国家発展・改革委員会記者会見

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年5月28日


はじめに

全人代期間、恒例の国家発展・改革委員会の記者会見が5月22日と24日に開催された。本稿では、5月24日の会見を中心に、22日会見のポイントも併せ、概要を紹介する。

1.経済成長率目標を決めなかったことについて

「政府活動報告」に具体的目標を提起しなかったことは、初めてではない。改革開放以降、「政府活動報告」に年度成長予期目標がなかったのは今回で4回目であり、前の3回は2000年、2001年、2002年である。

今年経済成長目標の具体的目標がないのは、主として世界の疫病と経済・貿易情勢に不確定性が大きく、わが国の発展が予想し難い影響要因に直面しているからである。

「政府活動報告」の中に提起している発展目標は、「雇用の安定を優先して民生を保障し、脱貧困堅塁攻略戦に断固打ち勝ち、小康社会の全面実現の目標・任務の実現に努力する」である。これは、我々の発展の目的は民生のためであり、雇用優先、堅塁攻略・難関克服の重点目標・任務に体現されている。

脱貧困堅塁攻略が3大堅塁攻略戦のトップであることは、第13次5カ年計画の手仕舞いの年の発展目標を、小康社会の全面実現という第一の百年目標にリンクさせたものである。

今回経済成長率の具体的目標がないのは、経済成長が重要でないということではない。民生保障・雇用保障にせよ、脱貧困堅塁攻略にせよ、いずれも経済成長の支えが必要である。改革開放の方法を用いて、雇用を安定させ、民生を保障し、消費を促し、市場を牽引し、成長を安定させなければならない。このため、GDP成長率目標を直接提起してはいないが、経済成長の内容は既にその他の経済社会発展目標の中に融け込んでいる。

2.目標をいかに実現するか

今後「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策を着実にしっかり実施、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)政策を全面的に実施し、保障により安定を促し、安定の中で前進を求め、年間の経済社会発展の目標・任務の実現に努力し、「6つの強化」をしっかり行う。

(1)雇用・民生を強化する

今年の我々の発展の主要目標・任務は、雇用安定を優先させて民生を保障することであり、大学卒業生・出稼ぎ農民・貧困地域労働力等の重点層に、重点的に焦点を絞らなければならない。

今年874万の大学卒業生に対し、企業の募集拡大、大学院生の募集拡大、末端の雇用・ポスト拡大を実行し、かつ起業の雇用倍増の牽引効果を発揮させる。

2億余りの出稼ぎ農民と数千万の貧困地域労働力に対し、都市・農村常住人口(出稼ぎ農民を含む)すべてをカバーする公共就業サービスを実行し、かつ公共インフラ建設において、可能な限り農村労働者を現地・近場で吸収して就業させる。

就業があれば所得があり、総体として民生を保障・改善することができる。

(2)脱貧困堅塁攻略を強化する

脱貧困堅塁攻略戦に断固打ち勝つことは、今年の発展の目標であり、ハードな任務である。重点は、雇用・産業・消費等による貧困支援を強化することであり、投資建設により貧困支援・脱貧困を牽引しなければならない。

疫病の影響を克服し、脱貧困堅塁攻略プロジェクトの着工・工事再開を強化し、仕事を与えることで給付支援に代える建設分野の実施範囲と受益対象を拡大する。国家発展・改革委員会は、既にこれに係る2020年の資金を分割して下達している。

居住地を他の土地に移すことによる貧困支援は、国家発展・改革委員会が責任を負っており、昨年既に1年前倒しで13次5カ年計画の建設任務を基本的に完成した。今年は、後続の支援措置をきめ細かく実施し、大型の移転先地域の関連教育・医療施設等の分野の不足を補充し、脱貧困の成果を強固にする。

(3)政策によるヘッジを強化する

更に積極的で有力な積極財政政策と更に柔軟・適度で穏健な金融政策をしっかり実施し、かつ雇用優先政策・消費奨励政策・脆弱部分補強投資政策・構造的産業政策・差別化した地域政策及び市場志向の価格政策との合成力を形成し、疫病の影響を有効にヘッジする。

