アジア経済研究所
発展途上国研究奨励賞

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アジア経済研究所発展途上国研究奨励賞

ジェトロ・アジア経済研究所では1963年より、日本の開発途上国研究の水準向上と研究奨励を目的に、途上国研究に関する優秀図書を選定、表彰しています。
(※1963年~1979年「優秀論文賞」、1980年より「発展途上国研究奨励賞」)

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ジェトロ・アジア経済研究所 研究事業開発課
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第47回「アジア経済研究所発展途上国研究奨励賞」(2026年度)受賞作品

2026年8月7日

ジェトロ・アジア経済研究所は、1963年以来、開発途上諸国の経済などの諸問題に関する優秀図書、論文の表彰を行ってきました。1980年度に創設された「発展途上国研究奨励賞」は、開発途上国・新興国または地域に関する社会科学およびその周辺分野における調査研究の優れた業績を評価し、この領域における研究水準の向上に資することを目的としています。

今回、選考の対象となった作品は、2024年10月~2025年9月の1年間に公刊された研究書(英文書籍は2025年)のうち開発途上国・新興国または地域の経済、社会などの諸問題を調査、分析したものです。個人・出版社等から推薦された43点の中から次の1点が受賞作品として選定されました。

第47回(2026年度)受賞作品

書影:『強制送還の国際社会学:「ヒスパニック」系移民とアメリカのゆくえ』 (名古屋大学出版会)

強制送還の国際社会学:「ヒスパニック」系移民とアメリカのゆくえ』 (名古屋大学出版会)

著者 飯尾 真貴子 一橋大学大学院 社会学研究科 専任講師

表彰式は7月1日(水曜)に、アジア経済研究所にて開催されました。

授賞式の写真1

(左から木村所長、名古屋大学出版会・井原氏、飯尾氏、一橋大学名誉教授・小井土氏、竹中委員長、今泉理事)

授賞式の写真2

(受賞講演)                            

受賞のことば(飯尾 真貴子氏)

この度は,第47回「アジア経済研究所発展途上国研究奨励賞」という栄誉ある賞を賜り,誠に光栄に存じます。選考にご尽力くださったアジア経済研究所の皆様ならびに選考委員の先生方に厚く御礼申し上げます。また,本書の出版に至る長い道のりを支えてくださった先生方,名古屋大学出版会の皆様,同僚,友人,そしてかけがえのない家族に心から感謝いたします。

本書は,近年の米国移民規制政策の厳格化が移民とその家族,さらには移民コミュニティに及ぼす影響を,送出国であるメキシコにまで射程を広げ,長年にわたる多地点フィールドワークを通じて明らかにしたものです。国家の視点からみれば,強制送還による物理的な国外追放は,受入国における「移民問題」の解決策とみなされます。しかし,強制送還に至った人々の人生は,そこで終わりません。家族の離別は,第二世代を含めた移民家族の生活に長期的影響を及ぼすだけでなく,帰国者もまた,米国に残した家族との関係を抱えながら,新たな困難に直面します。つまり,強制送還の帰結は,受入国だけでなく送出国まで射程に入れて検討する必要があるのです。

こうした問題意識から,私は国民国家を分析単位とする「方法論的ナショナリズム」を乗り越え,受入国の文脈でおもに発展してきた強制送還研究をトランスナショナルな視座と接合し,移民規制の厳格化が国境を越えて広がる社会空間に及ぼす影響を包括的に明らかにしようとしました。そして,メキシコとアメリカの双方で調査を重ねるなかでみえてきたのは,移民の「犯罪者化」をめぐる米国の支配的言説が,移民とその家族を規律化し,送出し社会にまで浸透しているという事実でした。こうした越境的な統治は,送出し社会のローカルな規範や秩序とも結びつきながら,世代やジェンダーによって異なる経験を生み出していることが明らかになりました。

国民国家を自明視する社会において,国家の境界管理は当然のものとされています。国際社会学の意義のひとつは,人の移動という視点から,そうした境界管理のあり方を問い直し,批判的に検討することです。そのような研究を進めることができたのは,フィールドワークに際しご自身の経験を語ってくださった方々のご協力があったからにほかなりません。本書が厳しい監視と排除のもとで生きる移民とその家族の経験を理解する一助になることを切に願っています。今回の受賞を励みに,今後も国家の境界管理が人々の生にもたらす影響を,当事者一人ひとりの視点から丹念に追い続ける研究に取り組んでいきたいと考えています。

<飯尾 真貴子氏略歴>
  • 2006年 Lewis & Clark College, B.A. in International Affairs
  • 2020年 一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了(社会学博士)
  • 2021年 一橋大学大学院社会学研究科専任講師
<主要著作>
  • “‘Choosing’ instability: Differential inclusion of refugee-migrants under a multilayered migration regime in Mexico.” Critical Sociology (First published online June 17, 2026).
  • 「米国移民規制の厳格化がもたらす越境的な規律装置としてのトランスナショナル・コミュニティ――メキシコ南部村落出身の移民の経験に着目して――」『ソシオロジ』65(3): 3-19, 2021年。
<最終選考対象作品>

最終選考の対象となった作品は受賞作のほか、次の2点でした。

  • 『スラム産業が生み出すイノベーション:現代インド・ムンバイ―の革製品工房』(昭和堂)
    著者:久保田 和之 国際ファッション専門職大学名古屋校助教
  • 『若者たちのイスラーム:現代西アフリカを動かす宗教性の人類学』(風響社)
    著者:阿毛 香絵 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授
<選考委員>
委員長 竹中 千春 立教大学 法学部 元教授
委 員 遠藤 貢 東京大学大学院総合文化研究科 教授
木村 福成 ジェトロ・アジア経済研究所 所長
黒木 英充 東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 教授
園田 茂人 東京大学 東洋文化研究所 特任教授
加治佐 敬 京都大学大学院農学研究科 教授

担当部課
ジェトロ・アジア経済研究所 研究推進部 研究事業開発課
TEL: 043-299-9667 E-mail: shoureiE-mail