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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(33)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年6月23日


はじめに

本稿では、6月18日の財政部からの特別国債発行情況の報告と、「一帯一路」国際協力ハイレベルビデオ会議における習近平国家主席の挨拶の概要、「陸家嘴フォーラム」における易綱人民銀行行長と、郭樹清銀行保険監督管理委員会主席兼人民銀行副行長の発言の概要を紹介する。

6月17日 疫病対策特別国債の発行
(1)公表内容

6月18日、財政部は第1回疫病対策特別国債1000元を順調に発行した。うち、期間5年が500億元、金利は2.41%、7年が500億元、金利が2.71%である。これは5取引日前の流通市場の平均収益率より13ベーシスポイント低く、債券市場の予想に合致している。応募率は、5年が2.5倍、7年が2.76倍であり、投資家は購入に積極的である。

今後、財政部は疫病対策特別国債の発行のテンポを合理的に手配し、発行事務が平穏に秩序立って展開されることを保障し、かつ資金の下達進度を加速して、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)等の方面での疫病対策特別国債の政策機能を十分発揮させる。

(2)記者への回答

①発行方式

今年の1兆元の疫病対策特別国債は、市場化方式を採用し、全部、記帳式国債シンジケート団構成員への公開入札により発行する。国債は様々なレベルの資本市場のコア・基礎であり、容量と深さがある国債市場を発展させることは、金融システムの健全な運営にとって、重要な意義を有する。

長年、財政部は常に市場化の原則を堅持し、国債市場を大いに発展させ、市場化された入札発行メカニズムを整備し、豊かで多元的な投資家構造の形成を促進しており、国債市場は既にかなり容量が大きく、財政資金調達と投資家の投資取引需要を十分満足できる重要な場所となっている。

疫病対策特別国債の市場化された公開発行は、国債市場の容量を一層高め、金融システムにおける国債市場の役割を更に好く発揮させ、国債市場の長期発展を促進するものである。

②期間

財政資金の使用サイクルと釣り合わせる基礎の上に、国債イールドカーブの建設需要を十分考慮して、10年物を主とし、5年・7年物を適切に手配し、国債イールドカーブ上の重要ポイントとしての有効性を一層高めた。

③発行のテンポ

国務院常務会議の「発行すべきものは、早急に発行する」に関する要求に基づき、疫病対策特別国債は6月中旬に発行を開始し、7月末前に発行を終える。疫病対策特別国債の平穏で順調な発行を保障するため、財政部は現在の市場の受容能力を十分考慮し、大体のバランスをとる原則に基づき、可能な限り各週の発行量を平準化し、市場の予想を安定させる。

6月18日 「一帯一路」国際協力ハイレベルビデオ会議における習近平国家主席の挨拶

概要は、以下のとおりである。

今回突如やって来た疫病は、各国人民の生命・安全と身体の健康に深刻な脅威をもたらし、世界経済に深刻な衝撃を生み出し、一部の国家とりわけ発展途上国の経済社会は深刻な困難に直面している。

疫病に対応するため、各国は自身の国情に立脚し、優良な防御措置を採用し、積極的成果を得た。多くの国家は疫病防御をしっかり行うと同時に、経済社会の回復・発展に努力している。中国は、人民至上・生命至上を堅持し、世界のできるだけ早い疫病への戦勝、世界経済の回復促進のために貢献するよう努力したい。

疫病は我々に一連の深刻な啓示をもたらした。各国の運命は緊密に連なっており、人類は同じ舟で助け合う運命共同体である。疫病への対応にしても、経済回復にしても、いずれも団結・協力の道を歩み、マルチ主義を堅持しなければならない。

相互連結を促進し、開放・包摂を堅持することは、グローバル危機への対応と長期発展の実現のための必然通るべき道であり、「一帯一路」共同建設の国際協力は重要な役割を発揮できる。

中国は常に平和発展を堅持し、互恵・ウインウインを堅持する。我々はパートナーと一緒に協力し、「一帯一路」を、①団結して試練に対応する協力の道、②人民の健康の安全を擁護する健康の道、③経済社会の回復を促進する復興の道、④発展の潜在力を解放する成長の道、に作り上げたいと願っている。