(4)内需の支えを強化する

サプライサイド構造改革を深化させ、内需拡大戦略を断固実施し、消費を拡大し、投資を促進し、都市・農村、地域の大市場を開拓しなければならない。

4億余りの中等所得層を含む14億の人口に依拠して、伝統的消費と新興消費の相互扶助による向上を推進する。投資方面では、6000億の予算内投資、3.75兆元の地方政府特別債、数千億の疫病対策特別国債、及び更に多くの金融資金・社会資本をうまく用いて、不足部分の補完・脆弱部分の補強を加速し、伝統的投資と新しいタイプの投資の力の共同発揮を促進しなければならない。

都市化方面では、今年1億の非戸籍人口の都市への戸籍登録目標の達成を推進し、都市の老朽化した住宅団地3.9万カ所の改造に新規着工し、100前後の県・県級市が県都で新しいタイプの都市化建設モデルを展開することを支援しなければならない。

(5)企業支援を強化する

既に実施している企業支援政策の実施を加速し、「政府活動報告」で提起した一連の新たな企業支援政策の実施に力を入れ、あらゆる手を尽くして1億の市場主体、とりわけ中小・零細企業と個人工商事業者の業務・生産再開を支援し、雇用保障・安定成長のミクロ的基礎を打ち固める。

(6)改革開放を強化する

最近公布した「新時代の社会主義市場経済体制の整備加速に関する意見」「より完備された生産要素の市場による配分体制メカニズム構築に関する意見」の2つの改革の大文件をしっかり実施し、「行政の簡素化・権限委譲、管理と緩和の結合、サービスの最適化」改革を深化させ、ビジネス環境を最適化し、社会の生産力を一層解放し発展させる。

よりハイレベルな開放型経済新体制の建設を推進し、より大きな範囲・より広い分野・より深いレベルの全面開放を実施しなければならない。

3.経済成長と債務圧力のバランス

これはホットイシューであり、焦点となっている問題でもある。合理的な債務水準は、経済社会の発展に有利であるが、適度な経済社会発展も債務水準抑制に有利である。

(1)実際に即して正確な方法を考え、時勢に応じて債務水準を高め、あるいは引き下げなければならない

経済運営は下振れの段階にあり、内外市場の需要は減少あるいは収縮が出現している情況下では、政府の債務水準を適切に高め、有効需要を増やさなければならない。経済が上昇段階にあり、内外市場が比較的充足している情況下では、政府の債務水準を適切に引き下げ、総需要を減らさなければならない。これはいずれもカウンターシクリカルな調節のテーマである。

現在、政府の債務水準を高めることは、特殊な時期の特殊な措置である。この点は、李克強総理が「政府活動報告」において既にはっきり述べている。新型肺炎疫病が突如やって来た衝撃・影響に対し、積極的財政政策は更に積極的に成果を出さなければならない。このワンセットの財政・租税政策案は、各方面が真剣な検討・試算の反復・総合的な勘案を経て確定したものであり、中国の経済発展と、債務リスクの防止・コントロールの需要を釣り合わせたものである。

新たに増える1兆元の財政赤字と1兆元の疫病対策特別国債は全部地方に移転し、市・県の末端に直接交付し、直接企業・国民に恩恵を与えるものであり、主として雇用の保障・民生の保障・市場主体の保障に用い、これには減税・費用引下げ、賃料・利息引下げ、消費と投資の拡大が含まれる。地方政府特別債のプロジェクトも、一定の収益があり、プロジェクトの資金調達が収益とバランスし、将来資産を形成しなければならないと、強調している。

(2)弁証法的に、この問題を見なければならない

中国の財政赤字の対GDP比率は、現在世界の範囲内では高くなく、新型肺炎疫病に対応するため、各国の財政赤字は大幅に増えており、IMFの予測では、2020年の世界平均で財政赤字の対GDP比率は、2019年の3.7%から9.9%に高まり、先進国平均では3%から10.7%に高まる。そのうち、米国は10ポイント近く上昇して15.4%になり、フランスは9.2%、英国は8.3%、日本は7.1%に達し、新興市場と中等所得国の平均もいずれも9%前後に達する。このため、わが国の全体の赤字水準は彼らと比べてまだ低い。

