1月の主要経済指標

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年2月28日


(1)物価
1. 消費者物価

1月の消費者物価は前年同月比1.7%上昇し、上昇率は12月より0.2ポイント鈍化した。都市は1.8%、農村は1.7%の上昇である。食品価格は1.9%上昇し(12月は2.5%)、非食品価格は1.7%上昇(12月は1.7%)している。衣類は1.6%上昇、居住価格は2.1%上昇した1

(参考)(2018年2.1%)6月1.9%→7月2.1%→8月2.3%→9月2.5%→10月2.5%→11月2.2%→12月1.9%→1月1.7%

前月比では、12月より0.5%上昇(12月は0.0%)した。食品価格は1.6%上昇(12月は1.1%)した。食品・タバコ・酒価格は1.1%上昇し、物価への影響は約0.34ポイント、うち生鮮野菜は9.1%上昇(12月は3.7%)し、物価への影響は約0.22ポイント、鶏肉類価格は0.5%上昇し、物価への影響は約0.01ポイント、水産品価格は2.0%上昇、物価への影響は約0.04ポイント、畜肉類価格は0.1%下落し(豚肉価格は1.0%下落、物価への影響は約-0.03ポイント)であった。果物価格は2.3%上昇し、物価への影響は約0.04ポイントであった。非食品価格は0.2%上昇(12月は-0.2%)し、衣類は0.3%下落(12月は0.1%)、居住価格は0.0%(12月は0.0%)であった。

食品・エネルギーを除いた消費者物価(コア消費者物価)は、1月が前年同月比1.9%の上昇(12月は1.8%)、前月比では0.4%の上昇(12月は0.1%)である2

なお、国家統計局は、1月の前年同月比上昇率1.7%のうち食品・タバコ・酒価格は2.0%上昇し、物価への影響は約0.61ポイントとなり、このうち畜肉類価格は0.2%上昇、物価への影響は約0.01ポイント(豚肉価格は3.2%下落、物価への影響は約-0.08ポイント)、鶏肉価格は5.5%上昇、物価への影響は約0.07ポイントである。このほか生鮮野菜価格が3.8%上昇、物価への影響は約0.10ポイント、鶏卵価格が1.7%下落、物価への影響は約-0.01ポイント、果物価格は5.9%上昇、物価への影響は約0.10ポイント、水産品価格は1.2%上昇、物価への影響は約0.02ポイント、食糧価格は0.5%上昇し、物価への影響は約0.01ポイントであった。

また1月の1.7%上昇のうち、前年の価格上昇の本年への影響は約1.2ポイント、新たなインフレ要因は約0.5ポイントである。

なお、国家統計局都市司の董雅秀処長は、前月比の上昇率が0.5%となったのは、主として春節要因の影響だとして、1)天候の寒冷化・春節等の要因の影響で、生鮮野菜・果物・水産品価格、羊肉・牛肉・鶏卵価格が上昇し、この6つでCPIを約0.32ポイント押し上げた、2)一部地域で、豚の出荷禁止が解除され、供給が増加し、豚肉価格が下落した、3)冬休み・春節輸送期間の旅行需要の増大により、航空券・旅行者手数料・長距離列車乗車券価格が上昇し、CPIを約0.15ポイント押し上げた、4)春節前の出稼ぎ労働者の集中帰郷により、一部サービス価格が原著に上昇し、ホームヘルパー、理髪、車両修理、保養価格が上昇した、5)石油製品価格調整の影響を受け、ガソリン価格が3.7%下落、ディーゼル油価格が4.0%下落した、点を挙げている。

また、1月の前年同月比消費者物価上昇幅が、12月より0.2ポイント縮小した特徴として、1)生鮮野菜・果物・水産品価格、羊肉・牛肉・鶏卵価格が上昇し、この6つでCPIを約0.34ポイント押し上げた、2)豚肉価格の下落幅が拡大した、3)教育・文化・娯楽価格、医療保健価格、居住価格が上昇し、CPIを約1.0ポイント押し上げ、4)ガソリン価格が6.2%下落、ディーゼル油価格が6.3%下落と連続2ヵ月下落した、としている。

