1-3月期の財政状況

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年4月23日


はじめに

財政部は4月20日、1-3月期の財政状況を公表するとともに、記者会見を行った。本稿では、その概要を紹介する。

1.1-3月期の財政状況

1-3月期の全国財政収入は4兆5984億元で、前年同期比-14.3%となった1。中央財政収入は2兆1157億元、同-16.5%、地方レベルの収入は2兆4827億元、同-12.3%である。税収は3兆9029億元、同-16.4%、税外収入は6955億元、同0.1%増であった。

1-3月期の全国財政支出は5兆5284億元、前年同期比-5.7%であった2。中央レベルの支出は7173億元、同3.7%増、地方財政支出は4兆8111億元、同-7%である。

2.財政収入減の要因

総体としてみると、財政運営に以下の特徴が現れた。

(1)全国財政収入の低下は多重の要因の相乗作用である。

①新型肺炎疫病の影響を受けて税ベースが減少し、及び疫病防御の供給保障、企業の困難緩和、業務・生産再開を支援するため、減免税・税緩和措置を採用したことにより、全国財政収入の伸び率を約10ポイント押し下げた。

②減税・費用引下げの成果が強固になり、増値税の後年度減収効果が持続的に作用し、全国財政収入の伸び率を約5ポイント押し下げた。

③前年末から今年初めに納付が繰り延べられた税収が前年度より減少した。

(2)新型肺炎疫病から受けた影響がかなり大きい業種の税収の下落幅がかなり大きかった。

多数の税目が前月の情況に基づき申告納税されるため、新型肺炎疫病の財政収入に対する影響は2月から顕著となり、3月にある程度拡大した。1-3月各月の全国財政収入は、それぞれ1月-3.9%、2月-21.4%、3月-26.1%であり、1-3月期、旅館・レストランの税収は-33.2%、交通・輸送業は-27%、文化・スポーツ・娯楽業は-19.6%であった。

(3)地方収入の下落幅が中央より低かった。

1-3月期、地方収入は前年同期比-12.3%であり、下落幅は中央より4.2ポイント低かったが、これは主として、一部地方が多くのルートで国有資源・資産を活性化し、税外収入を増やしたためである。1-3月期、地方の税外収入は3.1%増であり、うち国有資源(資産)有償使用収入は14.5%増、国有資本経営収入は110%増となり、合計で地方税外収入の伸び率を6.5ポイント押し上げた。

同時に、引き続き企業負担を軽減し、企業に係る費用徴収を引き続き引き下げ、教育付加費用の特別収入5.7%引下げを含め、行政事業性費用徴収を11.5%減らした。

4-6月期を展望すると、内外新型肺炎疫病情勢の進展・変化の影響を受け、財政収入はなお低下傾向を示すと思われる。しかし、わが国の生産生活秩序が回復し、業務・生産再開が徐々に正常水準に接近し、あるいは達するに伴い、財政収入の低下幅は徐々に縮小するだろう。

3.新型肺炎対策

疫病発行以降、財政部は習近平総書記の重要指示精神と党中央・国務院の政策決定・手配を断固として貫徹実施し、疫病防御関連政策を全力で支援した。

(1)立ち位置を高め、全力で疫病防御に対応した。

疫病発生後、財政部はまず疫病防御対策領導小組を設立し、劉昆部長を組長に任じ、分業を明確にし、メカニズムを形成し、防御需要への適時対応を確保した。同時に、各レベル財政部門が職責を確実に履行し、統一的に計画し、より有力な措置を採用し、疫病防御対策を全力で支援し、疫病防御の迎撃戦に断固打ち勝つよう要求した。

(2)防御経費の保障を高度に重視し、統一的に企画し、しっかり保障した。

疫病防御支援、とりわけ人民大衆の生命・健康を保障するため、財政部は関係部門と患者救済・治療に関する費用補助、第一線の医療関係者への臨時活動補助等一連の政策措置を打ち出し、かつ2回に分けて疫病防御資金を事前支給した。同時に、国庫支出の調整を強化して、確実に2つを確保した。すなわち、①人民大衆が費用の問題を心配して診療を受けないという事態を発生させないことの確保、②各地方で資金の問題が医療救済と疫病防御に影響を及ぼす事態を発生させないことの確保である。

