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(2024年インドネシアの選挙)第3回 なぜプラボウォは圧勝できたのか?――2024年大統領選挙を開票速報から分析する

Why did Prabowo overwhelmingly win the presidential election? Tentative analysis of the Indonesia’s presidential election of 2024

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/0002000869

2024年3月

(6,312字)

写真1 投票所の前に張り出されていた3組の大統領選候補者の選挙ポスター

写真1 投票所の前に張り出されていた3組の大統領選候補者の選挙ポスター

プラボウォの圧勝に終わった大統領選

2月14日に行われたインドネシアの大統領選挙では、プラボウォ・スビアントとギブラン・ラカブミン・ラカの正副大統領ペアの当選が確実となった。選管である総選挙委員会(KPU)から公式の結果が発表されるのは3月20日だが、複数の世論調査会社による開票速報では得票率60%弱を獲得すると予想されており、決選投票までもつれ込むことになく、アニス・バスウェダン=ムハイミン・イスカンダルとガンジャル・プラノウォ=マフッド・MDの2組の候補者をおさえて当選する見込みである1

プラボウォは、1970年代から当時のスハルト大統領による強権体制の下で陸軍高級将校として台頭し、スハルトの娘婿にもなったことから一時は後継者とも見なされた人物である。しかし、スハルト体制末期に反政府活動家らを拉致・監禁したなどの疑いで追及をうけて国軍を離れ、民主化直後は国外に居を移していた。彼が帰国し、政治活動を始めたのは民主化後4年が経った2002年のことだった。そうした経歴から、1998年の民主化運動に参加していた世代の人々の間では、今でもプラボウォに対する忌避感は強い。

そもそも、2023年の前半までプラボウォは決して最有力の候補者ではなかった。その頃、世論調査でトップを走っていたのは中ジャワ州知事を務めていたガンジャルであった(図1参照)。しかし、2023年4月頃からプラボウォは支持率でガンジャルと並び、10月に逆転、11月に選挙戦が始まってからは他の2候補を徐々に引き離し、投票日直前の世論調査では支持率が50%を超えるまでに差を広げることに成功した。

民主化運動の弾圧だけでなく、東ティモールやパプアの独立運動制圧作戦における人権侵害の疑惑も抱え、しかも72歳と高齢のプラボウォが有権者に圧倒的に支持されたのはなぜだろうか。ここでは、総選挙委員会のウェブサイトで公開されている開票途中(2024年2月27日時点で開票率77.4%)の州別投票結果をもとに考えてみる。

図1 大統領選立候補者に対する支持率とジョコウィ大統領に対する支持率

図1 大統領選立候補者に対する支持率とジョコウィ大統領に対する支持率

(注)2023年10月中旬までの各候補の支持率は、立候補者がアニス、プラボウォ、ガンジャルの3人だったとした場合に誰に投票するかという質問に対する答え。 2023年10月下旬以降の支持率は、副大統領候補が決まったあとの各組に対する支持率。
(出所)Indikatorの世論調査より筆者作成

弱点を克服するプラボウォの選挙戦略

プラボウォが大統領候補として選挙に臨むのはこれが3度目である。過去の2度(2014年と2019年)とも、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)と激しい選挙戦を展開しながらプラボウォは敗北を喫した2。ジョコウィの選挙戦略の巧みさとジョコウィ支持層の固さを身をもって知っているのがプラボウォである。しかも、2014年から政権を握るジョコウィ大統領は、2期10年の任期末になっても70%台と高い支持率を維持している(図1参照)3。そこでプラボウォ陣営がとった第1の選挙戦略が、ジョコウィ支持層をそっくり取り込むことであった。

まずプラボウォは、ジョコウィ政権の政策を継承することを前面に押し出した。過去の選挙ではジョコウィを激しく批判したはずのプラボウォは今回、経済政策、開発の成果、そして指導者イメージに到るまでジョコウィのあらゆる側面を引き継ぐ、という選挙戦略をとった。選挙演説や討論会の場では、経済成長を実現したとジョコウィ大統領を持ち上げ、インフラ開発、資源川下部門の産業育成から首都移転まで、あらゆる政策を継承・発展させると強調した。さらに、ジョコウィの代名詞だった「ブルスカン」と呼ばれる現場視察や住民との直接対話を模倣し、その様子をソーシャルメディアで拡散させて市民との近さが強調されるなど、プラボウォ陣営はイメージ戦略までもジョコウィを模倣した。

