アフリカ・中東における紛争と国家形成
調査研究報告書
佐藤 章 編
2010年3月発行
表紙・まえがき・目次・執筆者紹介 (258KB)
序章
紛争と国家形成——研究会の狙いと今後の課題—— (260KB) / 佐藤 章
はじめに
第1節 包括的プロセスへの眼差し
第2節 国家の「形成」か「変容」か
第3節 本報告書の構成
むすび
本章は、中間報告全体の序章として、研究会の基本となる問題意識と、研究の出発点として国家形成というキーワードを据えたことの狙いについて述べる。紛争を単に破壊現象としてのみ捉えるのではなく、政治と社会にかかわる包括的なプロセスとして捉え返し、国家と政治との関係を探究していくという方向性を示す。また、本中間報告に収めた事例研究の内容紹介と来年度の研究会に向けた課題も記す。
第1節 包括的プロセスへの眼差し
第2節 国家の「形成」か「変容」か
第3節 本報告書の構成
むすび
本章は、中間報告全体の序章として、研究会の基本となる問題意識と、研究の出発点として国家形成というキーワードを据えたことの狙いについて述べる。紛争を単に破壊現象としてのみ捉えるのではなく、政治と社会にかかわる包括的なプロセスとして捉え返し、国家と政治との関係を探究していくという方向性を示す。また、本中間報告に収めた事例研究の内容紹介と来年度の研究会に向けた課題も記す。
第1章
イラク覚醒評議会と国家形成——紛争が生み出した部族の非公的治安機関をめぐる問題—— (1.39MB) / 山尾 大
はじめに
第1節 戦後イラクの民主化と紛争のプロセス
第2節 非公的治安機関としての覚醒評議会
第3節 非公的機関と国家形成
おわりに
図表
戦後イラクでは、地域コミュニティの治安維持能力を喪失した中央政府に代わって、米軍が部族による非公的治安機関である覚醒評議会を形成し、治安維持の任務にあたらせた。覚醒評議会の形成は、本来中央政府が一元的に管理するべき暴力装置を、逆に拡散させることに帰結した。本章では、覚醒評議会が、治安維持に加えて、独自の政治利害に基づく政治参加を始めたことで、(1)暴力装置の一元的管理、(2)治安機関の専門化という二つの課題が露呈し、国家形成を遅らせたことを明らかにする。
第1節 戦後イラクの民主化と紛争のプロセス
第2節 非公的治安機関としての覚醒評議会
第3節 非公的機関と国家形成
おわりに
図表
戦後イラクでは、地域コミュニティの治安維持能力を喪失した中央政府に代わって、米軍が部族による非公的治安機関である覚醒評議会を形成し、治安維持の任務にあたらせた。覚醒評議会の形成は、本来中央政府が一元的に管理するべき暴力装置を、逆に拡散させることに帰結した。本章では、覚醒評議会が、治安維持に加えて、独自の政治利害に基づく政治参加を始めたことで、(1)暴力装置の一元的管理、(2)治安機関の専門化という二つの課題が露呈し、国家形成を遅らせたことを明らかにする。
第2章
アパルトヘイト後の南アフリカにおける「紛争と国家形成」 (473KB) / 阿部 利洋
第1節 「紛争と国家形成」というテーマと南アフリカの体制転換
第2節 コミュニティ・ポリシング
第3節 考察の方向性
図表
本稿では、「紛争と国家形成」というテーマに対して、「アパルトヘイト体制下の紛争が、その後の南アフリカ社会における法規範の回復に関して、どのような影響を及ぼし、あるいは機能を果たしたか」という問いを設定し、とりわけ法執行機関の変化を取り上げることから、その問いを検討する。具体的には、コミュニティ・ポリス・フォーラムと呼ばれる警察改革の動向に着目し、その制度の変遷や受容のされ方について報告する。
第2節 コミュニティ・ポリシング
第3節 考察の方向性
図表
本稿では、「紛争と国家形成」というテーマに対して、「アパルトヘイト体制下の紛争が、その後の南アフリカ社会における法規範の回復に関して、どのような影響を及ぼし、あるいは機能を果たしたか」という問いを設定し、とりわけ法執行機関の変化を取り上げることから、その問いを検討する。具体的には、コミュニティ・ポリス・フォーラムと呼ばれる警察改革の動向に着目し、その制度の変遷や受容のされ方について報告する。
第3章
ケニアにおける憲法改正問題と「選挙後暴力」——2008年以後の動きを中心に—— (373KB) / 津田 みわ
はじめに
第1節 調停成立までの経緯
第2節 権力分掌の成立
第3節 2008年3月4日合意とその実施
おわりに
2007年総選挙後の「選挙後暴力」によって未曾有の政治危機に陥ったケニアでは、元国連事務総長のイニシアチブのもとで調停が進み、「暴力」は比較的短期のうちに表面的には終熄した。その後のケニア政治は、この時の調停の産物として組み上げられた暫定憲法の枠組みに規定されることになった。この暫定憲法の枠組みは、第一義的にはたしかに紛争の調停と和解の道具であったが、1990年以後に積み上げられてきたケニアの憲法改正プロセスの最前線という位置づけが可能なものでもある。本稿では、ケニアの法制度改革のプロセスにおいて「選挙後暴力」と暫定憲法枠組みのもつ意味を考察していくための準備作業として、同枠組みの成立にいたる経緯の跡付け、イシューごとの暫定憲法枠組みの内容整理、および残された課題の同定が試みられる。
第1節 調停成立までの経緯
第2節 権力分掌の成立
第3節 2008年3月4日合意とその実施
おわりに