(3)将来を展望して、債務水準をリスクコントロール可能な範囲内に抑制しなければならない

党中央・国務院は債務リスクの防止・コントロールの問題を高度に重視し、かつこれを3大堅塁攻略戦の重要任務の1つとしている。2019年末で、中国政府の債務の対GDP比率は38.5%であり、主要発展途上国・新興市場国の水準よりはるかに低い。たとえば、米国は106%、EUは80%、日本は238%、インドは69%、ブラジルは92%であるが、わが国は38.5%に過ぎない。

このため、総じて見ると、財政赤字の対GDP比率を適切に高め、疫病対策特別国債を発行することは可能であり、安全でもあり、同時に必要でもある。この一連の財政政策は、中国経済の運営の安定に資すると同時に、世界経済全体の運営の安定にも資するものである。

(補足)

債務と経済の関係を正確に処理し、経済社会の発展を促進する地方政府債務の積極的役割を好く発揮させるため、地方特別債務は資金をプロジェクトにフォローさせ、3つに用いる。

①主として、党中央・国務院の重大政策決定と重大戦略のプロジェクトに用いる。

②一定の収益がある公益的プロジェクトに用いる。

③資本性の支出に用い、経常的な支出に用いてはならない。

これらの資金は、さらに民間資本を牽引し、有効な投資を促進し、内需を拡大し、成長を維持しなければならない。このようにすれば、より多くの有効な資産を生み出すことができる。

市場経済の会計学・統計学の観点からは、企業はいずれも貸借対照表があり、国家にも貸借対照表がある、党18期3中全会の要求により、国家統計局は全国の貸借対照表を編成した。最新の貸借対照表によれば、わが国の総資産は既に1300兆元を超えている。この資産は無から生み出されたものではなく、長年の投入・長年の発展により形成されたものである。

わが国のインフラは、交通・通信・エネルギー・水利にしても、都市インフラにしても、いずれもこれらの投入により既に有効な資産を形成している。わが国は世界の分類上、最も完備した産業システムを備えており、これも無から生まれたものではなく、投資の単純再生産・拡大再生産によりもたらされたものである。このため、わが国は一定の合理的な負債投資を促進し、大量の有効な資産を形成しなければならず、そうすれば経済発展と民生保障がより堅実な物質・技術の基礎を得ることができるのである。

4.改革の重点

今年の主要措置は、次の「4つの注力」に帰結する。

(1)ハイレベルの市場システムの確立推進に力を入れる

我々は、より完備された生産要素の市場による配分の体制メカニズムを構築しなければならない。これは大目標であり、これに向け、今年は生産要素の市場による配分の総合改革テストを展開し、データ要素市場の育成を加速する政策文件を制定し、各種所有制の企業を呼び寄せ、生産要素取引プラットホームの建設に参加させる。

今年、我々はまた土地計画管理方式を改革し、省レベル政府に、より大きな土地使用の自主権を賦与する。このほか、我々は2020年版の市場参入ネガティブリストを改訂・公布する。このリストは、サービス業を重点とし、市場参入緩和テストを展開して、引き続き市場参入への隠れた障壁を打破する。

(2)国有資本・国有企業改革の質・効率向上に力を入れる

我々は今年、「国有経済の配置最適化・構造調整を推進する意見」を制定し、既に公布した4グループ210社の混合御所有制改革テストを深く推進する。混合所有制企業に対して、一般国有企業とは別のガバナンスメカニズムと監督管理制度の模索・確立に尽力し、よりコピー・普及が可能な経験の形成に努力する。

我々はまた、「国有企業混合所有制改革を深化させる実施意見」を制定し、これによって混合所有制改革政策のグレードアップ版を作り上げ、指導面で国有企業が混合所有制改革をより好く推進できるようにし、国有資本・国有企業改革全体において、混合所有制改革がブレークスルー・肝心要の役割を更に好く発揮できるようにする。

