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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(7)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年3月6日


はじめに

本稿では、3月3日の国務院常務会議と、財政部・国家税務総局共同記者会見の概要を紹介する。

3月3日 国務院常務会議
(1)6つの安定

党中央・国務院の手配に基づき、疫病防御と経済社会発展を統一的に企画・推進するには、雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想の安定をより的確に強化しなければならず、疫病が経済運営にもたらす影響により有効に対応しなければならない。

マクロ政策、対外貿易・外資、金融安定の協調メカニズムの作用を十分発揮させ、遅滞なく有力・有効な対応措置を打ち出し、内生的動力を増強し、年間の経済運営を合理的区間に維持するよう努力しなければならない。

(2)交通・輸送、宅配等物流業の支援

交通・輸送、宅配等の物流業の早急な業務再開を推進することは、安定的な発展を実現し、疫病防御のために有力な支えを提供できるだけでなく、経済の循環を円滑にし、民生の需要を満足させることができる、このため、

①地域・レベルを分けて、精確に秩序立てて関連企業の業務再開を誘導し、不合理な業務再開への審査・認可を取り消す。

業務再開に必要なマスク等の防疫物資を協調してしっかり保障する。各地方は、郵便及び各種所有制宅配企業に対して同等な通行の便宜を与え、農村・コミュニティにおける最終段階での通行・宅配の障害打破を推進し、スマート宅配施設等を都市・農村公共インフラ建設の範疇に組み入れなければならない。

②減税・費用引下げを段階的に強化する。

一定期間内、昨年末に期限が到来した大口取引商品備蓄倉庫用地への都市土地使用税課税半減政策を引き続き実施する。3月1日~6月30日、輸出入貨物に係る港湾建設手数料を免除し、港湾労務手数料・港湾施設保安手数料等の政府が価格を決め徴収する手数料の基準を20%引き下げる、タンカー以外の船に対する強制的な緊急対応サービスと料金徴収を取り消す。6月末まで、鉄道輸送保険料・コンテナ延長使用・貨物滞留等の手数料を半額にする。一部の政府が管理する飛行場サービス料金を引き下げる。疫病防御期間、緊急輸送任務にあたった交通・輸送、物流企業に対し、その任務が政府調達公共サービスに属する場合には、各レベル財政は補償を与えなければならない。

③保険会社が保険期間の延長・継続保険料の割引等の方式を通じて、疫病期間輸送を停止していた輸送車両・船舶・飛行機保険料を適切に減免することを奨励する。

道路の通行料金免除の期間、経営主体が金融債務の元本償還・利払いに困難をきたした場合には、金融機関が利払いを延期・緩和し、元本の期限を延ばし、あるいは貸出を継続する等の支援を与えるよう誘導する。確実な措置を採用して、貨物輸送車のドライバーが通行料免除の実際の優遇を受けられるようにする。各地方が分担金の段階的減免等の措置を採用し、タクシードライバーの困難克服を支援する。できるだけ速やかに道路通行料免除のフォローアップ支援保障政策を打ち出す。

(3)地方財政への支援強化

末端政府の基本民生・給与・運営保障を支援することは、大衆の切実な利益への基本要求を保障するものであり、政府の職務履行と各政策の実施の基礎的条件を推進するものでもある。

①段階的に地方財政の使用留保率を高める。

3月1日~6月末、既に査定した各省当年度使用留保率の基礎の上に、統一的に5ポイント留保率を引き上げ、新たに増えた使用留保分約1400億元の資金は、全部県レベルの使用のために留保する。

②移転支出資金の下達を加速し、各地方が疫病防御と基本民生・給与・運営保障支出に優先的に用い、期限どおり全額支払うよう指導する。

③一般性支出を一層縮減し、疫病防御に必要なほかは、新たな支出増加政策を厳格に抑制する。

3月3日 財政部・国家税務総局共同記者会見
財政部
(1)中小・零細企業支援

財政部は、関係部門と共に一連の財政・租税政策を打ち出し、企業とりわけ中小・零細企業の早期業務・生産再開を支援している。この政策は大体3点に帰納される。

①企業から少なく徴収する。

我々は税の減免政策を除くほか、最近また社会保険料の減免政策を打ち出し、企業とりわけ中小企業の負担を軽減し、年金・失業・労災の3社会保険料の段階的引下げを実施して以後、2020年は企業の負担を5100億元余り軽減できる。