このジョコウィ人気を取り込むうえで最も効果的だったのが、ジョコウィの長男であるギブランを副大統領候補に据えたことだった。36歳のギブランは、父親の政治家としての出発点でもあった中ジャワ州ソロの市長を2021年から務めている。当初、「40歳以上」という要件を満たしていなかったギブランには立候補資格がなかったが、ジョコウィの義弟が長官を務める憲法裁判所が「地方首長経験者を例外とする」という解釈を示したことで、立候補が可能になったという曰くがある4

こうした経緯には批判もあったが、一般の有権者にはギブランと組んだプラボウォこそがジョコウィの後継者であると強く印象づける効果を発揮した。それまで世論調査で支持率トップの座をガンジャルと激しく争っていたプラボウォは、これが転機となって支持率1位に躍り出て、以降投票日まで逆転されることはなかった(図1参照)。

また、表向き「中立」の立場を表明していたジョコウィ大統領も、次第にプラボウォを支援する姿勢を強めた。選挙戦中に貧困層向け社会扶助の支給延長を決定して政策的に援護射撃を行ったり、プラボウォとの会食の様子をマスコミに公表して両者の蜜月関係を国民にアピールしたりした。さらには、地方首長や警察などに特定候補者の支援に回るよう圧力をかけたという報道もある5

プラボウォ圧勝のウラに「ジョコウィ効果」あり

そうしたプラボウォの選挙戦略とジョコウィ支援の効果は、2014年と2019年の2回の大統領選でジョコウィの支持基盤となっていた地域で、今回はプラボウォが圧勝したという結果に表れている(表1)。

過去の選挙でプラボウォの支持基盤となっていたのは、敬虔なムスリムで宗教的価値観を政治の場にも反映させるべきだと考える「イスラーム保守派」と呼ばれる人々であった。そうしたイスラーム保守派の影響力がとくに強かったスマトラ島の各州、ジャワ島の西部、小スンダ列島の西部、スラウェシ島の南部、北マルクといった地域では、プラボウォ支持はジョコウィを上回っていた。一方で、ムスリムだが政治と宗教は切り離して考えるべきだと考える「世俗派」の人々が多いジャワ島の中東部や、非ムスリムが多いインドネシア東部地域では、ジョコウィが圧倒的な支持を獲得していた。過去2回の選挙では、プラボウォは「イスラーム票」を徹底的に動員することでジョコウィに対抗しようとしたが、それでは大統領選に勝てないことを悟ったプラボウォ陣営は、今回はそうした「アイデンティティ対立」を煽る選挙戦略を完全に封印し、任期満了で退任するジョコウィの支持層をそっくりそのまま引き継ぐことにしたのである。

その結果、今回プラボウォは、イスラーム保守派の支持を失ったとみられる。アチェ州や西スマトラ州で大幅に得票率を下げていることがそのことを顕著に表している。その他にも、プラボウォが前回から得票率を下げているのは、いずれもイスラーム保守派の影響力の強い地域である6。また、そうしたイスラーム保守派層は、現在もジョコウィ政権を支持していない傾向がみられることから7、「反ジョコウィ」を選挙戦で掲げたアニスに票が流れたのであろう。

しかし、失ったイスラーム票を補って余りある票をジョコウィ支持層から得たことが今回のプラボウォ圧勝の背景にはある。たとえば、有権者数2800万人以上の大票田である中ジャワ州と隣接するジョグジャカルタ州は世俗派ムスリムが多数を占める地域で、かつ代表的な世俗派政党で国会の第1党でもある闘争民主党(PDIP)の強固な地盤である。その闘争民主党が擁立した対抗馬のガンジャルは中ジャワ州出身、かつ同州知事を2期10年務めただけに、この地域ではどうしても勝たなければならなかった。しかし、結果はどちらの州でもプラボウォが過半数の支持を得たようである。

有権者数3100万人以上の大票田である東ジャワ州も、各陣営が力を入れていた地域である。ここはインドネシア最大のイスラーム教組織ナフダトゥル・ウラマー(NU)の影響力の大きな地域で、アニスがNUを支持基盤とする民族覚醒党(PKB)党首のムハイミンを副大統領候補にしたのも、ガンジャルが同州出身でNUとのつながりもあるマフッドを副大統領候補にしたのも、NU票を狙ったものだった。しかし、ここでもプラボウォは6割以上の得票で圧勝した模様である。NU票の争奪戦でもプラボウォが勝利したのである。

これらの3つの州は、前回の大統領選でジョコウィが7割前後の高い支持を得て当選に大きく貢献したところである。プラボウォがこれら弱点だった州で勝利できたのは、ジョコウィ票が流れ込んできたからだとみてよいだろう。