質の高い「一帯一路」の共同建設を通じて、人類運命共同体の構築を手を携えて推進する。

6月18日 「陸家嘴フォーラム」における金融当局首脳の発言
易綱人民銀行行長

今年以降、人民銀行が穏健な金融政策を更に柔軟・適度にすることを貫徹し、「政府活動報告」の要求を実施し、疫病対策の中で市場主体を全力で保障してきた等の方面の情況を紹介する。

(1)我々は、量的金融政策手段を通じて、総量供給を拡大し、資金調達難問題を重点的に解決した

1-6月期、我々は金融政策の角度から、既に一連の有力な支援措置を打ち出した。これには、3回の預金準備率引下げ、1.8兆元の再貸出・再割引額増加、小型・零細企業への無担保貸出支援計画の提起、中小・零細企業向け貸出の元本償還・利払いの段階的猶予政策の実施等が含まれる。

上述の総合措置は、既に良好な効果を上げ、5月末、M2の伸びは11.1%、社会資金調達規模の伸びは12.5%であり、昨年より顕著に高い。株式市場、債券市場、外為市場と人民元レートは総体として安定している。4-6月期以来、わが国の主要マクロ経済指標は、良好な回復の兆しを示している。

下半期、金融政策はなお流動性の合理的充足を維持し、年間の人民元新規貸出の20兆元近い増加、社会資金調達規模の30兆元を超えるフローをもたらすものと予想される。

(2)我々は金利市場化改革を通じて、市場金利の持続的な低下を誘導し、金融部門の企業への合理的な利益移譲を推進し、資金調達コスト高の問題緩和に力を入れた

今年に入り、金融部門は企業に利益を移譲した。これには、①金利引下げを通じた利益移譲、②直接的な金融政策手段による利益移譲推進、③銀行の手数料徴収減による利益移譲が含まれる。金融系統機関は、以上3方面を通じて、今年企業に対して1.5兆元の利益を移譲する。

(3)我々は大銀行の不良債権処理の強化を通じて、実体経済への金融支援の持続可能性の問題を解決した

疫病の衝撃の下、銀行の不良債権はある程度増加した。このため、不良債権処理を強化することは、実体経済への金融支援の持続可能性を増強する重要措置である。これは、金融部門が実体経済のコストを引き受ける1つの重要方面でもあり、実体経済への貢献である。

我々は、疫病対応期間の金融支援政策は段階的なものであると考えており、政策設計でのインセンティブの相互受容を重視し、モラルハザードを防止しなければならない。政策の「後遺症」に注意を払い、総量を適度にし、かつ政策手段の適時退出をあらかじめ考慮しなければならない。

(4)我々は、中央銀行のB/Sの基本的安定を維持すると同時に、有効なマネー・貸出の伸びを実現した

2018年以来、人民銀行は10回預金準備率を引き下げ、流動性訳8兆元余りを解放し、平均法定預金準備率は15%から9%前後まで低下した。

法定預金準備率の低下後、商業銀行は自主的に使用できるカネが相応に増え、貨幣乗数は上昇した。預金準備率引下げのプロセスは、一面で中央銀行のB/Sの圧縮を示しており、他方で商業銀行がより多くの貸出を通じて形成した、マネー拡張効果を示している。

これと同時に、中央銀行は再貸出・再割引等の金融政策手段を通じて、相応にB/Sを拡大してもいる。このため、中央銀行の預金準備率引下げと再貸出は、2つの拡張的金融政策手段であるが、中央銀行のB/S上では、前者は圧縮、後者は拡張として反映する。

ここ数年、わが国の中央銀行は、B/Sの拡張と圧縮が金額上大体釣り合っており、このため中央銀行のB/S規模は、ここ数年基本的に36兆元前後で安定している。これは、現在国際上の主要経済体の中央銀行のB/Sが大幅に拡張しているメカニズムとは異なる。しかし、わが国の商業銀行のB/Sは、持続的・合理的に拡張しており、貸出は速い伸びを維持している。これは、金融政策の伝達効率が不断に向上し、市場メカニズムの運営が良好であることを反映している。

