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データ・リソース

kenyaLloyd Masika Limited ロイド・マシカ

設立

1979年

売上高

非開示

収益

不明

従業員数

80人(グループ全体)

会社概要と沿革

ロイド・マシカはケニアの老舗不動産関連企業である。事業領域は、不動産鑑定と不動産管理、住宅用・商用物件の販売代理業務である。不動産鑑定では、土地・建造物・農場などの資産や企業価値の査定、不動産取得にかかるアドバイスを行う。不動産管理・販売代理業務では、ナイロビの商業施設の老舗、サリットセンターなどの有名物件も手がける。事務所は、国内3ヵ所に構え、ナイロビ、モンバサ、エルドレットに有する。ウガンダとタンザニアにも登記はしたが、営業はしていない。従業員は80名。うち15人は不動産鑑定に携わる。

参入経緯

ケニアの不動産関連企業は、その多くが1923年に個人企業として始まったGAタイソン社に出自を持つ。GAタイソンが現在に至るまでの変遷の中で、その従業員が次々と独立して行き、ケニアの不動産関連企業を形成した[※1]。ロイド・マシカもGAタイソンから独立した企業の1社である。ロイド・マシカの当初の事業領域は不動産鑑定であった。商業ビルや住宅用物件などが経済発展とともに増え、その管理が必要とされるに至り、ロイド・マシカは不動産マネージメント・販売代理業務へと事業領域を拡げてきた。

※1 GAタイソンは、2009年時点でもタイソンズ(Tysons Limited)として残っている。その変遷は同社ウェブサイトで確認できる。

市場動向

不動産市場は、世界経済危機以後、新聞紙上などメディアで不振が伝えられる。しかし、不動産市場は、景気減速にはさほど影響を受けていない。不動産市場の実際の状況は、過去数年の過熱状況から安定局面に入ったというのが正しい見方である。不動産価格は下落しておらず、場所によっては上昇しているところさえある。メディアによる報道は必ずしも事実ではない。

不動産市場が、過去数年に渡り加熱気味だったのは、在外ケニア人からの需要の増加、インフレ高進による不動産投資への関心の高まり[※2]に加えて、一部不動産仲介業者などが需要増に乗じて過剰に利益追求していたことが要因である。

在外ケニア人の不動産市場への参加は、過去5~7年の間の傾向である。在外ケニア人は住宅用アパート開発などに投資した。在外ケニア人の投資背景には2つの側面がある。資産としての投資的側面と、祖国に住宅を保有する心理的側面である。心理的側面には、住宅開発を通じて祖国の経済発展に参画したいという心理要因も働いている。但し、最近は在外ケニア人による投資が低調になってきている。

ナイロビ中心街の商業ビルへの需要も堅調である。建築物が古くて再開発が進まないのは、郊外にまだ開発可能な土地が残されているため建て替えが郊外での新規建設よりも高くつくことや、古くても中心街という立地が魅力となり一定の需要があるためである。これに加え、土地の利用手段の変更が難しいことも原因である。

中長期的な不動産市場の動向に不安はない。住宅用物件では、農村部から都市への移住は続くが、土地供給は増えない。住宅開発も需要増加の速度には追いつかないため、価格は継続的に上昇していく。経済が発展するにつれて、中間層向けの住宅需要が不動産市場を牽引すると見込まれる。

不動産市場へのソマリア資金の流入について、ソマリアからの出所不明の資金が不動産投資で運用されていることに、不動産業界は気づいている。しかし、その影響は部分的、限定的なものに留まると考えられている。

※2 インフレ局面では、資産価値を担保する意味合いで不動産投資への魅力が相対的に高まる。

ビジネスモデル

ロイド・マシカの売上は、不動産鑑定が60%を占める。この他、販売代理業務が25%、管理業務が15%の割合である。不動産鑑定は好調に拡大してきた。銀行や保険会社、不動産所有者、株式会社、政府などが、融資目的や会計目的などで、ますます不動産鑑定を必要とするようになっている。販売代理業務では、物件の増加に伴い、かつてより販売代行の役割が重要視されるようになっている。不動産管理業務では、不動産所有者が門番や階段部分など共用スペースの管理の重要性に気づき始め、管理を一括して委託することの利便性が理解されるようになった。