これまでの選挙で苦戦していた小スンダ列島、カリマンタン、スラウェシ、マルク、パプアといったインドネシア東部地域の各州でも、プラボウォは60%前後の得票で圧勝する見込みである。ここにはヒンドゥー教徒が多数派住民のバリ州、キリスト教徒住民の多い東ヌサ・トゥンガラ州、北スラウェシ州、パプア州といった地域が含まれる。これらの地域は伝統的に闘争民主党の地盤が多く、本来はガンジャルが支持を獲得しなければならないところであった。しかし蓋を開けてみれば、ガンジャルはほとんど支持を伸ばせなかった一方、プラボウォは前回に比べて50ポイント近く得票率を伸ばしたようである。プラボウォは、国軍時代にはイスラーム派将校といわれ、パプアの分離独立運動制圧作戦に従事したこともあることから、これらの地域における前回選挙の得票率はとくに低く、一桁から20%台前半であった。これらの地域でもプラボウォが大勝できたのは、ジョコウィ効果以外には考えられないだろう。

表1 2024年大統領選の暫定投票結果(開票率77.4%)

表1 2024年大統領選の暫定投票結果(開票率77.4%)

  1. (注)
    1)2024年2月27日0時0分時点、全投票所82万3236カ所のうち63万7134カ所の開票結果(77.4%)を反映したもの。
  2. 2)プラボウォ=ギブランの得票率の後ろのカッコ付き数字は、2019年大統領選におけるプラボウォ(サンディアガ・ウノが副大統領候補)の得票率との差。
  3. 3)南パプア、中パプア、山岳パプアはパプア州から分離、南西パプアは西パプア州から分離されて2022年に新設された州のため、ここでは2019年との比較は行わなかった。そのため、パプア州と西パプア州におけるプラボウォ=ギブランのカッコ内の数値(斜字)は、州分割される前の旧パプア州/旧西パプア州と州分割後の新パプア州/新西パプア州との差であり、あくまで参考値として考えてほしい。
  4. (出所)総選挙委員会ウェブサイトから筆者作成
若い世代の支持を獲得したプラボウォの選挙戦略

プラボウォを圧勝に導いたもうひとつの要因は、若い世代からの支持を得ることに力点を置いた選挙戦略である。今回の選挙では、有権者総数2億480万7222人のうち、27歳以下のZ世代が22.9%、28〜43歳のミレニアル世代が33.6%で、両者をあわせた若い有権者の数が全体の50%を超えた8。前回の選挙では、当時30代半ばだったミレニアル世代とZ世代の割合は40%台だったとみられるが9、今回Z世代の有権者が新たに2500万人加わったことで10、若者世代が選挙結果を左右する大きな存在になったのである。

写真2 シャツの背中に描かれていたプラボウォ=ギブランのアニメ・キャラクター

写真2 選挙集会に来ていた参加者のシャツの背中に描かれていた
プラボウォ=ギブランのアニメ・キャラクター

そこでプラボウォ陣営がとった戦略は、元軍人として「指導力のある、強い政治家」であることを前面に出した指導者イメージを大きく転換させることであった。これまでの選挙で使用されていた「拳を振り上げて眉間にしわを寄せた」自画像は、人工知能(AI)を使って作成されたピクサー風アニメ・キャラクターの画像に置き換えられた(写真2)。若者に人気の動画共有アプリ・ティックトック(TikTok)には、音楽に合わせて腰を振って踊るプラボウォの姿が投稿された。AIを使ってプラボウォ、ギブラン、ジョコウィの3人と一緒に写真を撮ったような画像を作成できるサイトも準備された(写真3)。選挙用ポスターにも、インスタ映えを意識した、若者うけするデザインが採用された。プラボウォはいつしかネット上で若者のスラングを使って「かわいらしい(gemoy)」と形容されるようになった。その後プラボウォ陣営も、「好々爺イメージ」を積極的に利用して選挙戦で展開するようになった11。ギブランをパートナーとする決定は、さらに若者の支持を引きつける効果をもった。

写真3 AIを使ってプラボウォ、ギブランと一緒に映っている画像を作成できる。

写真3 AIを使ってプラボウォ、ギブランと一緒に映っている画像を作成できる。
         この画像は、新首都予定地に建設中の大統領官邸前でジョコウィ大統領
も一緒に写っているように加工されている

こうした戦略は的確に若い人たちの心を捉えたとみられる。日刊紙『コンパス』の出口調査では、42歳以上の世代からは50%以下の支持しか得られなかったのに対して、34〜41歳の世代は54.1%が、26〜33歳の世代では59.6%が、26歳以下の世代では65.9%がプラボウォを支持したという結果が出ている12。世代が若くなればなるほどプラボウォ支持が増えたのである。5年前の選挙でも若い世代ほどプラボウォを支持するという傾向が出ていたが13、今回はプラボウォ陣営がターゲットをより明確にした選挙戦略をとったことで、若者世代から圧倒的な支持を獲得したとみられる。