同時に我々は、各レベル財政部門にあらゆる手を尽くして疫病防御経費をしっかり保障し、政策を強化して、5つを確実に貫徹するよう要求した。すなわち、①政策実施の貫徹、②政策手配の貫徹、③予算計上の貫徹、④資金交付の貫徹、⑤監督管理の貫徹である。4月19日までに、各レベル財政は、疫病防御資金1452億元を手配し、各地方の疫病防御経費はかなり好く保障されている。

(3)多くの措置を併せ打ち出し、業務・生産再開を全面的に支援した。

国内の疫病防御情勢が徐々に好転するに伴い、財政部は疫病防御に関係する政策に引き続きしっかり取り組むと同時に、疫病防御と経済社会発展の重点政策を統一的に企画・推進し、業務・生産再開を全面的に支援した。

①減税・費用引下げ政策を打ち出した。

小型・零細企業と個人工商事業者に対し増値税を減免し、防疫補助収入に対する個人所得税免税等の税・費用支援措置と、一連の社会保険料減免政策を打ち出し、かなり大きな程度企業負担を軽減した。

②財政利息補助政策を打ち出した。

疫病防御重点保障企業特別貸出のために利息補助支援を提供し、企業の資金調達コストを引き下げ、企業の生産安定・供給保障に助力した。

③政府の最低保障・調達・備蓄政策を打ち出した。

中央政府の備蓄作用を十分発揮し、重点企業が品質・量を維持しながら、不足している重点医療物資の生産を増やすよう奨励した。

④雇用促進政策を打ち出した。

失業保険料の雇用安定還付の強化、地方の社会保険料徴収緩和の奨励等の方式を通じて企業の雇用安定支援を的確に展開し、雇用対策を拡大した。

(4)施策を精確に実施し、困窮大衆の基本生活を確実に保障した。

各地方が困窮大衆の最低ラインをしっかり保障する政策を支援すると同時に、「物価臨時補助の段階的強化に関する国務院要求」をしっかり実施し、財政部は困窮大衆への保障を一層強化した。現在までに、中央財政は困窮大衆救済補助金を累計1560億元下達しており、既に昨年の執行実績額を超えている。

4.末端政府の基本民生・給与・運営保障

末端政府の基本民生・給与・運営保障を支援することは、大衆の切実な利益を保障する基本要求であり、政府の職務履行と各政策実施を推進する基礎的条件である。中央財政はこれを高度に重視している。

疫病発生前、既に地方が今年の予算を編成する際に、基本民生・給与・運営保障の支出を優先的に統一計上するよう手配し、各地方は予算計上と結びつけて各レベルで実施に取り組んでいる。総体として見ると、予算計上は関連支出需要を満足できており、地方の基本民生・給与・運営保障に大きな問題は出現していない。

疫病の影響を受け、一部の地方の末端の基本民生・給与・運営保障がかなり大きなプレッシャーに直面しているが、疫病の影響は段階的であり、疫病が有効に抑制され、企業が業務・生産再開を加速し、経済社会発展の各政策が正しい軌道に乗るに伴い、財政収入は正常に回復し、基本民生・給与・運営保障へのプレッシャーも徐々に軽減されている。地方が確実に基本民生・給与・運営保障をしっかり実施することを支援するため、中央財政は一連の措置を総合的に採用した。

(1)組織的指導を強化する。

劉昆財政部長を組長とする政策領導小組を専門に設立し、地方の基本民生・給与・運営保障への統一的指導を強化し、地方の基本民生・給与・運営保障における際立った問題を検討・解決する。

(2)移転支出資金を遅滞なく下達する。

昨年10-12月期、既に事前下達した移転支出6.1兆元の基礎の上に、今年に入り均衡性移転支出700億元、県レベル基本財力保障メカニズム奨励補助金406億元を事前交付し、地方財政の経費保障能力を増強し、地方が疫病防御と基本民生・給与・運営保障をしっかり実施することを支援した。

