人民銀行第2四半期貨幣政策執行報告

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年8月20日


はじめに

 本稿では、8月9日に公表された第2四半期(4-6月期)貨幣政策執行報告の概要を紹介する。

1.マクロ経済の展望
1.1 概況

将来一時期を展望すると、経済の平穏な発展を維持するために有利な要因はかなり多い。

(1)国際面

 世界の経済成長が直面している下振れリスクはある程度増加しているが、総体としてなお平穏な成長を維持している。

(2)国内面

中国の発展はなお長期ににわたり重要な戦略的チャンスの時期にある。3大堅塁攻略戦の進展は良好であり、サプライサイド改革が不断に深化され、総需給は基本的にバランスし、経済成長は強靭性を維持し、改革・開放が有力に推進され、雇用情勢は安定を維持し、個人所得が着実に伸び1、人民の生活は引き続き改善され、経済の持続的で健全な発展と社会の大局の安定が維持された。

積極的財政政策と穏健な金融政策は徐々に力を発揮し、実体経済とりわけ民営、小型・零細企業への金融サービスの程度は不断に増大し、金融の改革開放は新たな歩みを踏み出した2

2019年1-6月期の経済運営は、高いベースの上に平穏を引き続き維持し、安定の中で前進があり、市場主体の活力がより大きく発揮され、成長動力が急速に転換された。同時に、金融リスクの防止・コントロールが穏当かつ果断に推進され、実体経済への金融サービスの質・効率が向上した。人民元レートは総体として安定しており、外部の衝撃への対応能力が増強された3

1.2 リスク・試練

経済運営にはなおいくらかの深層レベルの問題と際立った矛盾が存在することを見て取らねばならない。

(1)国際環境  

 国際経済・金融情勢は錯綜・複雑化しており、世界経済の成長動力は減退しており、主要経済体の金融政策は緩和に転向し、地政学リスクは依然かなり大きく、外部の不確定・不安定要因が増大している。

(2)国内経済  

企業の生産・投資は慎重化傾向にあり4、製造業投資と民間投資の伸びはある程度鈍化し、不動産とインフレ建設投資への経済成長の依存度がかなり高く、経済の内生的な成長動力は一層の増強が必要である。

これについて客観的に認識し、理性的に対応し、自信を堅持し、不動心を維持し、しっかり十分に準備し、自身の事柄に真剣にしっかり取り組まなければならない5。短期と長期を結びつけ、ミクロとマクロを結びつけた対応措置を採用し、有効な最終需要と新たな成長点の形成を推進しなければならない。

(3)物価  

物価動向は総体としてかなり安定しているが、不確定要因がある程度増加している。

物価上昇率は、主として経済のファンダメンタルズの状況と需給の相対的変化によって決まる。  

最近、国内経済運営は総体として平穏であり、総需給は基本的にバランスしており、コアCPIは安定の中でやや下落している。サプライサイド構造改革が深く推進され、市場メカニズムの役割が更に好く発揮され、生産能力過剰問題が緩和された。これらは、物価の平穏維持に資するものであるが、次のことも見て取らねばならない。

最近、豚肉・生鮮野菜・果物等の商品価格がアフリカ豚コレラ・極端な天気等の影響を受けてかなり速く上昇しており、消費者物価の上昇幅をある程度拡大している。企業の生産需要が限界的に鈍化しており、大口商品価格が前年同期で下落し、前年同期のベースかなり高い等の要因がPPIの低下をもたらしている。このほか、減税措置・貿易摩擦は異なる部門の物価指数に異なる影響を与える可能性もある。

総体として見れば、将来一時期の物価水準は、需給両サイドの影響を受けて、いくらかの不確定性が存在し、将来の変化については、引き続きモニタリングが必要である。

2.今後の金融政策の考え方

これから、人民銀行は、引き続き習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党中央・国務院の政策決定・手配を全面的に貫徹し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を堅持し、改革開放の推進を堅持し、国内・国際の2つの大局を統一的に企画し、安定成長・改革促進・構造調整・民生優遇・リスク防止・安定維持を統一的に企画し、「雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想の安定化」政策を一層しっかり実施する。

サプライサイド構造改革という方法により需要を安定させ、質の高い発展を推進する中でリスクを防止・解消し、実体経済へのサービス、金融リスクの防止・コントロール、金融改革の深化という3つの任務をしっかり軸として、金融マクロ・コントロールを刷新・整備する6。  