ビジネス拡大に向けての課題

80人中15人のスタッフが不動産鑑定に従事し、売上の60%を占める。不動産鑑定は付加価値の高い業務であり、高度なスキルの人材を必要とする。技能労働者は限られており、その確保はビジネス拡大の上で課題となる。

将来展望

ロイド・マシカは、現在の事業領域である不動産鑑定と販売代理・不動産管理業務に集中する。不動産開発に参入する意思はない。なぜなら、販売代理・不動産管理業務にとっては、委託元である顧客との直接的な競争を招いてしまうからである。

タンザニアとウガンダに登記はしたが営業はしていない。管理上の問題からナイロビを拠点にした方がサービス水準を維持できると考えたからである。必要であれば、ナイロビから出張して不動産鑑定などを行う。

特徴

金融危機後の世界不況を理由として、中・高級住宅地区の販売不振や価格下落、不動産会社による新規開発契約の低調などが報道された。しかし、その一方で、ナイロビ市による新規建設計画承認数や、セメント生産と消費、不動産融資専門の2社による貸出額などは、2009年第1四半期に前年同期比で増加したことなども伝えられた[※3]。

現況の不動産市場や在外ケニア人の役割、ソマリア資金など、多くの点でリージェント・グループもロイド・マシカも見解を共有している。不動産業界では、認識を伝える報道とは別に、業界内部の共通理解が形成されているように見受けられる。在外ケニア人の投資背景においては心理的側面も指摘されている。これは、いわゆる「所有プレミアム」が在外ケニア人にも働くことを示唆している。

今後の事業展開戦略では、リージェント・グループとロイド・マシカの間に違いがみられる。リージェント・グループが事業領域を広げていこうとするのに対し、ロイド・マシカは現在の事業に集中していく方針。おそらく、ロイド・マシカは、ケニアの不動産業界では古参企業であるために、古くからの「つきあい」を大事にする企業風土であると推察される(リージェント・グループは1995年設立の新興企業)。不動産事業は、日本でも信用がより重視される業界である。ロイド・マシカは長年ケニアで不動産業界を先導してきた会社でもあり、「専門性と培った信頼」を自身の成功のカギとして挙げている。近年の市場の加熱要因に、一部業者による過剰利益追求の傾向を指摘することからも、企業倫理にも注意を払っている様子がうかがえる。これは、信頼を基礎に置く不動産業界の姿勢と合致する。こうしたことから、近隣国に事務所を設置しない理由を「管理上の問題」とするのは、経営層の目の届かないところでモラルハザードが起きる可能性を懸念していると考えられる。国内では、西部の拠点として、エルドレッドに事務所を置いている。これは、エルドレッドが、立地上、西部ケニアの各地をカバーしやすいためであるという。ロイド・マシカからは、拠点を絞込むことで固定費抑制と企業統治を両立し、高いサービス水準を維持しようとする姿勢を垣間見ることができる。

(参考情報)
ロイド・マシカ社面談(Mr. Stephen N. Waruhiu, Director)11月19日実施
ロイド・マシカ社ウェブサイト( http://www.lloydmasika.co.ke )2009年12月23日アクセス
タイソンズ社ウェブサイト( http://www.tysonskenya.com )2009年12月23日アクセス
山口揚平[2008]“企業分析力養成講座”日本実業出版社
2009年6月30日スタンダード紙
2009年7月20日ビジネスデイリー紙

※3 例えば、前者を伝える報道として、2009年6月30日スタンダード紙。後者の場合、2009年7月20日ビジネスデイリー紙などがある。