その他の政策は時間を要する可能性がある」とする。

経験的にいって、預金準備率引下げ・利下げは、コスト低下に資するものであり、市場の予想を安定させる。多くの専門家は、「7-9月期、中期貸借ファシリティー(MLF)等の政策金利の引下げと預金準備引下げの可能性が徐々に増大している」とする。

中信証券研究所の明明副所長は、「当面政策のテンポは、相対的にこれまでより中立的になり、程度・テンポは以前に比べ低くなる。7-9月期はなお利下げ・預金準備率引下げの蓋然性があり、貸出プライムレートの連続未調整の後は、年内のコスト引下げの重要性が更に際立っており、利下げ・預金準備率引下げの可能性がかなり大きくなっている。貸出プライムレートの不変を維持するのは、最長でも3カ月で、7月は貸出プライムレートを引き下げる可能性があり、預金準備率引下げあるいは利下げの後押しが必要である」とする。

東方金誠のチーフマクロアナリストの王青は、「下半期、国内経済の伸びを潜在成長率水準に回帰させ、雇用安定の基礎を打ち固めるため、利下げ・預金準備率引下げのプロセスは続くだろう。下半期MLF金利は、さらに約20~40ベーシスポイント引下げの余地があるとみており、全面的な預金準備率引下げもさらに2回実施される可能性がある」としている。