人民銀行第4四半期貨幣政策執行報告

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年5月2日


はじめに
本稿では、2019年2月21日に公表された第4四半期(10-12月期)貨幣政策執行報告の概要を紹介する。併せて、今回はコラムで穏健な金融政策の意味を改めて詳しく解説しているので、その部分も紹介する。
1.マクロ経済の展望
1.1 概況

将来一時期を展望すると、経済の平穏な発展を維持するために有利な要因はかなり多い。

(1)国際面  

世界の経済成長が直面している下振れリスクはある程度増加しているが1、総体としてなお回復の態勢を継続しており、IMFの2019年経済成長予測は、ここ数年の平均値を基本的に保っている。

(2)国内面

中国の発展はなお長期にわたり重要な戦略的チャンスの時期にある。3大堅塁攻略戦のスタートは良好であり、サプライサイド改革が深く推進され2、改革・開放の力が増しており、人民の生活は引き続き改善され、経済の持続的で健全な発展と社会の大局の安定が維持され、経済成長は潜在力と強靭性を備えている。

経済に対する内需の牽引は不断に上昇し、新興産業が勢い盛んに発展し、伝統産業の転換・グレードアップの態勢は良好であり、経済構造は引き続き最適化され、雇用情勢は安定を維持した。

2018年の都市化率は1ポイント超高まり、新しいタイプの都市化、サービス業、ハイエンド製造業及び消費のグレードアップは、なお大きな発展の余地があり、挽回の余地も比較的大きい。

金融リスクの防止・コントロールの成果は顕著であり、マクロレバレッジ率は安定傾向にあり、2018年のM2の対GDP比は、17年と比較して3ポイント低下した。同時に、実体経済への金融支援の程度はかなり堅固であり、最近打ち出された一連のカウンターシクリカルな調節措置の効果も徐々に顕在化している。

1.2 リスク・試練

経済の発展が直面する国際環境と国内条件は、いずれも深刻で複雑な変化が発生しており、サプライサイド構造改革を推進するプロセスにおいて、いくらかの困難・試練に遭遇することは不可避であり、経済運営は安定の中で変化があり、変化の中で憂いがある。

長期に累積したリスクの隠れた弊害がある程度露呈し、経済はなお下振れ圧力に直面していることをも、見て取らねばならない。

(1)国際環境  

世界の経済情勢は錯綜・複雑化しており、地政学リスクは依然かなり大きく、主要な先進経済体の金融政策の趨勢には不確定性が存在しており、貿易摩擦が将来の輸出情勢にかなり大きな不確定性をもたらし、経済に対する外需の限界的な牽引作用の減退・弱化をもたらす可能性があり、さらに投資家の情緒に衝撃を与え、金融市場の変動を激化させる可能性がある。

(2)国内経済  

不動産・自動車等の伝統的支柱産業は調整期に入っており、大部分の新業態・新たな動力エネルギーは、量とレベルの上でなお伝統的支柱業種よりも弱い3

消費の伸びは相対として力を欠き4、経済の内生的な成長動力は一層の増強が必要である。

企業の有効な資金調達需要はある程度低下しており5 、金融機関のリスクはかなりよく低下し、自身も一定の制約を受けている。

(3)物価  

物価動向は総体としてかなり安定している。物価上昇率は、主として経済のファンダメンタルズの状況と需給の相対的変化によって決まる。  

国内経済運営は総体として平穏であり、食糧・綿花等は豊作であり、工業消費財の生産の質が向上・グレードアップし、ここ数年サプライサイド構造改革の推進と市場メカニズムの役割発揮を通じて、生産能力過剰問題が顕著に緩和され、総需給がかなりバランスしている6ことは、いずれも物価の平穏維持、インフレ期待の基本的安定に資するものである。

総体として見れば、将来一時期の消費者物価指数は、穏やかな上昇を維持する可能性があり、生産者物価指数は、国際大口取引商品価格の動向と国内需給の影響を受けて、いくらかの不確定性が存在し、将来の変化については、引き続きモニタリングが必要である7

