1-3月期の雇用・社会保障

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年4月24日


はじめに

人力資源社会保障部は4月21日、1-3月期の雇用・社会保障について、記者会見を行った。本稿では、その概要を紹介する。

1.新型肺炎対策

重点企業の雇用調整の保障を実施し、中央事務委託企業と地方重点企業1万社余りの労働者50万人近くの募集・採用を解決し、重点防護物資と生活必需品の秩序ある生産を確保した。

出稼ぎ農民の職場復帰直行チャーターサービスを実施し、累計590万人近い出稼ぎ農民を輸送した。「失業保険による企業支援・雇用安定キャンペーン」を実施し、既に302万社の企業が失業保険料雇用安定還付388億元を享受しており、対象の従業員は8076万人に及び、受益企業数は昨年1年を超えた。

「百日・千万インターネット募集特別キャンペーン」を実施し、重点分野・重点地域・重点層に焦点を絞り、特色ある募集特別会場を開設し、既に134万社が延べ1339万人の求人を行った。「百日無料オンライン技能訓練キャンペーン」を実施し、オンラインプラットホームに実名登録した総人数は延べ590万人であった。

社会保険で企業を支援する「『免除・軽減・延期』キャンペーン」を実施し、2-3月に既に社会保険料2329億元を減免し、286億元を延期して、企業の資金圧力を緩和し、企業のできるだけ速やかな生産回復を支援するために積極的役割を発揮した。

2.雇用対策

今年1-3月期、全国新規就業者増は229万人、3月の全国都市調査失業率は5.9%であり、雇用情勢は往年と比べより峻厳となっている。党中央・国務院はこれを高度に重視し、習近平総書記は何度も重要指示を行い、雇用安定措置を全面的に強化し、企業支援・雇用安定・雇用拡大を併せ打ち出さなければならないと強調している。国務院は専門文件を発出し、テレビ電話会議を開催して特別手配を進めており、人力資源社会保障部は、関係方面と共に、職能・職責に立脚し、これを断固貫徹実施し、一連の措置を採用して積極的に対応している。

(1)ルートを広げる。

業務・生産再開を全面的に推進し、雇用の回復・安定を加速する。

重点企業雇用調整保障メカニズム、出稼ぎ農民の職場復帰サービス保障メカニズムを確立し、重点企業の労働者募集を50万人近く解決し、直行チャーター方式で出稼ぎ農民を590万人近く輸送し、投資と産業の雇用牽引能力を高め、起業債務保証、起業スペース・プラットホームでの就業への支援を強化し、新業態の発展と柔軟な就業を牽引する。

最近我々は、一部国家の重大水利プロジェクトが雇用牽引目標を明確にし、多くの中央企業が募集規模を拡大したことにも注意を払っている。

(2)雇用を安定させる。

「免除・軽減・延期・還付・補助」の一連の企業支援・雇用安定政策の併せ技を打ち出した。3月末までに、企業の社会保険料を計2329億元減免した。4月19日までに、失業保険料を雇用安定のために388億元還付し、対象企業は302万社に及んだ。1-3月期、就業補助金を累計100億元近く支出し、企業の雇用級数・労働者の自主創業・柔軟な就業を支援した。

(3)重点を保障する。

大学卒業生に対して、中小・零細企業の雇用吸収を奨励する補助政策を打ち出し、国有企業・事業単位の募集規模、末端プロジェクトの募集規模、軍入隊規模、就業実習の規模を拡大した。科学研究所助手のポストを開発し、末端教師と医療関係者の陣容を充実すると同時に、大学卒業生がコミュニティサービス需要に対応して就業・起業することを奨励した。

出稼ぎ農民に対して、情報アクセス・輸送アクセス・健康診断アクセスを強化し、秩序立った移転就業を推進した。同時に、農業部と共に、出稼ぎ農民が近場・地元で就業できるよう手配を行い、農業回帰を誘導し、プロジェクトへ誘導・吸収し、業態のイノベーション・発展に誘導し、起業に誘導・支援し、真の困窮者に対していくらかの農村公益ポストを開発して最低保障を行い、正面からの就業ルートを全力で開拓した。

(4)サービスを最適化する。

今回の疫病はオフラインサービスに対し大きな制約をもたらし、同時にオンラインサービスの発展を強く促した。我々は前後して、「オンライン春風キャンペーン」「オンライン就職支援キャンペーン」を推進し、とりわけ3月中旬に「百日千万インターネット募集特別キャンペーン」を発動し、募集クラウドプラットホームを作り上げた。

(5)最低ラインを保障する。

オンライン失業登録を全面的に開放し、オンライン失業保険申請・受領を開通して、失業者のために一括した雇用管理・雇用サービスを無料提供した。同時に、各地方もいくらかの臨時公益ポストを相次いで開発し、就業困難者のために最低ラインの保障を実施した。

最近、中央政治局会議は、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策を強化するよう更に強調し、「6つの維持」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギー安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を維持する)政策を明確に手配した。

我々には党中央・国務院の堅固な指導があり、各地方・各部門と社会の各方面の共同努力があり、とりわけ広範な労働者・企業家が共同しての刻苦奮闘があるので、我々は雇用局面の総体としての安定を維持する能力があると信じている。

3.社会保険料の減免

2月20日、人力資源社会保障部・財政部・国家税務総局の3部門は、「企業の社会保険料を段階的に減免することに関する通知」を発出し、2月から企業が納付する年金・失業・労災の3つの社会保険料について、「免除・軽減・延期」を一部実施することを規定した。政策の貫徹実施について、3部門と各地方は高度に重視し、人力資源社会保障部門は「人力資源社会保障戦役特別キャンペーン」を強力に推進した。2カ月経過して、多方面の共同努力の下、効果が一層顕在化している。

