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研究者のご紹介

ボアオフォーラムにおける李克強総理の講演

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2019年7月4日


はじめに
李克強総理は6月28日、ボアオフォーラム開幕式で演説を行った。本稿では、このうち対外開放と中国経済について述べた部分を紹介する。
1.対外開放
(1)対外開放は、中国の基本国策である。

閉幕したばかりの中国全人代は外商投資法を通過させ、新時期の中国外商投資法律制度の基本的枠組みを確立し、外商投資法の参入・促進・保護・管理等について、統一規定を行った。これは、中国が法治化・国際化・円滑化されたビジネス環境を作り上げるための重要措置である。

(2)我々は、外商投資法の関連法規を早急に制定する。

外商投資法の有効な実施を確保するために、現在中国政府は、すでに関連法規・規程の制定活動を始動させ、外商投資法が確定した主要な法律制度を細分化することによって、オペレーション可能な具体的規則を形成する。これらの関連法規・規程は年末までにすべて完成させ、2020年1月1日に外商投資法と同時実施を確保する。

我々はさらに、関連法規・規程と規範的文件について全面的に整理を進め、およそ外商投資法に合致しないものは、すべて断固廃止あるいは改正する。

(3)我々は外資の市場参入を一層緩和する。

参入前の国民待遇にネガティブリストを加えた管理制度を全面的に実施し、2019年6月末までに、我々は外資参入ネガティブリスト・自由貿易試験区への外資参入ネガティブリスト・外資奨励産業目録を再度改訂する。

ネガティブリストの項目を一層縮減し、付加価値電信・医療機関・教育サービス等の現代サービス業、及び交通運輸、インフラ、エネルギー・資源等の分野の対外開放を拡大する。我々は、ネガティブリストを減算するだけで加算せず、「禁じられていないものは即参入させる」ことを全面実施する。

我々は、各種所有制企業を同一視し、公正な監督によって中国資本・外資企業の公平な競争・共同発展を保障する。我々は、貿易の円滑化レベルを早急に高め、通関段階の手数料徴収を整理し、プロセスを最適化する。今年は、通関コストを顕著に引き下げ、通関効率を高め、対外貿易の発展を促進しなければならない。

(4)我々は、金融業の対外開放を引き続き拡大する。

銀行・証券・保険業市場参入の外資への全面開放推進は加速しており、外資銀行の業務範囲は大幅に拡大し、外資証券会社と保険会社の業務範囲については、もはや出資比率100%への制限を行わず、信用情報収集・信用格付サービス・銀行カード清算と非銀行決済への参入制限を大幅に緩和しており、これらの措置はいずれも必ず秩序立てて完全実施する。  

我々は、外資企業によるベンチャーキャピタル・投資会社の設立を一層簡便化し、外国投資家が上場会社への戦略投資を行い、国内企業のM&Aを行うことに資する関連規定を整備する。債券市場の対外開放を推進し、関連政策を打ち出し、国外投資家が中国債券に投資・取引するためにより便利な条件を創造する。

(5)我々は、外資の合法権益を確実に保護する。

中国で登記した企業は、内資であろうが外資であろうが、我々は平等に扱い、各種企業の合法権益を確実に擁護する。知的財産権保護の加速は、中国政府の一貫した立場である。現在、特許法の改正案が既に全人代常務委員会の審議にかけられている。この改正法は、懲罰を倍加した賠償メカニズムを導入しており、大幅に法定賠償額を引き上げている。その目的は、権利を深刻に侵害し、偽物の製造・販売をした者に、支払うことのできないほどの代価を負担させることにある。

外商投資法は、行政手段を使用して技術移転を強制してはならないと、明確に規定しており、我々は言ったことは必ず実行し、法に違反した者は法に基づき厳格に処理する。我々は、また外資企業の不服申し立ての健全なメカニズムを確立し、政府と外資の意思疎通・協調のルートを円滑化することにより、これを外資企業の合法権益保護の有効なプラットホームにする。

(6)我々は、香港・マカオ・台湾の投資政策の連続性・安定性を維持する。

広範な香港・マカオ・台湾企業は、改革開放事業の重要な参加者・貢献者であり、受益者でもある。我々は、これまでと同様、香港・マカオ・台湾企業の発展を支援する。外商投資法の関連法規には、香港・マカオ・台湾の投資について、明確・具体的に規定しており、香港・マカオ・台湾企業の合法権益が有効な保護を受けさせるのみならず、より多くの発展のチャンスを与える。

我々は、香港・マカオ・台湾の投資について、市場参入を一層緩和し、金融・専業サービス・ハイエンド製造等の分野の開放を拡大する。我々は、内地と香港・マカオ人の往来と生産要素の流動を円滑化する政策措置を不断に推進する。投資により興業・学習・生活の環境が不断に改善されるに伴い、香港・マカオ・台湾同胞は国家の開放・発展の新たなチャンスをよりよく共に享受することになる。

2.中国経済の現状

2018年、習近平同志を核心とする党中央の指導の下、全国人民の奮闘を経て、サプライサイド構造改革を主線とし、質の高い発展を推進し、多くの政策を併せ打ち出し、中国経済の平穏な運営を維持した。  

