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新時代の中国—成熟社会に向けて

2013年1月25日(金曜)
国連大学ウ・タント国際会議場
>>開催案内・プログラム

主催:ジェトロ・アジア経済研究所、朝日新聞社

基調講演1

張 文魁(中国国務院発展研究中心 企業研究所 副所長)

中国の経済成長は、資源配分に対する政府関与や、国有企業をはじめとした国家部門の存在によって後押しされてきた。しかし、中国経済における国家部門の重要性は低下している。また、非国家部門における生産性の向上が、経済成長の主な推進力になっている。したがって、中国政府は国家部門を優遇するような資源配分をあらためる必要がある。そして、中小企業や新規参入企業を主体とした競争を促進し、中国経済をイノベーション主導の成長パターンに転換しなければならない。中国政府は今後、医療や教育などの公共財の提供を充実させるため、財政制度を改革したり、地方政府の機能を向上させるような施策を実施する必要がある。

中国の経済成長は現在、転換点にある。潜在成長力が大幅に低下している。中国企業はこれまで、高度経済成長による売上増によって利潤を確保してきたが、売上の増加がそれほど見込めなくなると、多くの赤字企業が発生する可能性が大きくなる。大量の赤字が出る前に国有企業のさらなる改革に着手しなければならない。

張 文魁(中国国務院発展研究中心 企業研究所 副所長)

張 文魁(中国国務院発展研究中心
企業研究所 副所長)

基調講演2

デイビット・シャンボー(ジョージ・ワシントン大学 教授)

習近平体制の人事からみると改革的な布陣とはいえない。常務委員は保守派として知られる人が多い。しかし、政治局委員の中には改革派が多く入っている。李克強に比べて習近平に対しては未だにわからない点が多いが、最近の出来事から次のことを注目すべきである。最初の動きが腐敗撲滅である。次の動きは「復興の道」という展示会に姿を見せたことから、彼が強いナショナリズムの持ち主であるようにも思われる。習近平体制が直面している課題としては経済成長モデルの転換、メディア統制の緩和、公共財の提供、腐敗撲滅、民族問題などが挙げられる。対外関係をみると、メジャーパワーと近隣諸国との関係で多くの課題を抱えている。また、国際社会の中国に対するイメージが良くないことも問題である。新体制が改革に踏み出す障害は主に三つある。まずは「経路依存性」の問題である。今までは労働集約型経済で成功できたのに、これからは知識経済を構築しなければならないが、権威主義体制では実現が難しい。次にソヴィエトの影をいかに払拭するかである。あらゆる分野での自由化が必要であるが、中国は自由化に対し慎重である。最後は既得権益(軍、国内治安機構、共産党保守派、国有企業など)は現状を変える改革に消極的である。

デイビット・シャンボー(ジョージ・ワシントン大学 教授)

デイビット・シャンボー
(ジョージ・ワシントン大学 教授)

パネルディスカッション
モデレーター

白石隆 (ジェトロ・アジア経済研究所 所長)

パネリスト

王名(清華大学NGO研究所 所長)
大西康雄 (ジェトロ・アジア経済研究所新領域研究センター長)
佐々木智弘(ジェトロ・アジア経済研究所地域研究センター東アジア研究グループ長代理)
張文魁(中国国務院発展研究中心 企業研究所 副所長)
デイビット・シャンボー(ジョージ・ワシントン大学 教授)

最初に清華大学NGO研究所の王名所長、大西康雄新領域研究センター長、佐々木智弘地域研究センター東アジア研究グループ長代理が報告を行った。その後、2名の基調講演者を交えて、白石所長によるモデレートで、中国社会の課題について、議論を展開した。


(1)王名(華大学NGO研究所 所長)

中国ではこの6年間にNGOが中央政府の政策の中で大きな位置づけを得られつつある。第18回党大会においても「社会組織」に多く言及された。改革開放前の中国では「国家」しかなかったが、改革開放後に「市場」が生まれ、そして「社会」が現れた。第18回党大会で「現代社会組織体制」という言葉が初めて出てきたことで、中国において市民社会の未来像が浮かびつつある。中国の社会組織は、民政部に登録できた3種類の団体(社会団体、基金会、民弁非企業単位)と登録できない多くの団体から成り、前者が約20万団体、後者は正確な統計はないものの、200万団体以上あると見られる。現在、政府関係組織である人事業単位の体制改革がすすめられており、これらもNGO(社会組織)になっていくであろう。今後、中国において社会組織の拡大と体制改革に伴い、「中国式法団主義(コーポラティズム)」ができるかどうか、注目していくべきである。

(2) 大西 康雄 (ジェトロ・アジア経済研究所新領域研究センター長)

中国新政権は、マクロ経済の安定や市場化改革の推進、経済バランスのとれた発展、構造的格差問題の解消などといった課題に直面している。世界銀行は昨年、張文魁氏をはじめとした中国人研究者とともに処方箋を提示したが、既得権益層の反発も予想されるため実施は困難である。日中経済関係については、中国の高度経済成長によって変化が出始めている。日本は、中国の変化に対応した補完関係を追求することで、中国にとっての日本の重要性を具現化する必要がある。

(3)佐々木智弘(ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター東アジア研究グループ長代理)

習近平は前任者に比べ、より有利なスタートを切ることができた。その理由は二つある。ひとつは習近平が総書記だけではなく、軍事委員会主席のポストも得て、3月には国家主席のポストも得るので、権力が集約されている。次に江沢民グループの常務委員5人は5年後に引退するので、江沢民グループのこまが尽きた感がある。したがって、前任者に比べると、共産党長老の影響が少ない。習近平体制が抱える課題は大きく二つある。ひとつは一党支配の枠を崩さない前提で、一部を修正・付け出す改革(主に民生問題)である。もうひとつは一党支配の枠を壊すような政治体制改革である。前者については、習近平への権力集約が進んでいるので、執行しやすいと思う。後者については習近平自身も一党支配の枠から誕生した総書記なので、壊すことは難しい。

(4)張文魁(中国国務院発展研究中心 企業研究所 副所長)

経済成長率(中央政府が十分な財源を確保できる)とインフレ問題を押さえられたら社会は安定できると思う。高度経済成長がいったん止まると難しくなる。

(5)デイビット・シャンボー(ジョージ・ワシントン大学 教授)

習近平が胡錦濤・江沢民より良いポジションでスタートしたことについてはとても賛成する。5年後に改革派が登場するというが、中国が5年も待てるかどうかだ。中国は直ちに大きな政治改革すなわち一党体制を揺るがすような改革が必要なのである。私が提起した6つの課題は総合的に行うべきだ。部分的に行うことで成功するものではない。習近平が改革に踏み込む初期は大きな制度内反対勢力に直面するだろう。現代中国の政治体制をみると、過去の国民党、清末の政府を彷彿させる。格差拡大、政府腐敗、中間層及びエリートは海外に行くことなど過去と似ている。システムとして中国の政治構造は安定しておらず、大きな問題がある。