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研究者のご紹介

下半期の経済政策(5)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2019年8月30日


財政部の劉昆部長は8月23日、全人代常務委員会に上半期の予算の執行情況報告を行い、下半期の財政政策を説明した。本稿では、下半期の財政政策を中心に報告の概要を紹介する。

1.上半期の総括
(1)より大規模な減税・費用引下げの実施

党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、近年で最大程度の減税・費用引下げ政策を打ち出し、実施した。

統計によると、1-6月全国累計で新たな追加減税・費用引下げは1兆1709億元であり、うち今年新たに打ち出した減税政策は5065億元の減税であり、企業負担を軽減し、市場の予想を安定させ、企業の研究開発強化・投資増加、雇用拡大等の方面において積極的な役割を発揮した。

①増値税改革を深化させた

4月1日から、製造業等の業種の16%の税率を13%に引き下げ、交通・運輸業、建築業等の業種の10%の税率を9%に引き下げた。税控除の範囲を拡大し、生産・生活関連サービス業に割り増し控除を行い、増値税の期末還付留保分の税還付制度を試行した。

4-6月期の減税は3185億元であり、すべての業種で減税を実現し、うち製造業の減税効果が最も顕著であり、減税は1389億元で、ウエイトは4割を超えた。

②小型・零細企業への包摂的な税減免を実施した

企業所得税の優遇を享受できる小型・零細企業の基準を大幅に緩和し、所得税の優遇を強化し、政策の範囲は95%以上の納税企業をカバーした。

1-6月期小型・零細企業への包摂的な租税政策の減税は1164億元であり、うち民営経済の市場主体への減税が88%を占めた。

③個人所得税特別付加控除政策を実施した

1月1日から、子女教育、継続教育、大病医療、住宅ローン利息、住宅家賃、老人介護支出の6項目の特別付加控除政策の実施を開始した。

1-6月期の減税は302億元であり、5190.5万人の納税者がこの政策を享受した。

個人所得税の基本控除費用(課税最低限)引上げと特別付加控除で、累計1.15億人の納税者が給与所得に係る個人所得税を納付する必要がなくなった。

④企業の社会保険料負担を引き下げた

都市従業員基本年金保険の保険料率を16%に引き下げ、失業保険と労災保険の保険料率を引き続き段階的に引き下げる政策を執行し、社会保険料のベースを査定により引き下げ、各地方は小型・零細企業の社会保険料負担を増やすいかなる方法をも採用できないこと、自ら歴史的な料金未納分を集中的に徴収してはならないこと、を明確にした。1-6月期企業従業員基本年金保険、失業保険、労災保険の保険料徴収の減少は1280億元を超えた。

同時に、一部行政事業性費用徴収を減免・引下げを行い、関連する政府基金を整理・規範化した。減税・費用引下げ政策をしっかり実施するため、中央政府は率先して経費を節約し、一般支出の圧縮・削減に力を入れ、地方に対する移転支出は7.5兆元を超え、9%増であった。地方政府も潜在力を発掘し、実効ある措置を打ち出し、減税・費用引下げの各政策の実施を確保した。

(2)税外収入の確保

費用引下げに関連する収入が低下するなか、多くのルートで資金・資産を活性化し、税外収入を増やした。1-7月期、教育費付加を含む特別収入と行政事業性手数料徴収収入が前年同期に3.1%減少した基礎の上に、今年は前年同期比でさらに0.8%減らした。

同時に、各レベル財政部門は、減税・費用引下げがもたらす収支バランス圧力に積極的に対応し、国有資金・資産の活性化に力を入れ、関連収入の増加をもたらし、全国税外収入の伸びは24.8%であった。これは、主として国有資本経営収入と国有資源(資産)有償使用収入の伸びである。中央財政は特定国有金融機関と中央企業の利潤上納を増やし、一部中央金融企業からの配当収入が前年同期比で増加し、合計で全国税外収入の増収額の61%を占め、全国税外収入の伸びを15.1ポイント押し上げた。

(3)中央財政収入・地方財政収入

中央と地方収入の伸びは、いずれも顕著に下落したが、地域間の収入の伸びは分化した。1-7月期、中央一般公共予算収入は3.3%増であり、伸びは前年同期比8.3ポイント縮小した。地方一般公共予算収入は3%増であり、伸びは前年同期比5.5ポイント縮小した。

地域別に見ると、東部3.4%増(伸び率は4.9ポイント縮小)、中部5.4%増(同5ポイント縮小)、西部0.7%増(同7.1ポイント縮小)、東北-1.4%(同7.8ポイント縮小)であった。31省(自治区・直轄市)の中で、収入が2ケタの伸びを実現したのは3で、1ケタが17、収入下降が11であり、下降した省は前年同期比7増えた。

