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研究者のご紹介

2020年経済・財政報告のポイント

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年6月25日


5月22日、国家発展・改革委員会から全人代に対し、「2020年度国民経済・社会発展計画」が、財政部から全人代に対し、「2020年度中央・地方予算」が、それぞれ書面で報告された。そのポイントは以下のとおりである。

1.経済目標

 主要な経済目標は、以下のとおりである。

経済目標(予期目標を含む)(失業率以外は前年比)

表:経済目標(予期目標を含む)(失業率以外は前年比)

2.2020年度予算の全体像

表:2020年度予算の全体像

(注)括弧書きは、予算執行見込額に対する伸び率。
3.2019年度の財政政策・財政改革
(1)減税・費用引下げ

2019年1月1日から、小型・零細企業向けの包摂的減税政策と個人所得税の特別付加控除制度を実施した。

4月1日から、増値税改革を実施し、製造業などの業種の税率を16%から13%に、交通輸送業や建築業などの業種の税率を10%から9%に引き下げた。

5月1日から社会保険料率を引き下げた。

引き続き、行政・事業体関連の料金徴収と政府基金の整理・規範化を行った。

上述の減税・費用引下げ措置の年間負担軽減は2兆3600億元であった。うち、

①新規の減税額は1兆9300億元であった。

民営企業の減税額は1兆2600億元であり、全産業の減税総額の65.5%を占めた。

小型・零細企業の減税額は2832億元であり、企業所得税減免を享受した納税者が626万社に達し、増値税の免税を享受した小規模納税者が新たに456万社増加した。

②2018年10月1日以降の個人所得税基礎控除額引上げと税率構造最適化の後年度効果は4604億元であった。

2億5000万人の納税者が利益を受け、1人当たりの減税額は約1842元となった。

(2)財政・税制改革

教育、科学技術、交通・輸送等の分野で、中央と地方の財政権限・支出責任区分改革の方案を打ち出した。中央と地方の収入区分改革を推進し、増値税の「五分五分のシェア」割合の安定を維持した。消費税徴収段階を着実に地方に降ろし、地方税に切り換えることを明確にした。

増値税制度を整備し、総合と分類を結合した個人所得制度を初歩的に確立した。資源税法が全人代常務委員会で審議・採択され、都市維持建設税法案・契約税(不動産譲渡税)法案が全人代常務委員会で初めて審議された。

4.2020年度の財政政策の総体要求

小康社会の全面実現の目標・任務をしっかり押さえ、疫病防御と経済社会発展活動を統一的に推進し、疫病防御が常態化する前提の下、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を堅持し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、改革開放を動力として質の高い発展を推進することを堅持し、3大堅塁攻略戦を断固しっかり戦わなければならない。

「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策を強化し、庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障し(以下「6つの保障」)、内需拡大戦略を断固実施し、マクロ政策をより強化して疫病の影響をヘッジしなければならない。

積極的財政政策は更に積極的に成果を出し、財政赤字の対GDP比率を高め、疫病対策特別国債を発行し、地方政府特別債券を増やし、精緻な計画を堅持し、カネを肝心要のところに用い、資金の使用効率を高め、経済を安定させるカギとしての役割を真に発揮し、経済発展と社会の大局の安定を擁護し、脱貧困決戦・決勝の目標・任務の達成を確保し、小康社会を全面的に実現しなければならない。

5.2020年度の財政政策

2020年の積極的財政政策は、更に積極的に成果を出し、「6つの安定」政策をしっかり行い、「6つの保障」任務を実施することを軸に、政策をより強化して疫病の影響をヘッジし、経済を安定させるカギとしての役割を真に発揮しなければならない。

2020年の財政政策の重点は、以下のものが含まれる。

(1)減税・費用引下げを強化する

段階的政策を強化し、制度の手配と結びつけ、中小・零細企業、個人工商事業者、困難な業種・企業の税・費用負担を重点的に軽減する。これまでに打ち出した6月前に期限が到来する主要減税・費用引下げ政策の執行期限を今年の年末まで延長し、市場主体の困難緩和・発展を支援し、企業の安定による滬余の保障に努力する。