2.今後の金融政策の考え方

これから、人民銀行は党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、「安定の中で前進を求める」という政策の総基調を堅持し、新発展理念を堅持し、質の高い発展を推進することを堅持し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持する。実体経済へのサービス、金融リスクの防止・コントロール、金融改革の深化という3つの任務をしっかり軸として、金融マクロ・コントロールを刷新・整備する。  

穏健な金融政策は緩和・引締めが適度であることを維持し8、カウンターシクリカルな調節を強化し9、マクロ・コントロールの程度をしっかり把握し、多くの目標の中での総合的なバランスを実現する。

政策の協調を一層強化し、金融政策の伝達ルートをスムーズにし、金融政策の手段・メカニズムを刷新し、実体経済に金融がサービスする能力・意欲を一層高める。

穏健な金融政策の実施、ミクロ主体の活力の増強、資本市場の機能の発揮の3者の間で、三角形の支えの枠組みを形成し、国民経済全体の良性な循環を促進する。

(1)穏健な金融政策は適度な緩和・引締めを維持し、カウンターシクリカルな調節を強化し、流動性の合理的な充足と市場金利水準の合理的安定を維持する10

金融政策とマクロ・プルーデンス政策の2つを支柱とした健全なコントロールの枠組みを整備し、多様な金融政策手段の組合せを引き続き柔軟に運用して、政策の協調を強化し、総量と構造の間の関係をうまくバランスさせ、「いくつもの支え」の政策合成力を発揮し、需給両サイドから金融政策の伝達をスムーズにするミクロ的基礎を共同して打ち立て11、マネー・貸出と社会資金調達規模の合理的な伸びを維持する。

マクロ・プルーデンス管理を強化し、商業銀行が多くのルートで資本を補充することを推進し12、マクロ・プルーデンス評価(MPA)のカウンターシクリカルな作用を発揮させると同時に、その構造誘導作用を発揮させ、小型・零細企業、民営企業等の脆弱部分に対する支援を金融機関が強化するよう誘導する。  

(2)構造最適化を促進し、実体経済に更に好くサービスする13

市場化・法治化に原則に基づき、各種政策手段を引き続き運用し、民営企業、小型・零細企業への支援を金融機関が強化するよう誘導する。

方向を定めた預金準備率引下げ、再貸出・再割引等の多様な金融政策手段をうまく運用し、金融政策手段の組合せを刷新し豊富にして、構造的金融政策手段の精確な点滴灌漑作用を発揮させる14

金融機関が引き続き重点分野・財弱部分への金融サービスをしっかり行うよう誘導し、ハイテク企業、新興産業及び製造業の構造の調整・転換・グレードアップへの支援を増やし、脱貧困堅塁攻略戦に打ち勝つことを全力で支援し、「請負権・宅基地所有権」の担保貸出テストの満期到来に続く政策を統一的に企画ししっかり行う。

科学技術イノベーション型企業の資金調達ルートを開拓し、起業債務保証政策の実施を確実に強化し、大学卒業生・退役軍人・帰郷出稼ぎ農民等の重点層の起業・就業を更に好く支援する15

「北京・天津・河北」協同発展等の国家重大戦略、グリーン金融、物流、養老等の現代サービス業への金融支援を強化する。

引き続き、政策要求を確実に実施し、隠れ債務の増加に断固として歯止めをかけ、銀行からの債務残高を穏当に解消し、建設中のプロジェクトの必要な後続建設を推進し16、分類・協議による債務残高処理を推進し、債権者の合法権益を保護する。