同時に、地方が医療保険基金の長期の持続可能性を確保するよう指導している情況下、一部従業員医療保険単位の保険料徴収を減らしており、これもまた企業の負担を1500億元軽減できる。

これに加えて、昨年我々は企業年金保険単位の保険料を20%から16%に引き下げる政策を実施しており、年間社会保険料の負担軽減だけで企業の負担を1兆元超軽減する。

②政府により多く補わせる。

疫病防御期間、中小・零細企業の失業保険雇用安定還付政策の基準を普遍的に緩和し、失業保険の雇用安定還付を強化している。同時に我々は、職業訓練補助への支援を強化し、オンライン職業技能訓練を積極的に推進・展開し、疫病防御期間、中小・零細企業が操業停止期間・回復期間において、オンライン訓練を行った場合には、規定に基づき補助範囲に組み入れている。

③資金調達コストをより多く引き下げる。

利息補助の規模を増やし、重点保障企業への特定貸出財政利息補助支援を強化し、企業が実際に得る貸出金利の利率の50%を利息補助している。これにより、これらの企業の実際の資金調達コストが1.6%を上回らないようにすることができる。人民銀行の了解を得て、現在既に企業向け貸出の実際の資金調達コストはさらに少し低くなっている。

我々は、これらの政策の実施が、企業とりわけ中小・零細企業の難関克服、早期の業務・生産再開を有効に支援すると信じている。

(2)小規模納税者への増値税引下げ

増値税の納税者には、一般納税者と小規模納税者が含まれる。小規模納税者は、年間売上額が500万元を超えない増値税納税者を指し、小規模納税者が現行の増値税納税者に占めるウエイトは非常に大きく、80%以上である。

小規模納税者への減税は、主として個人工商事業者と小型・零細企業に対してである。小規模納税者の増値税は、営業額×税率であるが、小規模納税者の税率は3%である。

今回、湖北省の小規模納税者に対し、3カ月間増値税を免除し、湖北省以外の小規模納税者に対し、現行の税率3%を1%に引き下げる。企業は営業収入さえあれば増値税を納付しなければならないが、現在小規模納税者に属してさえいれば優遇を受けることができ、小規模納税者が全面的に税制優遇のメリットを享受できることを保証する。これは、最大限度税制優遇のカバー率を拡大することになる。

(3)医療費用の保障

患者の医療費用の保障方面では、我々は新型肺炎と診断された患者の医療費用を明確にし、基本保険・大病保険・医療救済等を規定どおり支払った後、個人負担部分を財政が最低保障することとし、うち中央財政は60%補助している。新型肺炎が疑われる患者の治療費用については、規定どおり支払った後、当該地域が制定した補助政策により資金が計上され、中央財政が情況を酌量し補助を与えている。3月2日までに、各レベル財政が計上した疫病防御資金は既に1087.5億元に達し、現在のところ、医療費用の保障は比較的充足しており、人民大衆は医療費用の問題により治療が遅れることはない。

(4)湖北省の社会保険基金

2月から、湖北省の大企業、中小・零細企業を含む全ての企業に、年金・失業・労災保険の社会保険料の5カ月の免除を認めた。総体として見れば、この政策は湖北省の3社会保険基金に一定の影響を生み出すが、影響はコントロール可能である。湖北省の失業・労災保険基金残高は現在なお一定の規模があり、2年以上の給付需要を十分保障できるので、失業・労災保険基金の減免政策は完全に実施可能である。

年金保険では、もし湖北が5カ月すべての企業の保険料を全額免除すれば、基金収入が220億元減少することになる。しかし、湖北省は2019年末の基金残高は1000億元を超えており、同時に、中央財政が今年の年金基金中央調整制度と中央財政年金保険補助資金を検討する際には、湖北に対して重点的な手当を行い、湖北省が段階的な社会保険料とりわけ年金保険料の徴収を免ずることによる不足分を補充する。したがって、年金保険基金への中央調整の強化、中央財政補助の強化を通じ、以前の残高を加味すれば、湖北省の企業年金保険の徴収免除政策の実施を完全保証することができ、全省の退職従業員の年金保険を期限通り全額支給することもできる。