(3)民営経済の発展環境の最適化に力を入れる

我々は、まず交通インフラ・製造業等の分野で民営企業を支援する具体的措置をしっかり実施し、電力・電信・鉄道・石油・ガス等の分野で競争性のある業務の開放を推進し、より多くの民間資本を呼び込んで、これらの分野のプロジェクト運営とプロジェクト建設に参加させる。

このほか、今年我々は、ビジネス環境条例を全面実施し、企業の性質と釣り合わない不合理な差別的規定と方法を整理する。さらに親しみやすく清廉な新しいタイプの政治とビジネスの関係を一層構築し、企業に係る政策制定に企業家が参加するメカニズムを整備し、かつ、あらゆる手を尽くして民営企業が実際の困難を解決する手助けに力を入れる。

(4)基本公共サービスの健全な体制メカニズムの整備に力を入れる

我々は、今年、国家基本公共サービスの基準体系を打ち出して推進し、この基準体系を通じて、各レベル政府がどのような範囲の基本公共サービスを保障しなければならないか、最低ラインの基準がいったい何なのか、を明確にする。

今年の疫病の衝撃と疫病対策が我々に重要な考察をもたらした現段階において、各レベル地方政府に、基本民生保障は重点的に何を保障しなければならないか、どの程度まで保障しなければならないか、をはっきりさせ、国家の基準に照らして不足・遺漏を調査・補充させ、自身の資源配分を最適化させ、限りある財政力を人民大衆が最も関心をもち最も必要な分野に用いさせる必要がある。

「4つの注力」のほか、重要民生商品価格のコントロール、グリーン発展等の分野を含めたその他の分野でも、我々はいくらかの改革措置を打ち出す。

5.地域の協調発展

疫病はわが国の経済社会の発展に巨大な衝撃を生み出し、地域の発展にも深刻な影響を生み出しており、これは我々に地域発展戦略の実施加速を要求している。地域の協調発展に力を入れ、壮大な動力源を早急に育成し、疫病の影響を有効にヘッジしなければならない。

(1)全国の質の高い発展のための動力源を作り上げる

2019年、北京・天津・河北地域の生産総額(付加価値)は8.5兆元、長江デルタは23.7兆元、広東・香港・マカオ大ベイエリアは11.4兆元であり、全国に占めるウエイトは44%に達する。この3大動力源は、中国経済発展の「発動機」となっている。地域経済の質の高い発展を実現するには、この3大動力源のリード作用を十分発揮させなければならない。

①北京・天津・河北協同発展の推進に力を入れる

北京の非首都機能の移転・誘導と、これを強く促す政策体系をしっかり制定し、雄安新区の重大プロジェクト建設を早急に推進し、できるだけ速やかに建設の枠組みを明らかにし、北京副都心のために規模・身の丈を定め、質の高い発展政策を制定する。

②広東・香港・マカオ大ベイエリア建設を着実に推進する

引き続き「一国二制度」を堅持し、法に基づき事業を行い、科学技術イノベーションと産業のグレードアップを大いに推進し、規則の接合・貫通、とりわけ香港・マカオとの規則の貫通を穏当に推進し、大ベイエリア住民の幸福感・獲得感・安全感を不断に高める。

③長江デルタの一体化発展を加速する

長江デルタ一体化発展計画要綱の貫徹実施を軸に、長江デルタ一体化模範区・上海自由貿易区等の重点地域の取組みで、できるだけ速やかに成果を出す。

(2)長江・黄河等の大河の生態保護と質の高い発展を強化する

①一面で、長江経済ベルトの発展を早急に推進しなければならない。

長江生態環境修復と保護への中央資金の支援を強化し、大掛かりな保護のメカニズムを共同で整備し、いくらかの先進的製造業集積群の育成を加速する。

②他方で、黄河流域の生態保護と質の高い発展を早急に推進する。

「黄河流域生態保護と質の高い発展計画要綱」を早急に編成・報告・批准し、1つの総合 計画に、いくつかの対応する部分的あるいは特別計画、さらにいくつかの政策体系を加え、いくらかの重大生態環境保護プロジェクトを実施する。

