マクロ経済政策3官庁記者会見

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年10月16日


はじめに

9月21日、中国成立70周年慶祝活動の一環として、国家発展・改革委員会寧吉喆副主任(兼国家統計局長)、財政部劉昆部長、人民銀行易綱行長が「新発展理念によってリードし、中国経済の平穏・健全・持続可能な発展を推進する」と題する共同記者会見を行った。本稿では、このうち経済政策に関する部分の質疑応答の概要を紹介する。

1.国家発展・改革委員会副主任、国家統計局長 寧吉喆
(1)強大な国内市場の形成を促進することの中国経済にとっての意義、重要政策・措置

国内の強大な市場の形成を促進することの意義は大きい。

①経済の持続的で健全な発展を維持し、民生をより好く保障・改善することに資する。

②需給の動態バランスを促進し、産業の質の高い発展を推進することに資する。

③現在の世界経済成長を鈍化させるリスクをヘッジし、世界経済の安定した発展を促進することに資する。

このため、積極・有効な措置を採用し、「雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想」を安定させる政策を強化し、投資を安定させ、消費を促し、雇用を拡大し、所得を増やして、国民経済の良性循環を実現する。これには、4つの「注力」をしっかり行う必要がある。

①有効な投資の拡大に力を入れる

これは、当面、「雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想」を安定させる政策を推進し、経済の平穏な運営を維持するための重要措置である。

今年の予算内投資、その他政府投資、企業・民間投資を促進し、地方特別債券を早急に脆弱部分の補強、構造調整、内需拡大に用いなければならない。

前倒しで下達した来年の特別債券の一部の新規限度額増を、重点的に交通、エネルギー、生態環境保護、民生サービス、物流、都市インフラ、産業パークインフラ等のプロジェクトに用い、早い効果が現れることを確保しなければならない。

インフラ等のプロジェクトの最低資本金比率を適切に引き下げ、有効な投資をより好く支援しなければならない。多くの措置を併せ打ち出して、民間投資の活力を奮い立たせ、民間投資が総投資に占める60%以上の役割を発揮させなければならない。

プロジェクト建設の歩み・進度を加速し、プロジェクトの準備活動を強化しなければならない。プロジェクトの備蓄活動を強化し、いくらかを着工し、いくらかを建設し、いくらかを備蓄するという3つの車輪を一緒に回転させ、有効な投資を合理的に拡大する。

②消費の質の向上・拡大促進に力を入れる

これは、経済を繁栄させ、民生を改善する一挙両得の有効措置である。

消費の更新・グレードアップを促進し、自動車・家電・電子消費財の更新を積極的に推進しなければならない。自動車消費の制限を打破し、現在広州・深圳等の都市ですでに購入制限規定を緩和ないし取り消しているが、西安・昆明・貴陽等の都市も考慮し、後続の条件を備えた地域も続々と後に続けさせなければならない。

グリーン消費を奨励し、庶民が省エネ家電を購入することを支援しなければならない。サービス消費を支援し、老人ケア、ホームヘルパー、幼児保育サービス等の政策措置を打ち出して実施し、一層サービス消費の潜在力を奮い立たせなければならない。

③都市・農村、地域発展の脆弱部分の補強に力を入れる

これは、アンバランス・不十分な発展の矛盾を解消し、市場の潜在力を発揮させる重要措置である。

4大地域の発展潜在力を発掘しなければならない。4大地域とは、西部開発・東北振興・中部興隆・東部率先である。5大戦略的新成長極の効果を発揮し、北京・天津・河北協同発展、長江経済ベルトの発展、広東・香港・マカオ大ベイエリア建設、長江デルタ一体化発展等の重大戦略を深く推進し、協調して実施しなければならない。

黄河流域生態保護と質の高い発展戦略の推進活動を早急に始動させ、計画によるリードを通じて、プロジェクトの実施を牽引し、巨大な潜在市場を一層発揮させなければならない。

