Coqivoire

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

COQIVOIREは、1976年に設立されたSIPRA(Société Ivoirienne de Productions Animales)の支社で、アビジャンで養鶏、鶏肉および鶏卵の生産、加工、販売を行っている。SIPRAの会社資本は7億5,000万CFAフラン(FCFA)で、ルクセンブルク資本73.41%、コートジボワール資本26.59%で構成されている。SIPRAは、この他孵化用の卵と雛鳥を生産するIVOIRE POUSSINS、家畜の飼料を製造するIVOGRAINの事業を展開する。COQIVOIREはアビジャン市内2ヵ所に養鶏場と関連施設があり、生産能力は、鶏肉20,000羽/日、鶏卵3,000個/日。従業員数は、本社とこれら3支社を含めて630人。2007年の売上高は119億7,000万FCFAとなり、2008年はこれを大幅に上回り、最近の業績は好調という。

COQIVOIREは、近代的な設備を導入し、養鶏、鶏肉生産、加工、販売を一貫して行う流通体制を整えている。同社営業部長によると、一貫した生産・流通体制により、衛生・品質管理を徹底し、食の安全を保証するとともにコストを省き割安な価格で商品を消費者に提供している。主な販売先は、スーパー、レストラン、食堂、ホテル、ファーストフード店などに卸しているほか、市内各所に販売拠点を設置し、小売りもしている。消費者が必要な時にいつでもどこでも購入できるよう「消費者に身近」をモットー に多くの小売店を展開している。テレビ、ラジオを通じた宣伝、メディア広告のほか、時季的な販売プロモーション活動にも力を入れている。例えばクリスマスやバレンタイン、母の日、父の日にイベントを実施するなどして集客活動を行っている。また社会文化活動の後援などにより知名度を上げている。同社のモットーは消費者へ安全で新鮮な食品を届けることで、同社独自の”Bec Fin”というラベルが付いた”COQIVOIRE”(鶏肉、卵)、”BEC FIN”(鶏肉加工品)といった製品は、消費者の信頼を確立している。

小売価格は、生鶏肉1,014FCFA/Kg、鶏卵720FCFA/Kg、鶏肉ソーセージ3,894FCFA/Kg、スモーク・チキン3,304FCFA/Kg、モルタデラ5,900FCFA/Kg、骨抜き肩肉4,443FCFA/Kgで、量り売りしている。これらの価格帯は主に中間所得者層や富裕層がターゲットとなるが、鶏肉は伝統行事や宗教行事、冠婚葬祭に食されることが多く、低所得者層の間でも消費が増加する傾向にある。一方、コートジボワールでは肉類の需要は高いが、全般として購買力が低く冷凍肉や屑肉など低価格志向のため、同社の鶏肉は安価な輸入冷凍肉と競合している。

同社は、1976年の設立当初から、急速な人口増加に伴い拡大する食品市場に着目。政府が進める食糧安定供給、食糧自給促進、食肉生産奨励策などの政策にビジネス機会を見いだし、零細または個人が営む伝統的形態の養鶏業しか存在しなかった養鶏産業に近代的設備を導入し、参入した。国内家禽肉市場で30%のシェアを占めるリーディング企業となった同社は、西アフリカ諸国には高い需要があると見ており、今後輸出市場にも目を向け、積極的に新規市場開拓に取り組んでいく計画で、すでにプロモーション活動を展開している。また国内では分断していた国土統一が進展しており、時期をみて北部地方にも販売拠点を展開する予定だ。

コートジボワールでは電力・水の安定供給、通信事情、インフラ整備とも比較的良好で、養鶏業を営む上での立地条件は良いと評価している。一方、検疫体制の不備や行政管理の欠如により不衛生、不良な食肉が輸入されたり、違法に屠殺された不衛生な食肉が市場に出回ったりしたケースが報告されており、行政管理の改善を求めている。またコートジボワール国民一人当たりの肉の消費量は12.5Kgと少ないが、これは肉の供給が需要増加に追いつかないためで、このままだと動物タンパク質の摂取不足が懸念され、業界関係者の間では食肉生産奨励策などの措置を求める声が強い。

コートジボワールの食肉生産量は2007年67,764トンとなり、前年比7%減少した。内訳は、牛類28,928トン(1,337,000頭)、羊類9,340トン(2,107,000頭)、豚類6,920トン(323,470頭)、家禽類22,576トン(32,372,694羽)。一方、国内生産だけでは、牛肉、豚肉、羊肉を中心に食肉の国内消費を賄えないため年間約6万トンを輸入している。これは国内消費量の約6割に当たる。牛、豚、羊肉は消費の多くを輸入に依存しているが、家禽はほぼ国内自給している。食肉の生産量はここ数年間横ばいで推移しているのに対し、食肉の輸入量は過去13年間で10倍に増えており、2008年55,770トン(323億FCFA)となった。輸入の内訳は牛肉28,364トン、豚肉23.756トン、羊肉2,493トン、家禽肉1,060トンなどとなっている。生きた家畜は主に、ブルキナファソ、マリ、ニジェールから輸入し、国内で屠畜、食肉生産加工を行っている。食肉は主にフランス、ブラジル、イタリア、インドから輸入しており、地域別では欧州からの輸入が6割を占め、これに南米17%、アジア/オセアニア16%、北米8%と続く。

一貫した生産体制で食の安全を保証し、割安な商品を消費者に提供することをモットーとする同社は、宣伝や広告をうまく利用しながら、積極的に小売店網を展開し独自のラベル化に努めてきた。世界的な鳥インフルエンザ流行で鶏肉の消費が落ち込んだ際は、衛生管理と検査を徹底し、政府と協調して安全マークの鶏の供給体制を整備し、「安全な鶏肉」を供給する企業としてイメージ向上につながった。今、コートジボワールで鶏肉と言えば、誰もがCOQIVOIREを思い浮かべるほど、同社のブランドは確立している。