2. 工業生産者出荷価格

1月の工業生産者出荷価格は前年同月比0.1%上昇した。前月比では12月より0.6%下落(12月は-1.0%)した。

(参考)(2018年3.5%)6月4.7%→7月4.6%→8月4.1%→9月3.6%→10月3.3%→11月2.7%→12月0.9%→1月0.1%

1月の工業生産者購入価格は、前年同月比0.2%上昇(12月は1.6%)した。前月比では12月より0.9%下落(12月は-0.9%)した。

また1月の0.1%上昇のうち、前年の価格上昇の本年への影響は約0.7ポイント、新たなインフレ要因は約-0.6ポイントである。

なお、国家統計局都市司の董雅秀処長は、前月比では、下落幅が1月より0.4ポイント縮小したが、その特徴は、1)石油・天然ガス採掘業、石油・石炭その他燃料加工業、鉄金属精錬・圧延加工業、化学原料・化学製品製造業価格の下落幅が縮小し、2)天然ガス生産・供給業価格の上昇幅が縮小し、3)非金属鉱物製品業価格が上昇から下落に転じた、とする。

また、前年同月比では、上昇幅が12月より0.8ポイント縮小したが、その特徴は、1)非金属鉱物製品業、石炭採掘・洗浄業の上昇幅が縮小し、2)石油・天然ガス採掘業、石油・石炭その他燃料加工業、化学原料・化学製品製造業価格が上昇から下落に転じ、3)非鉄金属精錬・圧延加工業、鉄金属精錬・圧延加工業価格の下落幅が拡大した、とする。

3. 住宅価格

1月の全国70大中都市の新築分譲住宅販売価格は前月比8都市が低下(12月は8)し、同水準は4(12月は3)であった。上昇は58である(12月は59)。

前年同月比では、価格が下落したのは2都市(12月は1)であった。同水準は0(12月は0)、上昇は68(12月は69)である。

国家統計局都市司の劉建偉高級統計師は、「1月は、各地方が、引き続き土地・都市に応じた施策を行うことを堅持して、地下の安定、住宅価格の安定、予想の安定の責任を実行に移し、不動産市場の平穏で健全な発展を促進した。

前月比では、70大中都市のうち、4の一線都市の新築分譲住宅価格は0.4%上昇し、上昇幅は12月より0.9ポイント縮小した。うち北京は0.6%、上海は0.1%、広州は0.9%上昇し、深圳は0.1%下落した。31の二線都市の新築価格は0.7%上昇し、上昇幅は12月と同じであった。35の三線都市の新築価格は0.6%上昇し、上昇幅は12月より0.1ポイント縮小した。

前年同月比では、70大中都市のうち、一線都市の新築価格は3.3%上昇し、上昇幅は前年同月比0.5ポイント拡大した。二線都市の新築価格は11.6%上昇し、上昇幅は前年同月比0.3ポイント拡大した。三線都市の新築価格は11.0%上昇し、上昇幅は前年同月比0.2ポイント拡大した」と指摘している。

(2)対外経済
1. 輸出入

1月の輸出は2175.7億ドル、前年同月比9.1%増、輸入は1784.1億ドル、同-1.5%となった3。貿易黒字は391.6億ドルであった。

(参考)輸出:(2018年9.9%)6月10.7%→7月11.6%→8月9.6%→9月13.9%→10月14.3%→11月3.9%→12月-4.4%→1月9.1%
            輸入:(2018年15.8%)6月13.8%→7月27.0%→8月20.7%→9月14.3%→10月20.3%→11月2.9%→12月-7.6%→1月-1.5%

1月の輸出入総額が3959.8億ドル、前年同期比4.0%増であったのに対し、対EU12.4%増、対米-13.9%増4(12月は8.5%)、対英15.6%増、対日2.0%増5(12月は8.1%)、対アセアン3.1%増である。

2018年輸出の労働集約型製品のうち、アパレル類前年比5.1%増、紡績14.6%増、靴9.4%増、家具13.8%増、プラスチック製品23.9%増、鞄16.2%増、玩具32.0%増である。電器・機械は同6.8%増、ハイテク製品は1.8%増である。

2. 外資利用

2018年の外資利用実行額は841.8億元(124.1億ドル)、前年同期比4.8%増(ドル換算2.8%増)であった6

(参考)(2018年0.9%)1-6月1.1%→1-7月2.3%→1-8月2.3%→1-9月2.9%→1-10月3.3%→1-11月-1.3%→2018年0.9%→1月4.8%7

1月の製造業は267.3憶元、前年同期比5%増、サービス業は562憶元、同5.1%増であった。ハイテク産業は同40.9%増で、ウエイトは29%に達した。ハイテクサービス業8は157.7憶元、同113.4%増であった。