(4)財政支出

財政支出はかなり速い伸びを維持し、重点分野の資金需要はかなり好く保障された。1-7月期、全国一般公共予算支出の伸びは、年度予算の伸び6.5%より3.4ポイント高く、支出の進度は58.6%で、通常の進度より0.3ポイント速かった。うち、中央一般公共予算支出は1兆9608.32億元、9.5%増であり、地方一般公共予算支出は11兆8354.94億元、10%増である、7月末までに、中央財政が交付した移転支出資金は、予算の64.9%であり、通常の進度より6.5ポイント速かった。

重点支出予算の執行も比較的好い。教育9.6%、科学技術17.7%、社会保障・雇用7.9%、衛生8.3%、省エネ・環境保護17.4%、農林水産10.3%の増である。中央インフラ投資予算は5334.33億元が下達され、予算の92.4%であった。

(5)財政・税制改革

改革を強化し、ミクロ主体の活力を奮い立たせ、地方の積極性を動員するという要求に基づき、財政・税制改革の推進は新たな進展をみた。

①財政改革を加速した

教育、科学技術、交通・運輸等の分野の中央・地方の財政権限と支出責任の区分改革方案を打ち出し、自然資源等その他の重要分野の改革方案の制定は、積極的な進展をみた。中央の地方に対する移転支出制度を整備し、共同財政権限移転支出を設立し、移転支出の管理を強化した。

②健全な予算管理制度を整備した

各地方・各部門は、予算業績効果管理の全面実施に関する党中央・国務院の要求を実施し、業績効果を導きとして支出構造を最適化し、長期に遊休・低効率・無効な資金を削減した。

予算公開の中央部門の範囲を拡大し、地方に対する移転支出の内容公開を展開し、財政部門ウェブサイトで省レベル予算・決算の公開専門欄を増設した。

政府調達制度改革を一層深化させ、購入主体の職責が明確で、取引ルールが科学的で効率が高く、政策機能が完備された現代的な政府調達制度を確立した。

③税制改革を深化させた

増値税制度を整備し、増値税の還付留保分の地方分担メカニズムを検討・調整した。

個人所得税改革関連情報システムとデータの共有を強化し、特別付加控除政策の完全実施を確保した。

資源税等の税目及び政府税外収入管理条例の立法を積極的に推進した。

④国有資本・国有企業改革を推進した

国務院が直接授権した国有資本投資・運営会社のテスト、及び中央党政機関・事業単位の経営性国有資産の集中・統一的な監督管理のテストを加速した。

中央国有資本経営予算から一般公共予算に組み入れる比率を28%に高めた。

国有金融資本管理を整備し、金融国有資本予算を推進した。国有企業から社会機能の剥離と歴史的に遺った問題の解決を支援し、中央企業による「ゾンビ企業」処理、特別困難企業のガバナンスを早急に推進した。

2.下半期の重点政策

党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹実施し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、新発展理念を堅持し、質の高い発展の推進、改革・開放の推進を堅持し、「マクロ政策で安定させ、ミクロ政策で活性化し、社会政策で底固めする」という総体的考え方を堅持し、国内・国際の2つの大局を統一的に企画し、安定成長・改革促進・構造調整・民生優遇・リスク防止・安定維持のための各政策を統一的にしっかり企画・実施し、経済の持続的で健全な発展を促進する。財政政策は力を増し、効率を高め、減税・費用引下げ政策を引き続き細部まで実施する。重点は、以下の政策である。

(1)積極的財政政策をしっかり実施し、経済の平穏な運営を促進する

減税・費用引下げ政策措置の実施に細部に至るまでしっかり取り組み、各業種の税負担の変化に密接に注意を払い、経済運営情況と政策実施中に遭遇した問題をフォロー・分析し、政策措置を不断に整備し、関連プロセスを最適化し、企業が政策を十分うまく用いるよう支援する。製造業等主要業種の税負担が顕著に低下することを確保し、建築業と交通・運輸業等の業種の税負担がある程度低下することを確保し、その他業種の税負担が減るだけで増えないことを確保し、企業とりわけ小型・零細企業の社会保険料負担を実質的に低下させる。

規定に反した企業に係る費用徴収を一層是正し、企業に係る費用徴収と「行政の簡素化・権限の委譲、管理と開放の結合、サービスの最適化」改革を緊密に結びつけ、費用徴収の公開・透明度を高め、減税・費用引下げのボーナス効果の伝達メカニズムを円滑にする。社会の監督を主動的に受け入れ、融通を利かし、割り引いて、あるいはやり方・形を変えたむやみな費用徴収が減税効果を帳消しにした場合には、発見しだい調査・処分する。

一部の都市が民営、小型・零細企業への金融サービス総合改革テストを展開・深化させることを支援し、より多くの金融資源が小型・零細企業を支援するよう誘導する。

同時に、民生の保障を強化し、多くの措置を併せて打ち出して雇用の安定・拡大を支援し、一部国有資本を切り分けることによる社会保障基金の充実を全面的に普及させ、コミュニティ老人ケア、幼児保育サービス、都市老朽化住宅団地改造テスト等の政策をしっかり実施し、民生改善の中で内需の潜在力を引き続き発揮させる。