貸出資産の証券化・ストックの活性化の積極的役割を一層発揮させ、経済の質・効率向上と転換・グレードアップを推進する。

(3)金利の市場化・人民元レート形成メカニズムの改革を一層深化させ、金融資源の配分効率を高め、金融コントロールのメカニズムを整備する。

金利体系の2つの軌道17の段階的な一本化を穏当に推進し、市場化した金利の形成・コントロール・伝達のメカニズムを整備する。中央銀行の政策金利体系の誘導機能を強化し、金利の波及メカニズムを整備し、金利コントロール能力を増強する。重点は、中央銀行の政策金利の市場金利及び貸出金利への伝達を一層スムーズにし、金融機関の貸出金利決定能力を高め、市場競争を適度に増強し、更に好く実体経済にサービスすることにある。  

引き続き市場基準金利を育成し、国債イールドカーブを整備し、市場化された健全な金利形成メカニズムを整備する。金融機関の非理性的な金利決定行為への監督管理を強化し、市場金利決定の自律的なメカニズムの誘導作用を好く発揮させ、有効な方式を採用して金利決定行為を奨励・規制し、業界の自律性とリスク防止を強化し、公平な金利決定秩序を擁護する。

為替レートの市場化改革を着実に深化させ、市場需給を基礎とし、通貨バスケットを参考として調節を進め、管理された変動為替レート制度を整備し、人民元レートの弾力性を維持し18、かつ必要なときはマクロ・プルーデンス管理を強化して、合理的な均衡水準における人民元レートの基本的安定を維持する。外為市場の発展を加速し、金融は実体経済に奉仕するという原則を堅持し、実需原則に基づく輸出入企業のために為替レートリスク管理サービスを提供する。  

人民元の資本項目の兌換化を着実に推進し、人民元とその他通貨との直接取引市場の発展を推進し、人民元のクロスボーダー使用の政策枠組みとインフラを整備し、発展・改革とリスク防止を併せ重んじることを堅持する。クロスボーダーの貿易・投資において人民元の使用を支援する19

(4)金融市場のシステムを整備し、安定成長・構造調整・改革促進とリスク防止方面における金融市場の役割を確実に好く発揮させる。  

金融は実体経済に奉仕するという原則を堅持し、商業銀行による永久債等の資本補充手段の商品革新を推進する。

債券の健全なデフォルトリスク防止と処理メカニズムを整備し、会社の信用債券の発行参入とディスクロージャー規則の統一を促進し、グリーン金融債券の存続期間の監督管理を強化する。

債券市場の双方向の開放を引き続き着実に秩序立てて推進し、国外の機関が国内市場において債券を発行し、及び国内機関が国外で債券を発行して資金調達を行うことを支援し、国外機関の国内債券市場への投資を推進する。

債券流通市場の発展を引き続き推進し、取引・清算・決算に関連した制度手配を不断に最適化し、マーケット・メーカー制度等の市場化された評価システムを整備し、債券市場の流動性を高め、市場参加者のためにより友好的で便利な投資環境を創造する。

金融市場インフラの統一的な企画・管理の枠組みを確立し、市場インフラ建設を一層強化し、金融市場の全体の安定と安全で効率の高い運営を確保する20

分業が明確で、密接に組み合わさり、協同して有効な、統一的な法執行の協同メカニズムを一層整備し、市場の違法な犯罪行為を取り締まり、投資家の利益を保護し、債券市場の健全で安定した発展を推進する21

(5)金融機関改革を深化させ、対外開放を拡大し、供給増加と競争を通じて金融サービスを改善する。

大型商業銀行とその他大型金融企業の改革を引き続き深化させ、コーポレートガバナンスを整備し、株主総会・取締役会・監事会と管理層の関係を規範化し、経営授権制度を整備し、有効な政策決定・執行・チェックアンドバランスのメカニズムを形成し、経営管理水準とリスクコントロール能力を高める。

農業銀行の「三農金融事業部」を引き続き推進し、管理体制と運営メカニズムの改革を深化させ、有効な措置を採用して県事業部の活力を一層奮い立たせ、県域経済へのサービス能力・水準を不断に高める。