同時に、一部の中央基本建設投資、企業の業務・生産再開促進等の方面の資金を下達し、経済社会の平穏な発展を促進した。

(3)地方に対する督促・指導を強化する。

3月初に特別通知を発出して、保障責任をしっかり果たし、地方財政資金の使用保留比率を段階的に引き上げ、移転支出予算を早急に下達し、地方の国庫へのモニタリング・督促・指導を強化し、財政支出構造の調整を確実に強化し、一般性支出の一層圧縮に力を入れ、措置を確実に採用して末端財政の基本民生・給与・運営保障能力を高めるよう要求した。

今後中央財政は、4月17日中央政治局会議が提起した「6つの維持」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギー安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を維持)要求に基づき、一部中央の遊休資金を集中的に使用し、地方移転支出の統一的企画を強化し、地方の基本民生・給与・運営保障の財政力支援を強化する。

同時に、地方財政の運営情況を密接にフォローし、地方が資金交付・使用を加速するよう督促し、疫病がかなり重い地域と困窮地域への支援を強化し、基本民生・給与・運営保障に全力でしっかり責任をもつ。

5.減税・費用引下げ

疫病発生以来、財政部は関係部門と共に一連の的確な減税・費用引下げ政策を検討して打ち出した。これには主として以下のものが含まれる。

(1)疫病防御重点保障物資生産企業に対し、税・費用の優遇を与える。

疫病防御重点保障物資生産企業が新規に設備を購入した場合には、1回限り課税前控除を認め、2020年1月1日後の増値税の控除留保分を全額還付する。

疫病防御重点保障物資の輸送について増値税を免除する。

関連防疫薬品・医療器械の登録料徴収を免じる。

(2)疫病の影響がかなり大きい業種・企業に対し税・費用を減免する。

疫病の影響がかなり大きい交通・輸送、レストラン、旅館、観光等の業種・企業に対し、損失繰延年限を5年から8年に延長する。

納税者に対し、公共交通輸送サービス、生活関連サービスを提供し、庶民のために生活必需物資の宅配サービスを提供して得た収入に対し、増値税を免除する。

航空会社が納めなければならない民間航空発展基金への納付を免除する。

各省(区・市)は疫病の影響がかなり大きい業種・企業に対し、不動産税・都市土地使用税を減免する。

(3)社会の寄贈を奨励する税制優遇を強化する。

企業・個人が公益的社会組織を通じて、疫病対応に用いる現金・物品を寄贈し、あるいは直接疫病対応に用いる物品を病院に寄贈した場合は、所得税の課税前全額控除を認める。

職場単位・個人工商事業者が、疫病対応に用いる貨物を無償で寄贈した場合は、増値税・消費税・都市維持建設税・教育付加費用・地方教育付加金を免除する。

(4)防疫補助金の収入に対して個人所得税を免除する。

疫病防止対策に参加した医療関係者と防疫関係者が、政府が規定する基準に基づき得た臨時業務補助・奨励金、単位が個人に予防に薬品・医療用品・防護用品等の実物を支給した場合は、給与所得に算入せず個人所得税を免除する。

(5)個人工商事業者と小型・零細企業への税制優遇を強化する。

湖北省の増値税3%の税率を適用している小規模納税者に対して、増値税を免除する。その他の地域の増値税3%の税率を適用している小規模納税者に対して、税率を1%減ずる。

(6)自動車消費を拡大する租税政策を打ち出す。

中古車ディーラー企業の売上への増値税率を0.5%減ずる。本年末に期限が到来する新エネルギー車への車両購入税免除政策を、2年延長する。

(7)西部大開発への企業所得税優遇政策を続ける。

本年末に期限が到来する西部地域の奨励類産業企業に対し、企業所得税の税率を15%減ずる政策を、2030年12月31日まで延長すると同時に、政策を享受するハードルを引き下げ、奨励類産業プロジェクトの当年度の本業収入が総収入に占める限度を70%から60%に引き下げる。

このほか、段階的に企業の社会保険料を減免し、対外貿易の安定を支援する税・費用政策を打ち出した。

上述の減税・費用引下げ政策措置を実施し、疫病防御と業務・生産再開を有力に支援し、各種企業とりわけ中小・零細企業の難関克服を支援する。

今後、我々は関係部門と共に、引き続き既に打ち出した減税・費用引下げ政策措置をきめ細かく実施する。同時に、疫病とマクロ経済情勢の変化を密接にフォローし、税・費用政策措置を一層検討・整備する。

