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アジア経済

2016年6月 第57巻 第2号

開発途上国に関する和文機関誌—論文、研究ノート、資料、現地報告、書評等を掲載。

『アジア経済』季刊化のお知らせ
『アジア経済』は、1960年の創刊以来、発展途上地域を対象とした専門誌として50年以上にわたり月刊誌として刊行を続けてきましたが、より充実した学術誌を目指し、2012年度から年4回(6月、9月、12月、3月)発行の季刊誌に移行することとなりました。

季刊誌への移行による1号あたり掲載稿数の増加、査読の精確さを含め編集の質の一層の向上を通じて誌面の充実を図り、読者並びに投稿者の皆様のご要望に沿うよう努力していく所存です。


アジア経済 最新刊 ■ アジア経済 2016年6月 第57巻 第2号
投稿募集中
■ 2,160円(本体価格 2,000円)
■ B5判
■ 115pp.
■ 2016年6月発行
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CONTENTS

論 文
中国における共産党員のプロフィールおよび党員身分の機能:1988~2002年——労働市場における就業,昇進と収入の決定要因の実証分析を通して—— / 厳 善平
2-34pp.

メキシコにおける農地所有制度改革浸透の地域間格差 / 谷 洋之
35-59pp.

研究ノート
コロンビアにおけるアブラヤシの生産形態と土地所有制度の関係 / 千代勇一
60-86pp.

書 評
近藤則夫著『現代インド政治—多様性の中の民主主義—』 / 中溝和弥
87-90pp.

Shubhankar Dam, Presidential Legislation in India: The Law and Practice of Ordinances / 孝忠延夫
91-95pp.

岡本正明著『暴力と適応の政治学—インドネシア民主化と地方政治の安定—』 / 木場紗綾
96-100pp.

見市建著『新興大国インドネシアの宗教市場と政治』 / 青山 亨
101-104pp.

鈴木早苗著『合意形成モデルとしてのASEAN—国際政治における議長国制度—』 / 大矢根 聡
105-107pp.

上村泰裕著『福祉のアジア—国際比較から政策構想へ—』 / 李 蓮花
108-111pp.

英文要旨
112-114pp.

要 旨

中国における共産党員のプロフィールおよび党員身分の機能:1988~2002年—労働市場における就業,昇進と収入の決定要因の実証分析を通して— / 厳 善平
本稿は,複数回のThe Chinese Household Income Project Survey(CHIPS)の個票データを用いて,中国における共産党員という人間集団のプロフィールを定量的に描き出し,党員身分獲得の決定要因を明らかにすること,党員身分が人々の就業選択や職業的地位の達成,および収入に与える影響とその変化を計量的に分析すること,を主な研究目的としている。具体的には,①党員身分をもつ者の18歳以上人口比率および特徴,②党員身分の獲得を規定する要因,③政治的資本としての党員身分が個人の就業選択,職業的地位の達成および収入に及ぼす影響の度合いや変化する方向,などについてできるだけ計量的に分析する。その際,個人的属性,居住地域,特に人的資本を表す教育の効果についても注意深く検討する。既存研究で欠落している都市と農村の双方を含み,しかも複数回のCHIPSデータを用いた解析により,公式統計では知りえない共産党員の全体像,党員身分の機能をダイナミックに捉えることが本稿の大きな特徴である。

メキシコにおける農地所有制度改革浸透の地域間格差 / 谷 洋之
メキシコにおいては,1992年に農地所有制度に関する抜本的な改革が実施された。それは,端的にいえば,農地所有権の確定と農地所有権・用益権の流動化を通じて農地そのものおよび農業生産施設・設備に対する投資を促し,農業経営の規模拡大と生産性の向上を図ろうとするものであった。しかし,実際には農地所有権の移転は限定的であり,また農地用益権の移転についても地域的な偏りがあるのが実態である。本稿では,このような地域的な差異の原因のひとつとして,それぞれの地域において歴史的に形成されてきた「土地と農に関する捉え方」の違いを指摘する。メキシコ中部・南部を占めるメソアメリカ地域においては,先住民人口の比率が高いこともあり,農地についても,また主作物であるトウモロコシについても「財」として捉える見方が希薄である。それに対し北部の広大な部分を占めるアリドアメリカ地域においては,それぞれ生産要素,販売商品とする見方が卓越している。このような「土地と農に関する捉え方」の相違は,それぞれの地域において優勢である生産構造にも,「第二種兼業農家化」と「賃借を通じた規模拡大」という差異を生み出している。

コロンビアにおけるアブラヤシの生産形態と土地所有制度の関係 / 千代勇一
コロンビアでは広い地域でアブラヤシなどのアグリビジネスが展開されている一方で,地域によって土地所有をはじめとする法制度の定着の度合いが異なる。本稿では法制度の発達の度合いが異なる3つの地域を事例として,法制度の発達がアブラヤシの生産形態とどのような関係にあるかを考察する。分析方法は,アブラヤシの生産者連盟,企業,小規模生産者,社会開発としてアブラヤシ栽培を促進するNGOなど,多様なアクターを対象とした聞き取り調査で得られたデータの分析を中心とする。考察の結果,土地所有などの制度が曖昧でその運用が困難な地域では企業の土地所有の割合が低く,制度が確立している地域ほどその割合が高くなり,労働法規なども含めた法制度一般の発達がさらに進むと企業による大規模な土地の取得が抑制される傾向が示された。本稿では,土地所有制度の発達度と企業による土地取得度の間にみられるそのような逆U字型の相関を仮説として提示する。ただ,現時点では事例の数が少ないために一般化することはできないが,今後はさらなる事例分析を続けることで,その仮説の検証を進めたい。