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アジア経済

2016年3月 第57巻 第1号

開発途上国に関する和文機関誌—論文、研究ノート、資料、現地報告、書評等を掲載。

『アジア経済』季刊化のお知らせ
『アジア経済』は、1960年の創刊以来、発展途上地域を対象とした専門誌として50年以上にわたり月刊誌として刊行を続けてきましたが、より充実した学術誌を目指し、2012年度から年4回(6月、9月、12月、3月)発行の季刊誌に移行することとなりました。

季刊誌への移行による1号あたり掲載稿数の増加、査読の精確さを含め編集の質の一層の向上を通じて誌面の充実を図り、読者並びに投稿者の皆様のご要望に沿うよう努力していく所存です。


アジア経済 最新刊 ■ アジア経済 2016年3月 第57巻 第1号
投稿募集中
■ 2,160円(本体価格 2,000円)
■ B5判
■ 123pp.
■ 2016年3月発行
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CONTENTS

論 文
ミャンマー・コーカン自治区における麻薬代替開発と農村の社会経済変容——サトウキビ契約栽培導入のインパクトを中心に—— / 翟 亜蕾 ・ 藤田幸一
2-33pp.

セネガルの土地改革——経済自由化の中で残存する慣習的土地制度—— / 三浦 敦
34-62pp.

日本陸軍の中国認識の変遷と「分治合作主義」 / 樋口秀実
63-91pp.

書 評
Matthew E. Carnes, Continuity Despite Change: The Politics of Labor Regulation in Latin America / 馬場香織
92-95pp.

目黒紀夫著『さまよえる「共存」とマサイ——ケニアの野生動物保全の現場から——』 / 安田章人
96-100pp.

伊藤未帆著『少数民族教育と学校選択——ベトナム-「民族」資源化のポリティクス——』 / 矢野順子
101-105pp.

辛島理人著『帝国日本のアジア研究——総力戦体制・経済リアリズム・民主社会主義——』 / 保城広至
106-109pp.

嶺崎寛子著『イスラーム復興とジェンダー——現代エジプト社会を生きる女性たち——』,
後藤絵美著『神のためにまとうヴェール——現代エジプトの女性とイスラーム——』 / 八木久美子
110-113pp.

蔡昉著『従人口紅利到改革紅利』 / 張 馨元
114-118pp.

英文要旨
119-121pp.

2015年寄贈図書リスト
122-123pp.

要 旨

ミャンマー・コーカン自治区における麻薬代替開発と農村の社会経済変容——サトウキビ契約栽培導入のインパクトを中心に—— / 翟 亜蕾 ・ 藤田幸一
19世紀末頃から1990年代末までの長い間,中国と国境を接するミャンマーのコーカン自治区は,ケシ栽培とその加工・販売に依存する経済構造であったが,麻薬撲滅運動に取り組んだ結果,2004年までにケシが姿を消した。主要収入源を失った地域住民は著しい経済的困窮に陥ったが,中国製糖企業によるサトウキビ契約栽培の導入およびカジノ産業導入などを柱とする政策により,経済回復を果たした。本稿は,サトウキビ契約栽培が導入された地域から12カ村を選定して概要調査をした後,うち1カ村について詳細な世帯調査を実施し,そのデータに基づき,ケシ撲滅後のサトウキビ導入やカジノ産業導入の農村家計レベルへのインパクト評価を中心に,農村の社会経済変容を分析することを目的とする。サトウキビ契約栽培は成功を収めたが,適地の不平等な分配により農村所得分配の悪化が指摘された。また土地なし世帯など底辺層ではカジノへの出稼ぎが重要な所得源であることが判明したが,社会的悪影響や教育軽視などの問題も指摘された。

セネガルの土地改革──経済自由化の中で残存する慣習的土地制度── / 三浦 敦
セネガルでは植民地時代以来,近代的土地所有権制度の導入を目指した土地改革が何度も行われてきたが,今日でも植民地化以前からの慣習的土地制度が残存している。本論では,植民地化以前の慣習的土地所有制度,独立後に導入された国家管理地制度,1990年代から普及が目指された私的所有権制度,そしてそれに対抗する土地改革案であるCNCR案を比較し,最後に現在の農民が置かれた状況を簡単にみることで,現在の土地制度の問題を検討する。1990年代以降は,政府は土地権限を政府に集中させて土地登記と私的所有権制度の導入を推進している。この政策は農民の土地アクセスは保障するが,他方で土地商品化により大資本による土地取り上げの危険を生み,農民の生活を不安定にする危険がある。慣習的土地制度はこうした危険を低減させるが,それを支える社会関係は農民搾取と汚職を生む可能性をもつ。CNCR案が求めているのは,住民参加によるこの問題の解決だが,まだ問題を抱えている。

日本陸軍の中国認識の変遷と「分治合作主義」 / 樋口秀実
本稿は,1930年代に日本陸軍の対中政策における主流路線となった分治合作主義について,その形成と展開の過程を考察している。従来の研究では,分治合作主義が単なる分治=分割統治と誤解され,合作の意味が検討されず,日本が中国を分裂させ対中侵略を容易にするための手段と考えられてきた。しかし,分治合作主義が案出された1920年代当時は,軍閥混戦という中国情勢のなかで,中国の各地方権力者間の合作=協力を日本が斡旋することで,中国の和平統一を図るものだった。しかし,満洲事変勃発後,日本と国民政府との対立が激化すると,分治合作主義は変質した。すなわち,日本が中国分立状態の創出・地方政権の樹立を主体的に行い,国民政府の倒壊を期しつつ,満洲問題を有利に解決しようというものとなった。それは,辛亥革命以来中国の政情不安が続くなかで,地方分立こそが中国社会の適性であり,国民政府による統一も長続きしないだろうとの認識に支えられていた。