都市の老朽化した住宅団地の改造を推進し、都市駐車場等の大衆が関心をもつ施設の建設を支援することを含め、都市の改造・建設を大いに推進しなければならない。農村の居住環境対策を積極的に推進し、農村のインフラ・公共サービスの脆弱部分の補強を加速しなければならない。

④産業のグレードアップに力を入れなければならない

これは、構造調整・発展促進のための積極措置である。

5G、AI等の新しいタイプのインフラを整備し、戦略的新興産業の集積群を発展させるプロジェクトを深く推進しなければならない。

伝統的製造業の情報化・ネットワーク化の建設、デジタル化への転換、スマート化へのグレードアップ、及び省エネ・環境保護、循環経済等のグリーン化改造を大いに推進することを含め、伝統的製造業の重点分野の技術改造を強化しなければならない。

製造業と生産関連サービス業の融合発展を積極的に推進しなければならない。

(2)インフラ投資・消費

強大な国内市場を形成するには、投資・消費の有効な役割を一層発揮させなければならない。今年強大な国内市場の形成を促進する一連の政策の作用の下、投資の伸びは昨年と比べある程度上昇しており、インフラ投資は今年1-8月期の伸びは1-7月期より反転上昇している。

現在、我々は有効な投資の拡大に力を入れる系列措置を採用し、都市・農村のインフラの早急な建設を促進している。カギは、各方面の資金を合理的なプロジェクトに振り向け、実物の成果量を形成することであり、現在この方面の歩みを加速しているところである。

経済成長において、消費は手段であり、目的でもある。民生を保障・改善するには、消費を促進すると同時に、消費を経済成長における第一の大動力とする必要がある。今年上半期の中国経済を合理的区間に維持することについて、消費は60%前後の牽引作用を発揮し、投資と比べ40ポイント高かった。このため、消費は極めて重要である。

消費を促進するには、個人消費の質を高め拡大するのみならず、個人所得を増やさなければならない。今年上半期の個人所得は経済成長と基本的に同歩調を維持し、個人所得は実質6.5%増、GDPは実質6.3%増であり、実際には個人所得の伸び率が経済成長率より速かった。同時に、我々は個人の合理的消費を誘導し、いくらかの消費スポットを形成しなければならないし、個人消費の環境を改善し、個人消費を奨励・促進する政策措置を採用しなければならない。

2.財政部 劉昆部長
(1)減税・費用引下げ政策の実施状況

減税・費用引下げは、今年の積極的財政政策の筆頭の大事である。中国の今年の減税・費用引下げ規模は空前であり、わが国財政史上、これほど大規模のものはなかった。我々の減税・費用引下げ政策全体は、主として5方面と4つのタイミングで進めた。

小型・零細企業への普遍的な減税と個人所得税の特別付加控除は1月1日から実施し、増値税改革の深化は4月1日から実施し、社会保険料率の引下げは5月1日から実施し、行政事業性手数料徴収と政府基金の整理・規範化は7月1日から実施した。政策の恩恵範囲は非常に広く、およそすべての納税者が今年の減税・費用引下げのプロセスにおいて、実際の恩恵を得た。

今年の実施状況から見ると、執行状況は予想と基本的に合致している。減税量から見ると、我々の元々の予想よりもやや多く、今年の政府活動報告によれば、年間の企業の税・社会保険料負担軽減は2兆元であったが、今年1-7月期の状況から見ると、全国累計で新規減税・費用引下げ増は1兆3492億元であり、うち減税増は1兆1740億元である。業種別では、製造業の新規減税増は3648憶元で全体の31%、受益が最大の業種である。経済類型別では、民営経済の新規減税増は7450憶元で全体の63%、受益が最も顕著である。減税の効果は、市場主体と納税者についてははっきりしており、社会全般に今年実施した総合的・包括的減税・費用引下げ政策への反応は最も直接的で、最も有効であり、最も公平に企業に恩恵を及ぼす措置である。