1月、国内地域別では、中部70.4憶元、前年同期比11.6%増、ウエイトは8.4%に達した。

1月、国・地域別では、シンガポール5%、米国124.6%増、英国13.7%増、オランダ95.6%増、アセアン2.7%増、EU22.5%増である9

3. 外貨準備

1月末、外貨準備は3兆879億ドルであった。12月末に比べ152億ドルの増加(12月は110億ドル増)である。増加は3ヵ月連続である。

4. 米国債保有

12月末の米国債保有高は、前月比21億ドル増の1兆1235億ドルで、19ヵ月連続1位となった。日本は2位のままで、57億ドル増の1兆423億ドルである。

(3)金融

1月末のM2の残高は186.59兆元、伸びは前年同期比8.4%増と、12月末より0.3ポイント加速、前年同期より0.2ポイント減速した。M1は0.4%増で、12月末より1.1ポイント減速、前年同期より14.6ポイント減速した。1月の現金純放出は1.43兆元であった。

人民元貸出残高は139.53兆元で前年同期比13.4%増であり、伸び率は12月末より0.1ポイント減速、前年同期より0.2ポイント加速した。1月の人民元貸出増は3.23兆元(12月は1.08兆元)で、前年同期より伸びが3284億元増加している。うち住宅ローンは9898億元増、企業等への中長期貸出は1.4兆元増であった。

人民元預金残高は180.79兆元で、前年同期比7.6%増であった。1月の人民元預金は3.27兆元増(12月は916億元増)で、前年同期より伸びが5815億元減少している。うち個人預金は3.86兆元増、企業預金は3911億元減であった。

(参考)M2 : 6月8%→7月8.5%→8月8.2%→9月8.3%→10月8%→11月8%→12月8.1%→1月8.4%

1月末の社会資金調達規模残高は205.08兆元であり、前年同期比10.4%増となった。うち、実体経済への人民元貸出残高10は138.26兆元、13.6%増、委託貸付残高は12.31兆元、-11.6%、信託貸付残高は7.83兆元、-8.2%、企業債券残高は20.5兆元、10.7%増、地方政府特別債券残高7.38兆元、34.5%増、株式残高は7.04兆元、5.1%増である。

構成比では、実体経済への人民元貸出残高は67.4%(前年同期比1.9ポイント増)、委託貸付残高は6%(同-1.5ポイント)、信託貸付残高は3.8%(同-0.8ポイント)、企業債券残高は10%(同0.0ポイント)、地方政府特別債券残高は3.6%(同0.6ポイント増)、株式残高は3.4%(同-0.2ポイント)である。  

1月の社会資金調達規模(フロー)は4.64兆元であり、前年同期比1.56兆元増となった。うち、実体経済への人民元貸出は3.57兆元増(伸びは前年比8818憶元増)、委託貸付は699億元減(同10憶元減)、信託貸付は345億元増(同52憶元減)、企業債券純資金調達4990億元(同3768元増)、地方政府特別債券純資金調達1088憶元(同1088億元増)、株式による資金調達は293億元(同207億元減)である。

  1. 国家統計局によれば、2011年のウエイト付け改定で、居住価格のウエイトは20%前後になったとしている。
  2. コア消費者物価は2013年から公表が開始された。
  3. 前月比では、輸出-1.5%、輸入8.7%増である。1月の季節調整後前年同月比は、輸出9.5%増、輸入-1.4%、前月比は輸出-3.3%、輸入-4.8%である。
  4. 輸出12月9.8%増→12月-3.3%→1月-2.4%、輸入12月-25.0%→12月-35.8%→1月-41.2%である。
  5. 1月の輸出は1兆3149.4億ドル、5.7%増、輸入は1兆3747.1億ドル、-1.3%である。
  6. 伸びは人民元ベースである。
  7. ドルベースでは、(2018年3%)1-6月4.1%→1-7月5.5%→1-8月6.1%→1-9月6.4%→1-10月6.5%→1-11月1.1%→2018年3%→1月4.8%である。
  8. 情報サービス、研究・設計サービス、科学技術成果実用化サービスなどが含まれる。
  9. 1月、ドルベースでは、シンガポール5.6億ドル、米国5.3億ドル、日本2.4億ドル、韓国2.2億ドル、英国1.5億ドル、オランダ1.3億ドル、フランス1.2億ドル、ドイツ1億ドル、である。
  10. 一定期間内に実体経済(非金融企業と世帯)が金融システムから得た人民元貸出であり、銀行からノンバンクへの資金移し替えは含まない。