国務院全体会議

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年1月21日


はじめに

李克強総理は1月14日、国務院第2回全体会議を開催し、「政府活動報告」を討論し、「意見徴求稿」を各省(区・市)と中央国家機関関係部門・単位に発出して意見を求めることを決定し、かつ 1-3 月期の経済政策を検討・手配した(新華社北京電 2019年1月14日)。また、1月15日には、北京で座談会を開催し、専門学者・企業界人士から「政府活動報告(意見徴求稿)」への意見・建議を聴取した(新華社北京電 2019年1月16日)。本稿では、会議における李克強総理発言の概要を紹介する。

1.国務院全体会議(1月14日)

過去1年、錯綜し複雑な内外情勢と多くの困難・試練に対し、全国上下は、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、堅塁攻略・困難克服に努力し、年間の経済社会発展の主要目標・任務をかなり好く完成した。経済運営は総体として平穏を維持し、安定の中で前進があり、各指標のつり合いは良好であり、比較的十分な雇用を実現し、人民の生活水準は一層高まった。

この成績は容易ではなく、道を進むうえでの各種リスク・試練に我々が一層対応するために、経験を累積した。同時に、発展において直面する問題・困難をも高度に重視しなければならない。

今年、わが国発展の環境はより複雑となり、困難・試練はより多く、経済の下振れ圧力が増大し、政府活動は非常に困難・繁雑で荷が重い。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、サプライサイド構造改革を引き続き深化させ、重要な戦略的チャンスの新たな内容をしっかり把握し、安定成長・改革促進・構造調整・民生優遇・リスク防止政策をしっかり統一的に企画・実施しなければならない。マクロ・コントロールを刷新・整備し、断固「バラマキ」を行わず、区間コントロール・方向を定めたコントロールの実施を通じて、精確に力を発揮し、改革・開放に依拠して市場の活力を奮い立たせ、市場の活力に依拠して下振れ圧力を持ちこたえ、経済運営を合理的区間に維持しなければならない。

ビジネス環境を一層最適化し、壮大な新動力エネルギーの発展を加速し、重点となる脆弱部分の補強を際立たせ、国内市場を育成・拡大し、産業・地域の協調発展を促進し、わが国発展の挽回の余地が大きいという優位性の空間を開拓し、民生の保障・改善政策をし っかり行うことに力を入れ、質の高い発展を推進し、小康社会の全面的実現の手仕舞のために決定的基礎を打ち立てる。

情勢が困難であるほど、精神誠意職務を履行し、積極的に実行しなければならない。国務院各部門・各地方・各レベル政府は、憂患意識と政策の緊迫感を増強し、各政策を早く手配し、早く始動し、早く効果を見せることを推進し、とりわけ企業に恩恵を及ぼし国民を利する既定の政策措置をできるだけ速やかに実施しなければならない。あらゆる手段を尽くして企業の困難を緩和し、方法を考え制定して大衆の苦しみ・期待を解決し、市場の コンフィデンスを安定させ奮い立たせて、1-3月期が好い歩みを踏み出すよう努力し、年間の経済社会発展の主要目標・任務を完成するために良好な条件を創造しなければならない。

同時に、春節前後の経済運営調節と市場監理管理、困窮大衆の基本生活の保障、出稼ぎ農民の賃金の未払分の清算、安全・事故防止等の政策をしっかり行わなければならない。

2.企業界人士座談会(1月15日)
(1)出席者
  1. 専門学者・企業家:社会科学院 余永定、政法大学 馬懐徳、スイス信貸 陶冬、アリババグループ 馬雲、中国一重 劉明忠、中科寒武紀公司 陳天石等
  2. 政府側:李克強、韓正、胡春華、劉鶴、王勇、肖捷
(2)李克強総理の発言

昨年、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、全国上下は党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹し、経済発展は容易でない成績を得た。

今年の経済の下振れ圧力は増大し、いくらかの方面の自信不足が市場の予想に影響を及ぼしており、これを高度に重視し、困難・試練への対応をしっかりと十分準備しなければならない。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、サプライサイド構造改革を深化させ、発展方式の転換を加速しなければならず、伝統的ルートに依拠してはならない。マクロ・コントロールを引き続き刷新・整備し、マクロ政策手段を豊富にし、うまく使用して、方向を定めたコントロ ール・精確なコントロール・タイミングを見計らったコントロールを強化し、マクロ政策の安定性・的確性・有効性により外部環境の不確定性をヘッジし、不断に改革を深化し、開放を拡大して、経済運営を合理的区間に維持し、質の高い発展を推進しなければならない。

市場の活力を一層奮い立たせなければならない。これは、下振れ圧力に対応する重要な支えであり、改革の重要な方向である。緩和され、公平なビジネス環境を作り上げることに力を入れ、企業とりわけ民営、小型・零細企業の難題解決支援に力を入れなければならない。

市場主体の呼び声に耳を傾け、引き続き「権限の開放・委譲、管理と開放の結合、サービスの最適化」改革を推進し、企業の手足を束縛する制約打破に力を入れ、企業に対する恣意的・無秩序な検査等、正常な生産経営への干渉を防止する。 恩恵が普遍的で、構造的な減税・費用引下げをしっかり実施し、企業を軽装で出陣させる。資金調達難・資金調達コスト高の問題の解決を促進し、億を上回る市場主体をより活躍させ、より競争力をもたせる。

イノベーションによる駆動を強化し、内生的動力を増強し、良好なイノベーション生態を作り上げ、基礎研究と先端・共生・カギとなる技術の難関攻略を強化し、大衆による起業・万人によるイノベーションが新たな水準に上るよう促進し、壮大な新動力エネルギーの育成と伝統的動力エネルギーの改造・グレードアップを加速し、包摂的で慎重・周到な監督管理を堅持し、新産業・新業態・新モデルの規範的で健全な発展を支援し、広範な商業化運用を形成し、雇用拡大を有力に牽引する。

内需の潜在力を積極的に発揮し、発展・グレードアップ・民生のために急ぐべき部分に焦点を絞り、タイミングをしっかり掴んで、情報インフラ等の方面の有効な投資を含む、公共サービス・インフラを合理的に増やし、国内消費の拡大を奨励し、強大な国内市場の優位性を更に好く発揮させなければならない。