穏健な金融政策は緩和・引締めを適度にし、適時・適度にカウンターシクリカルな調節を進め、マネーサプライの総バルブをしっかり把握し、「バラマキ」を行わず、M2と社会資金調達規模の伸びをGDP名目成長率と釣り合わせる。

マクロ政策の協調的組合せを強化し、金融政策の伝達をスムーズにし、金融政策の手段・メカニズムを刷新し、製造業・民営企業への中長期融資を増やすよう金融機関を誘導し7、小型・零細企業の資金調達の実質金利を一層引き下げる。

予想の誘導を強化し、市場の予想を安定させ、リスク処理のテンポ・程度をしっかり把握し、中小金融機関の流動性リスクを遅滞なく解消し、リスクの伝染・拡散を断固として阻止し、健全なマクロ・プルーデンス管理を整備し、金融のミクロ・プルーデンス監督管理・機能監の督管理と行為の監督管理の合成力を形成し、金融市場システムの健全で安定した運営を促進する8

金融サプライサイド構造改革を深化させ、金融システムの内在的機能の整備を加速し、実体経済の供給システム・需要システムと金融システムの間の3者の間で、三角形の良性な循環を形成する9

(1)穏健な金融政策をしっかり実施し、適時・適度にカウンターシクリカルな調節を進め、流動性の合理的充足と市場金利水準の合理的な安定を維持する10

金融政策とマクロ・プルーデンス政策の2つを支柱とした健全なコントロールの枠組みを整備し、コントロールの展望性・的確性・有効性を増強し、経済成長と物価動向の変化に応じて遅滞なく事前調整・微調整を行い、コントロールの度合いを精確に把握し、予想の誘導を強化し、市場の予想を安定させ、多様な金融政策手段の組合せを引き続き柔軟に運用して、総量と構造の間の関係をうまくバランスさせ、各部門の政策の政策合成力を発揮し、需給両サイドから金融政策の伝達をスムーズにするミクロ的基礎を共同して打ち立て、マネー・貸出と社会資金調達規模の合理的な伸びを維持する。

マクロ・プルーデンス管理を強化し、商業銀行が多くのルートで資本を補充することを推進し、マクロ・プルーデンス評価(MPA)の関連政策を引き続き組織的にしっかり実施し、かつ不断に改善・整備し、民営、小型・零細企業、「三農」等の分野に対する支援を金融機関が強化するよう誘導し、実体経済への金融サービスの効率を高める。

(2)金融政策の経済構造調整を促進する役割を発揮させ、実体経済に更に好くサービスする。

方向を定めた預金準備率引下げ、方向を定めた中期貸借ファシリティー・再貸出・再割引等の多様な金融政策手段をうまく運用し、金融政策手段の組合せを刷新し豊富にして、構造的金融政策手段の精確な点滴灌漑作用を発揮させ、各部門の政策の合成力を引き続き発揮させ、金融機関の貸出構造の最適化を誘導・支援し11、財弱部分・重点分野への金融支援を強化し、民営、小型・零細企業の資金調達難・資金調達コスト高の問題の緩和に力を入れる。

小型・零細企業への貸出政策誘導効果の評価を展開し、評価結果の運用を強化する。

大型商業銀行が金融サービスの重心を下方に移し、金融サービス理念を転換し、民営銀行とコミュニティ銀行の発展を推進するよう指導する。

「3ランク・2優遇」の預金準備政策の枠組を一層整備し12、地方法人金融機関が業務を原点回帰するよう誘導し、小型・零細企業等の実体経済への金融サービスに専念するよう誘導する。

金融機関が「庶民が衣食を憂うことがないようにし、庶民の義務教育・基本医療・住宅安全を保障」13し、産業による貧困支援、インフラ建設等貧困支援の重点分野へのサービスをしっかり行い、潜在リスクの管理を強化し、金融による貧困支援の持続可能な展開を推進するよう、奨励・誘導する。

製造業の質の高い発展への支援、過剰生産能力削減等重点分野の金融サービスをしっかり行い、老人ケア・教育・ヘルスケア等の新消費分野、及び起業・イノベーション、科学技術、文化、海洋経済14、戦略的新興産業等の国民経済の重点分野への金融支援を強化し、より質が高く、より十分な雇用の実現を推進する。