①政策執行度は100%である。

3月末までに、すべての省が減免方法を打ち出し、各減免政策を全面実施し、条件の合致した企業はすべて段階的減免政策の優遇を享受している。

②2カ月で2329億元を減免した。

うち、年金保険2184億元、失業保険75億元、労災保険70億元である。

減免政策の実施は、企業の安定と雇用拡大、できるだけ速やかな業務・生産の再開支援にとって、重要な促進作用を発揮した。

③中小・零細企業が主要な受益者である。

2329億元の減免のうち、中小・零細企業は1893億元で81.3%を占める。年金保険の減免2184億元のうち、中小・零細企業は1802億元で82.5%を占める。これは、政策の差別化と精確さを示すものである。

④2、3月企業の3つの社会保険料納付を計286億元延期し、うち年金保険料が254億元であり、企業の困難・プレッシャーを緩和した。

このほか、昨年の社会保険料引下げ政策の後年度効果により、今年1-3月期、全国企業の3つの社会保険料は1296億元減少しており、2つの政策の相乗効果により、企業の生産経営コストを有力にヘッジ・減少させ、獲得感は一層増強された。

4.年金支給

年金保険の対象は比較的広く、一方で企業・個人から保険料を徴収し、他方で退職者に年金を支給することになる。総体としてみると、年金支給に問題はなく、全国企業年金保険基金の累計残高はなお5兆元余りであり、比較的堅実な物質的基礎がある

主要な問題は、やはり省の間の構造的矛盾が比較的際立っていることである。年金支給を確保するため、我々は以下の措置を採用している。

①基金中央調整制度を組織的に実施する。

3月、人的資源社会保障部は、財政部と共に「2020年度企業基本年金保険基金中央調整事前徴収・交付計画」を下達し、4月初め1-3月期の調整資金は既に全部支給した。実施プロセスにおいて、我々は特別協調により一部資金を前倒しで分離し、湖北省に的を絞って1-3月期の中央調整交付を増やした。

②各省の資金手配情況を定期的に調整し、年間の資金準備情況について詳細な調査を進め、資金調整問題への協調を支援した。

③各省が、省レベルでの統一を早急に推進し、省内の資金アンバランス問題を解決し、全省での年金支給をさらに好く確保するよう指導した。

現在までに、全国で既に20の省が基金の省レベルでの収支統一を実行している。年末までに、すべての省が収支統一を実現することは、全省基金の支給保障機能を一層増強するだけでなく、同時に年金保険の全国統一実現のために比較的良好な基礎を打ち立てることにもなる。

今後、我々は各地方が社会保険料の段階的減免政策をきめ細かく実施するよう指導すると同時に、各地方の基金収支情況のモニタリングを強化して、各省が基金調整をしっかり行い、年金支給を確保するよう指導する。

5.貧困労働者の雇用対策

1人の就業は、一家が貧困から脱する。雇用増は、最も有効で、最も直接的な脱貧困の方式である。

今年の新型肺炎疫病の突発は、労働者の需要を普く減らし、労働者の外への流動が滞り、地域を越えた労務協力の難度も増大し、就業による貧困支援は新たな困難・試練に直面している。習近平総書記は、貧困労働力の就業を優先的に支援し、就業による貧困支援を強化しなければならないと強調している。人力資源社会保障部門は、関係部門と共にこれを貫徹実施し、出稼ぎ労働を早急に推進し、重点地域での全力の堅塁攻略に焦点を絞り、全力で就業による貧困支援を推進している。現在の重点は6つである。

①優先的に輸出する。

東部・西部の貧困支援協力・対口支援1 ・省内協力による支援メカニズムに依拠して、輸出地と輸入地の雇用をリンクさせ、貧困労働力のために直行チャーター方式の集中輸送を優先的に展開する。

②優先的に業務を再開する。

貧困支援リーダー企業・貧困支援作業場・コミュニティ工場・農業合作社等の経営主体のできるだけ速やかな業務再開を積極的に推進し、貧困労働力の就業・増収を牽引する。

③農作業に動員する。

貧困労働力が農業生産・農業インフラ建設・家庭農場等に参加するよう誘導し、農業生産を通じて増収を図る。

④優先的に組織化する。

現地の重大プロジェクトの雇用潜在力を発掘し、貧困労働力の優先採用を奨励する。

⑤起業で牽引する。

「Uターン起業推進キャンペーン」を実施し、各種労働者の貧困地域における起業・興業を支援し、貧困労働力の雇用を牽引する。

⑥公的ポストに就職させる。

いくらかの臨時農村公益ポストを開発し、農村を離れられず、支援できる仕事がなく、脱貧困の力がない貧困労働力に最低保障を与える。

各方面の努力を経て、就業による貧困支援は段階的成果を得ている。4月10日までに、既に出稼ぎを行っている貧困労働力は2300万人余りで、昨年の出稼ぎ労働総数の86%となっている。しかし、現在貧困労働力の出稼ぎ人数は前年同期を下回っており、貧困労働力の近場・地元での就業も新たな困難・問題に直面していることをも見て取らねばならない。

我々は政策の実施に引き続きしっかり取り組み、心とパワーを一つにして、就業による貧困支援を全力で推進し、就業による貧困支援に疫病が及ぼす影響を最低にまで引き下げるよう努力する。52の貧困を脱していない貧困県、「三区三州」などの貧困が深刻な地域、疫病の影響が深刻な湖北省の3つの重点に焦点を絞り、プロジェクト・資源・資金・労務協力の傾斜を一層強化して、脱貧困堅塁攻略の任務を助力する。

  1. 経済の豊かな省が貧困省に対し、1対1の形で国内ODAを行うこと。