新型肺炎とマクロ政策(19)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年4月14日


はじめに

本稿では、4月10日の困窮層対策に関する共同記者会見の概要を中心に紹介する。

4月9日 新型肺炎対策領導小組会議

常態化した防御をしっかり行うと同時に、有利な条件を積極的に創造し、業務・生産再開を全面的に推進し、内需の回復・上昇を加速し、各種企業とりわけ中小・零細企業の難関克服を支援し、疫病の影響がかなり大きい大衆が就業・生活等の方面の実際の困難を解決することを支援し、力を増して経済社会の発展を推進しなければならない。

4月10日 全国安全生産テレビ電話会議
(1)習近平総書記の重要指示

生命は泰山よりも重い。各レベル党委員会と政府は、安全生産を重要と位置づけ、発展のみを重んじて安全を顧みないようなことがあってはならず、ましてやどうでもいい事と見なして形式主義・官僚主義に陥ってはならない。安全生産事故の主要な特徴と際立った問題に対して、各レベルで責任を強く迫り、整理・改革の実施にしっかり取り組み、リスクの防止・コントロールを強化し、根本から事故の隠れた原因を除去し、重大・特大事故の発生に有効に歯止めをかけなければならない。

(2)李克強総理の指示

現在、全国は新型肺炎疫病防御と業務・生産再開を統一的に企画・推進するカギとなる時期にあり、安全生産意識と活動についていささかも手を緩めてはならない。各地方・各関係部門・各単位は、習近平「新時代の特色ある社会主義」思想を導きとし、党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹し、安全発展の理念を牢固に樹立し、各レベルで責任を強く迫り、各分野・各段階での安全生産の隠れた原因を深く徹底的に洗い出し、安全生産・安全対策を全面的に展開し、実効を上げることを確保しなければならない。健全な安全生産責任と管理制度の体系、隠れた弊害への徹底的な調査・対策とリスクの防止・コントロールの体系の確立を加速し、法執行の監督管理と安全サービスを強化し、重大・特大事故の発生に断固として歯止めをかけ、人民大衆の生命・財産の安全を確実に擁護しなければならない。

4月10日 困窮層対策に関する共同記者会見
国家発展・改革委員会
(1)物価臨時補助

国務院常務会議の後、国家発展・改革委員会は遅滞なく、同席する各部門と関連具体政策措置を検討し、我々は「段階的物価臨時補助政策を一層しっかり実施することに関する通知」を起草した。この通知は、近々各地方に発出される。通知の核心内容は、基準引上げ・範囲拡大を提起したことである。

①基準を引き上げる。

段階的に補助基準を引き上げる。今年3~6月、毎月の物価臨時補助の金額を2倍に引き上げる。

②範囲を拡大する。

段階的に保障範囲を拡大する。今年3~6月、物価補助連動メカニズムの既存の保障対象の基礎の上に、孤児、事実上扶養者のいない児童、失業補助金受領者も保障範囲に組み入れる。初歩的な推計では、恩恵が及ぶ者は新たに800万人余り増えることになる。

③資金支出増加を保障するルートを明確にする。

今回の基準引上げ・範囲拡大で増加する資金支出は、各レベル財政と失業保険基金でそれぞれ負担し、うち中央財政は東部・中部・西部にそれぞれ異なる比率で補助を与える。同時に、各地方に作業効率を一層高めるよう要求し、できる限り補助支給に要する時間を短縮し、物価指数等の統計月報が公表されて後、20作業日以内に補助を全額支給しなければならない。今後一時期、国家発展・改革委員会と関係部門は、各地方の執行情況の調整と督促・指導を一層強化し、関連政策措置の完全実施を確保する。

(2)物価臨時補助の実施情況

疫病防御期間、31の省と新疆建設兵団は、既に物価補助連動メカニズムを発動した。昨年の物価上昇以降、各地方は現地の物価上昇に応じ、規定に基づき前後してメカニズムを発動している。現在までに、各地方は累計物価臨時補助165億元を支給しており、とりわけ新型肺炎疫病期間、各地方が実際に支給した補助は累計66億元に達する。

人力資源・社会保障部
(1)失業保険手続の円滑化

わが部では失業保険金の「受領円滑化・安全処理」を推進している。

①受領申請期限を緩和する。

各地方の処理機関は、失業者が60日の受領申請期限を超過したことを理由に、失業保険金の支給を拒んではならない。

②証明材料を減らす。

失業者は、身分証あるいは社会保障カードによって、現地の就業サービス機関あるいは社会保険処理機関に受領申請することができ、労働関係解除証明あるいは失業登録証明を提出する必要はない。

