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発展途上国研究奨励賞

発展途上国研究奨励賞

第34回「発展途上国研究奨励賞」(2013年度)受賞作品

アジア経済研究所は、1963年以来、発展途上諸国の経済などの諸問題に関する優秀図書、論文の表彰を行ってきました。1980年度に創設された「発展途上国研究奨励賞」は、発展途上国に関する社会科学およびその周辺分野における調査研究の優れた業績を評価し、この領域における研究水準の向上に資することを目的としています。

今回、選考の対象となったのは、2012年1月~12月までの1年間に公刊された図書、論文など開発途上国の経済、社会などの諸問題を調査、分析したものです。各方面から推薦のあった37点のなかから、6月5日(水曜)の選考委員会で受賞作品が決まりました。

   


表彰式は7月1日(月曜)に、ジェトロ本部で行われました。

第34回(2013年度)受賞作品
『中国共産党の支配と権力  党と新興の社会経済エリート』 (慶應義塾大学出版会)

中国共産党の支配と権力  党と新興の社会経済エリート 』 (慶應義塾大学出版会)
著者 鈴木 隆  愛知県立大学外国語学部中国学科専任講師
(著者の所属・肩書きは書籍刊行時のものを表示しています)

受賞の言葉(鈴木隆氏)

このたびは、「発展途上国研究奨励賞」というこの伝統ある賞をいただき、本当に嬉しく思います。選考委員の各先生、ならびに、大学学部以来ご指導を賜っている国分良成先生(防衛大学校長)、山田辰雄先生(慶應義塾大学名誉教授)、そして日頃より研究会活動でお世話になっている天児慧先生(早稲田大学教授)、菱田雅晴先生(法政大学教授)、諏訪一幸先生(静岡県立大学教授)など、多くの先生・先輩方に対し、この場を借りてあらためてお礼申しあげます。また、拙著の編集の任にあたられた慶應義塾大学出版会の乗みどり氏にも感謝申しあげます。

本書は、政治体制論の視点から、21世紀に入って以来の、中国共産党による支配の実相とその発展のプロセスを、新興の社会経済エリートに対する政治的アプローチを中心として考察しました。その目的は、台頭著しい新興エリート層に対する共産党の政治的応答と、これを通じて体制に構造化されたエリート政治の慣性に焦点をあてながら、中国の支配体制と社会との間の政治的関係性を見きわめることにありました。

本書の執筆に際して、「あとがき」で述べた事柄の他にも、わたくしは以下の3点を心がけました。これらは相互に密接に関係しています。第一に、政治学の一般的な言語と概念を用いることで、中国研究の専門家や学術関係者だけでなく、広く日本社会一般に対しても<開かれた中国理解>を目指すこと。具体的には、質と量の両面において、現代中国をテーマとする一般教養書と研究書との間にある大きな乖離を、少しでも埋めたいとの思いがありました。第二は、「神は細部に宿る」との言葉のとおり、統計データを含む各種資料に基づき、共産党の支配を繊細に描き出すこと。しかし同時に、第三には「群盲象を評す」の不可避性を十分に認識しつつも、中国政治の全体的・比較的理解を意図しています。わたくしの好きな葛飾北斎の傑作は、<部分>にピントを合わせた絵画の方が、<全体>の平板な写実に徹した作品よりも、鑑賞者自身の豊かな想像力や理解力に働きかけることで、全体の構図や事物の本質をより的確に映し出す可能性があることを、われわれに教えてくれています。

こうした試みが拙著において結実しているかどうかは、読者の判断にお任せするより仕方がありません。しかし筆者としては、自分がいまできること、いま持っているもののすべてを込めたという充実感があることを申し添えて、お礼とご挨拶の言葉を締めくくりたいと思います。ありがとうございました。

<鈴木隆氏 略歴>

博士(法学、慶應義塾大学)
1973年 静岡県生まれ
1996年 慶應義塾大学法学部政治学科卒業
2004年 慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程満期退学
      財団法人日本国際問題研究所研究員などを経て、
2011年 愛知県立大学外国語学部中国学科専任講師、2012年より同准教授

<主要著作>


(共編著) 『環日本海国際政治経済論』ミネルヴァ書房、2013年近刊。
(共編著) 『転換期中国の政治と社会集団』国際書院、2013年近刊
(共著) 『中国の対外援助』日本経済評論社、2013年。
(単著) 「中華人民共和国における選挙観念と『中国的民主主義』」『国際情勢』第83号、2013年3月。


最終選考対象作品

選考委員会で最終選考の対象となった作品は受賞作のほか、次の2作品でした。

  • 川上桃子著『圧縮された産業発展 ——台湾ノートパソコン企業の成長メカニズ ム——』(名古屋大学出版会)
  • 任哲著『中国の土地政治:中央の政策と地方政府』(勁草書房)
選考委員

委員長
長田 博(帝京大学経済学部教授)

委 員
酒井啓子(千葉大学法経学部教授)
杉村和彦(福井県立大学学術教養センター教授)
広瀬崇子(専修大学法学部教授)
牧野文夫(法政大学経済学部教授)
白石 隆(ジェトロ・アジア経済研究所所長)