(5)財政収支・地方財政

今年、各レベルの財政部門が予算を検討・提出した際、往年と同様、既にいくらかの不確定要因を考慮している。現在のところ、疫病防御支出は保障されており、疫病が財政収支に与える影響はコントロール可能である。今後、財政部は疫病防御と経済社会発展を統一的にしっかり企画・推進し、党中央の要求に基づき、積極的財政政策をより積極的にして結果を出し、一層財政支出構造を調整し、地方に対する移転支出を強化する。とりわけ、湖北等疫病の影響が比較的大きい省への支援を強化し、地方の疫病防御と民生支出の保障を確保する。

国家税務総局
(1)小型・零細企業、個人工商事業者への支援

小型・零細企業、個人工商事業者への税・費用減免政策は比較的多い。業務・生産再開を支援する増値税減免政策については、湖北省は免除し、湖北以外のその他地域は1%免除する。また、国家が打ち出したその他疫病防御に対する若干の税制優遇政策も享受できるし、引き続き昨年以来打ち出している月当たり販売収入が10万元以下の小規模簿内税納税者への免税政策も享受できる。同時に、小型・零細企業、単位方式で保険に参加している個人工商事業者は、年金・失業・労災社会保険料の段階的減免等の税・費用支援政策を享受できる。

(2)企業の業務・生産再開支援

疫病の影響が比較的大きい困難な産業の企業に対して、2020年度に発生した赤字は最長8年繰り延べする。

(3)今年の減税・費用引下げ政策

①ここ数年、減税・費用引下げを継続的に実施している。

とりわけ、2019年はより大きな減税・費用引下げを行い、年間の減税・費用引下げ総額は2兆元を超えた。2兆元の減税・費用引下げ政策は制度的な減税であり、今年も引き続き実施する。たとえば、増値税の標準税率を3ポイント引き下げ、13%にする。この政策は今後制度的手配を行う。また、ここ数年行政事業手数料徴収を整理しており、行政事業手数料徴収は、元々の中央レベル185項目が、現在ではわずか数十項目に減少し、政府基金項目の減少も多い。これらの制度的手配は、引き続き実施する。

②現行の税制優遇政策体系に、既に小型・零細企業向けの政策が存在する。

たとえば、イノベーション支援については、重大公共衛生事件が発生するたびに新興産業が生まれており、これらの産業に対して研究開発方面・技術イノベーション方面の投入を強化するよう要求している。現行の政策では、研究開発費用の割増控除を元々の50%から75%に引き上げ、すべての企業に適用している。ハイテク企業は、法定税率25%のところを15%の優遇税率が認められている。

③今年の疫病発生以来、我々は疫病対応のための緊急政策を打ち出し、重点企業の物資供給を確保し、生活関連サービス業にも政策を打ち出し、小規模納税者への税率を引き下げ、湖北省では小規模納税者への増値税を免除した。

これらは、特殊な時期における段階的で的確・精確な政策である。

④我々は、疫病の進展に応じ、マクロ経済発展の要求に基づき、現行の政策体系に対してフォローアップ・評価を進め、経済運営のプロセスにおいて出現する各種の新たな情況・新たな問題に対して、遅滞なく政策を整備する。

この会見以降、減税・費用引下げの方面で、新たな政策が打ち出され、業務・生産再開をより好く推進することになるだろう。

(4)納税期限(2月28日)の延長

疫病防御と企業の業務・生産再開に助力するため、税務部門は法に基づき秩序立てて2月の納税申告期限を2回延長した。疫病の影響がかなり深刻で申告を完成していないごく一部の納税者については、規定に基づき申告・納税の延期を認める。この際、これらの納税者には延滞税を課さず、行政処罰を与えず、非正常者と認定せず、納税信用評価を調整しない。現在既に3月第1週に入っているが、企業の業務・生産再開を一層支援するため、税務総局は既に法に基づき、3月の納税申告期限をさらに1週間延ばし、期限を3月16日から3月23日にした。