下半期の経済政策(4)

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年8月28日


国家発展・改革委員会の何立峰主任は8月23日、全人代常務委員会に上半期の国民経済・社会発展計画の執行情況報告を行い、下半期の政策を説明した。本稿では、下半期の政策を中心に報告の概要を紹介する。

1.上半期の総括
(1)マクロ政策  

マクロ政策の実施には効果が現れ、経済運営は安定を維持した。  

「政府活動報告」と計画報告の総体要求とマクロ経済政策の方針を実施し、断固として「バラマキ」を行わず、マクロ・コントロールの「合わせ技」をしっかり打ち出すことを重視し、政策の展望性・精確性・実効性の向上に力を入れ、一部の政策を前倒して計画的に打ち出し、一部の建設プロジェクトと任務を前倒しで手配し、一部の財政移転支出と地方政府の新たに増やした債務限度額を前倒しで下達した。このことは、経済運営を安定させ市場の自信を奮い立たせることに、重要な役割を発揮した。

①財政政策  

積極的財政政策は力を増し効率を高め、増値税改革の深化、小型・零細企業への優遇減税、社会保険料率の引下げ、個人所得税の特別付加控除設立、政府基金の整理・規範化等、より大規模な減税・費用引下げ措置を全面的に実施し、上半期累計で新たな減税・費用引下げは1兆1709億元となった。財政予算の下達と地方債発行の進度を加速し、全国一般公共予算収入と支出は、それぞれ3.4%、10.7%伸び、新たに増発した地方債は2兆1765億元となった。

②金融政策  

穏健な金融政策は緩和と引締めを適度にし、預金準備率引下げ、方向を定めた預金準備率引下げ、中期貸借ファシリティー等の措置を総合的に実施し、市場の流動性の合理的充足を維持した。6月末のM2残高は前年同期比8.5%増となり、社会資金調達規模残高の伸びは10.9%となり、GDPの名目成長率と基本的に釣り合っている。

永続債をブレークスルーとし、銀行が多様なルートで資本を補充することを推進した。民営企業、小型・零細企業への支援政策体系を整備し、民営、小型・零細企業へのサービス総合改革テストを深化させ、包摂タイプの小型・零細企業向け貸出残高は年初と比べかなり速く伸びており、金利水準は引き続き低下している。

③雇用政策  

雇用優先政策は全面的に力を発揮し、中央財政は雇用補助資金を計上して各就業・起業補助政策の実施を支援し、失業保険からの雇用安定返還を強化し、職業技能向上アクションプランを打ち出し、1000億元の失業保険基金の運用を全面的に始動して大規模な職業技能訓練活動を展開し、「起業・イノベーション」の雇用牽引・下支え作用を積極的に発揮させ、重点層の就業・起業政策の実施に力を入れた。

(2)経済情勢判断  

総じて見ると、今年に入り、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、我々は各種の困難・試練への対応に努力し、経済運営は総体として平穏であり、構造は引き続き最適化され、民生は不断に改善されている。世界の経済成長が鈍化すると同時に、わが国経済はなお安定の中での前進を維持しており、成長率は主要経済体の中で前列に位置しており、中国経済の巨大な強靭性・潜在力・挽回の余地が展開されている。  

実践が、党中央・国務院の政策決定・手配が完全に正確であり、有力・有効であったことを証明している。これは、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の結果であり、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想の導きの結果であり、全党・全国各民族・人民が団結し、心を一つにして、刻苦奮闘した結果である。  

経済運営が総体として平穏であると同時に、わが国経済発展が直面する困難・試練と不確定・不安定要因が顕著に増大していることを見て取らねばならない。  

国際的に見ると、外部環境はより複雑・峻厳化し、現在世界経済と貿易の伸びは同歩調で鈍化しており、最近世界銀行・OECD・WTOは今年の世界経済・貿易の伸び予測を下方修正した。  

国内で見ると、経済発展は新たなリスク・試練に直面しており、国内経済の下振れ圧力は増大しており、実体経済の困難は依然かなり多く、重点分野のリスクの隠れた弊害はなお存在し、民生分野では少なからぬ脆弱部分が存在する。このほか、一部の地方で生産安全事故がしばしば発生し、一部地域では洪水・地震等の自然災害が発生し、応急管理と防災・災害救助の任務は非常に困難である1。  

総じて見ると、上半期の経済は総体として平穏であり、安定の中で前進をみる運営態勢を維持しており、主要指標は合理的区間を維持し、計画の完成情況は総じて良好である。  

同時に、国内に構造的・体制的矛盾と外部の衝撃の共同作用が長期に存在し、経済発展は新たなリスク・試練に直面し、経済の平穏で健全な発展を維持する難度がある程度増大していることをもはっきり認識しなければならない。  