(3)地域発展の格差縮小に努力する

重点は4方面である。

①西部大開発の新たな構造の形成を推進する。

成都・重慶地域の2都市経済圏の建設を積極的に推進し、陝西等の内陸の改革開放の高地を築き上げる。中欧鉄道コンテナ定期輸送サービスの開通を含む「一帯一路」建設により、西部の多くの地域は改革開放の前線地域となった。西部地域とりわけ「三区三州」の貧困が深刻な地域の発展の遅れを早急に補強する。

②東北の全面振興を深く推進する。

東北の全面振興の重点は、ビジネス環境を引き続き最適化し、東北アジアに向けて開放された協力プラットホームを建設することである。

③中部地域の質の高い発展を推進する。

湖北省の経済社会の発展を支援する包括的政策を組織的に実施する。これは、国務院が下達した文件である。なぜなら、湖北省は疫病の影響が最も深刻であるため、特別に文件を打ち出し、その発展を支援しなければならないからである。同時に、中部地域の質の高い発展のための政策文件を打ち出して、実施を推進しなければならない。

④引き続き、東部の率先発展を支援する。

東部地域のリーダー・牽引作用を十分発揮させ、海洋経済の発展と海洋強国建設を加速する政策措置を打ち出す。

(4)機能プラットホームのリード作用を十分発揮させる

重点地域が産業移転を受け容れる、プラットホームと施設の建設のため、中央予算内の特別投資プロジェクトを実施し、国家レベルの新区、産業移転を受け容れる模範区の早急な発展を支援する。

6.「一帯一路」

新型肺炎疫病が突如やって来て、世界に蔓延し、国際経済・貿易協力に深刻な衝撃を生み出した。慰めは、「一帯一路」沿線の経済・貿易協力は、衝撃を受けたものの、影響は相対的にいくらか小さいことである。

1-3月期、わが国の「一帯一路」沿線国への輸出入はプラス成長を維持し、3.2%増であり、全体の伸びより9.6ポイント高く、これは流れに逆らった伸びに属する。今後、「共に協議・共に建設・成果をシェア」の原則を堅持し、政策の疎通、施設の連結、貿易の円滑化、資金の融通、国民同士の心のつながりを推進し、「開放・グリーン・クリーン」の理念を堅持し、「ハイレベル・民生優遇・持続可能」の目標実現に努力し、共同で質の高い「一帯一路」を建設し、人類運命共同体を構築する。これには以下の方面が含まれる。

(1)疫病防御と「一帯一路」建設を統一的に企画する

国外プロジェクトの疫病防御を厳格にしっかり行い、国内の法規と防疫の要求に従い、企業の主体的役割を発揮させ、疫病防御を的確に展開し、人員の安全・健康を確実に擁護し、各種の発生可能なリスクを積極的に防止し、業務・生産再開を秩序立てて推進し、沿線国経済の安定・回復に助力する。

(2)沿線国との経済・貿易協力、物流の円滑化を促進する

対外貿易企業の早急な業務再開・本格生産を支援し、市場を保障し、契約を保障し、産業チェーン・サプライチェーンの安定を保障する。これは、わが国のためだけではなく、国際上わが国と協力関係にある国家のためでもある。今年、中欧鉄道コンテナ定期輸送サービスは、既に累計3230本が運行され、前年同期比24%増となった。これも流れに逆らった伸びである。中欧鉄道コンテナ定期輸送サービスのクイック通行作用を更に好く発揮させ、欧州・アジアを連結しなければならない。「一帯一路」沿線国との経済・貿易の互恵・協力を強固に開拓し、FTAネットワークの建設を強化し、貿易・投資の自由化・円滑化水準を引き上げる。

(3)健康シルクロード・デジタルシルクロードの協力分野を開拓する

グローバルな公共衛生ガバナンスに積極的に参加し、発展途上国に向けて力の及ぶ限りの疫病防御援助を提供し、「一帯一路」沿線国と医療・衛生分野の協力を強化し、健康シルクロードの建設を着実に推進し、人類健康運命共同体を構築する。