北京等の9省市、311社の企業に対し、国家統計局が展開した調査では、減税のボーナス効果のうち、7割以上は企業の研究開発、技術改造、再生産・再投資拡大に用いられ、明らかに企業の研究開発投資増加を牽引しており、同時に減税・費用引下げは市場主体の活力を奮い立たせ、市場の自信と経済成長の持続力を有力に増強した。1-8月期、1日平均新たに登記した企業は1.9万社に達し、ハイテク産業への投資は前年同期比13%増、伸び率は1-7月期より1.6ポイント増、前年同期より1.1ポイント増、全投資より7.5ポイント高い。1-8月期の主要経済指標を見ると、減税の経済運営は合理的区間にあり、「総体として平穏で、安定の中で前進をみる」という発展態勢を続けており、減税・費用引下げは重要な役割を発揮した。我々は政策の実施効果について評価を進めており、評価の結果に基づき関連政策を調整し、減税・費用引下げ政策がより好い効果を発揮するよう推進する。

(2)財政収支圧力への対応

 財政収支の均衡圧力は、確かに比較的大きい。今年の予算収支状況から見ると、我々の支出はずっと比較的高い速度を維持しているが、収入方面で新たな情況が出現している。データを全体としてモニタリングすると、中央収入予算の目標は5.1%増で、現在までの状況は3.5%であり、これから数カ月いくらかの収入が国庫に入るので、我々の中央財政予算は今年の予算報告中の目標を達成できる。

地方財政予算は、各レベルの地方政府が同レベルの人代の批准を受けたものであるが、一部地方は彼らが批准を受けた予算目標を下回る可能性があり、上半期から我々は各地方に状況に応じ予算を適切に調整するよう要求している。

全国では、今年の予算目標は基本的に実現でき、我々の予想と基本的に一致している。我々は4方面の措置を採用し、努力を経て、1-9月期の予算支出状況は良好であり、各地方の収支は基本的に均衡している。4措置とは、

①一般支出の圧縮に力を入れ、「賃金・運営・基本民生の維持」と重点分野の支出を確実に保障する

2019年度、中央部門は厳格な支出管理を牽引し、義務的・重点項目を除き、その他項目の支出の平均圧縮程度は10%に達する。地方も一般支出の圧縮を強化し、要求に基づき、圧縮程度が10%以上に達するよう努力する。節約した資金は、主として賃金・運営・基本民生の維持に用いる。

②中央財政は、移転支出を強化し、末端経費の保障水準を高める

2019年度、中央の地方への移転支出予算は7兆5000億元、9%増を計上している。9%の数値と収入の伸びを比較すれば、我々の移転支出の程度は非常に大きい。同時に、我々は予算下達の進度を加速し、今年度の均衡性移転支出、旧革命根拠地・少数民族地域・辺境地域・貧困地域移転支出は、既に全部下達し、財政困難地域と減税・費用引下げの影響がかなり大きい地域に重点的に傾斜し、遅滞なく地方の財政力を充実し、収支の矛盾を緩和し、末端地域の財政保障能力を増強する。

③我々は、予算の厳粛性を強化し、応急災害救助等の支出を除き、原則として新たな政策を打ち出さない

打ち出さなければならない政策は、次年度以降の予算計上で解決し、収支矛盾の激化を防ぐ。各部門の大風呂敷な浪費・荒い金遣いを厳禁し、余剰資金は遅滞なく回収し、急に資金支援が必要な分野に集中・統一的に用いる。

④我々は地方政府の新規債務増加限度額を計上し、地方債の発行・使用進度を加速させた

1-8月期の新規地方債増は2兆8951億元、発行進度は昨年度より34ポイント高まり、9月末に全部発行を終了するものと予想される。これらの資金は、10月末までに全部実際のプロジェクトに交付し、できるだけ速やかに実物の成果量を形成する。今のところ、債券資金の使用状況は良好である。

