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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(34)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年7月2日


はじめに

本稿では、6月24日の国務院常務会議、24日の人民銀行貨幣政策委員会、28日の対外貿易安定政策座談会、30日の中央改革全面深化委員会会議の概要を紹介する。

6月24日 国務院常務会議
(1)企業設立の所要期間の一層の短縮

年末までに各一級行政区すべてで「1つのサイトですべてを取り扱うプラットホーム」を開設し、すべての手続事項をオンラインで「1つの用紙」に記入させ、資料が揃ったらオフラインの「1つの窓口」で一括受領を実現する。

監督の強化、安全の保障の前提下、電子営業免許の応用を普及し、企業がネット上で企業登記、公印作成、税務関連サービス、社会保険登録、銀行口座開設などの手続を行う際の合法・有効な身分証明書や電子署名手段とする。

企業設立の所要期間を昨年推進した5営業日以内から4営業日以内に短縮するか、さらに短縮する。

(2)業種協会・組合の手数料徴収の整理・規範化し、「5つの厳禁」を断固実施

①政府官庁を頼り、業界の影響力を利用して、企業に入会や会費納付を強制することを厳禁する。

②法廷の職責、政府からの委託・授権事項を利用した、規則に反する手数料徴収を厳禁する。

③批評・基準達成表彰活動を通じた手数料徴収を厳禁する。

④職業資格認定を通じた、規則に反する手数料徴収を厳禁する。

⑤手数料だけ取ってサービスをしない、あるいは複数部署で重複して手数料徴収することを厳禁する。

(3)農村における医者・獣医の職業資格制度の改革・整備

①農村医

一部省の現行方式を参考に、湖南・広東・貴州等16の省で農村医職業資格制度を改革・改善し、臨床医学等関連専攻の大学・高専卒以上で、臨床実践経験もある卒業予定者が(職業選択期間中に就職しなかった卒業生を含む)、無試験で農村医の登録を申請することを認める。これにより求職期間を短縮し、就業コストを減らす。

②農村獣医

年末まで「まず就労してから試験を受ける」制度を打ち出した基礎の上に、さらに獣医資格試験方式の法改正・改革を通じて、獣医関連専攻の大学生が在学中に試験を受けることを認め、合格すれば卒業と同時に資格を得られるようにする。

同時に獣医登録と農村獣医登録の許可制を廃止し、獣医資格をもつ者が届出によって就労でき、獣医関連専攻の中等専門学校卒以上の者が届出によって農村獣医を務められるようにする。

新人農村医と獣医の事前研修をしっかり行い、監督を強化し、補助金などのインセンティブ政策をしっかり実行しなければならない。

各部門は、雇用拡大についての多くの方法を考え、各種職業資格等の就業のハードルについて、改革を通じて繁雑な柵を簡素化し、同時に緩和と管理を結びつけ、サービスを最適化して、大学生の就業のためにより多くの便宜を提供しなければならない。

6月24日 人民銀行第2四半期貨幣政策委員会

新型肺炎疫病のわが国経済への衝撃は総体としてコントロール可能であり、わが国の経済成長が強靭性を維持し、長期に好い方向に向かうというファンダメンタルズに変わりはない。

穏健金融政策は、展望性・的確性とカウンターシクリカルな調節の要求を体現するものであり、疫病防御、業務・生産の回復、実体経済の発展を大いに支援し、金融リスクを有効に防止・コントロールし、実体経済への金融サービスの質・効率を段階的に向上させるものである。

貸出プライムレート改革の効果が顕在化しており、マネーの伝達効率が増強され、貸出金利は顕著に低下している。人民元レートは総体的に安定し、双方向への変動の弾力性が向上し、外部からの衝撃への対応能力が増強されている。

現在、国内での疫病防御と業務・生産再開の統一は、重大な段階的成果を得ており、各種経済指標にはマージナルな改善が出現しているが、グローバルな疫病と世界経済の情勢は依然として峻厳・複雑であり、国内の疫病再流行防止任務は依然として非常に困難・繁雑で荷が重く、わが国の経済発展にリスク・試練をもたらしている。

世界経済金融情勢の変化をフォローし、国際経済情勢について検討・判断・分析し、国際マクロ経済政策の協調を強化し、精力を集中して自身の事柄にしっかり取り組まなければならない。

マクロ・コントロールを刷新・整備し、穏健な金融政策は更に柔軟・適度にし、実体経済の回復と持続可能な発展を更に際立てて位置づける。

総量政策の適度を堅持し、金融と実体経済の良性の循環を促進し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)政策の実施を全力で支援する。