また、選挙戦最終盤の世論調査では50%をわずかに上回る支持率だったプラボウォに、最後の得票の上積みをしたのも若者世代である可能性がある14。これも『コンパス』の出口調査によるものだが、若い世代ほど投票直前に投票先を決める傾向にあるという結果が出ている。投票日の数日(2〜7日)前〜投票直前に投票先を決めた割合は、34〜41歳の世代では24.6%、26〜33歳の世代では27.9%と増え、26歳以下の世代では3割を超える。この割合も、年齢が上がるにつれて少なくなっていく。政治的態度が固まっていない若者ほど投票行動の決定が投票日に近くなるというのは当然のことだが、直前まで迷っていた若者が最終的に支持したのもプラボウォだったということなのかもしれない。

効果的だったプラボウォの選挙戦略

今回の選挙戦では、プラボウォ陣営の選挙戦略がことごとくうまくいったといえる。その戦略とは、第1に現職のジョコウィ大統領の政策を継承することを前面に押し出したことであり、第2に若い世代からの支持を得ることに力点を置いたことであった。

写真4 西ジャワ州ボゴールで開催されたガンジャル=マフッド組の選挙集会

写真4 西ジャワ州ボゴールで開催されたガンジャル=マフッド組の選挙集会

最後に、選挙戦最終盤に現地に入り、各陣営の集会を見て回った筆者の雑感を記しておく。最も筆者の印象に残ったのは、プラボウォ=ギブランの選挙集会に参加している若い人たちの姿であった。インドネシアの選挙集会といえば、候補者や政党が交通費や食事などを提供して大規模に支持者を動員するというのが定番である。ガンジャルやアニスの大規模集会にはそういった「伝統的な」雰囲気を強く感じた。

それとは対照的に、プラボウォが選挙戦最終日の2月10日にジャカルタ中心部の国立競技場で行った大規模集会では、動員されたと思われる支持者も多くいた一方で、友人や家族・恋人と連れ立って自主的に参加したと思われる若者を多く見かけた。彼らは、まるで音楽フェスに参加するように気軽に会場に来ているようで、政治集会に参加するといった気負いはまったく感じられなかった。その会場では人気ロックバンドが音楽を演奏し、会場のあちこちに写真映えするスポットが用意されるなど、若い世代をターゲットにした仕掛けが施されていた。

写真5 ジャカルタで開催されたプラボウォ=ギブラン組の大規模選挙集会。

写真5 ジャカルタで開催されたプラボウォ=ギブラン組の大規模選挙集会。
公式発表では60万人が参加したとされている

実はこうした戦略も、5年前に選挙戦最終盤でプラボウォに追い上げられたジョコウィがとったやり方である。その時ジョコウィは、支持者に対して自らのトレードマークだった「白いシャツ」を着て会場に集まろうと呼びかけた。今回プラボウォは「水色のシャツ」を着て会場に集まろうと支持者に呼びかけた。色は白から水色に変わったが、若者が自主的に参加し、会場の雰囲気を楽しんでいる様子は5年前と似たものだった。しかも、会場の装飾デザインや趣向は、5年前のそれより洗練されているように感じられた。

2019年にはジョコウィと激しく選挙戦を争ったプラボウォが、その選挙直後にはジョコウィ内閣の国防相として入閣し、さらにその5年後の選挙でジョコウィの長男と組んでジョコウィの後継者を名乗り、ジョコウィを模倣した選挙戦を展開したのである。筆者は、若い世代が政治を動かしていく力に圧倒されると同時に、インドネシア政治の予想できない展開に呆然とするばかりであった。

ジョコウィ大統領が退任し、プラボウォが新しい大統領に就任するのは2024年10月20日になる。プラボウォを擁立した政党連合だけでは議会の過半数を獲得できない公算が大きいことから、他陣営に加わっていた政党を与党に取り込もうと水面下での動きがすでに始まっている。プラボウォはどのように政権を運営するのか、ジョコウィは退任後も影響力を保持できるのか、新大統領は若い世代から託された期待に応えることができるのか。今後も考えなければならない点は多くあるが、それらはまた別の機会に論じたい。

※この記事の内容および意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式意見を示すものではありません。
写真の出典
  • 写真1、2、4、5、インデックス  筆者撮影
  • 写真3 https://fotober2.ai/で筆者作成(2024年2月11日アクセス)
参考文献
著者プロフィール