地方債と投資の関係では、地方債は2つの部分に分かれる。1つは、地方政府一般債券であり、もう1つは地方政府特別債券である。今年度地方政府特別債券予算は前年度比8000億元である。予算法の規定に基づき、地方債は使用範囲があり、まず投資先プロジェクトは収益がなければならず、またそれは建設投資で、最終的に公益的資本支出を形成するものでなければならない。このため、地方債は投資のすべての範囲に用いることはできない。

(3)企業従業員基本年金保険の運営状況

まず、明確にしておかなければならないのは、現在わが国の年金保険基金の運用は総体として平穏で、年金支給は保証されているということである。昨年度末までに、全国企業従業員基本年金基金収入は3.8兆元、支出は3.2兆元、当年度の収支残高は6000億元に接近し、累計残高は4.8兆元に達した。今年1-7月期、基金収入は2.2兆元、支出2兆元前後であり、現在の収支残高は2000億元余り、累計残高は5兆元前後である。これらのデータからして、年金給付は保証されている。

我々は、人口高齢化の程度の激化と人口流動のアンバランスの等の要因の影響を受け、さらに加えて以前の基金は省際で調整ができなかったため、確かに一部の省に基金収支バランス圧力がかなり大きいという問題があり、個別の省は扶養率の問題から省内の収支にいくらかアンバランスの状況が出現していることに注意している。我々は、4方面から着手し、年金保険制度をより公平で持続可能な方向へ発展させる。

①中央調整比率を引き上げ、個別の省の基金収支圧力がかなり大きい問題を重点的に解決する

2019年度、地域間の基金負担を一層均衡させるため、我々は中央の調整を強化し、調整比率を3.5%にまで高め、年間に調整する基金規模は6300億元に達した。中西部地域と旧工業基地の省の受益は1500億元余りである。この措置を通じて、個別の省の基金収支圧力が際立っている問題を有効に解決することができる。省によっては、この措置を通じて彼らの困難を基本的に解決した。

②一部の国有資本を切り分けた社会保障資金の充実を全面的に推進する

2017年11月、国務院は「一部国有資本を切り分け社会保障資金を充実させる実施方案」を発出し、中央と地方、国有と国有株支配大中型企業・金融機関の10%の資本を切り分け、社会保障基金に充当することを決定した。実施方案の下達後、財政部は関連部門と共に、「テストを先行し、組織のクラス別に、着実に推進する」という原則に基づき、切り分けを積極的に推進する。

現在、中央レベルは既に続々と53社位の中央企業と14行の中央金融機関について切り分けを実施し、切り分けの規模は8600億元となった。地方レベルも、前期準備活動を相次いで展開し、今年7月、国務院常務会議は、全国は国有資本による社会保障基金を充実させる活動を全面的に展開することを既に決定した。我々は積極的に措置を採用し、全国の切り分け活動の順調な進行を推進する。

③基本年金保険基金への補助を強化する

近年、中央財政は基本年金保険基金への補助を強化し、かつ基金収支の矛盾がかなり際立っている中西部地域と旧工業基地の省に重点的に傾斜している。今年度、中央財政予算は企業の従業員年金保険への補助資金を5285億元、前年同期比9.4%増を計上し、伸び率も相当大きい。我々は、今後補引き続き補助を強化し、地方が年金をしっかり期限どおりに全額給付することを支援する。

④制度改革を深化させる

中央の手配・要求に基づき、我々は関連部門と共に省レベルで統一的に企画する基礎の上に、年金保険の全国統一的企画の進度を加速し、年金が「多く払えば多く給付され、長く払えば多く給付される」規制メカニズムを整備し、基本年金の健全で合理的な調整メカニズムを確立し、年金保険分野の改革を不断に推進する。我々は、都市従業員年金保険と都市・農村住民基本年金保険制度を一層整備し、できるだけ速やかに年金保険の全国統一を実現し、億万人民が「老いても養ってもらえる」ことを確保する。

