東南アジアの自治体サーベイ:比較のための解題とデータ作成
調査研究報告書
船津 鶴代・籠谷 和弘・永井 史男 編
2018年3月発行
表紙 / 目次(297KB)
第1章
東南アジアの地方自治サーヴェイ研究――背景と経緯――(355KB)/ 永井 史男・船津 鶴代
第2章
解題:東南アジアの中央・地方関係(370KB)/ 永井 史男
第3章
解題:東南アジアにおける地方首長と政治王国論(446KB)/ 岡本 正明
第4章
解題:自治体における開発計画の決定過程(451KB)/ 西村 謙一
タイ、インドネシア、フィリピンは、東南アジア諸国の中で最も本格的な地方分権化を経験した。この3か国の政治体制の変容過程はそれぞれ異なるが、いずれにも共通するのは、自治体(首長)への権限の移譲とともに、自治体の政策過程への住民参加が制度化されたことである。本章では、地方分権化が進展しているこれら3か国における自治体の計画作成過程の様相について、2011年から2013年にかけて実施されたエリート・サーヴェイの結果をも参考にしつつ検討を加えた。その結果明らかになったことは、以下の点である。第1に、3か国ではいずれも自治体の計画策定過程への住民参加が一定程度進展した。第2に、自治体の官僚制の重要性も無視することはできない。第3に、政治的、経済的エリートの地方政治行政に対する支配は、根強く続いている。以上のような相反する傾向の存在は、今後の自治体の政策過程のあり方について、注意深く観察を続けなければならないことを示すものと考えられる。
第5章
解題:東南アジアにおける自治体のネットワーク――基礎自治体と他機関との接触――(345KB)/ 籠谷 和弘
第6章
解題 東南アジア自治体における「予算の政治」 (482KB)/ 船津 鶴代
東南アジア自治体における「予算の政治」過程への注目は、分権化の進行・揺れ戻しの動態を把握し、地方の政治・行政ネットワークの特徴を捉えるために有効なアプローチである。本章では、インドネシア、フィリピン、タイにおける財政分権化の制度的な背景と類型を概括的に整理し、そのうえで自治体サーヴェイの「予算の政治」にかかわる項目から、分権化の制度と政治行政ネットワークの関連について検討している。この作業から、インドネシアではダイナミックな分権化と行政的調整がセットで進む実態が特徴的であること、フィリピンでは親族ネットワークを通じた予算をめぐる政治的調整の重要性、そしてタイでは小規模自治体が地方行政・政治家と日常的に交渉し、運営に住民参加を交えた形が主であることが浮かび上がった。これらの制度的特徴を踏まえたデータ分析が、今後の課題である。
第7章
インドネシア地方自治の新展開――2014年地方行政法と2014年村落法―― (595KB)/ 長谷川 拓也
第8章
Local Government Survey in Southeast Asia 2012-2013 (321KB)/ Fumio Nagai, Masaaki Okamoto, Kazuhiro Kagoya, Kenichi Nishimura, Masao Kikuchi, Jun Kobayashi, Tsuruyo Funatsu, Wahyu Prasetyawan