1月の主要経済指標

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年2月26日


(1)物価
①消費者物価

1月の消費者物価は前年同月比5.4%上昇し、上昇率は12月より0.9ポイント加速した。都市は5.1%、農村は6.3%の上昇である。食品価格は20.6%上昇し(12月は17.4%)、非食品価格は1.6%上昇(12月は1.3%)している。衣類は0.6%上昇、居住価格は0.5%上昇した1

(参考)(2017年1.6%)→(2018年2.1%)→19年6月2.7%→7月2.8%→8月2.8%→9月3.0%→10月3.8%→11月4.5%→12月4.5%(2019年2.9%)→20年1月5.4%

前月比では、1.4%上昇(12月は0.0%)だった。食品価格は4.4%上昇(12月は-0.4%)した。食品・タバコ・酒価格は12月より3.1%上昇、物価への影響は約1.01ポイント、うち生鮮野菜は15.3%上昇(12月は10.6%)し、物価への影響は約0.39ポイント、卵価格は3.2%下落し、物価への影響は約-0.02ポイント、水産品価格は4.5%上昇、物価への影響は約0.08ポイントであった。畜肉類価格は6.1%上昇、物価への影響は約0.43ポイント、(豚肉価格は8.5%上昇、物価への影響は約0.39ポイント)であった。果物価格は5.5%上昇し、物価への影響は約0.09ポイントであった。非食品価格は0.6%上昇(12月は0.1%)し、衣類は0.5%下落(12月は-0.1%)、居住価格は0.0%(12月は0.1%)であった。

食品・エネルギーを除いた消費者物価(コア消費者物価)は、1月が前年同月比1.5%の上昇(12月は1.4%)、前月比では0.5%の上昇(12月は0.0%)である2

なお、国家統計局は、1月の前年同月比上昇率5.4%のうち食品・タバコ・酒価格は15.2%上昇し、物価への影響は約4.52ポイントとなり、このうち畜肉類価格は76.7%上昇、物価への影響は約3.38ポイント(豚肉価格は116.0%上昇、物価への影響は約2.76ポイント)である。このほか生鮮野菜価格が17.1%上昇、物価への影響は約0.45ポイント、卵価格が2.4%上昇、物価への影響は約0.02ポイント、果物価格は5.0%下落、物価への影響は約-0.09ポイント、水産品価格は3.8%上昇、物価への影響は約0.07ポイント、食糧価格は0.5%上昇し、物価への影響は約0.01ポイントであった。

また1月の5.4%上昇のうち、前年の価格上昇の本年への影響は約4.0ポイント、新たなインフレ要因は約1.4ポイントである。

なお、国家統計局都市司の董莉娟高級統計師は、前月比12月同水準が1月より1.4%上昇に転じたのは、主として新型コロナウイルスによる肺炎要因の影響を受けているとし、1)生鮮野菜・豚肉・果物・水産品価格が上昇した、2)卵・鶏肉・鴨肉の供給は充足して価格が下落した、3)春節前の都市出稼ぎ農民の帰郷の影響を受けて、美容院・家事サービス・車両修理・メンテナンス価格が上昇した、4)価格調整の影響を受け、ガソリン価格が2.7%上昇、ディーゼル油価格が3.0%下上昇した、点を挙げている。

また、1月の前年同月比消費者物価上昇幅が、12月より0.9ポイント拡大した特徴として、春節と新型コロナウイルスによる肺炎の影響と、今年と昨年の春節の月がずれ、昨年のベースが低いことによるとし、1)果物価格が連続4カ月下落した、2)鶏卵価格の上昇幅が縮小した、3)牛肉・羊肉・鶏肉・鴨肉価格の上昇率が10.4―20.2%の間で、異なる程度に上昇幅が縮小し、4)豚肉・生鮮野菜価格が上昇した、5)医療保健、教育・文化・娯楽、交通・通信価格が上昇した、としている。