川村晃一(かわむらこういち) アジア経済研究所地域研究センター次長。専門はインドネシア政治研究、比較政治学。おもな著作に『教養の東南アジア現代史』(共編著)ミネルヴァ書房(2020年)、『 2019年インドネシアの選挙──深まる社会の分断とジョコウィの再選──』(編著)、アジア経済研究所(2020年)など。

書籍:教養の東南アジア現代史

書籍:2019年インドネシアの選挙──深まる社会の分断とジョコウィの再選──


  1. 3組の候補者については、特集「2024年インドネシアの選挙」第1回の記事(東方2024)を参照。
  2. 2014年の選挙については川村編(2015)を、2019年の選挙については川村編(2020)を参照。また、アジア経済研究所で実施した過去のインドネシアの選挙に関する研究プロジェクトをまとめたウェブページ「2024年インドネシアの選挙」もあわせてご覧いただきたい。
  3. ジョコウィが任期末でも高い支持率を維持している理由の第1は、ジョコウィ政権が適切に経済を運営してきたからである。インフラ開発を積極的に推し進めるとともに安定的な経済運営に成功する一方、社会保障や社会扶助などの再分配政策によって貧困の削減についても一定の成果を出した。2020年と2021年のコロナ禍も積極的な財政出動で乗り越え、2022年後半から2023年前半の物価高騰にも適切に対応した。こうした経済運営を国民は高く評価している。そのうえ、史上初の「庶民出身」の大統領として人気を獲得したジョコウィは、権力の座にいた10年間、一度も「庶民派」のイメージを崩すことなく、親しみやすい政治家像を維持してきた。そうしたイメージ戦略の巧みさも、ジョコウィ人気が長続きしている理由である。川村晃一「経済教室 大統領選後のインドネシア 経済開発・民主政治 両立カギ」『日本経済新聞』2024年3月5日、参照。
  4. 憲法裁の判決については、アジ研・インドネシアグループ(2024)の2位の項を参照。
  5. ジョコウィ大統領がプラボウォ=ギブラン組を陰で支援していると指摘される点については、特集「2024年インドネシアの選挙」第2回の記事(水野2024)を参照。
  6. なお、それらの地域で支持を伸ばしたのはアニスである。2017年から2023年まで首都のジャカルタ特別州知事を務めたアニスは、州知事選でイスラーム票を動員することで対抗馬であった華人系キリスト教のライバル候補を破って当選した。今回の大統領選でも、アニスの支持層がイスラーム保守派だったことをこの結果は表しているといえるだろう。2017年ジャカルタ州知事選については、川村・濱田(2018)を参照。
  7. 例えば、2022年3月のSMRC(2022)の世論調査では、ジョコウィ大統領の全国支持率が64.6%だったなか、2019年大統領選でプラボウォに投票した人の59%がジョコウィ政権の業績に不満と回答している。また、イスラーム主義政党で、ジョコウィ政権下では野党にとどまっている福祉正義党(PKS)の支持者の71%がジョコウィ政権の業績に不満と回答している。
  8. Raymundus Rikang “Pemilu 2024: Adu Gimik Calon Presiden Berebut Suara Pemilih Muda〔2024年総選挙:仕掛けの競争で若い有権者の票を争う〕,” Tempo, 7 January 2024.
  9. Susanti Agustina S. “Evaluasi Persiapan Pemilu dari Catatan Februari〔2月の記録から総選挙の準備状況を評価する〕,” Kompas, 25 March 2019.
  10. Anita Permata Dewi “Perludem: Pemilih muda tentukan nasib bangsa pada Pemilu 2024〔選挙民主主義連合(Perludem):若い有権者が2024年総選挙で国民の運命を決定する〕,” Antara, 2 February 2024.
  11. Raymundus Rikang “Joget Gemoy Prabowo demi Pemilih Muda〔若い有権者のためのプラボウォのかわいいダンス〕,” Tempo, 7 January 2024.
  12. Agustina Purwanti “Beda Usia, Beda Selera Capres〔年齢が異なれば、大統領候補の好みも異なる〕,” Kompas, 17 February 2024.
  13. 2019年大統領選挙の際にIndikator(2019)が行った出口調査では、プラボウォに投票した有権者は28歳以下で50%、29〜38歳で47%、39〜48歳で44%、49歳以上で41%だった。
  14. 2024年1月28日〜2月4日に実施されたIndikator(2024)の世論調査ではプラボウォ=ギブランの支持率は51.8%、1月29日〜2月5日に実施されたLSI(2024)の世論調査ではプラボウォ=ギブランの支持率は51.9%だった。
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