3.人民銀行 易綱行長
(1)追加的金融緩和

米国FRB・欧州中央銀行・日本銀行及び多くの発展途上国の中央銀行の最近の金融政策の方向は、1つは利下げであり、1つは再度の量的緩和である。中国は大型の経済体であり、我々の金融政策は主として国内経済に奉仕するものである。このため、我々が金融政策を決定する際も自分を主とし、国内の経済情勢と物価動向を考慮して事前調整・微調整を進める。中国経済は、現在合理的区間にあり、物価方面も比較的温和な区間にある。転換・グレードアップにおいて、我々はいくらかの構造問題に遭遇しており、これは主としてサプライサイド構造改革を通じて解決する。

中国国内の情勢と国際的背景を総合的に分析すると、我々は中国の金融政策は一定の力を維持すべきだと考えており、穏健な方向を堅持し、当面を安定させるのみならず、アンチシクリカルな調節を強化し、わが国のM2と社会資金調達規模の伸びを、名目GDPの成長率に大体において匹敵させることを維持し、決して「バラマキ」を行わない。同時に我々はわが国のレバレッジ率の安定維持に注意を払い、社会全体の債務水準が持続可能な水準となるようにしなければならない。また、我々は長期をも考慮し、構造調整を強化し、金融政策の伝達メカニズムを円滑にすることに努力し、改革の方式によって企業の資金調達コストを引き下げ、経済の質の高い発展を推進しなければならない。

米国・欧州・日本といった先進国と発展途上国を含む世界の金融政策の将来数年の方向について我々は、今後数年どこかの国家、とりわけどこかの主要経済体が正常な金融政策を維持したならば、このような経済体は世界経済の注目の的となり、市場がうらやむ地方となるに違いないと考えている。

(2)民営、小型・零細企業の資金調達難問題

我々は「3本の矢」を用い、民営企業と小型・零細企業の資金調達難・資金調達コスト高の問題の解決で、比較的好い効果を得た。「3本の矢」とは、銀行貸出、市場での債券発行、株式による資金調達である。この3方面で同時に力を発揮し、民営企業と小型・零細企業を支援する。人民銀行は関連部門と「いくつもの支え」の合成力を発揮し、中央銀行・財政・監督管理・地方・金融機関の積極性をすべて動員した。同時に、マクロ政策上も、我々は預金準備率引下げ、方向を定めた預金準備率引下げ、再貸出、再割引等の金融政策手段を用いて、金融機関が小型・零細企業と民営企業に貸出を行うよう誘導し、比較的好い効果を得た。今年で見ると、民営企業への貸出の伸びはかなり速い。

民営企業の債券発行も比較的顕著な効果を得た。我々は66社の民営企業の488億元の債券発行を支援し、同時にこれらの支援を通じて数千億元の民営企業の債券発行を誘導した。金融機関も地方政府も、この方法にならい、融資手段による支援方式を用いてリスクを分担し、民営企業の債券発行について、発行ができるようにしただけでなく、発行金利をある程度引き下げた。今年8月末に至り、インクルーシブファイナンス・マイクロファイナンスの貸出残高は11億元、23%増であり、伸び率は昨年末より8ポイント高まった。現在、2500万社余りの民営、小型・零細な経営主体が貸出を得ている。これは、雇用・起業と経済全体の平穏な運営を有力に支援した。我々は、小型・零細企業と民営企業の資金調達コストに非常に注意を払ってもおり、今年で見ると、総合資金調達コストは顕著に低下している。今後人民銀行は、関係部門と共に引き続き「3本の矢」をより好く用いる。