「北京・天津・河北」協同発展、「一帯一路」、西部大開発15、長江経済ベルト・軍民融合・農村振興等の国家重大戦略への金融サービスを統一的にしっかり企画・実施する。

「都市の実情に応じた施策」の基本原則に基づき、「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、不動産の長期有効な管理メカニズムを実施し、不動産を短期的な経済刺激の手段とはしない16

(3)金利の市場化・人民元レート形成メカニズムの改革を一層深化させ、金融資源の配分効率を高め、金融コントロールのメカニズムを整備する。

貸出金利の「2つの軌道17の一本化」を穏当に推進し、商業銀行の貸出市場への金利オファーメカニズムを整備し、実質金利形成における貸出市場への金利オファーの誘導作用を更に好く発揮させる18

中央銀行の政策金利体系の誘導機能を強化し、金利の波及メカニズムを整備し、金利コントロール能力を増強し、市場化された健全な金利形成メカニズムを整備する。

金融機関の非理性的な金利決定行為への監督管理を強化し、市場金利決定の自律的なメカニズムの誘導作用を発揮させ、有効な方式を採用して金利決定行為を奨励・規制し、業界の自律性とリスク防止を強化し、公平な金利決定秩序を擁護し、銀行の負債サイドのコストの基本的安定を維持する。

小型・零細企業への実質貸出金利を一層引き下げ、銀行が貸出付加手数料を引き下げるよう督促し、小型・零細企業の資金調達コストの低下を確保し19、更に好く実体経済にサービスする。

人民元レートの市場化改革を着実に深化させ、市場需給を基礎とし、通貨バスケットを参考として調節を進め、管理された変動為替レート制度を整備し、人民元レートの弾力性を維持し、マクロ経済と国際収支の調節における為替レートの自動安定器の作用を発揮させる20

必要な時は21マクロ・プルーデンス管理を強化して、市場の予想を安定させ、合理的な均衡水準における人民元レートの基本的安定を維持する。外為市場の発展を加速し、金融は実体経済に奉仕するという原則を堅持し、実需原則に基づく輸出入企業のために為替レートリスク管理サービスを提供する。

人民元の資本項目の兌換化を着実に推進し、人民元とその他通貨との直接取引市場の発展を推進し、人民元のクロスボーダー使用の政策枠組とインフラを整備し、改革・発展22とリスク防止を併せ重んじることを堅持し、クロスボーダーの貿易・投資において人民元の使用を支援する。

(4)金融市場のシステムを整備し、安定成長・構造調整・改革促進とリスク防止方面における金融市場の役割を確実に発揮させる。

商業銀行が永久債等の方式を通じた多くのルートによる資本の補充を推進し、民営企業の債券による資金調達を支援する手段を引き続き推進し、商業銀行の店頭市場を発展させ、起業・イノベーション金融債券等の金融商品を商業銀行が発行することを支援し23、実体経済に対する金融サービス能力を増強し、会社の信用債券の発行参入とディスクロージャー規則の統一を促進し、関連制度を整備する。

債券流通市場の発展を引き続き推進し、取引・清算・決算に関連した制度手配を不断に最適化し、マーケット・メーカー制度等の市場化された評価システムを整備し、債券市場の流動性を高め、市場参加者のためにより友好的で便利な投資環境を創造する。

金融市場インフラの統一的な企画・管理の枠組を確立し、市場インフラ建設を一層強化し、金融市場の全体の安定と安全で効率の高い運営を確保する。

分業が明確で、密接に組み合わさり、協同して有効な、統一的な法執行の協同メカニズムを一層整備し、市場の違法な犯罪行為を取り締まり、投資家の利益を保護し、債券市場の健全で安定した発展を推進する。

債券買戻しのデフォルトを適切に処理し、リスクの伝染を防止し、満期のデフォルト債券の譲渡業務に関連する制度手配を早急に推進し、市場による有効な清算を促進し、市場の秩序・自信を擁護する24

(5)金融サプライサイド構造改革を深化させ、対外開放を拡大し、供給最適化と競争増強を通じて金融サービスを改善する。

新発展理念を断固として貫徹実施し、金融サービス機能を強化し、実体経済への奉仕、人民生活への奉仕を根本として、金融システムの調整・最適化を重点として、融資構造と金融機関システム・市場システム・製品システムを最適化し、様々なレベルの、カバー率が広い、差異のある銀行システムを構築する25

