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発展途上国研究奨励賞

発展途上国研究奨励賞

第29回「発展途上国研究奨励賞」(2008年度)受賞作品

ジェトロ・アジア経済研究所は、1963年以来、発展途上諸国の経済などの諸問題に関する優秀図書、論文の表彰を行ってきました。1980年度に創設された「発展途上国研究奨励賞」は、発展途上国に関する社会科学およびその周辺分野における調査研究の優れた業績を評価し、この領域における研究水準の向上に資することを目的としています。

今回、選考の対象となったのは、2007年1月~12月までの1年間に公刊された図書、論文など開発途上国の経済、社会などの諸問題を調査、分析したものです。各方面から推薦のあった39点のなかから、6月2日(月)の選考委員会で次の作品に授賞が決定しました。

 

表彰式は7月1日(火曜)に、当研究所で行われました。

第29回(2008年度)受賞作品

『老いてゆくアジア』
大泉啓一郎(株)日本総合研究所主任研究員)著
出版:中央公論新社2007年9月発行/ISBN 978-4-12-101914-1 /798円

受賞の言葉(大泉啓一郎氏)

この度、アジア経済研究所「発展途上国研究奨励賞」という名誉ある賞を賜りましたことは、大変うれしく、身の引き締まる思いです。

振り返れば、4年前タイの財政評価分析の一環として同国の人口構成を調べた際、合計特殊出生率が1.8と低く、高齢化率が7%近いことに驚いて以来、所得が十分に高まらないうちに高齢社会に突入するということはどういうことか、長い時間をかけて起こる人口構成の変化を、東アジアの高成長や展望に引き付けて解釈すると何がみえてくるのか、東アジア共同体の形成に向けて少子高齢化をどう位置づけるのかなど、東アジアの人口構成の変化と経済社会への影響をすっと考えてきました。受賞いただいた「老いてゆくアジア」は、その暫定的な到着点といえます。詰めなければならない点が多く、粗い枠組みにもかかわらず、評価していただいた審査員の先生方には心よりお礼申し上げます。

私は、高齢化自身は問題ではない、むしろ長寿は多くの人に共通する幸福のひとつの形態であり、東アジアはそれを実現したとのだと理解しています。また、高齢社会とは分別ある大人の多い社会であり、個々の自律と他人への思いやり、経験や知恵などによって豊かな社会を築く可能性を秘めるとも考えています。副題である「繁栄の構図の変わるとき」には、高齢化によって繁栄の中味が「量」から「質」へと変わるのだという期待を込めました。

もちろん豊かな高齢社会の構築には相当の準備と覚悟が必要になります。東アジア全体で高齢社会について真剣な議論と協力が深める、そんな状況が生まれれば、東アジア共同体形成に向けて大きな前進だ、そんなことも考えます。

今後とも研究に加えて、東アジアの現場で、そしてご近所で、豊かな高齢社会造りに関わり続けたいと強く思っています。

大泉啓一郎氏 略歴

1963年 大阪生まれ
1986年 京都府立大学農学部卒業
1988年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了
1988年 東レ・ダウコーニング株式会社勤務
1989年 京都大学東南アジア研究センター研修生
1990年 (株)三井銀総合研究所勤務
現在 (株)日本総合研究所 調査部 環太平洋戦略研究センター主任研究員、法政大学経済学部非常勤講師、JICA社会保障課題別支援委員会委員

主要著作
(共著)

  • 新田目夏実・大泉啓一郎・梶原弘和『開発途上国の高齢化を見据えて~新しい支援協力への視座~』国際協力総合研修所、2006年 (Facing up to the Problem of Population Aging in Developing Countries ? New perspectives for Assistance and Cooperation, Institute for International Cooperation, 2006)

(単著)

  • 『老いてゆくアジア』中公新書、中央公論新社 2007年。

(その他)

  • 「社会福祉制度改革-国家介入なき福祉戦略」玉田芳史・船津鶴代編『タイ政治・行政の変革 1991~2006年』アジア経済研究所 2008年。
  • 「東アジア少子高齢化時代と日本の協力」(渡辺利夫編『日本の東アジア戦略』東洋経済新報社 2005年。
選考委員

委員長
寺西重郎(日本大学商学部教授)

委員
絵所秀紀(法政大学経済学部教授)
末廣 昭(東京大学社会科学研究所教授)
中兼和津次(青山学院大学国際政治経済学部教授)
脇阪紀行(朝日新聞社論説委員)(以上 五十音順)
白石 隆(ジェトロ・アジア経済研究所長)