多様な金融政策手段を総合的に運用し、流動性の合理的充足を維持する。構造的金融政策手段の精確に的を絞った作用を有効に発揮させ、政策の「直接到達性」を高め、引き続き1兆元のインクルーシブな再貸出・再割引額をうまく用いて、新たに創設した実体に直接達する手段をしっかり実施し、条件に合致した地方法人銀行が小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの元本償還・利払いを猶予し、無担保貸出を行うことを支援する。

金融サプライサイド構造改革を深化させ、大銀行がサービスの重心を下方に降ろすよう誘導し、中小銀行が主たる責任を本業に集中させることを推進し、高度な適応性・競争力・包摂性を備えた健全な現代金融システムを整備する。

マネーの伝達の多様な隘路を打破し、引き続き改革を促進して貸出金利引下げの潜在力を発揮させ、金融機関が実体経済とりわけ小型・零細企業、民営企業への支援を強化するよう誘導し、企業へのマイクロファイナンス、無担保貸出、製造業向け貸出のウエイトを高める。金融の民営企業への支援を、経済社会の発展に対する民営企業の貢献に適応させるよう努力し、供給システム・需要システム・金融システムが相互に支援する三脚の枠組みを推進し、国内循環を主とし、国際・国内が相互促進する双循環の発展構造の形成を促進する。

金融のハイレベルな双方向の開放を一層拡大し、開放条件下の経済金融管理能力とリスク防止・コントロール能力を高める。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党19期4中全会・中央経済工作会議、「政府活動報告」精神を真剣に貫徹実施し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、小康社会の全面実現の目標・任務をしっかり押さえ、疫病防御と経済社会発展を統一的に推進し、常態化した疫病防御の条件下、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持しなければならない。

マクロ政策の調節を強化し、企業を安定させて雇用を保障し、「6つの安定」政策を着実にしっかり実施し、「6つの保障」任務を全面的に実施し、財政・金融・雇用等の政策の健全な協同・伝達・実施メカニズムを整備し、経済成長への疫病の影響を有効にヘッジする。

金利の市場化改革を深化させ、既存の変動金利貸出の金利決定基準の転換を秩序立てて推進し、人民元レートの合理的な水準での基本的安定を維持する。

金融リスク防止・コントロール堅塁攻略戦をしっかり戦い、成長の維持とリスクの防止の有効なバランスを把握し、改革・発展の中でリスクを解消することを重視し、システミック金融リスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。

6月28日 対外貿易安定工作座談会

李克強総理が主催した。会議では、商務部と海関総署が当面の対外貿易情勢と今後の政策考慮を報告し、企業の責任者が自身の属する家電・アパレル・医療設備・家具・越境Eコマース・オートバイ等の分野と結びつけて、企業生産経営と輸出入の情況を語った。李克強総理の発言の概要は、以下のとおりである。

対外貿易・外資の基盤をしっかり安定させることは、経済運営と雇用の大局を安定させることにとって極めて重要である。今年に入り、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、各地方・各部門は、疫病防御活動をしっかり行うと同時に、業務・生産の再開を積極的に秩序立てて推進し、一連の的確な政策を打ち出し、ここ数カ月対外貿易はある程度安定を取り戻している。

現在、疫病はなお世界的に流行しており、世界経済は深刻に衰退している。わが国経済は既に世界経済に深く融け込んでおり、しばらく対外貿易環境は依然として峻厳・複雑であることを十分推し量って準備しなければならない。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、「6つの安定」「6つの保障」に力を集約し、発展への自信を確固として、困難・試練に積極的に対応し、ハイレベルの対外開放の推進に力を入れ、対外貿易方式を刷新し、対外貿易の安定促進・質向上を推進し、雇用の保障・経済の安定のために支えを提供しなければならない。

雇用・民生・市場主体を保障するという要求に基づき、「政府活動報告」が提起した企業援助・困難緩和の各政策を早急にしっかり実施し、内需を積極的に拡大すると同時に、対外貿易安定・外資安定のための新措置を検討して打ち出し、とりわけ支援を強化して中小・零細企業と労働集約型企業をしっかり保障し、大型骨幹対外貿易企業の難題解決に助力し、雇用の安定を更に好く支えなければならない。

①輸出税還付の方式を整備し、税還付の進度を加速する。

②金融機関が貸出・信用保証・担保等の融資支援を強化するよう誘導し、対外貿易企業の流動性の困難を緩和する。

③通関円滑化改革の潜在力を引き続き発掘し、対外貿易企業へのサービスを最適化する。

④疫病防御と対外貿易・外資の安定政策を統一的にしっかり実施し、関係国との意思疎通・協調を強化し、国際貨物輸送ルートを円滑化し、ビジネスマンの往来に便宜を図るより多くの「ファーストレーン」を開設する。

