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バングラデシュにおける政治と司法の独立

調査研究報告書

湊 一樹 編

2018年3月発行

表紙 / 目次(250KB)

第1章

2014年9月になされたバングラデシュ憲法の第16次改正は、最高裁裁判官の罷免に関して議会に権限を与えるように変更を加えたもので、司法部と政治部門との関係に非常に大きな変化を与えた憲法改正であった。しかし、本改正は最高裁でその合憲性が争われ、2016年5月5日の高裁部での違憲判決の後に2017年7月3日には上訴部において高裁部の判決が支持され、同改正の違憲性が示される結果となった。本章は、バングラデシュ憲法における司法に関連する条項を、とくに歴史的な変遷に着目しながら紹介し、つづいて最高裁高裁部での憲法第16次改正に対する違憲判決についてその内容を検討し、提示された論点をみるかぎり同改正による司法の独立の侵害を裁判所は認めており、その背景には政治部門への不信感がみられることを示した。

第2章

バングラデシュ人民共和国憲法は、1972年12月に施行されて以来、16回にわたる憲法改正を経て現在に至っており、その内容はバングラデシュの政治面での大きな流れを色濃く反映している。本稿では、これまでの主な憲法改正の内容を踏まえたうえで、バングラデシュにおける司法の独立と憲法改正の問題について、2014年の憲法第16次改正をめぐる論争を中心に検討する。第16次改正は、最近の憲法改正であるというだけでなく、司法の独立の現状を考えるうえで多くの示唆を与える。というのも、この憲法改正には、最高裁判事の任期および解任の手続きを定めた第96条の修正が含まれていたことから、司法の独立をめぐって国内で大きな議論を呼び、その是非が司法の場に持ち込まれ、最高裁長官が不可解な形で辞任する事態にまで発展したからである。さらに、「均衡と抑制」という制度的な歯止めの解体を着実に進めるアワミ連盟政権の権威主義化を象徴しているという意味で、この事例はより大きな文脈に位置づけることもできる。