開発性金融機関・政策性銀行の改革方案の全面実施を推進し、関係単位と共に改革方案の要求と職責分業に基づき、ガバナンス構造の健全化、業務範囲の区分、リスク補償メカニズムの整備等の後続政策を早急にしっかり実施する。改革の深化を通じて、中国の特色に符合し、当面の経済発展に更に好く奉仕でき、運営が持続可能な開発性・政策性金融機関とその政策環境の確立を加速する。

金融機関の適応性を高め、経済構造の転換・グレードアップに奉仕すると同時に、金融システムの強靭性を増強する22

(6)重大金融リスク防止・解消の堅塁攻略戦をしっかり戦う23

国務院金融安定発展委員会のリード・総指揮の下、国務院金融安定発展委員会弁公室の役割を十分発揮し、重大金融リスクを防止・解消する堅塁攻略戦アクションプランの実施を引き続き推進し、マクロレバレッジ率を安定させ、金融持ち株会社の監督管理弁法を推進し、金融監督管理の脆弱部分を補強し、インターネット金融リスクへの特別対策を引き続き展開する24

2020年までに、金融機関の適応性を高め、実体経済への金融のサービス能力を顕著に増強し、金融行政・金融政策の法治化レベルを顕著に高め、ハードな制約制度の建設を全面的に強化し、システミックリスクを有効に防止・コントロールすることにより、小康社会の全面的実現のために良好な金融環境を創造する。

3.不動産融資の状況

2018年末、主要金融機関(外資を含む)の不動産融資残高は38.7兆元、前年同期比20%増であり、伸びは2017年末より0.9ポイント鈍化した。各種融資残高に占める不動産融資残高のウエイトは28.4%であった。  

うち、個人住宅ローン残高は25.8兆元、同17.8%増であり、伸びは2017年末より4.4ポイント鈍化した。住宅開発融資残高は7.33兆元、同31.9%増であり、伸びは2017年末より5.2ポイント加速した。土地開発融資残高は1.38兆元、同3.9%増であり、伸びは2017年末より11.8ポイント加速した。  

2018年末、全国の社会保障的性格をもつ住宅開発融資残高は4.32兆元、同29.5%増であり、伸びは2017年末より3.1ポイント鈍化した。2018年は9838億元増加し、伸びは2017年より1635億元増え、同時期の不動産開発融資の増量の53.9%を占めた。

4.金融機関の預金準備率引下げ

(1)2018年は、4回預金準備率を引き下げ、小型・零細企業、民営企業等の実体経済への貸出支援を強化した。

1月、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げを全面実施し、約4500億元の資金を解放した。インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げは、元々の方向を定めた預金準備率引下げ政策の展開・最適化をインクルーシブ・ファイナンス分野の貸付と統一するためのものであり、一定基準の金融機関にかなり低い預金準備率を執行するに至った。

4月と10月、人民銀行は2度、大型商業銀行、株式制商業銀行、都市商業銀行、非県域農村商業銀行、及び外資銀行に対し、人民元預金準備率を1ポイント引き下げ、かつ一部の中期貸借ファシリティーを置き換え、約1.15兆元の資金を純解放した。

7月、人民銀行は、大型商業銀行、株式制商業銀行、都市商業銀行、非県域農村商業銀行、及び外資銀行に対し、人民元預金準備率を0.5ポイント引き下げた。そのうち、5大国有商業銀行と12の株式制商業銀行に約5000億元の資金を解放し、市場化・法治化された「債務の株式転換」の支援に用い、その他金融機関に約2000億元の資金を解放した。

これらの預金準備率引下げ措置は、銀行システムの資金の安定性を高めることができ、流動性の構造を最適化し、金融機関の小型・零細企業、民営企業支援と、市場化・法治化された「債務の株式転換」等の重点分野・脆弱部分の資金源を増やし、実体経済の健全な発展を推進した。  

