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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(25)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年5月8日


はじめに

本稿では、5月6日の党中央政治局常務委員会、国務院常務会議の概要を中心に紹介する。

5月4日 国務院金融安定発展委員会

疫病発生以来、国務院金融安定発展委員会及びその構成員は、党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹実施し、政策のテンポを加速し、政策の的確性を強化し、「予想の安定、総量の拡大、分類した取組み、期限の延長、手段の刷新」という政策の確定性によって、疫病の衝撃と経済の下振れがもたらした多くの不確定性をヘッジし、実体経済への金融支援の程度を引き続き増大させた。

グローバル金融市場が激烈に動揺する情勢の下、わが国の株式市場・債券市場・外為市場は総体として平穏に運営されており、強靭性がかなり強い。

金融安定発展委員会構成員は、マクロ政策の案を準備し、有効需要を創造し、供給構造を最適化し、流動性の合理的充足を維持し、政策の質を高め、政策実施にしっかり取り組まなければならない。

中小銀行は、実体経済と中小・零細企業にとって、重要な意義を有する。関係部門は既に中小銀行の改革深化と資本補充の政策を制定しており、この実施に取り組まなければならない。

改革と発展を有機的に結びつけ、末端と中小・零細企業へのサービスに立脚し、資本を充実すると同時に、業務の位置づけ・コーポレートガバナンス・貸出コスト等の方面における中小銀行の際立った問題をしっかり解決し、ガバナンス構造と業務の発展の良性の循環を推進しなければならない。

投資家の利益を断固擁護し、市場紀律を厳格にし、資本市場におけるあらゆる不正行為を容認してはならない。

市場化・法治化の原則を堅持委し、情報公開制度を整備し、財務における不正・インサイダー取引・市場操縦等の法規に違反した行為を断固として取り締まり、不正を行った上場会社・仲介機関・個人を断固徹底調査し、厳格に処分しなければならない。

現在、国際商品市場価格の変動がもたらす一部金融商品のリスク問題を高度に重視し、リスク意識を高め、リスク管理・コントロールを強化しなければならない。

外部への波及をコントロールし、適切な程度を把握し、専業性を高め、契約を尊重し、責任を明確に処理し、投資家の合法な利益を保護しなければならない。

(参考)新華社北京電2020年5月7日「国務院金融安定発展委員会は1カ月内に3回この問題に注意を払っており、どのようなシグナルを発しているのか?」

同記事は、国務院金融安定発展委員会が4月7日、4月15日、5月4日と3回、資本市場の不正・詐欺行為を厳しく取り締まることに言及したと指摘している。

証券監督管理委員会によれば、2019年に行政処罰を決定した違法行為は296件、罰金総額は41.83億元、市場への出入りを禁じられた者は66人である。

また、2019年以降証券監督管理委員会は、上場会社の財務不正行為を厳格に取り締まっており、累計22社の上場会社の財務不正行為が立件され、18の典型案件に行政処罰を科し、公安機関に移送された財務不正関連犯罪は6件となっている。

5月6日 党中央政治局常務委員会

習近平総書記は、次のように強調した。

「現在、国外疫病の拡散・蔓延の勢いには有効な歯止めがかかっておらず、国内の個別地域で密集性の疫病が出現し、新型肺炎の疫病はなお大きな不確定性がある。湖北省の疫病防御は、既に緊急・非伝統的防御から常態化した防御に転換しているが、これは決して防御措置を緩め、中止してよいということを意味しない。党中央は引き続き連絡グループを派遣し、湖北省と武漢市の疫病防御後の後続政策への指導・支援を強化することを決定した。

引き続き治癒した患者のリハビリと心理面のケアをしっかり行うよう指導し、常態化した疫病防御措置の実施を督促し、外では疫病輸入を防ぎ、内では疫病の再流行を防がなければならない。いささかも弛むことなく各政策に取り組み、疫病防御の成果を強固にし、これまでの成果を台無しにしてはならない。

湖北省・武漢市は常態化した疫病防御を協調して推進すると同時に、湖北省の経済社会発展を支援する包括的政策の完全実施を推進し、生産生活の正常な秩序の回復を加速しなければならない」。

5月6日 国務院常務会議

この会議は、4月17日の党中央政治局会議が包括的景気対策の基本方向を決定したことを受け、政府レベルで具体的政策を検討したものとみられる。

(1)業務・生産再開と企業の困難緩和支援

党中央・国務院の手配に基づき、各地方・各部門は業務・生産再開と企業の困難緩和支援の推進を軸に、8方面・90項目の政策措置を精確・有力に遅滞なく推進している。これには次のものが含まれる。