なお、湖北省の前期比上昇率は1.5%、前年同月比上昇率は5.5%であり、上昇率は全国と大体同水準である。

②工業生産者出荷価格

1月の工業生産者出荷価格は前年同月より0.1%上昇した。前月比では12月と同水準(12月は0.0%)であった。

(参考)(2017年6.3%)→(2018年3.5%)→19年6月0.0%→7月-0.3%→8月-0.8%→9月-1.2%→10月-1.6%→11月-1.4%→12月-0.5%(2019年-0.3%)→20年1月0.1%

1月の工業生産者購入価格は、前年同月比0.3%下落(12月は1.3%)した。前月比では12月より0.2%上昇(12月は0.0%)した。

また1月の0.1%上昇のうち、前年の価格上昇の本年への影響は約0.1ポイント、新たなインフレ要因は約0.0ポイントである。

なお、国家統計局都市司の董莉娟高級統計師は、前月比上昇率が連続2カ月0.0%であったが、その特徴は、1)石油・天然ガス採掘業、石油・石炭その他燃料加工業の上昇幅が拡大し、2)鉄金属精錬・圧延加工業、非金属鉱物製造業が上昇から下落に転じ、3)石炭採掘・洗浄業、化学原料・化学製品製造業の下落幅が縮小し、4)非鉄金属精錬・圧延加工業が下落から上昇に転じた、とする。

また、前年同月比では、下落が上昇に転じたが、1)石油・天然ガス採掘業、非鉄金属精錬・圧延加工業の上昇幅が拡大し、2)石油・石炭その他燃料加工業、鉄金属精錬・圧延加工業が下落から上昇に転じ、3)石炭採掘・洗浄業の下落幅が拡大し、4)化学原料・化学製品製造業の下落幅が縮小した、とする。

③住宅価格

1月の全国70大中都市の新築分譲住宅販売価格は前月比15都市が低下(12月は16、11月は21)し、同水準は8(12月は4、11月は5)であった。上昇は47である(12月は50、11月は44)。

前年同月比では、価格が下落したのは2都市(12月は2)であった。同水準は0(12月は0)、上昇は68(12月は68)である。

国家統計局都市司の孔鵬首席統計師は、「各地方は党中央・国務院の政策決定・手配を断固貫徹実施し、『住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない』という位置づけを堅持し、不動産を短期的経済刺激の手段とせず、都市の主体的責任を全面実施し、不動産市場の総体としての平穏な態勢を維持した。

前月比では、70大中都市のうち、4の一線都市の新築分譲住宅価格は0.4%上昇し、上昇幅は12月より0.2ポイント拡大した。うち北京は0.0%、上海は0.5%上昇、広州は0.3%上昇、深圳は0.5%上昇であった。31の二線都市の新築価格は0.2%上昇し、上昇幅は12月より0.1ポイント縮小した。35の三線都市の新築価格は0.4%上昇し、上昇幅は12月より0.2ポイント縮小した。

前年同月比では、70大中都市のうち、一線都市の新築価格は3.8%上昇し、上昇幅は12月と同水準であった。二線都市の新築価格は6.9%上昇し、上昇幅は12月より0.4ポイント縮小した。三線都市の新築価格は6.4%上昇し、上昇幅は12月より0.3ポイント縮小した」と指摘している。

(2)対外経済
①外資利用

1月の外資利用実行額は875.7億元(ドル換算126.8億ドル)、前年同期比4%増(ドル換算2.2%増)であった3

(参考)(2017年7.9%)→(2018年0.9%)→19年1-6月7.2%→1-7月7.3%→1-8月6.9%→1-9月6.5%→1-10月6.6%→1-11月6.0%→2019年5.8%→20年1月4%4

1月のハイテク産業は313.5億元、同27.9%増で、ウエイトは35.8%に達した。ハイテク製造業5は84億元、ハイテクサービス業6は229.5億元、同45.5%増であった。

1月、国・地域別では、シンガポール前年同期比40.6%増、韓国157.1%増、日本50.2%増、アセアン44.8%増、「一帯一路」沿線国家31.3%増である。

②外貨準備

1月末、外貨準備は3兆1154億ドルであった。12月末に比べ76億ドルの増加(12月は123億ドル増)である。人民銀行は、新型肺炎の影響で、安全資産とされる債券価格が上昇したため、としている。