2007年総選挙後の「選挙後暴力」によって未曾有の政治危機に陥ったケニアでは、元国連事務総長のイニシアチブのもとで調停が進み、「暴力」は比較的短期のうちに表面的には終熄した。その後のケニア政治は、この時の調停の産物として組み上げられた暫定憲法の枠組みに規定されることになった。この暫定憲法の枠組みは、第一義的にはたしかに紛争の調停と和解の道具であったが、1990年以後に積み上げられてきたケニアの憲法改正プロセスの最前線という位置づけが可能なものでもある。本稿では、ケニアの法制度改革のプロセスにおいて「選挙後暴力」と暫定憲法枠組みのもつ意味を考察していくための準備作業として、同枠組みの成立にいたる経緯の跡付け、イシューごとの暫定憲法枠組みの内容整理、および残された課題の同定が試みられる。
第4章
レバノン——宗派主義制度下の武力紛争—— (778KB) / 青山 弘之
第1節 はじめに
第2節 分析対象の絞り込み
第3節 宗派主義制度の欠陥
第4節 対立構図の変化と政治の麻痺を打開する試み
第5節 おわりにかえて
図表
本稿は、近年の中東地域において政治の麻痺がもっとも深刻だとされるレバノンに着目し、同国の政治主体を当事者とする武力紛争/低強度紛争が宗派主義制度と呼ばれる独自の政治制度のもとでいかなる意味を持っているのかを解明する。具体的にはまず第2節で、本稿がレバノン国内のいかなる紛争を分析対象とするのかを述べる。第3節では、宗派主義制度の欠陥を明らかにし、同国における政治の麻痺が政治主体間の武力紛争に帰結する仕組みを解明する。第4節では、2005年4月から2009年9月にかけてのレバノンの政治主体の同盟関係・対立関係の変化を通史的に概観する。最後に第5節では、レバノンの紛争と国家形成(ないしは変容)の関係に関する暫定的な結論を述べる。
第2節 分析対象の絞り込み
第3節 宗派主義制度の欠陥
第4節 対立構図の変化と政治の麻痺を打開する試み
第5節 おわりにかえて
図表
本稿は、近年の中東地域において政治の麻痺がもっとも深刻だとされるレバノンに着目し、同国の政治主体を当事者とする武力紛争/低強度紛争が宗派主義制度と呼ばれる独自の政治制度のもとでいかなる意味を持っているのかを解明する。具体的にはまず第2節で、本稿がレバノン国内のいかなる紛争を分析対象とするのかを述べる。第3節では、宗派主義制度の欠陥を明らかにし、同国における政治の麻痺が政治主体間の武力紛争に帰結する仕組みを解明する。第4節では、2005年4月から2009年9月にかけてのレバノンの政治主体の同盟関係・対立関係の変化を通史的に概観する。最後に第5節では、レバノンの紛争と国家形成(ないしは変容)の関係に関する暫定的な結論を述べる。
第5章
ソマリアにおける「紛争」と国家形成をめぐる問題系 (418KB) / 遠藤 貢
はじめに
第1節 ソマリアにおける「紛争」とその経緯
第2節 ソマリアをとらえる視座をめぐって
おわりに
図表
ソマリアでは、1991年以降今日に至るまで、実効的な領域統治を行うことができる政府が不在である。しかも、この政治現象は「紛争」という範疇の問題としてだけでは理解できない非常に複合的な問題を提起している。本報告では、ソマリアをめぐって行われてきた錯綜した概念利用の中にソマリアに関わるどのような問題が読み込まれているかに関して考察することを試みる。
第1節 ソマリアにおける「紛争」とその経緯
第2節 ソマリアをとらえる視座をめぐって
おわりに
図表
ソマリアでは、1991年以降今日に至るまで、実効的な領域統治を行うことができる政府が不在である。しかも、この政治現象は「紛争」という範疇の問題としてだけでは理解できない非常に複合的な問題を提起している。本報告では、ソマリアをめぐって行われてきた錯綜した概念利用の中にソマリアに関わるどのような問題が読み込まれているかに関して考察することを試みる。
第6章
「人口」の確定という国家形成の課題——コートディヴォワールの和平プロセスにおける有権者登録の事例から—— (310KB) / 佐藤 章
はじめに
第1節 和平プロセスにおける有権者登録の問題
第2節 民主化後コートディヴォワールにおける人口の計数・管理の問題
むすび
本稿は、コートディヴォワールの和平プロセスにとって最大の障害となっている、有権者登録をめぐる問題に焦点を当て、人口の計数・管理技術という視点から、コートディヴォワールにおける紛争と国家形成について考察を行う。先行研究において、「コートディヴォワール国民とは誰か、コートディヴォワール人とは誰か」をめぐる問題として議論されてきた同国の有権者登録の問題について、近代国家における「人口」の確定という、やや違った視点から分析の可能性を探るのが狙いである。
第1節 和平プロセスにおける有権者登録の問題
第2節 民主化後コートディヴォワールにおける人口の計数・管理の問題
むすび
本稿は、コートディヴォワールの和平プロセスにとって最大の障害となっている、有権者登録をめぐる問題に焦点を当て、人口の計数・管理技術という視点から、コートディヴォワールにおける紛争と国家形成について考察を行う。先行研究において、「コートディヴォワール国民とは誰か、コートディヴォワール人とは誰か」をめぐる問題として議論されてきた同国の有権者登録の問題について、近代国家における「人口」の確定という、やや違った視点から分析の可能性を探るのが狙いである。