①小型・零細企業と個人工商事業者への増値税減免を増やした。

②疫病の影響がかなり大きい交通・輸送、レストラン、観光等の業種の企業に対し、損失繰延年限を5年から8年に延長した。

③各種企業が納付する年金・失業・労災保険料の減免は1-6月期に6000億元に達し、失業保険料の雇用安定還付政策の実施の恩恵は8400万人余りの従業員に及んだ。

④道路通行料を1400億元余り免除し、電力・ガス価格を引き下げ、1-6月期企業のために670億元負担を軽減した。

⑤預金準備率引下げを実施して1.75兆元の資金を解放し、特別再貸出・再割引、国有大型銀行による小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの奨励、政策銀行の特別無担保貸出額の増加等を通じて、企業とりわけ中小・零細企業と個人工商事業者のために低コストの貸出2.85兆元を提供した。

⑥110社余りの中小・零細企業に対し、1兆元を超える貸出の元本償還・利払いを延期した。

⑦春季耕作・生産、牧畜業の発展等への支援を強化した。

上述の措置のポジティブな効果が顕在化しており、業務・生産再開は徐々に正常な水準に達し、企業の困難は一定程度緩和され、経済社会の運営は、徐々に正常に向かっている。

(2)経済基盤の安定

「6つの維持」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギー安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を維持する)をしっかり行うことを、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策の注力点とし1、経済の基盤をしっかり安定させなければならない。

既に打ち出した、企業とりわけ中小・零細企業と個人工商事業者の困難を緩和し、発展を支援する各政策を一層きめ細かく実施し、企業により多くの実際の恩恵を与え、雇用を安定させ、出稼ぎ農民を含む労働者の雇用・所得に対する疫病の影響を軽減し、基本民生を保障しなければならない。

内需拡大戦略を実施し、多くの措置を併せ打ち出して消費の回復・上昇を促進する。

疫病が暴露した脆弱部分と経済社会発展の不足分野について、国家計画が既に明確にしている重大プロジェクトの建設を早急に推進し、既に下達した中央予算内投資と地方政府特別債をうまく用いて、できるだけ速やかに実物の成果量を形成する。

ビジネス環境を引き続き最適化し、市場参入のネガティブリストを早急に改訂し、民営企業とりわけ中小・零細企業の参入障壁を除去し、社会の有効な投資を牽引する。

対外貿易政策を整備し、外資参入のネガティブリストと外資による直接投資奨励産業目録を早急に改訂し、外資参入制限を一層緩和する。

(3)関連政策の整備

情勢の変化と企業からの要求に基づき、関連政策を遅滞なく整備し、打ち出さなければならない。

①現在疫病がなお過ぎ去らない情況に鑑み、小型・零細企業と個人工商事業者の所得税納付延期、疫病防御関連の供給維持支援に係る税・費用政策の実施期限延長を認める。

納税者に対して公共交通・輸送サービス、生活関連サービスを提供し、及び庶民のために生活必需物資宅配サービスを提供して得た収入については、増値税免除期間を延長する。

企業の難関克服をより大きな程度支援する。

②年初に既に発行した地方政府特別債1.29兆元の基礎の上に、定められた手順に従い、さらに1兆元の特別債新規増発限度額を前倒しで下達し、5月末までに発行を終えるよう努力する。

③企業を安定させ、雇用を維持する金融支援措置を強化する。

雇用の基本的安定を維持する企業とりわけ中小・零細企業に対して、元本償還・利払い延期政策を適切に延長し、彼らが多くのルートで資金調達を行うことを支援し、政策手段を創設して銀行が更に多く無担保貸出を行うことを支援する。

5月7日 新型肺炎対策領導小組会議

習近平総書記が主催した中央政治局常務委員会会議精神を真剣に貫徹し、新型肺炎対策領導小組の手配に基づき、防御の実践において有効な方法をしっかり総括・運用し、常態化した防御措置を整備・実施し、的確に疫病輸入を防止し、疫病防御の成果を確固とし、再流行を断固防止し、企業の業務・生産再開、生活関連サービスの業務・マーケット再開、学校の授業再開を推進しなければならない。

「5月1日」(メーデー)休暇期間の人員がかなり大規模に流動し、一定の範囲で密集した情況下での防御措置の効果を早急に評価し、観光スポット・レストラン・旅館・ショッピングモール等の場所を総括することは、防御に資するばかりでなく、マーケット再開にも資する有効な方法である。

国務院防御連携メカニズムは、地方が関連ガイドラインを公布し、方法をうまく運用して、常態化した防御の精確性を一層高めるよう指導し、この基礎の上により多くの生活関連サービス施設の経営回復を推進し、個人消費の回復・上昇を牽引し、経済社会発展が全面的に正常な軌道を歩むよう更に有効に推進しなければならない。

  1. これまで「6つの安定」と「6つの維持」は並列で述べられていたが、「6つの維持」が「6つの安定」実現のための重点項目という位置づけが明らかにされた。