2019年、全人代が審議・通過させた「政府活動報告」の中で、我々は内外情勢について全面分析を進め、2019年の中国の発展が直面している環境がより複雑・峻厳であり、経済の下振れ圧力に耐え抜き、安定した健全な発展を維持するには、激戦を戦う十分な準備を行わなければならないと強調し、かつ関連する対応措置を制定した。  

2019年に入り、中国経済の安定した運営にいくらかの積極的変化が現れ、市場の予想が改善をみた。ここ2カ月のデータを見ると、雇用・物価・国際収支等の主要経済指標は比較的平穏であり、固定資産投資は着実に反転上昇しており、消費者信頼指数・製造業新期受注指数は顕著に高まっており、資本市場の取引が活発になっている。とりわけ3月に入り、1日平均の発電量・電力消費量の伸びが2桁に達し、輸出入・貨物輸送の伸びが加速した。  

現在中国経済の安定した態勢は、我々がこれまで実施した預金準備率引下げ・減税等の政策措置と、最近打ち出したマクロ政策のシグナル効果が顕在化し、市場主体の活躍度が、安定の中で上昇していることを示している。  

2019年2月末のM2は前年同月比8%増であり、社会資金調達規模残高は10.1%増と、大体この2年間の実質水準に相当し、我々は量的緩和を行っていない1。中国政府の予算内投資が全社会投資に占めるウエイトは6%前後に過ぎず、内需の伸びは億を上回る市場主体に依拠しており、その中でも、7000万の個人工商事業者の投資・起業・発展と14億近い人口の消費需要・市場潜在力に依拠している。  

我々は、マクロ政策の方向性を変えないことを堅持し、経済の平穏な運営のために条件を創造する。指摘しておく必要があるのは、2019年は不安定・不確定要因が顕著に増大し、外部からの輸入性リスクが上昇しており、困難・試練はなお低評価できず、毎月あるいは毎四半期に経済成長の一定幅の変動が出現することを排除できないということである。年間の経済運営が総体として合理的区間を維持しさえすれば、我々は戦略的不動心を維持し、同時に情勢の変化に応じて、遅滞なく事前調整・微調整を行わなければならない。  

当然、もし経済運営に予想を超えた変化が出現した場合には、より有力な対応措置を採用する。しかし、我々は「バラマキ」式の強い刺激政策は実施せず、大風呂敷を広げる粗放な成長という旧い道を歩まず、短期の成長を維持するために長期の発展に損害を与えるような方法を採用しない。  

我々は、断固としてサプライサイド構造改革を主線とし、改革・開放・イノベーションに依拠し、市場主体の活力を奮い立たせ、内生的発展動力を増強し、下振れ圧力に耐え抜いて、経済運営を合理的区間に維持する。中国経済を観察し、マクロ政策の方向性を判断するには、時間軸を引き延ばして見なければならず、年間・全体・趨勢に重点をおいて見なければならない。  

我々は、政策実施を強化し、約束した更に大規模な減税・費用引下げ等の措置を必ず実行する。減税・費用引下げは公平に恩恵が及び、直接有効な改革措置であり、2019年に市場主体を奮い立たせ、経済下振れ圧力に対抗する重要措置である。2019年の減税・社会保険料引下げ措置は、企業の負担を2兆元近く軽減できる。これは、企業にとって重大なメリットであるが、政府にとっては重大なプレッシャーとなる。  

財政赤字の対GDP比率が顕著に上昇していない情況下では、企業に掛け値なく実際の恩恵を与えることができるかどうかが、財政収支の構造調整の程度を決めることになる。我々は各レベル政府自身が、厳しく倹約し、執行は質素を守り、うわべを飾り立てることを強く戒め、一般支出を大幅に圧縮し、遊休資産・資金を活性化し、増加した収入と圧縮した支出は主として減税・費用引下げ支援に用いることにより、これを企業収益の向上と市場活力の増強に置き換え、収入を増やし支出を抑え、企業に恩恵を与え国民を豊かにする道を歩まなければならないと、要求している。  

ビジネス環境はすなわち生産力であり、競争力である。我々は引き続きビジネス環境の最適化という先手を打ち、市場参入のネガティブリストを短縮できるものはすべて短縮し、審査・許認可事項で削減できるものはすべて削減する。競争中立性の原則を実施し、公正な監督管理を強化し、各種市場主体の公平な競争を促進する。資金調達難・資金調達コスト高の問題緩和に力を入れ、資金調達状況を顕著に改善し、資金調達コストを顕著に引き下げなければならない。  

我々は、イノベーション生態を最適化し、科学技術の支えとしての能力を強化し、伝統産業の改造・グレードアップと新興産業の発展を促進し、イノベーション・起業のためにより大きな舞台を創造・建設することにより、起業・イノベーションを不断に深く推進し、新たな動力エネルギーの壮大な発展のための助力に努めなければならない。  

我々は、民生の痛み・隘路をしっかり把握し、民生の難題を解決し、社会(民間)のパワーを誘導してサービス業とりわけコミュニティ・サービス業を発展させ、消費の潜在力を奮い立たせ、人民の生活水準を高め、経済発展と民生改善の良性の循環を形成しなければならない。  

これらの政策は直接、市場活力と社会の創造力を緊密に連携させ、発展の大局に関わり、当面に利するとともに長期にも恩恵が及ぶものであり、不断に新たな起点から前進しなければならない。

  1. 太字は筆者。