(2)2019年1月、金融機関の預金準備率を引き下げ、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの考課基準を調整し、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの動態的考課を完成した。

①金融機関の預金準備率を1ポイント引き下げ、2回に分けて実施し、かつ金融機関に対し2019年1-3月期に満期が到来した中期貸借ファシリティーを継続せず、約3000億元余りの長期資金を解放した。

②2019年から、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの小型・零細企業貸出考課基準を、「1社当り与信額500万元未満」から「1社当り与信額1000万元未満」に調整した。

これは、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの優遇政策のカバー率を拡大し、より多くの小型・零細企業を受益させることに資するものである。

③2018年度のインクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの動態考課を完成させた。

政策による奨励の下、前年比で、より多くの金融機関がインクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの基準に達し、約2500億元の長期資金が純解放された。

今回の準備率引下げにより置き換えられた中期貸借ファシリティーと、これに加えインクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの動態考課と、1月に展開された2575億元の方向を定めた中期貸借ファシリティー操作は、全部で約8000億元の資金を解放した。

5.コラム:「穏健な金融政策をいかに理解するか」

中央経済工作会議は、穏健な金融政策を引き続き実施しなければならない、と提起した。穏健な金融政策の立場に変わりはなく、穏健な金融政策が常に「安定の中で前進を求める」という政策の総基調を堅持しなければならないことを強調した。複雑・峻厳な内外環境に対して、金融政策は緩和と引締めを適度にし、展望性(先見性)・柔軟性・的確性を増強し、カウンターシクリカルな調節を強化しなければならない。同時に、マクロ・コントロールの程度をうまく把握し、マネーの条件と経済の平穏な成長及び物価を安定するという要求との釣り合いを維持しなければならず、マネーが多くても少なくても不可である。

穏健な金融政策を引き続き実施することは、決してマネー条件を維持し変えないことを意味するものではなく、むしろ情勢の発展・変化に基づき、動態を最適化し、カウンターシクリカルな調節を進め、経済の周期的変動を適度になだらかにし、上振れの時期には経済の過熱・インフレを防止し、下振れの時期には経済の衰退・デフレに対抗しなければならない。

数量の観点からは、M2・社会資金調達規模の伸びを、名目GDP成長率と大体釣り合わせなければならない。価格の観点からは、金利水準を、経済の潜在産出量水準を維持するという要求に適合させなければならない。総量を適度にすると同時に、構造的金融政策手段を適切に運用し、方向を定めた点滴灌漑の機能を発揮させ、流動性の方向・構造を最適化し、構造の調整・改革を促進しなければならない。

穏健な金融政策は3大堅塁攻略戦をしっかり戦い、システミック金融リスクを防止するという要求に奉仕し、重大リスクの防止・解消の堅塁攻略戦に打ち勝つために、適切なマネー環境を作り上げなければならない。マネー条件を引き締め過ぎてリスクを誘発することを防止するのみならず、バラマキにより歪みを激化し、リスクを持続的に累積させることをも防止しなければならない。

マクロを開放する構造の下、金融政策の穏健を維持するには、内部の均衡と外部の均衡のバランスをしっかり把握し、内外の通貨政策を協調させなければならない。内部の均衡と外部の均衡に矛盾が生まれた場合には、内需を主体とする大国・経済体として、内部の均衡を主とすると同時に、外部の均衡を併せ考慮し、最も優れた均衡点を見つけ出さなければならない。

2018年以降、錯綜し複雑な内外環境に対して、人民銀行は穏健な金融政策を真剣に実施し、展望(先見)的な事前調整・微調整を行い、カウンターシクリカルな調節を強化し、実体経済に奉仕することを首位とし、実体経済とりわけ小型・零細企業と民営企業への金融支援を強化した。