6.地方政府特別債

全人代常務委員会の授権に基づき、国務院の批准を経て、これまで2020年度の一部の地方債新規増発限度額1兆8480億元(一般債券5580億元、特別債券1兆2900億元)を前倒しで下達した。4月15日までに、全国各地で地方債1兆5691億元が新規増発され、前年下達額の85%を占める。うち、一般債券は4624億元、下達額の83%を占め、特別債券1兆1607億元、下達額の90%を占める。主要な特徴は、

(1)発行規模が大きく、進度が速い。

4月15日までに、地方債新規増発規模は前年同期比26%増となった。北京・天津・遼寧・寧波・安徽・福建・江西・山東・広東・深圳・四川・貴州・雲南・チベット・甘粛の15地域は既に前倒しで下達した地方債新規増発限度額の発行を全部達成した。

(2)期間がより合理的になり、長期債のウエイトが9割近くを占める。

4月15日までに、全国新規増発地方債の平均発行期間は15.8年で、2019年に比べ5.5年延び、往年に比べ、債券期間とそのプロジェクト建設・運営期間がより釣り合っている。うち、10年以上の長期債の発行が1兆3532億元で、86%を占め、2019年の47%より39ポイント高まった。

(3)発行金利が毎月低下した。

新規増発地方債の平均発行金利は、2020年1月3.5%、2月3.34%、3月3.23%、4月前半3.14%であった。うち、4月前半の平均発行金利は、2019年以降最低水準であり、2019年の3.47%に比べ33ベーシスポイント低下した。

(4)投資拡大を牽引した。

4月15日までに、各地方は特別債券1兆1607億元を新規増発し、主として新たに建設・建設中のプロジェクト建設に用いた。うち、新たに建設するプロジェクト用は4179億元、約36%を占め、建設中のプロジェクト用は7428億元、約62%を占めた。

同時に、国務院常務会議の手配に基づき、各地方が新規増発した特別債券は、全部、鉄道・軌道交通等の交通インフラ、農林・水利、都市インフラ、産業パークインフラ等の分野の重大インフラプロジェクトの建設に用いられた。

このほか、国務院常務会議の決定に基づき、法定手続の履行を経て、近く1兆元の地方政府特別債券限度額をさらに前倒しで下達する。

現在、我々は各地方ができるだけ速やかに特別債券限度額を具体的プロジェクトに対応させ、債券発行準備を組織的しっかり行い、5月末までに発行を終えるよう努力し、早期発効・早期使用・早期効果発現を確保し、できるだけ速やかに経済に対する牽引作用を形成するよう指導している。

  1. 主な収入の内訳は、国内増値税1兆4977億元、前年同期比-23.6%、国内消費税1兆4977億元、-23.6%、企業所得税8625億元、-12.8%、個人所得税3353億元、3.5%増、輸入貨物増値税・消費税3393億元、-23.9%、関税598億元、-13.8%である。輸出に係る増値税・消費税の還付は3651億元であり、-27.9%である。都市維持建設税は1159億元、-19.7%、車両購入税は666億元、-29.5%、印紙税は769億元、5%増(うち証券取引印紙税は453億元、14.1%増)、資源税は435億元、-12%、環境保護税は55億元、-6%である。不動産関連では、契約税1212億元、前年同期比-19.9%、土地増値税1467億元、-12%、不動産税606億元、-5.8%、耕地占用税296億元、-23.7%、都市土地使用税474億元、-12.4%であった。
  2. 主な支出は、教育7913億元、前年同期比-7.1%、科学技術1298億元、-26.4%、文化・観光・スポーツ・メディア652億元、-8.9%、社会保障・雇用9837億元、-0.7%、衛生・健康4976億元、4.8%増、省エネ・環境保護1111億元、-15.1%、都市・農村コミュニティ4770億元、-23.6%、農林・水産4031億元、-3.6%、交通・運輸3189億元、-16.5%、債務利払い1566億元、4.6%増である。