郭樹清銀行保険監督管理委員会主席・人民銀行副行長
1.金融監督管理

今後、金融管理部門は、雇用の安定・企業の保障を重点とし、「6つの安定」と「6つの保障」任務をしっかり実施し、国民経済の回復・正常な循環を早急に推進する。

(1)銀行と政府の協力を一層奨励する

疫病の災難が生み出した損害は、一種の不可抗力の外部からの衝撃であり、各種市場主体が自主的に回避できないものである。このため、各レベル政府は、銀行に対して地域内経済と企業の情報を提供する責任があり、その能力がある。

相当な数の企業は疫病の影響が深刻で、暫時困難に遭遇しているが、市場の発展見通しがあり、信義誠実の記録が良好である。銀行・政府双方は救済策を積極的に協議し、とりわけ緊急つなぎ融資をしっかり行い、同時にモラルハザードを防止しなければならない。

多くのレベルにおいて、財政・金融の相互支援と密接な協調を実現しなければならない。銀行はより多くの無担保・低金利の貸出手段を推進し、各レベル政府は財政による利息補助。担保補填を通じて、コスト・損失を分担しなければならない。投資支援方面では、地方特別債券をプロジェクト資本金に充てる割合を適切に高め、関連銀行支援を増やし、できるだけ速やかにより多くの実物成果量を形成しなければならない。

(2)政策性金融機関のカウンターシクリカルな調節における役割を強化する

今年、政策性銀行が手配する貸出規模は、昨年に比べ1兆元近く増え、債券発行規模も増加し、使用可能な資金が大幅に増える。このほか、国家開発銀行と輸出入銀行の手配する特別困難緩和資金の金額は計1000億元である。新たに増えた1000億元余りの転貸規模は、主として中小銀行とりわけインターネット銀行に供給され、小型・零細企業の資金調達難・資金調達コスト高を緩和する。政策性債務保証は、カバー面を拡大し、債務保証料率を引き下げ、リスク・損失を合理的に分担しなければならない。

(3)保険特有のリスク対策作用を更に好く発揮させる

リスク保障のカバー面を拡大し、営業中断リスク・輸出信用リスクへの商品供給を増やし、疫病対策・減災と農業・農村の脆弱部分に対して、より多くの保険品目を打ち出す。疫病後の再建支援では、賠償を強化し、賠償効率を高め、賠償すべきものはすべて賠償を実現し、スピーディにできるものは即実行し、影響を受けた個人・企業にできるだけ速やかに賠償金を得させ、生産・消費を回復する。

保険機関は企業の中長期債券への投資を増やす。保険資金の平均期間は13年であり、現在保険資金の運用残高は20兆元近いが、企業債券への投資残高は2.2兆元にすぎず、潜在力は巨大である。より多くの資金を企業、とりわけ電信・交通・新旧インフラ等の巨額の中長期資金を必要とする業種の中長期債券購入に用いることができる。

(4)資本市場がより広範により積極的に役割を発揮することを支援する

今年に入り、わが国で新たに増えた社会資金調達規模のうち、債券と株式による資金調達のウエイトは35.9%である。現在、わが国の債券市場と株式市場の時価総額は、世界第2位である。最近、銀行保険監督管理委員会は、6項目の措置を打ち出し、資本市場の発展を支援している。

①新たな機関投資家を増やす

より多くの銀行理財子会社と保険資産管理会社の設立を認め、国外専業機関が持株理財会社を設立することを認める。

②権益類資産管理商品の発行を強化する

理財子会社が権益類商品のウエイトを高め、信託会社が証券投資信託商品を発行し、保険機関が組合せ商品を発行することを支援する。

③銀行とファンド会社、銀行と保険会社等各種機関の深い協力を推進する

銀行と理財子会社が、より多くの条件に合致した公募ファンド管理者を協力機関リストに組み入れることを奨励し、保険機関が私募理財商品と私募株ファンド等へ投資する関連政策を検討し、打ち出す。

