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資料紹介: After Freedom ——The Rise of the Post-Apartheid Generation in Democratic South Africa——

アフリカレポート

資料紹介

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■ 資料紹介:Katherine S. Newman and Ariane De Lannoy, "After Freedom ——The Rise of the Post-Apartheid Generation in Democratic South Africa——"
佐藤 千鶴子
■ 『アフリカレポート』2015年 No.53、p.69
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南アフリカの人口ピラミッドは末広がりのピラミッド型で、40歳未満が人口の大多数を占める。これらの人びとの多くは、物心ついた時には、鉄道や公園といった公共施設の人種別による利用制限が撤廃され、黒人(アフリカ人)のみが携帯を義務付けられていた悪名高き身分証制度の弊害も、自分自身では経験したことのない「フリーダム世代」、そして、アパルトヘイトが正式に終了してから誕生した「ボーン・フリー世代」からなる。本書は、「フリーダム世代」に属するケープタウン在住の若者7名の生活と人生観を描いた民族誌である。

本書に登場する7名は、ケープタウンに住む多様な人びとを代表する人口集団から意図的に選ばれており、黒人2名、カラード(混血)2名、白人2名、そしてコンゴ民主共和国出身の移民1名からなる。このうち南アフリカ人6名については、人口集団内部の階層性をも反映させるため、居住地域や職業、収入面から判断して明らかに経済的に困窮している人と、ミドルクラスに属する人との話が対になって登場する。ややステレオタイプ的な描写が見られ、7名の背景に関する調査の深さにばらつきがあるものの、ケープタウンに住んだことのある人や、南アフリカ人と交流したことがある人には馴染みの話も多く、登場人物が持つリアリティ感が本書の醍醐味である。

本書で印象的なのは、人口集団内部における現在の生活レベルの差を決定づける要因が、いずれの集団においても教育であったということである。とりわけ、黒人とカラードの人びとにとって、白人専用学校が全人種に門戸を開き、そこで受けた教育をもとに高等教育へと進んだことが、その後、一定の収入が得られる専門職に就くうえで決定的に重要であった。子供を旧白人専用学校に行かせるという親の選択と、それに伴う教育投資は「フリーダム世代」において報われた。新しい南アフリカで、新たに開かれた機会に応えるための能力と技術を、彼(女)らが教育を通じて身に着けることができたからである。他方、家庭の事情や居住地域にはびこるギャング文化の影響を受けて中学高校を中退した2名の若者は、定職に就くことができないばかりか、求職活動すらままならず、自ら道を切り開こうとする努力もなかなか身を結ばない。

本書の登場人物が10年後、どのような生活を送っているのか、そして彼らに続く「ボーン・フリー世代」にとっても教育が社会的上昇の鍵を握るのか、南アフリカのこれからを担う若い世代の動向がますます注目される。

佐藤 千鶴子(さとう・ちづこ/アジア経済研究所)