13期全人代第2回会議で審査・批准された2019年国民経済・社会発展計画総表に照らせば、現在水質環境・バラック地区改造・貧困減少等の拘束的指標の進展は順調であり、経済成長・雇用・個人所得・物価・貨物輸出入等の主要予期指標は努力を経て達成可能であるが、エネルギー消費強度・大気の質等の指標はなおより大きな努力を払う必要がある

2.下半期の政策  

下半期の政策の意義は十分重大である。  

習近平同志を核心とする党中央の周囲により緊密に団結し、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党の全面的指導を堅持・強化し、「4つの意識」を増強し、「4つの自信」を確固とし、「2つの擁護」をしっかり行い、19回党大会と19期2中全会・3中全会精神を全面的に貫徹し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、中央経済工作会議精神と「政府活動報告」の手配、及び13期全人代第2回会議の要求を実施し、全人代常務委員会及び全人代財経委員会の経済政策に関する意見・建議に基づき、政策を真剣に改善しなければならない。

安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、発展という第一の重要任務を堅持し、自身の事柄にしっかり取り組むことに力を入れ、内外環境の複雑・深刻な変化に主動的に対応しなければならない。サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、「強固・増強・向上・円滑」の方針を貫徹し、「マクロ政策で安定させ、ミクロ政策で活性化し、社会政策で底固めする」という総体的考え方を堅持し、国内・国際の2つの大局を統一的に企画し、安定成長・改革促進・構造調整・民生優遇・リスク防止・安定維持のための各政策を統一的にしっかり企画・実施しなければならない。

「雇用の安定・金融の安定・対外貿易の安定・外資の安定・投資の安定・予想の安定」のための各政策を全面的にしっかり実施し、各政策ができるだけ速く実施され効果が現れることを確保し、経済の平穏で健全な発展と社会の調和・安定の維持に努力し、卓越した成績をもって中華人民共和国成立70周年を慶祝しなければならない

(1)マクロ政策の連続性・安定性を維持し、かつ適時事前調整・微調整を行う

①掛け値なしに、より大規模な減税・費用引下げ等の積極的財政政策を実施する

既に打ち出した減税・費用引下げ政策を確実に実施する。特別地方債の発行と資金使用を加速し、重点分野・重大プロジェクトにより多く振り向ける。収入増・支出抑制を強化し、財政収支予算をしっかりバランスさせ、義務教育・医療保障・住宅安全の支出を保障する。

②穏健な金融政策は緩和・引締めを適度にすることを維持する

金利の市場化改革を深化させ、小型・零細企業の資金調達コストの適切な引下げを推進する。銀行を督促して職責を尽くした場合の免責と不良債権の容認度を引き上げるという要求を実施させ、金融機関を誘導して製造業・民営企業への中長期融資を増やさせる。

③雇用優先政策を深く実施する  

大学卒業生・出稼ぎ農民・退役軍人等の重点層の雇用対策を早急に実施する。職業技能向上キャンペーンを実施し、構造的な雇用矛盾を緩和する。高等職業訓練学校における100万人募集拡大の実施を加速する。起業による雇用牽引を支援し、出稼ぎ農民が帰郷して起業することを奨励する。

(2)市場化改革の深化、ハイレベルの開放拡大に力を入れる  

引き続き、「行政の簡素化・権限の委譲・管理と開放の結合・サービスの最適化」改革を推進する。行政許可と各種管理措置の整理の中で形を変えた審査・許認可の削減に力を入れ、「監督管理のプロセスにおける任意の検査対象抽出、任意の法執行検査人員の派遣、抽出情況・検査結果の遅滞ない社会への公開」について部門をまたがった連合監督管理を推進する。重点分野の市場化改革を着実に推進する。火力発電価格・電力配送価格の改革を深化させ、停車せずに通行料金を払う電子システムを全面的に普及させる。

「一帯一路」の共同建設により開放水準の継続的向上を牽引する。第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの成果を早急に実施する。経済貿易交渉とマルチ/バイの実務的協力を積極的に推進する。対外貿易の増加に力を入れる。対外貿易を安定させる各政策措置をしっかり実施し、輸出税還付政策を整備し、輸出信用保険のカバー率を拡大する。外資を積極的に導入する。2019年版全国・自由貿易試験区の外資参入ネガティブリスト、外資奨励産業目録を実施し、重大外資プロジェクトの実施を積極的に推進する。

(3)民生改善と内需の新成長スポット育成により、強大な国内市場の形成を誘導・推進する  

有効な投資を合理的に拡大する。産業の転換・グレードアップ、カギとなる脆弱分野に的を絞り、持続的に力を発揮させ、有効な投資のカギとしての役割を十分発揮させる。特別地方債のプロジェクトを手配する協調メカニズムを整備する。プロジェクトの資本金管理制度を整備し、一部インフラ等のプロジェクトの資本金比率を引き下げる。政府投資条例関連弁法を早急に制定する。都市の老朽化した住宅団地の改造、都市の駐車場、都市・農村コールドチェーン物流施設等の脆弱部分を補強するプロジェクトを実施する。  