年間、市場主体のための新たな負担軽減は2.5兆元を超えると予想される。

(2)多くのルートで資金を調達する

特殊な時期には特殊な措置を採用し、財政赤字の対GDP比率を2.8%から3.6%以上に高め、財政赤字規模を昨年より1兆元増やし、疫病が生み出した減収・支出増の影響を積極的にヘッジし、市場の自信を安定させ奮い立たせる。

同時に疫病対策特別国債1兆元を発行し、各種繰越・剰余資金の活用・使用を強化し、使用可能な財政力を増やすよう努力し、財政減収・支出増加の不足分を補う。

(3)支出構造を調整・最適化する

基本民生支出は増やすだけで減らしてはならない。重点分野の支出は確実に保障し、一般性支出は断固圧縮しなければならない。政府の庁舎・公会堂・招待所の新たな建設を厳禁し、大風呂敷の浪費を厳禁する。中央政府部門は率先して節約し、中央レベルの支出を0.2%減らし、うち不要不急の裁量的支出を50%以上圧縮する。

地方財政も一般性支出の圧縮に力を入れ、引き続き「公費接待、公費海外出張、公用車購入・維持」経費を圧縮し、会議・出張、コンサルティング・研修、フォーラム・展示会等の経費を厳しく抑制しなければならない。各種の余剰・遊休資金は回収すべきものはすべて回収し、新たに他の予算に計上しなければならない。財政資金の質・効率向上に力を入れ、精緻に計画し、カネを肝心要のところに用いなければならない。

(4)地方財政の困難を緩和する

新たに増えた財政赤字と疫病対策特別国債は全部地方に交付し、「6つの保障」任務の実施と減税・費用引下げ等の方面に割り引くことなく用いなければならない。

特殊移転支出メカニズムを確立し、資金を市・県の末端に直接交付し、直接企業・人民に恩恵を及ぼし、主として雇用・基本民生・市場主体の保障に用いる。これには、減税・費用引下げ、賃料軽減・利下げ、消費・投資の拡大等の支援が含まれる。公共財政の属性を強化し、着服・流用を決して許さない。

(5)政府投資の規模を拡大する

疫病対策特別国債は、主として地方公共衛生等のインフラ建設と疫病対策関連支出に用い、残りの一部の資金は地方が末端の特殊困難を解決することに用いる。

地方政府特別債3.75兆元を計上し、前年比1.6兆元増やし、脆弱部分の補強・民生優遇・消費促進・内需拡大を有効に支援する。

6.主要な支出

以下は、重要な部分のみを掲載する。

(1)3大堅塁攻略戦

①中央財政は、特別貧困支援資金1461億元を補助し(連続5年毎年200億元増)、かつ繰越資金を用いて1回限り300億元増やす。

②大気汚染対策に250億元、水質汚染対策に317億元、土壌汚染対策に40億元計上する。

③地方政府債務の常態化した健全なモニタリングメカニズムを整備し、債務の統計基準を統一し、監督管理を統一して、潜在リスクを遅滞なく発見・処理する。

各種措置を総合的に採用して隠れ債務を適切に解消し、債務解消を虚偽報告してはならず、絶対短期の問題解決のために後遺症を残してはならない。監督・問責を強化し、終身問責・遡及責任追及を行う。

地方のハイリスク金融機関のリスクを適切に処理し、各方面の責任をはっきりさせ、法に基づきリスク・損失を負担する。国内リスクと外部からの輸入リスクの相乗効果・共振の防止に力を入れる。システミックリスクを発生させない最低ラインを断固としてしっかり守る。

(2)内需拡大戦略

有効な投資を積極的に拡大し、中央財政が発行する1兆元の疫病対策特別国債は、全部地方に交付し、主として公共衛生等のインフラ建設と疫病対策関連支出に用いる。疫病対策特別国債とその他財政資金を統一し、地方の資金使用の自主権を増強する。

地方政府特別債を大幅に増やし、「資金はプロジェクトをフォローする」原則を堅持し、地方政府債務リスク水準とプロジェクトの準備情況を統一的に考慮して、合理的に分配を進め、主として党中央・国務院が確定した重点分野・重大戦略プロジェクトに用い、民間投資を牽引し、脆弱部分の補強・民生優遇・消費促進・内需拡大を有効に支援する。