③米国債保有

12月末の米国債保有高は、前月比193億ドル減の1兆699億ドルで、2位。日本は7カ月連続1位となり、59億ドル減の1兆1549億ドルである。

(3)金融

1月末のM2の残高は202.31兆元、伸びは前年同期比8.4%増と、12月末より0.3ポイント減速、前年同期と同水準であった。M1は0.0%で、12月末より4.4ポイント減速、前年同期より0.4ポイント減速した。1月の現金純放出は1.61兆元であった。

人民元貸出残高は156.45兆元で前年同期比12.1%増であり、伸び率は12月末より0.2ポイント減速、前年同期より1.3ポイント減速した。1月の人民元貸出増は3.34兆元(12月は1.14兆元)で、前年同期より伸びが1109億元増加している。うち住宅ローンは6341億元増、企業等への中長期貸出は1.66兆元増であった。

人民元預金残高は195.81兆元で、前年同期比8.3%増であった。1月の人民元預金は2.88兆元増(12月は5995億元増)で、前年同期より伸びが3935億元減少している。うち個人預金は4.24兆元増、企業預金は1.61兆元減であった。

(参考)M2 :2017年12月8.1%→18年12月8.1%→19年6月8.5%→7月8.1%→8月8.2%→9月8.4%→10月8.4%→11月8.2%→12月8.7%→20年1月8.4%

1月末の社会資金調達規模残高は256.36兆元であり、前年同期比10.7%増となった。うち、実体経済への人民元貸出残高7は155.06兆元、12.2%増、委託貸付残高は11.45兆元、-7%、信託貸付残高は7.49兆元、-4.3%、企業債券残高は23.93兆元、13.1%増、政府債券残高38.49兆元、16%増8、株式残高は7.42兆元、5.4%増である。

構成比では、実体経済への人民元貸出残高は60.5%(前年同期比0.8ポイント増)、委託貸付残高は4.5%(同-0.8ポイント)、信託貸付残高は2.9%(同-0.5ポイント)、企業債券残高は9.3%(同0.2ポイント増)、政府債券残高は15%(同0.7ポイント増)、株式残高は2.9%(同-0.1ポイント)である。

1月の社会資金調達規模(フロー)は5.07兆元であり、前年同期比3883億元増となった。うち、実体経済への人民元貸出は3.49兆元増(伸びが前年同期比744億元減)、委託貸付は26億元減(減少が673億元減)、信託貸付は432億元増(伸びが87億元増)、企業債券純資金調達3865億元(964億元減)、政府債券純資金調達7613億元(5913億元増)、株式による資金調達は609億元(320億元増)である。

(4)財政

1月末の地方政府債務残高は22兆923億元。うち、一般債務は11兆9397億元、特別債務は10兆1526億元である。なお、1月に発行した債券は7850.64億元(うち一般債券702.43億元、特別債券7148.21億元)、すべて新たに増発した債券である。

  1. 国家統計局によれば、2011年のウエイト付け改定で、居住価格のウエイトは20%前後になったとしている。
  2. コア消費者物価は2013年から公表が開始された。
  3. 伸びは人民元ベースである。
  4. ドルベースでは、(2017年4%)→(2018年3%)→19年1-6月3.5%→1-7月3.6%→1-8月3.2%→1-9月2.9%→1-10月2.9%→1-11月2.6%→2019年2.4%→20年1月2.2%である。
  5. 航空・宇宙関連機器及び装置製造業、電子・通信設備製造業、計算機・オフィス設備製造業などが含まれる。
  6. 情報サービス、研究・設計サービス、科学技術成果実用化サービスなどが含まれる。
  7. 一定期間内に実体経済(非金融企業と世帯)が金融システムから得た人民元貸出であり、銀行からノンバンクへの資金移し替えは含まない。
  8. 2019年12月から、国債と地方政府一般債券を統計に組み入れ、これまでの地方政府特別債券と併合し「政府債券」とした。