さらにビッグデータ・「インターネット+」・スマートシティ分野の協力を推進し、越境Eコマース・オンライン展覧・遠隔ビジネス・クラウドビデオ等の新たな経済・貿易方式の役割を発揮させ、デジタルシルクロードを協力して建設する。

(4)人文・ソフトウエア等の分野の交流・協力を深める

教育・科学・文化・スポーツ・観光・考古学等の各分野での人文協力を深く展開し、議会・政党・民間シンクタンク・メディアの交流を強化し、国民の心のつながりを促進する。

政策ルール・基準のソフトな連携を推進し、市場の原則に従い、国際ルール・基準とリンクさせ、ソフトな連携とハードな連携を結びつける。設計・コンサルティング・会計・認証・法律等の生産関連サービス業の方面の協力推進を含め、全体の相互連携を推進する。

(参考)5月22日、何立峰主任の記者会見

こちらは、24日の記者会見と重複しない部分について、要点を紹介する。

(1)小康社会の全面建設について

小康社会の全面実現は、完全・系統的・総合的な目標体系であり、経済指標のみならず、人民民主の不断の拡大、人民生活水準の不断の向上、文化ソフトパワーの建設、生態文明とりわけ資源節約型・環境友好型社会の建設、社会ガバナンス能力・ガバナンスシステムの水準向上、さらに改革開放等の内容を含むものである。特に際立った目標は、脱貧困堅塁攻略戦に打ち勝つことである1

これらの目標・任務は、具体的に毎5カ年計画に量化され、第13次5カ年計画は小康社会の全面実現の主要内容を含んでおり、全25項目の指標がある。うち12項目は、GDP、1人当り所得等を含む予期性のものであり、13項目は拘束性のものである。

現在の執行情況から見ると、常住人口都市化率等のいくらかの指標は既に前倒しで実現しており、大部分の指標は時間どおり推進されている。年末には、努力を経て、一部分は超過達成、一部分は全面達成、ごく少数は基本的に達成するだろう。

GDP指標について言えば、今年1%しか成長しなければ、2010年GDPの1.91倍となり、3%成長すれば1.95倍となり、5%成長すれば1.99倍に接近する。いずれも予期目標に非常に接近する。1人当り所得は、もし1.75%増加すれば、予期目標を実現できる。

(2)投資の重点  

「3つの精確」を重視する。

①精確な資金調達

中央予算内投資6000億元(前年比234億元余り増)、地方政府特別債3兆7500億元(前年比1兆6000億元増)、このほか疫病対策特別国債1兆元があり、この一部は地方移転を通じて、関連する不足補充・脆弱部分補強の投資に用いられる。

合計すると、中央レベルの集める資金は5兆元を超え、2兆元余り増えることになる。

②精確なプロジェクト

「2つの新、1つの重」を建設する

1)新しいタイプのインフラ

5G等の建設を一層強化しなければならない。

2)新しいタイプの都市化

特大都市は今回の疫病防御で暴露された情況からすると、ある程度スリム化が必要である。大中都市と県都は、一層の不足補充・脆弱部分補強、とりわけインフラ建設・公共衛生・医療応急物資備蓄等の方面を速やかに補充・補強しなければならない。

3)行政区・流域を跨る重大プロジェクト(四川-チベット鉄道、大河の治水等)を早急に建設しなければならない。

③精確に施策を行う

前期の準備をしっかり行い、プロジェクトを資金がフォローし、土地・環境評価等の要素がフォローする。

(3)「6つの安定」と「6つの保障」

「6つの保障」と「6つの安定」は相互補完的で、一貫し統一されたものである。

「6つの保障」内部も相互補完的であり、前の「3つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体の保障)は、人民中心の発展思想を直接貫徹実施するものである。

市場主体をしっかり保障すれば、庶民の雇用を有効にしっかり保障できる。雇用は民生の本であり、庶民の雇用をしっかり保障すれば、基本民生をしっかり保障できる。さらに社会保障の最低ライン保障作用は非常に重要である。

後半の「3つの保障」(食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端運営の保障)の重点は、前半の「3つの保障」をよりしっかり実施できるよう、マクロ・社会レベルの面から保障するものである。

注.
  1. 太字は筆者。