消費の拡大と質の向上を促進する。老朽自動車の廃棄処分・更新を秩序立てて推進する。農村市場を有効に開拓する。包摂的な老人ケアの都市・企業連動特別キャンペーンを推進し、社会のパワーによる包摂的な幼児保育サービスを支援し、家事サービス分野の育成・向上、先駆者、信用建設キャンペーンを展開する。

(4)イノベーションの進展と産業のグレードアップを引き続き推進する  

イノベーションの体制メカニズムと政策を整備し、知的財産権保護を強化する。イノベーション・起業・創造の深い発展を推進する。より多くの「起業・イノベーション」を支えるプラットホームの構築を支援する。科学技術イノベーション企業の発展を支援する科学創業ボードの役割を積極的に発揮させる。産業の基礎能力と産業チェーンの水準向上に力を入れる。戦略的新興産業の発展に力を入れ、デジタル経済の発展に力を入れる。

伝統産業の調整・改造・グレードアップを断固として推進する。伝統製造業の重点分野の技術改造を強化する。製造業、民営企業への中長期融資を増やすよう金融機関を誘導する。「ゾンビ企業」の清算を加速する。長期に有効なメカニズムを確立し、民営企業・中小企業への未払い問題を解決する。現代サービス業の発展を加速し、サービス業・製造業の融合発展のボトルネックを打破して、サービス業の質の高い発展に資する市場環境を作り上げる。

(5)都市・農村、地域の協調発展を統一的に企画・推進する  

国家重大地域戦略を着実に実施する。北京の非首都機能の移転をカギとして、北京・天津・河北協同発展を推進する。長江経済ベルトを着実に推進し、生態環境の際立った問題を全面改善する。長江デルタ地域の一体的発展を推進する重点政策・重点プロジェクトを計画する。海南において中国の特色ある自由貿易港の建設を早急に模索する。地域の協調発展を促進する政策体系を一層整備する。旧革命根拠地・民族地域・辺境地域・貧困地域の発展を支援する政策を整備する。  

質の高い新しいタイプの都市化建設を推進し、1億人の非戸籍人口の都市戸籍取得推進で新たな進展を得る。メガロポリスの一体化した体制メカニズムの建設を促進する。農村振興を着実に推進する。食糧安全と重要農産品の供給保障を重点とし、いささかも手を緩めず農業生産にしっかり取り組む。農村における1次・2次・3次産業の融合模範パークの創建を加速する。

(6)3大堅塁攻略戦をしっかり戦い、小康社会の全面的実現の脆弱部分を早急に補強する

脱貧困堅塁攻略を強化し、他の土地への移転による貧困支援の後続措置を細分化して実施し、脱貧困の成果を強固にし展開する。  

汚染対策を強化する。エネルギー消費総量と強度の「2つのコントロール」を引き続き推進し、飲料水の水源地の保護を強化し、都市の生活ゴミの分類制度の建設を秩序立てて推進する。  

重点分野のリスクをいささかも手を緩めず防止する。金融サプライサイド構造改革を推進する。金融監督管理の法規体系を整備し、個別の中小銀行のリスクを精確にしっかり処理し、会社の信用債券のデフォルト事件を適切に処理し、リスク処理のテンポ・程度をしっかり把握して、金融機関・地方政府・金融監督管理部門の責任を徹底させ、株式市場の平穏で健全な発展を推進する。  

「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、不動産市場の平穏で健全な発展のための長期に有効なメカニズム方案を適切に実施し、不動産を短期的経済刺激の手段とはしない

(7)人民を中心として、民生を優遇する各政策をしっかり実施する  

民生分野の公共サービス水準を引き続き高める。公立病院の改革を推進する。今期の冬と翌春の暖房を前倒しで手配する。個人の増収促進と社会保障関連政策をしっかり実施する。供給確保・価格安定を強化する。コメの供給の省長責任制、副食品供給の市長責任制を徹底し、アフリカ豚コレラの防疫・制御、養豚支援を強化する。

社会の治安水準を引き続き高める。暴力団一掃・犯罪取締り特別闘争を深く推進し、防災・減災・災害救助の応急管理政策の基礎固めを全力でしっかり実施し、重大・特大事故を断固として防止し、歯止めをかける。  

下半期に直面するリスク・試練はある程度増大し、経済社会の発展の任務は十分繁雑で荷が重い。我々は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を深く学習し、当面の経済情勢に対する党中央の判断と政策手配に思想と行動を確実に統一させなければならない。  

責任を徹底し、主動的に結果を出し、大胆に取り組み、真剣に実務に励み、党中央・国務院の政策決定・手配及び13期全人代第2回会議の要求を断固として貫徹し、全人代の監督を自覚的に受け入れ、各任務の完全実施を確保し、経済社会の持続的で健全な発展を促進しなければならない。

  1. 太字は筆者。