大型商業銀行とその他大型金融企業の改革を引き続き深化させ、コーポレートガバナンスを整備し、株主総会・取締役会・監事会と管理層の関係を規範化し、経営授権制度を整備し、有効な政策決定・執行・チェックアンドバランスのメカニズムを形成し、経営管理水準とリスクコントロール能力を高める。

開発性金融機関・政策性銀行の改革方案の全面実施を推進し、ガバナンス構造の健全化、業務範囲の区分、リスク補償メカニズムの整備26等の後続政策を整備し、改革の深化を通じて、中国の特色に符合し、当面の経済発展に更に好く奉仕でき、運営が持続可能な開発性・政策性金融機関とその政策環境の確立を加速する27。 

(6)重大金融リスク防止・解消の堅塁攻略戦をしっかり戦う。

国務院金融安定発展委員会のリード・総指揮の下、国務院金融安定発展委員会弁公室の役割を十分発揮し、地方の金融監督管理の健全な協調メカニズムを整備し28、重大金融リスクを防止・解消する堅塁攻略戦の行動方案の実施を引き続き推進し、質の高い発展を推進する中でリスクを防止・解消することを堅持し29、構造的リレバレッジを秩序立てて推進し、実体経済の発展をより好く支援し、金融市場の異常な変動リスクを防止し、重点分野のリスクを精確・有効に処理し、監督管理制度の脆弱部分を一層補完し、金融機関のリスク防止の主体的責任を強化し、金融業の改革開放を推進しなければならない。

2020年までに、金融機関の適応性を高め、実体経済への金融のサービス能力を顕著に増強し、金融行政・金融政策の法治化レベルを顕著に高め、ハードな制約制度の建設を全面的に強化し、システミックリスクを有効に防止・コントロールすることにより、小康社会の全面的実現のために良好な金融環境を創造する。

3.不動産融資の状況

6月末、主要金融機関(外資を含む)の不動産融資残高は41.9兆元、前年同期比17.1%増であり、伸びは3月末より1.6ポイント鈍化した。各種融資残高に占める不動産融資残高のウエイトは28.7%であった。

うち、個人住宅ローン残高は28.06兆元、同17.2%増であり、伸びは3月末より0.3ポイント鈍化した。住宅開発融資残高は8.12兆元、同20.7%増であり、伸びは3月末より6.1ポイント鈍化した。土地開発融資残高は1.37兆元、同-6%であり、マイナス幅は3月末より0.1ポイント縮小した。

6月末、全国の社会保障的性格をもつ住宅開発融資残高は4.6兆元、同12.9%増であり、伸びは3月末より7.2ポイント鈍化した。1-6月期は2841.2億元増加し、伸びは3月より4565.8億元減少し、同時期の不動産開発融資の増量の33.1%を占めた。

4.「3ランク2優遇」の預金準備率の新枠組を構築した

中小銀行の比較的低い預金準備率について、「3ランク2優遇」の預金準備率の新たな枠組を構築した。

2019年1月、金融機関の預金準備率の1ポイント引き下げを、1月15日と1月25日に実施し、かつ金融機関の2019年1-3月期に満期が到来する中期貸借ファシリティーと置き換えた。

インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げ優遇政策のカバー率を拡大し、2019年からインクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの小型・零細企業貸出考課基準を、「1件当たり与信500万元未満」から「1件当たり1000万元未満」に調整し、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げ優遇政策のカバー率を拡大することにより、より多くの小型・零細企業に受益させた。

金融サプライサイド構造改革を一層深化させるため、農村金融機関が県域にサービスし、「三農」と小型・零細企業への支援を強化するよう誘導し、2019年5月15日から、中国人民銀行は県域にサービスする農村商業銀行と農村信用社の預金準備率のランクを合併し、地元県レベル行政区内でのみ経営し、あるいはその他県レベル行政区域に支店を設置しているものの、前年末の資産規模が100億元未満の農村商業銀行に対し、預金準備率を2-3.5ポイント引き下げて8%とし、農村信用社と同じランクの預金準備率の執行を開始した。

今回の調整は、5月15日、6月17日、7月15日の3回実施し、総計で長期流動性約3000億元を解放し、準備率を引き下げた農村商業銀行は、その全部を民営、小型・零細企業貸出に用いた。