③処理手続を最適化する。

失業者の失業保険金受領申請の処理は、失業登録と同時に行ってよく、「たらい回し」を避ける。

④各種の条件付加を廃止する。

各地方の処理サービス機関は、失業者の保険金受領のための義務項目を増やしてはならず、法定されていない条件を付加し拘束してはならない。

⑤オンラインでの失業保険金受領申請を早急に推進する。

現在、わが国は既に社会に向けて297都市のインターネット受領申請プラットホームを公表しており、4月末までにすべての地区級市でインターネットでの受領申請を実現しなければならない。

(2)失業者の基本生活保障

最近、疫病の影響に対応し、失業者の基本生活を保障するため、国務院は3項目の新措置を実施した。

①高齢失業者の保険金受領期間を延長した。

失業保険金の受領期間が満了しても就業できず、法定退職年齢に1年不足している者については、失業保険金を法定退職年齢まで支給することを認める。

②失業補助金政策を段階的に実施する。

2020年、失業保険金の受領期間が満了しても就職できない者、及び失業保険金受領の法定条件に合致していない保険加入失業者に対し、6カ月の失業補助金を支給する。

③物価臨時補助を段階的に引き上げる。

今年3~6月、失業保険金受領者と失業補助金受領者に対し、2倍の物価臨時補助を支給する。3月までに、全国で既に230万人の失業者に対し、失業保険金93億元を支給し、医療保険料20億元を代納し、物価臨時補助6億元を支給し、6.7万人の契約制の失業出稼ぎ農民に1回のみの生活補助4.1億元を支給した。

財政部
(1)支援の概要

疫病発生以後、確かに困窮層の基本生活に一定の影響を生み出しており、これに対して財政部は2つの措置を採用し、困窮層の基本生活保障を強化している。

①困窮層救済補助金の投入を一層増やす。

昨年中央財政は計1472億元を下達し、地方が最低生活保障、特別困窮者のケア、臨時救済、孤児の基本生活保障等の支出に用いた。今年は、疫病防御等の方面の需要を総合的に考慮し、財政はこの資金の予算規模を一層増やし、各地方が困窮層の基本生活を確実に保障することを支援している。

②物価臨時補助を段階的に強化する。

疫病期間の物価上昇の困窮層の基本生活への影響を緩和するため、財政部は関係部門と協力し、連動メカニズムを遅滞なく始動し、物価臨時補助を支給している。規定に基づくと、現行の補助対象は最低生活保障の対象、特別困窮者、公傷病者とその遺族、失業保険金受領者であるが、今回、孤児、事実上扶養者のいない児童、条件に合致した失業補助金受領者の基本生活も比較的大きな影響を受けていることを考慮し、国務院は今年3~6月、対象範囲を適切に拡大し、上述の人員を支給範囲に組み入れ、かつ物価補助基準を2倍に引き上げることを決定した。

同時に、失業者に関係する支出は、現行の政策規定に基づき、失業保険基金から支出し、そのほかの対象の物価補助金は財政負担とすることを明確にした。中央財政は東部地域30%補助、中部地域60%補助、西部地域80%補助の比率に基づき、各地方の支出増加部分に支援を与える。各地方が国務院の要求をできるだけ速やかに実施することを支援するため、中央財政は近日、残りの部分の困窮大衆救済補助金と物価臨時補助金を下達する。今後我々は、地方が関係補助金を速やかに困窮層の手中に行き渡らせるよう指導する。

(2)予算額

各地方の困窮大衆の最低保障を支援し、同時に段階的な物価臨時補助強化を実施するため、財政部はこれまでに1030億元を下達した基礎の上に、さらに約530億元の困窮大衆救済補助金を下達する。この合計1560億元は、既に昨年年間の実際の執行額を超えている。

民政部

新型肺炎疫病の影響を受け、今年に入り、全国の大部分の地域が連動メカニズムを発動し、困窮大衆のために物価臨時補助を支給している。不完全な統計によれば、現在までに全国計延べ6155.3万人の困窮大衆に18.8億元の補助を支給した。うち、最低生活保障の対象者が延べ5446万人、特別困窮対象者が延べ639万人、低所得家庭等その他困窮大衆が延べ70.3万人。月1人当り47元の補助である。

4月13日 新型肺炎対策領導小組会議

引き続き各防御対策に早急にしっかり細部まで取り組まなければならない。疫病の越境輸入防止措置を動態的に整備し、的確性・有効性を高める。精確な防御と処置の規範化を強化し、疫病の再流行リスクの隠れた原因を徹底的に洗い出して除去し、全面的な業務・生産再開推進のために有利な条件を創造する。