中東ファミリービジネスの構造と継承の課題
調査研究報告書
齋藤純 編
2019年3月発行
表紙 / はじめに / 目次 (323KB)
第1章
家族間事業承継における法制度上の視点 (797KB) / 大石賀美
第2章
エジプトにおける経済発展とファミリービジネス (796KB) / 土屋一樹
エジプトのファミリービジネスには二度の興隆期があった。1920~1940年代のイギリス支配期と1970年代後半以降の門戸開放期である。いずれも経済環境の変化によって民間企業発展の機運が高まった時期だったが,ファミリービジネスの拡大をもたらしたもう一つの要因は外国企業との関わりだった。
第3章
チュニジア・モロッコにおける主要企業とファミリービジネスに関する考察 (730KB) / 柏木健一
本章では,マグレブ諸国の代表として,チュニジアとモロッコを捉え,主要企業や家族企業の特徴と発展の経路を考察することを目的とする。旧宗主国がフランスである両国では,フランス民法典とイスラーム法が会社法などの法源となっているが,企業の統治構造にイスラーム的要素は薄く,イスラーム銀行の展開も盛んではない。エネルギー供給,電気通信産業,航空産業を除き,主要企業の多くは民営であり,モロッコでは王室によるビジネスも活発である。両国の産業では,家族経営の小規模・零細産業が支配的である一方で,財閥系企業が多数存在しており,農業関連の小規模・零細事業からファミリービジネスが生起する可能性が示唆された。特に,創業者の息子たちや創業者とその兄弟が,グループ内で事業を多角的に展開する例が見受けられた。今後の課題としては,家族企業のプロファイルから得た共通点を基に,その発展経路を導き出すことが必要である。
第4章
サウジ人女性の起業を喚起する消費と労働市場 (803KB) / 辻上奈美江
第5章
アラブ首長国連邦のファミリービジネスにおける事業継承 (959KB) / 齋藤純
UAE経済の中核を担うファミリー所有の企業グループを対象に、企業内の経営資源の分配と継承がどのように行われているかについて、企業関連法制度、企業ガバナンス構造、事業展開、家族構成などから基礎的な分析を試みる。分析の結果、多くの企業グループで創業者が未だ健在であるが高齢であり、事業の継承の問題に直面している。また、いくつかの企業グループの事例によれば、必ずしも創業者直系(子・孫)への継承が行われているわけではなかった。
第6章
イランにおけるファミリービジネス研究に向けて:問題の所在を考察する (868KB) / 岩﨑葉子