(3)中小銀行の経営問題

一部の都市商業銀行、上場会社は年報発表を遅らせており、いくらかのリスクに遭遇している。我々は現在金融リスクの防止・解消という3年間の堅塁攻略戦を進めており、今年は2年目であるが、2年目は堅塁の克服が困難となっており、多くの金融リスクを解消しなければならない。総体として言えば、一部の中小銀行の年報が遅れたが、現在これらの年報も続々と出てきているし、異なる方式を採用してこれらのリスクを解消している。人民銀行と銀行保険監督管理委員会は今年5月、厳格に法に基づき包商銀行の管理を引き継ぎ、引き継いだあとは、500万余りの預金者、20万余りの理財商品への投資者、さらには絶対多数の公務関連預金者は完全に保障を得た。処理全体は、現在平穏であり、銀行は通常通り営業しており、整然と秩序立っており、預金引出も非常に自由である。

このほか、一部の銀行、たとえばメディアが報道した錦州銀行も戦略的投資家を探し出しており、新たな戦略的投資家が参入して後は、錦州銀行に対し市場化方式を用いてリスクを解消しなければならない。一部の県域の農村信用社、農村商業銀行、農村合作銀行も積極的に増資を行っており、彼らの経営モデルを現地のコミュニティサービスに転換している。これまで、一部の銀行の盲目的拡張、地域・省を越えた同業業務は、彼らのサービスの焦点を地域外に向け、一部のハイリスクのプロジェクトに向けることになった。我々は、リスク解消のプロセスにおいて、中小金融機関が実体経済へのサービスに焦点をあて、民営企業と小型へのサービスに焦点をあて、現地サービスに転換するよう要求することにより、業務を持続可能にし、リスクも解消可能となると主張している。

全体の原則としては、現在出現したこれらの問題に対し、市場化・法治化の方法を用いて、厳格に法に基づき解消しなければならない。市場化・法治化とは、株主が責任を負わなければならないということであり、同時に大口債権者はいくらかのリスク認知能力を持たなければならない。地方政府も責任を負わなければならず、監督管理部門と人民銀行も、それぞれの責任においてリスク解消を進めなければならない。市場化・法治化の考え方に基づけば、株主・各機関の責任は明らかである。このプロセスにおいて、我々は特に普通預金者の権益保護を重視しており、特に一般の財テク投資家の権益保護を重視している。

現在進行している段階からすると、リスク全体は収斂しており、皆の自信も強まっている。銀行間の同業リスク全体のオーバー金利も徐々に収斂している。この考え方に基づき解消すれば、リスクは徐々に収斂すると思う。しかも銀行業全体の発展史において、今回の解消プロセスは、今後の銀行の発展の方向、株主の責任、現地へのサービス、実体経済への奉仕、小型・零細企業へのサービス等の方面において、1つのモデルを樹立するものである。

(4)今後の利下げ、預金準備率引下げ、一定の人民元レート切下げ

現在、全世界経済は確かに下振れ圧力があり、最近の中国のデータを見ても、いくらか下振れしている。しかし、我々の総体的判断は、第1に、中国の経済の現状はなお合理的区間で運営されており、第2に、現在中国は、マクロ経済政策、とりわけ財政政策・金融政策において、下振れ圧力に対応する余地はなお比較的大きい、というものである。我々の現在の金利水準は、適切な金利水準であるべきであり、法定預金準備率の水準は今後のマクロ政策調整のために十分な余地を残しているというべきである。

しかし、その他のいくらかの国家の中央銀行が行っている、比較的大きい利下げや量的緩和政策ほど、我々は決して焦ってはいない。我々の判断は、我々の余地は確かに比較的大きいというものである。今回のプロセスにおいて、皆が心配しているようにもし本当に経済の下振れが出現しているのに、主要先進国がたとえば既にゼロ金利に接近し、甚だしきはマイナス金利政策を実行しているというように、金融政策手段を使い終わっているとするならば、我々は金融政策のオペレーションの全プロセスにおいて、正常な金融政策の余地を大事にして、この余地の中でできるだけ長く正常な金融政策を継続すべきであり、それが、経済全体の持続可能な発展と庶民の福祉にとって有利だと考える。