輸入関税の総水準の持続的引下げを検討し、輸出税還付政策を整備し、税還付の進度を加速する。

(2)収支予算管理をしっかり行い、収入増・支出減により予算を均衡させる

収入増・支出減を強化し、減収の穴埋めをし、予算均衡と財政の健全な運営を実現する。

主動的に潜在力を発掘し、多くの管理を一元化し、資産を細かく洗い直し、長期に低い効率で運用され、遊休状態にある等の政府のストック資産を活性化・現金化し、引き続き繰越・余剰資金を整理し、特定国有企業の利潤を上納させ、多くのルートで財政収支のプレッシャーを緩和する。

支出予算の執行をハードに制約し、予算追加事項を厳格に抑制し、予算規定に違反した多くの抜け道を作ることを断固として禁止する。支出政策の関門をしっかり把握し、財政の受容能力の評価を強化し、およそ実施の条件を備えておらず、財政力を超える可能性のある支出政策は、一律実施してはならない。

地方は移転支出資金と自前の財政力を統一的に企画し、「県レベルが主となり、省レベルが責任をもつ」原則に基づき、支出構造の最適化に努力し、「義務教育・医療・住宅の安全」保障支出を財政支出の優先順位とすることを堅持し、国家基準の「義務教育・医療・住宅の安全」保障支出を、「義務教育・医療・住宅の安全」保障支出の中で優先順位とすることを堅持し、「義務教育・医療・住宅の安全」保障支出の需要を確実に保障する。

(3)財政・税制改革を推進し、現代財政制度の確立を加速する

方向を安定させ、実効を際立たせ、全力で堅塁を攻略し、重大改革措置を推進し一層実施効果が現れるようにする。既に打ち出した関連分野の中央・地方の財政権限と支出責任の区分改革方案の実施にしっかり取り組み、生態環境・自然資源・応急救援等その他分野の改革を積極的に推進する。

国有資本経営予算の編成・報告範囲を一層拡大し、国有資本経営予算から一般公共予算に繰り入れる比率を高める。予算編成制度改革を深化させ、予算基準体系と項目一覧を整備し、予算管理の科学化・精緻化水準を高める。会計検査の指摘と結びつけて際立った問題を全面改正し、体制メカニズムから着手して予算執行を規範化し、予算の公開・透明とハードな制約を強化する。

税制改革と税制立法の有機的なリンクを強化し、税制立法の推進を強化する。全人代常務委員会に提出する国有資産管理情況総合報告と行政事業性国有資産管理情況特別口頭報告にしっかり取り組む。

(4)地方政府の債務管理を強化し、地方政府の隠れた債務リスクを防止・解消する

地方政府の隠れた債務リスクを防止・解消することに関する党中央・国務院の政策決定・手配を厳格に実施し、確固として、コントロール可能なように、秩序立て、適度に実施する。  特別地方債の発行とプロジェクト関連の資金調達を引き続きしっかり行い、地方の法規に基づく起債を支援する。特別地方債の合理的な境界を明確にし、国家重大戦略と重大プロジェクトに精確に焦点を絞る。  

地方政府の隠れた債務に対する常態化した健全なモニタリングメカニズムを整備し、規格を統一し、監督管理を統一して、すべての隠れた債務100%カバーを実現し、制度を整備し、監督管理の抜け穴を塞ぎ、潜在リスクを遅滞なく発見・処理する。各地方が総合的に措置を採用するよう指導・督促し、隠れた債務ストックを適切に解消する。監督の問責を強化し、無秩序な借入れを厳しく正し、隠れた債務の増加に有効な歯止めをかける。

(5)刻苦奮闘し、勤倹・節約し、政府の厳しい支出節約を堅持する

刻苦奮闘、勤倹・節約の思想を牢固に樹立し、勤倹によりすべての事業を実施することを堅持し、支出すべでないものは一銭たりとも支出してはならない。各地方・各部門は、予算業績効果管理の全面実施を重要な掴みどころとすることを堅持し、健全な評価指標体系を整備し、評価方式を改善し、評価の質を高め、評価結果を十分運用し、支出するときには必ず効果を問い、効果がなければ問責し、資金を最も肝心なところに用いなければならない。

一切の不要な行政支出の圧縮・削減に力を入れ、すべての事務運営・支援サービス保障・会議出張・公務接待・海外出張等は、いずれも簡素・節約を実践・唱導し、豪奢を戒め、行政コストの顕著な引下げを促進しなければならない。

中央財政は、率先して一般支出を圧縮・削減し、義務的・重点項目を除き、その他の項目支出は平均圧縮・削減率を10%とする。年初確定した一般支出圧縮・削減5%を厳格に実施する基礎の上に、条件の整った地方は一層圧縮・削減を強化し、10%以上となるよう努力し、節約した資金を重点建設と民生改善支援に用いなければならない。節約励行・浪費反対に関連する制度規範を一層整備し、厳格に執行し、長期に堅持する。