国家や企業の活動による人権侵害が世界的な問題になるにつれ注目されている「ビジネスと人権」。最大の課題は「ガバナンス・ギャップ」にある。国境を越える経済活動がもたらす人権への負の影響を、投資する先進国、投資される途上国ともに制御できていないのである。その解消をめざして創案された「ビジネスと人権に関する国連指導原則」は、2011年の成立を経て現在、いかに展開されているのか。本書では、政策の変化、人権と環境イシューの接近、条約化の進捗といったグローバルトレンドを追跡する。その上で、グローバルサウスと呼ばれ国際的な影響力を高める途上国、とくに東南アジアにおいて指導原則の理念がいかに実装されているのか、その実態を探る。「ビジネスと人権」研究は、さまざまなディシプリンとアプローチ、理論と政策と実務とが必要とされる。アカデミアはもちろん、政策立案者、企業、そして市民の多くの方々に読んでいただきたい。