中央予算内投資を6000億元計上する前年比224億元増)。中央財政は中国国家鉄道グループに500億元資本注入し、500億元の鉄道建設債券を発行し資本金とすることを支援し、沿海幹線高速鉄道・都市間鉄道・長江流域沿いの高速鉄道プロジェクトの建設を強化する。

(3)雇用

中央財政は、雇用補助金539億元を計上し、失業保険基金残高から1000億元を抽出し、職業技能向上キャンペーン特別資金・工業企業構造調整特別補助金として用い、地方の各種就業・起業政策実施を促進する。2020年・21年は職業技能訓練を延べ3500万人以上実施し、高等職業学校の募集を200万人拡大する。

失業者の基本生活を保障し、失業保険基金を引き続きうまく用いて、失業者の基本生活保障と再就職サービスを強化し、今年既に打ち出した高齢失業者の失業保険受領期限延長、失業補助金の段階的実施、物価上昇臨時補助基準の引上げ等失業者支援措置をきめ細かく実施し、失業保険の保障カバー範囲を拡大する。

(4)基本民生

①教育

中西部貧困地域の就学条件の改善を引き続き支援し、都市・農村、地域間、学校間の格差を不断に縮小する。

②医療

住民医療保険の1人当たり財政補助基準を30元引き上げ、各人毎年550元とし、同歩調で個人からの保険料徴収基準も引き上げる。

③年金

退職者基本年金を5%引き上げ、同時に都市・農村住民基礎年金(国庫負担分)の最低基準を適度に引き上げる。基本年金保険の省レベルの統一を全面的に推進し、2020年末までの基金の省レベルでの収支統一を確保する。年金の全国統一を早急に推進し、企業従業員基本年金保険基金の中央による調節割合を4%に高め、困難な地域の支援を強化し、退職者基本年金の期日通りの全額支給を確保する。

④民生の最低ライン保障

困窮大衆の基本生活保障等の基本民生支出を優先保障に位置づけ、中央財政は困窮大衆救済補助金1484億元を計上し、各地方が最低生活保障、特別生活困窮者の救済・生活扶助、臨時救済、ホームレス・物乞いの救済、孤児の基本生活保障等の施策をしっかり行うよう支援する。

最低生活保障の保障範囲を拡大し、都市・農村困窮家庭で保障すべきものはすべて保障し、条件に合致する都市失業者・帰郷者を最低生活保障の救済範囲に遅滞なく組み入れる。

中央財政は医療救済補助金286億元を計上し、困窮大衆の医療負担軽減に用い、医療保障の最低ラインをしっかり守る。

⑤住宅

中央財政は都市の社会保障的性格をもつ安住プロジェクト補助金を707億元計上し、都市老朽化住宅団地の改造と賃貸住宅の発展を重点的に支援し、都市困窮大衆の住宅保障を強化し、引き続きバラック地区改造を支援する。

中央財政は農村危険家屋改造補助金を185億元計上し、農村危険家屋改造と農村住宅の耐震化を引き続き推進する。

(5)市場主体

減税・費用引下げを強化する。今年は、2019年の増値税の税率と企業年金保険の保険料率引下げ政策を引き続き執行し、減税・費用引下げの後年度効果は約5000億元である。

これまで既に打ち出した、中小・零細企業の年金・失業・労災保険の保険料免除、小規模納税者の増値税減免、公共交通・輸送、レストラン・旅館、観光・娯楽、観光・スポーツ等のサービスの増値税免除、航空会社民間航空発展基金・港湾建設費の減免を含む、一部の段階的減税・費用引下げ政策の執行期限を全部今年末まで延長する。

小型・零細企業、個人工商事業者の所得税納付を来年まで猶予する。

(6)末端の運営

中央の地方に対する移転支出を12.8%増やし、うち一般性移転支出(共同財政権限移転支出を含まず)を7.5%増やし、中央レベルの支出より7.7ポイント高め、重点的に旧革命根拠地、民族地域、辺境地域、貧困地域及び疫病の影響がかなり大きい地域に傾斜させ、地方とりわけ困難な地方の正常な運営を支援する。