④商業銀行が基準外不良債権を秩序立てて処理するよう誘導し、新設理財子会社が証券投資を増やすことを奨励する

⑤保険会社が直接投資・委託投資・公募ファンド等の各種ルートを通じて、資本市場への投資、とりわけ質の優れた上場会社への株式投資を増やすことを支援する

⑥保険会社の権益類資産の配分について、差別化した割合の監督管理を実行し、保険機関がより多くの資金を権益類資産に配分するよう誘導する

(5)多くの種類の金融手段を採用して、グローバルサプライチェーンを貫通・修復する

国際産業チェーン企業への支援を増やすよう努力し、その内外市場開拓を助け、輸出の国内販売への転化割合を高めなければならない。

輸出企業と外国の協力パートナシップができるだけ早く商業・貿易の往来を回復することを支援し、買い手への貸出提供等の融資方式を通じて、輸出の受注を安定させ、輸出信用保険をしっかり運用してリスク・損失を分担させなければならない。

サプライチェーン融資を大いに発展させ、リーダー企業とカギとなる部分の資金需要を優先的に保障し、上流・下流のチェーンを円滑にし、安定させる。

2.国際的なマクロ政策協調について
(1)大型経済体は、自身の政策のスピルオーバー効果を主動的に考慮し、内外への影響を自覚的にしっかりバランスさせなければならない

現在、世界経済は既に高度に一体化しており、政策を制定し打ち出すときは、その他国家との意思疎通・協調を強化し、スピルオーバーのリスクを平準化させ、国際社会の全体利益を共同で擁護しなければならない。

とりわけ欧米日等の先進国は、周辺と世界の未発達国への影響が大きく、米国主導の国際通貨システムにおいて、FRBは一定程度世界の中央銀行としての役割を演じており、グローバル経済・金融の安定に重要な作用を発揮してきた。しかし、もし政策制定時に過度に「内向き」になれば、グローバル金融の安定の基礎を侵蝕し、ドルと米国の信用を損耗する可能性がある。

(2)明白なことだが、これは最後の晩餐ではなく、未来のために余地を残しておく必要がある

各国が既に打ち出した財政金融刺激措置は、規模と程度の巨大さは史上前例がなく、初期作用が甚大で、限界効用は徐々に逓減する。現在のところ、疫病はかなり長期間我々の生活と並行・共存する可能性がある。知ってのとおり、少なからぬ国家・地域は、新たな刺激措置を計画し、打ち出した。皆さんはよく考えて行動し、今後一定の政策余地を予め残しておくべきである。

中国はノーマルな状態の金融・財政政策を十分貴重と考えており、我々はバラマキはしないし、ましてや赤字通貨化やマイナス金利は実施しない。

(3)世界にはタダの昼飯はない。なぜこれほど多くの中央銀行が紙幣の印刷を開始し、無限量の通貨を印刷しているのだろうか?

早くも二千年余り前、中国も欧州も、既に政府が金属貨幣を乱鋳造し、経済社会に危機をもたらした教訓をもっている。さらに言うまでもなく、紙幣が出現して以後、人類は多くの災難に遭遇してきた。金融業関係者なら分からないはずはなく、ヘリコプターマネーも代価を支払うことになる。

(4)金融システムの強靭性は、通常は経済が強く健全であることの表現であるが、実体経済がまだ回復していないのに、株式市場が高騰しており、このような情況は理解し難い

国際金融市場と実体経済の背離という歪みは、これまでになく顕著である。「国内債務は債務ではなく、対外債務こそ債務だ。米国にしてみれば、対外債務も債務ではない」と述べる国外の専門家がいる。過去相当長い期間、あたかもそのようであったが、未来本当に長く持続できるのであろうか? 人々の心配が杞憂であることを願う。

(5)インフレは、特効薬を探し出した伝染病のように、世界の経済・生活の中で消失してしまったのだろうか

現在、主要経済体の物価総水準の上昇はなお明瞭ではないが、国際サプライチェーンの回復にはかなり長い時間が必要であることを考慮すれば、生産要素コストはさらに上昇し、加えて各国の持続的な需要刺激により、貨幣の派生メカニズムが変化し、インフレが捲土重来の可能性もある。

このほか、さらに考慮しなければならないのは、大規模な刺激政策を将来いかに退出させるかである。進入の際は、四方八方から歓迎・鼓舞されるが、退出のときは十分苦痛が伴う可能性がある。2008年の「量的緩和」刺激政策は、現在までなお完全に消化されていない。