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政治制度 Political Institutions

人々が作る制度、人々を縛る制度

インドネシア・ジョグジャカルタにある旧大統領宮殿
インドネシア・ジョグジャカルタにある
旧大統領宮殿
私たちは社会の中でさまざまな制度に囲まれて生きています。子供が生まれれば出生届を出し、結婚の時には婚姻届を出します【社会制度】。キリスト教徒であれば洗礼を受け、20歳になれば成人式に出ます【宗教・文化的制度】。企業が取引するときには契約を結び、商品を販売すれば課税されます【経済制度】。選挙の時には投票をし、そこで選出された議員が国会で国のあり方を議論します【政治制度】。国際社会では国連やIMF、サミットなどが国際関係の調整をしています【国際制度】。

これらはすべて制度なのです。制度には、企業や法律のように組織化されたり、明文化されたりしたものから、洗礼や成人式といった儀式や慣習のような目に見えないものまでが含まれます。私たちは、社会の中で共同生活が円滑に営まれるよう、人々の関係を構造づける公式のルールや、同意の手続き、行動の規準などを作り出すと同時に、それらに縛られながら生きているのです。
これらのさまざまな制度のうち、政治の世界における制度=政治制度がどのように研究されているのかをここでは見てみましょう。

政治制度を研究するにあたってまず必要なことは、その制度がどのようになっているのかということを詳細に分析し、記述することです。国の基本的な統治構造を規定する憲法、政治家を議員として選出する手続きとしての選挙制度、議会で法律を制定するプロセスとしての議会制度、議会と執政府の関係【議院内閣制と大統領制】、行政機構の仕組みとしての官僚制、中央政府と地方政府の関係【地方自治制度】など、現代国家が共通して備えている政治制度は、詳細に見ると国によってさまざまなバリエーションがあります。何を研究対象とするにしても、それぞれの政治制度についての詳細で正確な知識が必要不可欠です。しかも、情報も研究蓄積も限られていることの多い発展途上国研究では、政治制度に関する記述分析は特に重要性の高いものです。

しかし、近年の政治学では、単なる制度の紹介や解説にとどまることなく、政治制度がアクター【行為主体】にどのような影響を与え、政治過程を形作っていくのかという点を明らかにしようとする動きが活発になっています。一般にこれらの理論動向は「新制度論」【new institutionalism】と呼ばれています。

この新制度論には、大きく分けて2つの潮流があります。一つが「歴史的制度論」【historical institutionalism】と呼ばれているものです。このアプローチによると、過去の歴史的経緯の積み重ねとして作り上げられた政治制度が現在の政治のあり方を規定します。その結果として、たとえ似たような環境にある国同士でも、制度が異なれば政治のあり方も異なってくると考えます。

もう一つの流れが「合理的選択制度論」【rational choice institutionalism】と呼ばれているものです。このアプローチは、自らの目標を達成するために合理的に行動するアクターが、自らを取りまく制度を利用したり、制度に制約されたりしながら意思決定をおこなうと考え、ある制度の下でのアクターの行動パターンや政治のあり方を分析するのです。

これら新制度論の発展途上国政治研究への応用はいまだ限定的です。しかし、近年研究の蓄積が進んだ上、民主化の第3の波以降、多くの発展途上国が民主化したことで現地での調査が容易になり、さらには他国との比較が可能なデータが整備されつつある状況を考えると、新制度論が発展途上国の政治研究に応用される素地が整いつつあると言えるでしょう。
川村 晃一

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