一般性移転支出のうち、均衡性移転支出を1兆7192億元計上し(10%増)、県レベル基本財政力保障メカニズム補助金を2979億元計上し(10%増)、旧革命根拠地・民族地域・辺境地域・貧困地域移転支出を2796.1億元計上する(12.4%増)。

特殊移転支出6050億元を計上し、地方の「6つの保障」任務実施支援に用い、執行中の不確定要因に対応する。同時に、財政資金の分配方式を積極的に刷新し、最大限度財政力を下に降ろし、資金の市・県の末端への直接交付、企業・人民への直接的恩恵を確保する。

(7)新しいタイプの都市化

中央財政は農業からの移転人口市民化補助金350億元を計上し、地方とりわけ都市政府が積極的に農業からの移転人口の吸収・戸籍登録を誘導し、農業からの移転人口の市民化の質を高める。財政保障を強化して、地方政府が農業からの移転人口への就業サービス、社会保険、社会保障的性格をもつ住宅、移転してきた子女教育の基本公共サービスの質を高めることを支援する。

7.財政改革・予算管理

ここでは、2項目だけ紹介する。

(1)地方債資金の使用管理

省レベル財政部門は、地方債の法定管理責任を確実にしっかり履行し、管理を強化し、作用を発揮し、最低ラインを守る。特別債の経済社会発展を促進する作用を積極的に発揮させ、管理メカニズムを整備し、重点分野に焦点を絞り、投資先の構造を最適化し、特別債券を条件の合致した重大プロジェクトの資本金に充てる割合を適切に高め、社会資本の投入増を牽引する。部門の意思疎通・協調を強化し、債券の発行・使用を加速し、いくらかの重大プロジェクトの建設を推進し、実物の成果量を速やかに形成する。

特別債プロジェクトのルール適合性の審査・認可とリスクコントロールを厳格化し、特別債は一定の収益のある重大プロジェクトに用いなければならない。資金調達規模は、プロジェクト収益とバランスを維持しなければならない。地方政府債は法に基づき、公益的な資本支出にのみ用いることができ、経常的支出に用いてはならない。債券資金を給与の支払、職場の運営経費、年金支給等に用いることを厳禁する。地方債の期限どおりの償還責任を厳格に実施し、地方債のいかなるリスクが発生しないことを確保する。

(2)財政・税制改革

中央と地方の財政権限と支出責任の区分改革を着実に推進し、更に大規模な減税・費用引下げを実施後の中央と地方の収入区分改革方案を実施し、権限・責任が明瞭で、財政力が協調し、地域のバランスがとれた政府間の財政関係を推進する。

移転支出項目の設置を一層最適化し、移転支出管理の規範性・科学性・有効性を高める。基準が科学的で、規範が透明で、制約が有力な予算制度を整備し、予算支出の健全な基準体系を整備し、支出基準の応用メカニズムを整備する。政府の財務報告の編成を全面的に展開する。

健全な地方税体系の改革を着実に推進し、税・費用の関係を調整し、地方財政に更に多くの安定した収入源を得させる。租税法律主義の原則の要求を実施し、増値税・消費税・関税等の税目の立法化活動を早急に推進する。

わが国の経済発展水準と適応した関税制度を不断に整備する。国有資本・国有企業改革を深化させ、資本管理を主とした国有資産監督管理体制の整備を推進する。国有金融資本の集中・統一的な管理を着実に推進し、金融国有資本経営予算を段階的にしっかり実施する。一部国有資本を切り分けて、社会保障基金を充実させる政策を基本的に完成する。

表1.2019年度中央一般公共予算収入

表1.2019年度中央一般公共予算収入

表2.2020年度の中央一般公共予算

表2.2020年度の中央一般公共予算

表3.中央から地方への移転支出

表3.中央から地方への移転支出

(注)共同財政権限移転支出の内訳は500億元以上、その他の移転支出は100億元以上のものを記載。新たに、特殊移転支出の項目が追加された。

表4.中央財政の国債残高情況

表4.中央財政の国債残高情況

表5.地方政府の一般債務残高情況

表5.地方政府の一般債務残高情況

表6.中央の調節により企業従業員基本年金基金を補填している地域

表6.中央の調節により企業従業員基本年金基金を補填している地域

(注)中央への納付と中央からの交付の差額。新疆は生産建設兵団の統計が別になっている。