マネーサプライ、社会資金調達規模は総体として平穏な伸びであり、名目GDP成長率と基本的に釣り合っており、金融政策は、実体経済支援と内外の均衡の間のバランスをかなり好く把握した。2018年末、M2の伸びは8.1%であり、前年と同水準であり、社会資金調達規模の伸びは9.8%である。年間の新規貸出増は16.2兆元であり、前年比で伸びが2.6兆元多く、小型・零細企業へのインクルーシブ・ファイナンスは大幅に多く伸びた。金融リスクの防止の成果は顕著であり、マクロレバレッジ率は安定を維持している。

将来一時期、中国経済が平穏な発展を維持するには、少なからぬ有利な条件がある。世界経済は総体としてなお回復の態勢を継続しており、国内のサプライサイド構造改革が引き続き推進され、経済発展は大きな潜在力を備えており、強靭性がかなり強く、マクロ政策の効果がまさに段階的に顕在化している。

同時に、中国経済の平穏な運営は、いくらかの試練に直面してもいる。世界経済の成長の勢いは、ある程度減退しており、国内経済は下振れ圧力に直面し、内生的成長動力は一層の増強が必要である。金融政策はかなり大きな余地があるが、非常に困難な試練に直面してもいる。

今後は、サプライサイド構造改革を主線とすることを引き続き堅持し、経済の質の高い発展を推進しなければならない。

穏健な金融政策は緩和と引締めを適度にし、マネー条件を引き締めすぎてリスクを誘発することを防止するのみならず、バラマキにより歪みを激化し、リスクを持続的に累積させることをも防止しなければならない。その核心は、実体経済に奉仕すると同時に、総量と構造の間の関係をうまくバランスさせ、金融政策手段を刷新し、「幾本かの支え」の政策の合成力を発揮させ、需給両サイドから共同で金融政策の伝達をスムーズにするミクロ的基礎を打ち固めなければならない。内外の通貨政策を協調させ、内部の均衡と外部の均衡の間のバランスをうまく処理する。

プラスの奨励メカニズムを強化し、金融構造の調整・最適化を促進し、金融構造の適応性を高め、経済構造の転換・グレードアップに奉仕すると同時に、金融システムの強靭性を増強する。金融政策とマクロ・プルーデンス政策の2つの支柱の健全なコントロールの枠組みを整備し、システミック金融リスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。

穏健な金融政策の役割を発揮させると同時に、政策の統一的企画・協調を強化し、奨励を相互容認するメカニズムを強化しなければならない。サプライサイド構造改革を引き続き推進し、脆弱部分を補強し、期待を安定させ、ビジネス環境を改善し、企業家と市場の自信を奮い立たせ、経済の平穏で持続可能な成長を維持しなければならない。

  1. 太字は筆写。新たに盛り込まれた。
  2. 「サプライサイド構造改革」の「構造」が削除されている。
  3. 新たに盛り込まれた。
  4. インフラ投資下振れ、民間投資活力不足の記述が消え、新たに消費が盛り込まれた。
  5. 資金調達難から表現が変更された。
  6. 新たに盛り込まれた。
  7. 表現が変更された。
  8. 中央経済工作会議に合わせ、「(景気)中立性」は削除された。
  9. 新たに盛り込まれた。
  10. 表現が大きく改められた。「マネーの総バルブの把握」という表現は消滅した。
  11. 新たに盛り込まれた。
  12. 新たに盛り込まれた。
  13. 本文が大幅に簡素化された。
  14. 新たに盛り込まれた。
  15. 新たに盛り込まれた。
  16. 新たに盛り込まれた。
  17. 政策金利体系と市場金利体系を指す。
  18. 「双方向への弾力性を増強」が改められた。米国への配慮であろう。
  19. クロスボーダー資本移動に関する記述は削除された。
  20. 前回は、金融市場の「安全で効率の高い運営」が「全体の安定」より先に置かれており、順番が入れ替わった。
  21. 新たに盛り込まれた。
  22. 新たに盛り込まれた。なお、銀行資本の充足は削除された。
  23. 題名が大幅に簡略化された。
  24. 新たに盛り込まれた。