⑤対外貿易企業の転換・グレードアップを奨励し、輸出産品の質・付加価値を高め、越境Eコマース、オンライン取引等の対外貿易の新業態・新モデルの発展を加速し、多元的な投入を誘導して海外倉庫の建設を奨励し、中小企業の輸出を牽引する対外貿易サービスプラットホームへの支援を増やし、新たな対外貿易の成長スポットを育成する。

各地方は、現地の実際と結びつけて、対外貿易・外資を安定させる関連措置を遅滞なく整備しなければならない。

更に多くの開放拡大措置を断固推進し、多くの分野・様々なレベルの国際協力を推進し、製造業の開放を不断に深化させると同時に、サービス業とりわけハイエンドサービス業の開放を拡大し、市場化・法治化・国際化されたビジネス環境をさらに作り上げ、外資の直接投資を奨励・誘導する政策を整備し、中国をより多くの外資が興業するホットランドとしなければならない。

中西部・東北地方の産業移転を受け入れる吸引力を増強する。産業チェーン・サプライチェーンの安定維持に更に力を努力する。

6月30日 中央改革全面深化委員会会議

主任である習近平総書記が主催した。

(1)習近平総書記の重要講話の概要

第13次5カ年計画の主要目標・任務を勝利のうちに達成し、脱貧困堅塁攻略に決勝し、小康社会の全面的に実現し、その勢いに乗って高みに上り、社会主義現代国家を全面的に建設する新たな征途を開くには、改革のブレークスルー・先導の作用を好く発揮させ、改革に依拠して局面の変化に対応し、新たな局面を開拓しなければならない。目標によるリード・問題志向を堅持し、うまく勢いを蓄積し生かすのみならず、うまく変化を認識し、変化を求め、変化に対応して、要所をしっかりとらえ、模索を積極的に奨励し、改革の実効を際立たせ、経済社会発展の大局への改革のなる奉仕を推進しなければならない。

(2)会議の概要

経済関連部分は、以下のとおりである。

①国有企業改革

国有企業は、中国の特色ある社会主義の重要な物質的基礎であり、党の執政・興国の重要な支柱・依拠すべきパワーである。

今回の新型コロナ疫病への対応プロセスにおいて、国有企業は進んで重責を担い、供給の緊急保障、医療支援、業務・生産の再開、産業チェーン・サプライチェーンの安定等の方面で重要な役割を発揮した。

今後3年は、国有企業改革のカギとなる段階であり、国有企業に対する党の全面指導を堅持・強化し、基本経済制度を堅持・整備し、社会主義市場経済への改革方向を堅持し、重点に取り組み、不足部分を補い、脆弱項目を補強して、国有経済の配置の最適化と構造の調整を推進し、国有経済の競争力・イノベーション力・コントロール力・影響力・リスク抵抗能力を増強しなければならない。

②新世代情報技術と製造業の融合発展

新世代情報技術と製造業の融合発展を早急に推進するには、新たな科学技術革命と産業変革の趨勢に順応し、サプライサイド構造改革を主線とし、スマート製造を主たる攻め口として、工業インターネット(産業用モノのインターネット)のイノベーション・発展を加速し、製造業の生産方式と企業の形態の根本改革を加速し、融合発展の基礎・支えを打ち固め、健全な法規を整備し、製造業のデジタル化・インターネット化・スマート化の発展水準を高めなければならない。

③農村住宅用地

農村住宅用地制度の改革を深化させるには、住宅用地の集団所有権の実施、住宅用地の農家の資格権と農民の家屋財産権の保障、住宅用地と家屋使用権の適度な活用のための具体的ルート・方法を積極的に模索して実施し、土地公有制の性質を変えず、耕地の最低ラインを割り込まず、農民の利益を損なわないという3つの最低ラインを断固としてしっかり守り、農民の権益をしっかり実現・擁護し、発展させなければならない。

④むすび

党18期3中全会以降手配してきた改革任務実施の取組みを、第13次5カ年計画の主要目標・任務、脱貧困堅塁攻略の決勝、小康社会の全面実現と結びつけ、カギとなる改革を的確に手配・推進しなければならない。

第14次5カ年期間の改革を前倒しで計画するに際しては、制度とガバナンスシステムの建設を更に重視し、様々なレベルの体制メカニズムの問題を、更に多く解決しなければならない。

改革・イノベーションの最大の活力は末端と大衆の中にあり、新たな事物・方法については、奨励・誘導を強化し、新たに生まれた事物を健全に成長させ、発展の新たな動力エネルギーを加速的に壮大にしなければならない。