わが国の預金準備制度は「3ランク2優遇」の新たな枠組が基本的に形成された。

5.(コラム)中小銀行の局部的・構造的な流動性リスクを適切に解消した

中小銀行は、わが国銀行システムの中で重要な基礎的地位にあり、インクルーシブ・ファイナンス、民営、小型・零細企業にサービスする重要なパワーである。党中央・国務院は、中小企業の発展をずっと重視してきた。近年、中国人民銀行は政策手段を不断に最適化・刷新し、中小銀行が実体経済にサービスするために政策支援を提供し、中小銀行の健全な発展を促進してきた。

2019年5月下旬、包商銀行に深刻な信用リスクが出現し管理が引き継がれたことにより、市場の一部中小銀行の流動性リスクへの関心を引き起こした。包商銀行の管理が引き継がれて以後の情況から見ると、市場リスクがやや低下傾向にあることから、確かに少数の中小銀行の市場からの資金調達能力が一度影響を受けたが、中国人民銀行と関連部門が遅滞なく多くの措置を採用し、市場の流動性を安定させた後は、この状況は速い改善をみた。具体的には、人民銀行は主として以下の措置を採用し、中小銀行の流動性の安全を保障した。

(1)マクロ流動性の合理的充足を維持した

公開市場操作の買いオペ、預金準備率・中期貸借ファシリティー・常備貸借ファシリティー・再貸出・再割引等の多様な政策手段を総合的に運用して流動性を解放し、流動性総量を合理的な充足水準に維持した。同時に、衝撃に対応する市場の流動性緩衝壁を厚くし、中小金融機関の合理的な資金調達需要を満足させるために、適切な流動性環境を提供した。

6月に銀行システムの流動性に影響を及ぼす要因がかなり多く、上半期末を超える資金需要が旺盛という特徴に対して、公開市場の買いオペ操作の期限がくる品目を前倒しして上半期末の資金を放出し、合理的区間内での金融市場の金利の平穏な運営を維持し、中小銀行等各種市場主体が平穏に上半期末を超えることを保障した。

(2)中小銀行の流動性に対し、支援を提供した

6月6日、19日、7月15日、満期到来の中期貸借ファシリティー(MLF)を等量継続する基礎の上に、中小銀行に対し増量操作を展開した。6月14日、再割引限度額2000憶元増、常備貸借ファシリティー(SLF)の限度額1000憶元増を公表し、かつ同業者間CDを常備貸借ファシリティーの担保に組み入れた。再割引・常備貸借ファシリティーは流動性の精確な点滴灌漑措置に属し、担保範囲の拡大は中小銀行の流動性の獲得可能性を高めることができる。6月17日と7月15日、農村商業銀行の方向を定めた預金準備率引下げの第2次・第3次調整を手配し、それぞれ長期資金約1000憶元を解放した。このほか、民営企業の債券による資金調達支援手段を通じて、中小銀行が同業間CDを発行するために信用増を提供した。

6月中旬に、中小銀行の資金調達条件は顕著に好転した。具体的には、以下の方面で現れた。

(1)中小銀行の買戻し資金調達金利が低下した

中小銀行は、インターバンク市場の主要資金の受け手であり、インターバンク市場の預金取扱機関の買戻し金利(DR)は、中小銀行の短期資金調達コストをかなり好く反映させることができる。5月下旬以降、関連金利指標は全体として低下傾向を示している。

(2)中小銀行の金融市場による資金調達規模が平穏に反転上昇した

包商銀行の管理引継の後、金融市場における一部中小銀行の資金受入能力は一定の制限を受け、中小銀行全体の資金調達規模と全市場に占めるウエイト等の指標に、ある程度反映した。しかし、6月中旬から、関連指標はいずれも持続的な改善傾向を示しており、現在総体として合理的水準にある。

(3)同業間CDが回復した

発行市場では、投資家の中小銀行同業者間CDの購入承認需要は合理的に回復し、同業者間CD発行の成功率は全体として高まった。流通市場では、預金成約が活発化傾向にあり、金利が低下している。総じて、現在中小銀行の流動性状況は、全体としては比較的平穏である。

