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開催報告

アジア経済研究所 オンライン講座「『アジア動向年報2022』刊行記念セミナー―東南アジアの政治動向と見通し」

アジア経済研究所では、基幹事業のひとつである『アジア動向年報』の刊行を控え、2022年4月21日(木曜)にセミナーを開催しました。4月21日のセミナーではベトナム、ラオスの2カ国の2021年の政治動向を踏まえて、現状と今後の見通しについてそれぞれの国の専門家が解説しました。このページでは、講演の要旨および講演動画を無料公開しています。ぜひご覧ください。

ベトナム政治:「全党、全国民、全軍」の団結と安定感を演出(講師:石塚 二葉(アジア経済研究所))

  • 2021年、ベトナムでは5年に一度の党大会が行われ、前期党執行部が作成した党大会文献草案や幹部人事案が概ね原案通り承認された。
  • 党大会では、「2045年までに社会主義志向の先進国になる」という新たな経済・社会発展の長期目標が提示された。
  • また、党員の思想的・道徳的規律の強化、汚職・濫費の撲滅等を通して国民の党への信頼向上を目指す「党建設」が引き続き最重要課題とされた。
  • 「四柱」(党指導部トップ4)の人事案については、慣行や規則に照らして異例な点が多かったものの、党の優先課題に対応した陣容となり、そのまま承認された。
  • 2021年5月、コロナ禍の下で実施された国会議員選挙では、従来にも増して周到な準備が行われ、党指導部のシナリオにより忠実な結果を出すことができた。党が国家・社会を効果的に統制できていることが示された。
  • 国際情勢への対応では、2021年のベトナムは、米中双方から一定の距離を置きつつ、多くの国と良好な関係を保って安定と利益を得る「全方位外交」の姿勢を示した。しかし、ミャンマーでのクーデタ、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、不安定な国際情勢の下でどのように国益を守れるかという課題に直面している。

ラオス政治:経済成長最優先路線から社会の安定重視へ(講師:南波 聖太郎(アジア経済研究所))

  • 2021年1月、第11回党大会が開催された。党大会では、現状への強い危機感が示され、各分野の「転換」の必要性が主張された。特に、経済成長最優先の方針から社会の安定重視へ軌道修正が図られた。
  • 外交面では、中国とベトナムに加えて、ロシアにも言及した。ロシアへの言及は稀だが、中国依存を背景として、ロシアを梃に崩れつつある外交バランスを立て直すことを目指している模様。
  • 人事面では、「改革派」と目される人物が台頭する一方で、家柄は重視されるなど、改革と党内の権力バランスの両立が図られ、革命運動を率いた親世代からその子世代への権力移譲が進んだ。
  • 党大会後の動向として、最も重視されているのが経済財政改革であり、2023年までの債務問題解決、輸入・外資依存の経済構造の抜本的見直しなどが含まれる。
  • 外交面では、中国とベトナムが引き続き両軸である。ウクライナ問題ではロシアに配慮を示しているが、全方位外交の基本路線は維持しようとしている。
  • 経済成長最優先の方針から社会の安定重視へと舵を切ったが、特に経済・外交面で不安定要素が多数あり、仮にこの「転換」の試みに挫折すれば,さらに社会が不安定化する恐れもある。

※解説はすべて講演時点のものです。

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