同時に、今回の包商銀行の管理引継は、同業業務にかなり大きな変化を引き起こしており、これについて正確に認識しなければならない。

(1)同業環境の変化に理性的に対応しなければならない

過去一時期、一部市場主体はリスクを軽視し、過度に同業業務を発展させ、金融システムの内部リスクの不断の増加をもたらし、プレッシャーが持続的に増大した。今回の包商銀行の管理引継後、同業間の資金調達条件は相対的に収縮し、市場金利のレベルごとのより顕著な等しい変化は、一定程度過去の同業業務の不規範な発展の是正であり、同業による硬直的な取引が打破されて後、市場主体のリスク意識が増強したことの現れであり、市場リスクによる金利決定メカニズムの強化に資するものである。機関の過度な拡張の衝動を規制することは、金融サプライサイド構造改革の総体方向に合致するものである。

(2)減算のみならず、加算をしっかり行い、非理性的な収縮を回避しなければならない

一方面では、各種金融機関は、同業業務への過度な依存を減らさなければならず、同業の過度な拡張とリスク管理を軽視する旧い道を再び歩んではならず、自身の流動性をしっかり管理しなければならない。  

他方で、加算をしっかり行い、中小銀行への制度的支援を整備し、わが国銀行システムの構造を最適化しなければならない。

(3)資本補充を通じて、実体にサービスし、リスクを防止する能力を増強しなければならない

一部中小銀行に局部的・構造的な流動性リスクが出現したのは、本質的に真実の資本水準が不足していたことへの市場の選択の結果である。中小銀行の資本補充を推進し、銀行の資本補充と、金融サプライサイド構造改革、金融リスクの防止基礎能力強化、中小銀行の健全な発展促進を結びつけなければならない。

流動性リスクの防止の根本は、自身の業務の規範化・自身の実力の増強にある。中小銀行は実体経済に奉仕するという初心・使命に立脚し、原点回帰し、主業に専念し、末端に奉仕し、実体に奉仕する専業化の発展の道を歩むことを堅持し、民営、小型・零細企業と地方経済発展のプロセスで自身を壮大にし、質の高い発展を実現しなければならない。

人民銀行は、金融政策の手段・メカニズムを引き続き的確に刷新・整備し、中小銀行の流動性の総体としての安定を保障し、中小銀行が専業化した経営・質の高い発展を実現するために、より好い政策環境を創造する。

  1. 新たに盛り込まれた。
  2. 太字は筆者。新たに盛り込まれた。
  3. 新たに盛り込まれた。
  4. 新たに盛り込まれた。
  5. 新たに盛り込まれた。
  6. 構造的リレバレッジ・3大堅塁攻略戦の記述が削除された。
  7. 新たに盛り込まれた。
  8. 新たに盛り込まれた。包商銀行の破綻を反映したものであろう。
  9. 新たに盛り込まれた。前期の報告では、健な金融政策の推進、ミクロ主体の活力の増強、資本市場の機能の発揮の3つの関係であった。
  10. 物価動向が判断材料に加わった。
  11. 新たに盛り込まれた。
  12. 新たに盛り込まれた。「3ランク」は、金融機関システムの重要性の程度、機関の性質、サービスの位置づけ等に基づき、預金準備率を3ランクに設定するもの。「2優遇」は、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率政策の考課基準を満たした第1・第2ランクの銀行に預金準備率の優遇を与え、県域にサービスする銀行が新たな預金増の一定比率を現地貸出に用いる考課基準に達した場合に預金準備率の優遇を与えるもの。
  13. 新たに盛り込まれた。
  14. 海洋経済が新たに盛り込まれた。
  15. 「広東・香港・マカオ大ベイエリア」が「西部大開発」「農村振興」に置き換えられた。
  16. 7月30日の党中央政治局会議の方針が盛り込まれた。
  17. 預金・貸出基準金利と市場化されたゼロリスク金利(レポレート・国債収益率・公開市場操作金利)が両立している状態を指す。
  18. 新たに盛り込まれた。
  19. 新たに盛り込まれた。
  20. 新たに盛り込まれた。
  21. 「必要な時は」が盛り込まれた。
  22. 発展と改革の順番が入れ替わった。
  23. 新たに盛り込まれた。
  24. 新たに盛り込まれた。
  25. 新たに盛り込まれた。
  26. 新たに盛り込まれた。
  27. 農業銀行の「三農金融事業部」の記述が削除された。
  28. 新たに盛り込まれた。
  29. 「安定成長」が「質の高い発展推進」に改められた。